大魔王バーンが倒れ、地上に平和が戻ったその日、ダイは魔界に堕ちていた。
ダイが目覚めた時、彼は見知らぬ女性の隣で寝そべっていた。
「わ、びっくりした!」
ダイは仰天して飛び起きた。
その物音で女性を起こしてしまった。
「あら、やっと起きたのね。君外に倒れていて家に連れて来たんだけど十日も目を覚まさなかったのよ。」
「そうなんだ、は、キルバーンは?ポップは?皆は何処にいるの?」
ダイは状況が全く読み込めずに混乱していたが、女性にも同様に十日間疑問に思っていた事を聞いた。
「私は君に一体何が起きたのか知らないけど私も君に聞きたい事があるの。
どう見ても魔界の住人には見えないけど、どこから来たの?」
「へ、ここは魔界なの?」
「気付かなかったの?」
よく見ると女性は耳の先が角の様に伸びていて肌も薄い褐色であった。
「私達自己紹介をしてなかったわね、私の名前はレイラよ、よろしく!」
「俺はダイっていうんだ。」
ダイの名前を聞いた時レイラは動揺した。
「ダイってまさか、あの大魔王バーンを倒した勇者が・・・」
「そうだけど?」
大魔王バーン、魔界の神と称される彼の死と理由は翌日魔界全体に広まったのだ。
「もしもそうなら、私を助けて欲しいんだ!]
レイラの急な発言にダイは首を傾げる他はなかった。
「実は私は地獄の帝王の生贄にならなければならない。私達の村では二十歳を過ぎた女を五年に一回地獄の帝王に生贄を捧げなければならず、
今年八百二十五年目の生贄は私が選ばれた。それでも、いざその時が近づくと、不安で、恐ろしくて・・・」
レイラの目からは自然と涙が浮かび上がっていた。
何とかして地上に戻らなければいけないと思っていたが、女性の涙はダイの様な純粋な少年にも弱かった。
「何とかする。生贄なんて必要ない、皆それぞれの人生があるのにこんな理不尽に殺されることなんてないよ!」
ダイはレイラの住む村、アーリーに向かった。
「ダイ、やっぱり私諦めるよ。養老が許す筈もないわ。」
レイラは先刻までとはうって変わり、弱気な発言をしていた。
それは今まで村の長老に頼んでも承諾しては貰えない女性達を数多く見てきたからだ。
彼女もいざとなると、どうしても恐れを感じずにはいられなかった。
「大丈夫、絶対に助けてみせる。」
こうして二人は村の長老の家に着いた。
「長老、私は地獄の帝王の生贄にはなりたくありません。どうかお許しください。」
レイラは長老に土下座までして懇願したが長老がそれを許す筈もなかった。
「五年に一度二十代の女が地獄の帝王様のもとへ行かねば村は一夜にして滅びるじゃろう。
より多くの命の為にも、仕方のない犠牲なのじゃ。」
「いい加減にしろ!!」
レイラの後ろにいたダイが長老の前に立ち、怒鳴った。
「レイラの気持ちを、今まで犠牲になった人達の事を考えたことがあるのか!?
地獄の帝王のやっている事が自分達がやっていることが正義だって言えるのか?そんなの間違ってる!!
人の犠牲の上に立つ平和なんて平和であるはずがない。」
ダイの言葉に長老は少し動揺したが長老の意見は変わることはなかった。
「人間が口出しせんでくれ。これは魔族の、我々の村の問題じゃ。」
「レイラは俺の命を救ってくれた。もうこの時点で俺の問題でもあるんだ。」
長老はついに何も言えなくなってしまった。
「どうしても、どうしても帝王から逃れられないのなら、俺が地獄の帝王を倒す。」
ダイの言葉に長老は肝を抜かれた。
ダイが目覚めた時、彼は見知らぬ女性の隣で寝そべっていた。
「わ、びっくりした!」
ダイは仰天して飛び起きた。
その物音で女性を起こしてしまった。
「あら、やっと起きたのね。君外に倒れていて家に連れて来たんだけど十日も目を覚まさなかったのよ。」
「そうなんだ、は、キルバーンは?ポップは?皆は何処にいるの?」
ダイは状況が全く読み込めずに混乱していたが、女性にも同様に十日間疑問に思っていた事を聞いた。
「私は君に一体何が起きたのか知らないけど私も君に聞きたい事があるの。
どう見ても魔界の住人には見えないけど、どこから来たの?」
「へ、ここは魔界なの?」
「気付かなかったの?」
よく見ると女性は耳の先が角の様に伸びていて肌も薄い褐色であった。
「私達自己紹介をしてなかったわね、私の名前はレイラよ、よろしく!」
「俺はダイっていうんだ。」
ダイの名前を聞いた時レイラは動揺した。
「ダイってまさか、あの大魔王バーンを倒した勇者が・・・」
「そうだけど?」
大魔王バーン、魔界の神と称される彼の死と理由は翌日魔界全体に広まったのだ。
「もしもそうなら、私を助けて欲しいんだ!]
レイラの急な発言にダイは首を傾げる他はなかった。
「実は私は地獄の帝王の生贄にならなければならない。私達の村では二十歳を過ぎた女を五年に一回地獄の帝王に生贄を捧げなければならず、
今年八百二十五年目の生贄は私が選ばれた。それでも、いざその時が近づくと、不安で、恐ろしくて・・・」
レイラの目からは自然と涙が浮かび上がっていた。
何とかして地上に戻らなければいけないと思っていたが、女性の涙はダイの様な純粋な少年にも弱かった。
「何とかする。生贄なんて必要ない、皆それぞれの人生があるのにこんな理不尽に殺されることなんてないよ!」
ダイはレイラの住む村、アーリーに向かった。
「ダイ、やっぱり私諦めるよ。養老が許す筈もないわ。」
レイラは先刻までとはうって変わり、弱気な発言をしていた。
それは今まで村の長老に頼んでも承諾しては貰えない女性達を数多く見てきたからだ。
彼女もいざとなると、どうしても恐れを感じずにはいられなかった。
「大丈夫、絶対に助けてみせる。」
こうして二人は村の長老の家に着いた。
「長老、私は地獄の帝王の生贄にはなりたくありません。どうかお許しください。」
レイラは長老に土下座までして懇願したが長老がそれを許す筈もなかった。
「五年に一度二十代の女が地獄の帝王様のもとへ行かねば村は一夜にして滅びるじゃろう。
より多くの命の為にも、仕方のない犠牲なのじゃ。」
「いい加減にしろ!!」
レイラの後ろにいたダイが長老の前に立ち、怒鳴った。
「レイラの気持ちを、今まで犠牲になった人達の事を考えたことがあるのか!?
地獄の帝王のやっている事が自分達がやっていることが正義だって言えるのか?そんなの間違ってる!!
人の犠牲の上に立つ平和なんて平和であるはずがない。」
ダイの言葉に長老は少し動揺したが長老の意見は変わることはなかった。
「人間が口出しせんでくれ。これは魔族の、我々の村の問題じゃ。」
「レイラは俺の命を救ってくれた。もうこの時点で俺の問題でもあるんだ。」
長老はついに何も言えなくなってしまった。
「どうしても、どうしても帝王から逃れられないのなら、俺が地獄の帝王を倒す。」
ダイの言葉に長老は肝を抜かれた。
翌日、長老はダイとレイラがいる家に朝早くに上がった。
「ダイ君、君の熱意はよく分かった。もうわしからは何もいわん、じゃが、今まで犠牲にしてきた者達の為にも、
君にこれを渡そう。」
長老はダイにちょうどサイズが合うような鎧とマントを贈った。
「遥か昔、その龍神の鎧とマントを身に羽織った英雄が天界の神になったという伝説がこの村にある。
その英雄が装備していた鎧とマントじゃ、地獄の帝王に立ち向かうという君に、せめてもの手向けとして、受け取ってほしい。」
「ありがとう。」
長老は昨日自分に対して嫌悪していた男と今の純真な子供が同一人物とは思えない程にダイを見て不自然に思った。
ダイの中でも気付かない内に、父バランに近づいているのかもしれない。
そんな折、突如として家の床に刺さった物があった。
「これは、真魔剛龍剣!なんでここに。」
かつて、父の愛用としていた剣が大魔王バーン戦、そして今、再びダイの手元に贈られたのだった。
「父さん。」
ダイは小さな声で呟いた。
「それじゃ、絶対に地獄の帝王を倒してくるから、安心して待ってて。」
ダイはレイラにそう伝えると足早に村を去り南西にあるという神殿へと向かい走り出した。
「彼は、本当に大丈夫なのでしょうか?いくらバーンを倒したとはいえ、戦力は帝王の方が。」
「いや、わしはあの少年に賭けたのだ。必ず、生きて地獄の帝王、エスタークを倒すと信じておるよ。」
性格の変化はダイよりも長老の方が不自然だった。
ダイは神殿に向かう途中に不思議な少年を見た。
そしてその視線が気になったのか、少年もダイの顔を見た。
二人の間に不穏な空気が流れつつあった。二人の沈黙の時間が続いたが、先に話したのはダイだった。
「なんで顔に字が書かれてるの?」
しかしダイの質問に男が答える素振りを見せなかった。
ダイは自分の身の丈程ある瓢箪を持ち、眼の下にクマが出来ている少年に親近感が湧いた。
男は言葉を発することもなく、何かを憎むような眼でダイを見つめた。
男はそのままダイの走ってきた道を歩き出した。
「俺、ダイっていうんだ。君は?」
「我愛羅、我愛羅だ。」
我愛羅はそのまま立ち去った。
しかし、これは二人の出会いに過ぎなかった。
二人が再び出会う日は、そう遠くない。
「こうしちゃいられない、急がないと。」
ダイは神殿へ走り出した。
「ダイ君、君の熱意はよく分かった。もうわしからは何もいわん、じゃが、今まで犠牲にしてきた者達の為にも、
君にこれを渡そう。」
長老はダイにちょうどサイズが合うような鎧とマントを贈った。
「遥か昔、その龍神の鎧とマントを身に羽織った英雄が天界の神になったという伝説がこの村にある。
その英雄が装備していた鎧とマントじゃ、地獄の帝王に立ち向かうという君に、せめてもの手向けとして、受け取ってほしい。」
「ありがとう。」
長老は昨日自分に対して嫌悪していた男と今の純真な子供が同一人物とは思えない程にダイを見て不自然に思った。
ダイの中でも気付かない内に、父バランに近づいているのかもしれない。
そんな折、突如として家の床に刺さった物があった。
「これは、真魔剛龍剣!なんでここに。」
かつて、父の愛用としていた剣が大魔王バーン戦、そして今、再びダイの手元に贈られたのだった。
「父さん。」
ダイは小さな声で呟いた。
「それじゃ、絶対に地獄の帝王を倒してくるから、安心して待ってて。」
ダイはレイラにそう伝えると足早に村を去り南西にあるという神殿へと向かい走り出した。
「彼は、本当に大丈夫なのでしょうか?いくらバーンを倒したとはいえ、戦力は帝王の方が。」
「いや、わしはあの少年に賭けたのだ。必ず、生きて地獄の帝王、エスタークを倒すと信じておるよ。」
性格の変化はダイよりも長老の方が不自然だった。
ダイは神殿に向かう途中に不思議な少年を見た。
そしてその視線が気になったのか、少年もダイの顔を見た。
二人の間に不穏な空気が流れつつあった。二人の沈黙の時間が続いたが、先に話したのはダイだった。
「なんで顔に字が書かれてるの?」
しかしダイの質問に男が答える素振りを見せなかった。
ダイは自分の身の丈程ある瓢箪を持ち、眼の下にクマが出来ている少年に親近感が湧いた。
男は言葉を発することもなく、何かを憎むような眼でダイを見つめた。
男はそのままダイの走ってきた道を歩き出した。
「俺、ダイっていうんだ。君は?」
「我愛羅、我愛羅だ。」
我愛羅はそのまま立ち去った。
しかし、これは二人の出会いに過ぎなかった。
二人が再び出会う日は、そう遠くない。
「こうしちゃいられない、急がないと。」
ダイは神殿へ走り出した。