「城之内よ。腕っ節では、お前は私には敵わなかったかもしれん。だが、幾度倒されようとも尚も諦めず立ち上がる
その姿に、私は真の戦士の姿を見た!」
「…へっ…褒め方が偉そうなんだよ、女王様…」
ボロボロの城之内は、泥と血に塗れた顔で、にやりと笑った。アレクサンドラもそれに笑い返し―――城之内を地面
に押し倒した。突然の事に目を白黒させる城之内に対し、彼女は魅惑的な女豹の笑顔を浮かべる。
「実に気に入った!我が城に連れ帰って私が直々に搾り取ってやる!…その前にこの場で味見してくれるわ!」
「な、何を搾り取るというんですかー!?そして味見ってナニをされるんですかー!?」
アレクサンドラはぽっと頬を赤らめ、照れくさそうに笑う。
「ふふ…分かっておるくせに、女子(おなご)にそのような破廉恥なことを訊くではないわ」
「や、やめろ!分かりたくねー!つーか何でこんな展開になんの!?せっかく前回のラストで、敵味方を超えた友情
フラグが立ちそうだったのに!」
「うむ、だからこうして友情を確かめ合おうと…」
「こんな友情があるか!それにオレは初めては好きな子とロマンチックなムードの中でと決めてるんだ!」
「逆に考えろ…<初めての相手を好きになっちゃえばいいさ>そう考えるのだ」
「レイプから始まる恋なんて幻想だー!」
「ええい、初めてはロマンチックになどという幻想こそ捨ててしまえ!女子だってエロスな話に興味はあるし時には
愛欲に咽ぶし一夜限りの情事でも構わなかったり首を絞めれば口に出せない部分が締まったりで大変なのだ!」
「やめろー!これ以上青少年に有害な話を聞かせるんじゃねえ!」
「これ、暴れるでない!下着を脱がせ辛いであろう!心配するな、初めてでも痛くなどせぬから!」
「いやーっ!やめてーっ!」
―――断わっておくが、悲鳴を上げている方が男性である。
(い、色んな意味でマズイよ、もう一人のボク!)
「分かってる!」
事ここに至り、もはや城之内の闘いを見届けるなどとは言ってられない。親友の逆レイプシーンなど、絶対に見たく
はない。例え相手がフィクションの世界にしか存在しないようなゲロマブの女だったとしてもだ。
闇遊戯はカードデッキに手をかけ―――それを、誰かがそっと押し止めた。
「案ずるな…ここは、私に任せておくがよい」
「何…?アンタは一体…」
精悍な顔立ちの青年だった。鍛え抜かれ、引き締まった肉体を包むのは赤いマントと青銅の鎧。その右腕に携える
のは、大の男でも持ち上げることすらできそうにない、聳え立つように太く巨大な槍だった。闇遊戯は直感する。
(コイツ、いい男だ…いや、変な意味じゃなくてな。強くて頼れる男ってことだぜ)
そう、この男こそはレオンティウスである。彼は馬から飛び降り、声を張り上げる。
「待たれよ―――女王アレクサンドラ!その少年を解放するがよい!」
「む…レオンティウス!ふふ…ついに来たか!」
アレクサンドラは少し名残惜しそうに城之内から離れ、剣を拾う。ずり下げられたパンツをたくし上げている城之内
に、軽くウインクする。
「すまんな、城之内。お前は後でじっくり調教してやるから、少し待っておれ」
「た…助かった…つーか、調教する気だったのかよ…」
余りにも恐ろしすぎる事実だった。
(…オレ、この世界に来てから美人には山ほど会ってるけど、まともな女に会ってない気がする…)
フィリスはアレだったし、ソフィアもアレだったし、アレクサンドラもコレだし、ミーシャだってこれから先の展開
次第でどうなるか怪しい(失礼だ)。軽く女性不信に陥りそうだった。そんなちょっぴり人生に悲観しそうな城之内を
よそに、アレクサンドラとレオンティウス―――二人の英雄が向い合う。
「久しいな、レオンティウス…お前のことは、忘れるまでもなく、いつも想っていたぞ」
「そうか。私はこれっぽっちも思い出さなかった。むしろさっさと忘れようと努力していたくらいだ」
「ふ…相変わらずつれない男だ。世の男共は私を食い入るように見つめるというに、お前だけは汚物を見るような目
で私を見た…その目が、気に入ったのだ。その瞳を、必ずや私の元に屈服させる―――お前と出会ってからの数年
というもの、それだけを考えてきた」
「無駄な時間を過ごしたな。残念だが私はお前には絶対に靡きはせぬ。何度でも言ってやろう―――
このレオンティウス、女を貫く槍は持ってはおらぬ!」
ドーン!と背景に大文字が出そうな勢いで叫ぶレオンティウス。そして彼は槍を頭上に持ち上げ、ブンブンと力任せ
に振り回し始める。同時に、空に暗雲が立ち込め、雷鳴が轟く。
「何…?これはまさか、あの男が…!?」
闇遊戯が驚き、レオンティウスを見やる。彼は槍を構えた右腕を高々と上げていた。その拳が、まばゆく輝く。
「はぁっ!」
そして怒号と共に、一筋の雷が彼の持つ槍に落ちる。雷を纏うそれは、まさに雷槍―――
「フンッ!」
突き出した槍から迸る閃光。それは世界そのものを貫くように、全てを呑みこんでいく―――
(なんて威力だ…!オシリスのサンダーフォースと同等―――それ以上かもしれない!)
ようやく光が収まり、闇遊戯はその破壊力に舌を巻く思いだった。地面はまるで大蛇が這っていったかのように抉り
取られ、運悪く射線上にいた女傑部隊の兵は、呻きながら地に伏せている。
「くっ…」
アレクサンドラとて例外ではない。ぜいぜい荒く息をつきながら、悔しさで顔を歪める。
「またしても、負けた…何回やっても何回やってもレオンティウスが倒せぬ…あの雷槍、何回やっても避けれぬ…」
「アレクサンドラ!命までは取らぬ―――我々の国から立ち去るがいい!」
レオンティウスが力強く言い放つ。女傑部隊はどよめき、明らかに浮き足立っていた。
「よし―――ここで一気に決めるぜ!」
闇遊戯は一枚のカードを、女傑部隊に見せつけるかのように突き付ける。そして、絶大な力を誇る幻獣神が暗雲漂う
空を断ち、召喚される。
「―――<オシリスの天空竜>!」
雷を制し、天を支配する竜王。雷光を纏う神の姿に、誰もが目を奪われ立ち竦む。
「おお…!」
「な…なんだ、アレは!?」
「わ、分からん!しかし…なんという神々しい姿…!」
ざわめくアルカディアの兵士達。女傑部隊に至っては、もはや声も出ない様子だった。
「さあ、これ以上やっても無駄だ!さっさと自分達の国に帰りやがれ!」
闇遊戯の怒号と共に、オシリスが牙を剥き出しにして猛る。アレクサンドラは舌打ちし、固まっている部下達に指示
を飛ばした。
「ちっ…今回はこれまでか―――皆の者、引き上げよ!」
女王の命令によって、女傑部隊はようやく我に返り、撤退を始める。アレクサンドラもまた馬に飛び乗り、兵士達と
共に逃げ去っていく―――その前に、彼女は闇遊戯達に向き直り、最大級の笑顔を見せた。
「ふふ…レオンティウス!それに城之内に遊戯といったか…お前達、実に気に入ったぞ!いずれお前達は皆私の
物となる…忘れるな!はははははは!」
高笑いを響かせながら、アレクサンドラは悠々と馬を走らせ去っていく。状況は惨めな敗走そのものだというのに、
まるでそれを感じさせない。むしろ、セリフだけ見るとまるで勝った側である。
「すげえ…あれだけ威風堂々と敗走していく奴なんて、初めて見たぜ…」
「―――キミ」
ある意味感心している城之内に、頭上から声がかけられた。見上げると、そこにレオンティウス。
「立てるか?」
「あ、すいません…」
差し出された手を、素直に握り返す。レオンティウスは、ふっと笑った。やたらいい笑顔だった。
「城之内といったか…キミ達の助力、感謝しよう。アルカディア王として、礼を言わせてもらう」
「はあ、どうも、オレの方こそ色々と危ないところを…って、アルカディア王?」
このカッチョいいお兄さんが?マジマジと見つめてくる城之内に対し、レオンティウスはキラリ☆と白い歯を見せて
名乗る。
「うむ。私がアルカディア王、レオンティウス―――何ならレオンと呼んでくれて構わん」
「は、はあ…」
何故。彼はこうまで馴れ馴れしいのだろうか。訊いちゃいけない気がした。
「キミ達の活躍のおかげで、我等の被害は最小限に抑えられた―――こんなところで立ち話もなんだろう。改めて
礼もしたい。どうか城に来てくれないか!?」
「え…」
それはまあ、こちらこそ望むところではある―――しかし、何故だろう?城之内は、訳も分からぬ悪寒に襲われたの
だった。具体的にいうと、ケツの辺りが嫌な感じに疼いた。
公園のベンチに座った青いツナギの自動車修理工から声をかけられたら、同じような気分になるのかもしれない…。
「な、何だかドキドキするというか、妖しい雰囲気ね…大丈夫かしら…」
妙な予感にドギマギするミーシャ。肩に乗っかったクリボーも不安そうに「クリ~…」と元気なく鳴いた。
「心配されるな、お嬢さん」
そんな一人と一匹に、壮年の騎士が声をかけてきた。立派な馬や甲冑からして、かなりの地位にあることが伺える。
「あの御方は見境なしではない。その気がないものを喰う様なことはなさらん」
「は、はあ…そうですか…」
ミーシャは額に汗マークと?マークを浮かべつつ、その騎士を見て―――目を丸くした。
「ん?どうかしたかね、お嬢さ…」
騎士もまた、ミーシャを見て、何かに気付いたようだった。口をポカンと開けている。
「あなた…まさか、カストル叔父様?」
「ミーシャ…やっぱりお前、ミーシャなのか!」
何やら驚いている二人を尻目に、闇遊戯はいつの間にやら隣にいたオリオンと、さっぱり訳が分からないぜとばかり
に見つめあった。
「なあ、遊戯…なんか俺達、置いてかれてない?」
「言うな。オレだって置いてけぼりだ…」
闇遊戯は、ブスリとした顔で呟いたのだった…。
その姿に、私は真の戦士の姿を見た!」
「…へっ…褒め方が偉そうなんだよ、女王様…」
ボロボロの城之内は、泥と血に塗れた顔で、にやりと笑った。アレクサンドラもそれに笑い返し―――城之内を地面
に押し倒した。突然の事に目を白黒させる城之内に対し、彼女は魅惑的な女豹の笑顔を浮かべる。
「実に気に入った!我が城に連れ帰って私が直々に搾り取ってやる!…その前にこの場で味見してくれるわ!」
「な、何を搾り取るというんですかー!?そして味見ってナニをされるんですかー!?」
アレクサンドラはぽっと頬を赤らめ、照れくさそうに笑う。
「ふふ…分かっておるくせに、女子(おなご)にそのような破廉恥なことを訊くではないわ」
「や、やめろ!分かりたくねー!つーか何でこんな展開になんの!?せっかく前回のラストで、敵味方を超えた友情
フラグが立ちそうだったのに!」
「うむ、だからこうして友情を確かめ合おうと…」
「こんな友情があるか!それにオレは初めては好きな子とロマンチックなムードの中でと決めてるんだ!」
「逆に考えろ…<初めての相手を好きになっちゃえばいいさ>そう考えるのだ」
「レイプから始まる恋なんて幻想だー!」
「ええい、初めてはロマンチックになどという幻想こそ捨ててしまえ!女子だってエロスな話に興味はあるし時には
愛欲に咽ぶし一夜限りの情事でも構わなかったり首を絞めれば口に出せない部分が締まったりで大変なのだ!」
「やめろー!これ以上青少年に有害な話を聞かせるんじゃねえ!」
「これ、暴れるでない!下着を脱がせ辛いであろう!心配するな、初めてでも痛くなどせぬから!」
「いやーっ!やめてーっ!」
―――断わっておくが、悲鳴を上げている方が男性である。
(い、色んな意味でマズイよ、もう一人のボク!)
「分かってる!」
事ここに至り、もはや城之内の闘いを見届けるなどとは言ってられない。親友の逆レイプシーンなど、絶対に見たく
はない。例え相手がフィクションの世界にしか存在しないようなゲロマブの女だったとしてもだ。
闇遊戯はカードデッキに手をかけ―――それを、誰かがそっと押し止めた。
「案ずるな…ここは、私に任せておくがよい」
「何…?アンタは一体…」
精悍な顔立ちの青年だった。鍛え抜かれ、引き締まった肉体を包むのは赤いマントと青銅の鎧。その右腕に携える
のは、大の男でも持ち上げることすらできそうにない、聳え立つように太く巨大な槍だった。闇遊戯は直感する。
(コイツ、いい男だ…いや、変な意味じゃなくてな。強くて頼れる男ってことだぜ)
そう、この男こそはレオンティウスである。彼は馬から飛び降り、声を張り上げる。
「待たれよ―――女王アレクサンドラ!その少年を解放するがよい!」
「む…レオンティウス!ふふ…ついに来たか!」
アレクサンドラは少し名残惜しそうに城之内から離れ、剣を拾う。ずり下げられたパンツをたくし上げている城之内
に、軽くウインクする。
「すまんな、城之内。お前は後でじっくり調教してやるから、少し待っておれ」
「た…助かった…つーか、調教する気だったのかよ…」
余りにも恐ろしすぎる事実だった。
(…オレ、この世界に来てから美人には山ほど会ってるけど、まともな女に会ってない気がする…)
フィリスはアレだったし、ソフィアもアレだったし、アレクサンドラもコレだし、ミーシャだってこれから先の展開
次第でどうなるか怪しい(失礼だ)。軽く女性不信に陥りそうだった。そんなちょっぴり人生に悲観しそうな城之内を
よそに、アレクサンドラとレオンティウス―――二人の英雄が向い合う。
「久しいな、レオンティウス…お前のことは、忘れるまでもなく、いつも想っていたぞ」
「そうか。私はこれっぽっちも思い出さなかった。むしろさっさと忘れようと努力していたくらいだ」
「ふ…相変わらずつれない男だ。世の男共は私を食い入るように見つめるというに、お前だけは汚物を見るような目
で私を見た…その目が、気に入ったのだ。その瞳を、必ずや私の元に屈服させる―――お前と出会ってからの数年
というもの、それだけを考えてきた」
「無駄な時間を過ごしたな。残念だが私はお前には絶対に靡きはせぬ。何度でも言ってやろう―――
このレオンティウス、女を貫く槍は持ってはおらぬ!」
ドーン!と背景に大文字が出そうな勢いで叫ぶレオンティウス。そして彼は槍を頭上に持ち上げ、ブンブンと力任せ
に振り回し始める。同時に、空に暗雲が立ち込め、雷鳴が轟く。
「何…?これはまさか、あの男が…!?」
闇遊戯が驚き、レオンティウスを見やる。彼は槍を構えた右腕を高々と上げていた。その拳が、まばゆく輝く。
「はぁっ!」
そして怒号と共に、一筋の雷が彼の持つ槍に落ちる。雷を纏うそれは、まさに雷槍―――
「フンッ!」
突き出した槍から迸る閃光。それは世界そのものを貫くように、全てを呑みこんでいく―――
(なんて威力だ…!オシリスのサンダーフォースと同等―――それ以上かもしれない!)
ようやく光が収まり、闇遊戯はその破壊力に舌を巻く思いだった。地面はまるで大蛇が這っていったかのように抉り
取られ、運悪く射線上にいた女傑部隊の兵は、呻きながら地に伏せている。
「くっ…」
アレクサンドラとて例外ではない。ぜいぜい荒く息をつきながら、悔しさで顔を歪める。
「またしても、負けた…何回やっても何回やってもレオンティウスが倒せぬ…あの雷槍、何回やっても避けれぬ…」
「アレクサンドラ!命までは取らぬ―――我々の国から立ち去るがいい!」
レオンティウスが力強く言い放つ。女傑部隊はどよめき、明らかに浮き足立っていた。
「よし―――ここで一気に決めるぜ!」
闇遊戯は一枚のカードを、女傑部隊に見せつけるかのように突き付ける。そして、絶大な力を誇る幻獣神が暗雲漂う
空を断ち、召喚される。
「―――<オシリスの天空竜>!」
雷を制し、天を支配する竜王。雷光を纏う神の姿に、誰もが目を奪われ立ち竦む。
「おお…!」
「な…なんだ、アレは!?」
「わ、分からん!しかし…なんという神々しい姿…!」
ざわめくアルカディアの兵士達。女傑部隊に至っては、もはや声も出ない様子だった。
「さあ、これ以上やっても無駄だ!さっさと自分達の国に帰りやがれ!」
闇遊戯の怒号と共に、オシリスが牙を剥き出しにして猛る。アレクサンドラは舌打ちし、固まっている部下達に指示
を飛ばした。
「ちっ…今回はこれまでか―――皆の者、引き上げよ!」
女王の命令によって、女傑部隊はようやく我に返り、撤退を始める。アレクサンドラもまた馬に飛び乗り、兵士達と
共に逃げ去っていく―――その前に、彼女は闇遊戯達に向き直り、最大級の笑顔を見せた。
「ふふ…レオンティウス!それに城之内に遊戯といったか…お前達、実に気に入ったぞ!いずれお前達は皆私の
物となる…忘れるな!はははははは!」
高笑いを響かせながら、アレクサンドラは悠々と馬を走らせ去っていく。状況は惨めな敗走そのものだというのに、
まるでそれを感じさせない。むしろ、セリフだけ見るとまるで勝った側である。
「すげえ…あれだけ威風堂々と敗走していく奴なんて、初めて見たぜ…」
「―――キミ」
ある意味感心している城之内に、頭上から声がかけられた。見上げると、そこにレオンティウス。
「立てるか?」
「あ、すいません…」
差し出された手を、素直に握り返す。レオンティウスは、ふっと笑った。やたらいい笑顔だった。
「城之内といったか…キミ達の助力、感謝しよう。アルカディア王として、礼を言わせてもらう」
「はあ、どうも、オレの方こそ色々と危ないところを…って、アルカディア王?」
このカッチョいいお兄さんが?マジマジと見つめてくる城之内に対し、レオンティウスはキラリ☆と白い歯を見せて
名乗る。
「うむ。私がアルカディア王、レオンティウス―――何ならレオンと呼んでくれて構わん」
「は、はあ…」
何故。彼はこうまで馴れ馴れしいのだろうか。訊いちゃいけない気がした。
「キミ達の活躍のおかげで、我等の被害は最小限に抑えられた―――こんなところで立ち話もなんだろう。改めて
礼もしたい。どうか城に来てくれないか!?」
「え…」
それはまあ、こちらこそ望むところではある―――しかし、何故だろう?城之内は、訳も分からぬ悪寒に襲われたの
だった。具体的にいうと、ケツの辺りが嫌な感じに疼いた。
公園のベンチに座った青いツナギの自動車修理工から声をかけられたら、同じような気分になるのかもしれない…。
「な、何だかドキドキするというか、妖しい雰囲気ね…大丈夫かしら…」
妙な予感にドギマギするミーシャ。肩に乗っかったクリボーも不安そうに「クリ~…」と元気なく鳴いた。
「心配されるな、お嬢さん」
そんな一人と一匹に、壮年の騎士が声をかけてきた。立派な馬や甲冑からして、かなりの地位にあることが伺える。
「あの御方は見境なしではない。その気がないものを喰う様なことはなさらん」
「は、はあ…そうですか…」
ミーシャは額に汗マークと?マークを浮かべつつ、その騎士を見て―――目を丸くした。
「ん?どうかしたかね、お嬢さ…」
騎士もまた、ミーシャを見て、何かに気付いたようだった。口をポカンと開けている。
「あなた…まさか、カストル叔父様?」
「ミーシャ…やっぱりお前、ミーシャなのか!」
何やら驚いている二人を尻目に、闇遊戯はいつの間にやら隣にいたオリオンと、さっぱり訳が分からないぜとばかり
に見つめあった。
「なあ、遊戯…なんか俺達、置いてかれてない?」
「言うな。オレだって置いてけぼりだ…」
闇遊戯は、ブスリとした顔で呟いたのだった…。