4月23日 午後7時20分 巌戸台分寮
玄関ロビーに承太郎を除く、S.E.E.S.のメンバー全員が集まっていた。
誰がつけたのか、テレビが取るに足らない情報をノイズと共に垂れ流している。
それを順平がノロノロとソファから立ち、電源を落すと、再びソファにドスンと腰を下ろす。
順平はメンバーの顔を順番に見てから、ポツリと声を漏らした。
それを順平がノロノロとソファから立ち、電源を落すと、再びソファにドスンと腰を下ろす。
順平はメンバーの顔を順番に見てから、ポツリと声を漏らした。
「圧倒的だったっスね。
いや、事前に聞いてたから分かってたはず…なんスけど」
いや、事前に聞いてたから分かってたはず…なんスけど」
順平の言葉に続くように、ゆかりも昨晩目の前で起こった事を思い出しながら口を開く。
「よく、『聞くと見るとじゃ大違い』って言うけど…。昨日ほど実感した事はないよ」
阿虎も、その言葉に同意するようにこっくりと頷く。
そんなS.E.E.S.一年メンバーを横目に、真田は美鶴にそっと問いかける。
そんなS.E.E.S.一年メンバーを横目に、真田は美鶴にそっと問いかける。
「おい、美鶴。お前は様子を見てたんだろ?
俺だけ見ていなくて、状況がつかめん。俺にも教えてくれないか?」
俺だけ見ていなくて、状況がつかめん。俺にも教えてくれないか?」
真田は、自分だけ見ていないと言う疎外感からか、若干不満げだ。
美鶴は軽く息を吐くと、1年メンバーに向かって、話しかけた。
美鶴は軽く息を吐くと、1年メンバーに向かって、話しかけた。
「お前達、昨日の空条先生の活躍を、明彦が知りたいそうだ。
私から伝えてもいいのだが、実際に目の前で見た者の方がより鮮明に伝えられるだろう?
では、天道、岳羽、順平の順番で説明してやってくれ」
私から伝えてもいいのだが、実際に目の前で見た者の方がより鮮明に伝えられるだろう?
では、天道、岳羽、順平の順番で説明してやってくれ」
言い終わってから、美鶴は視線で阿虎に話を促した。
話を振られた阿虎は、昨日の出来事を少しの間思い返して、真田に伝える。
話を振られた阿虎は、昨日の出来事を少しの間思い返して、真田に伝える。
「空条先生のスタンド、『スター・プラチナ』の上から打ち下ろしたパンチがシャドウを貫通、
そのまま床に炸裂して、周囲数メートルがクレーターになってました」
そのまま床に炸裂して、周囲数メートルがクレーターになってました」
「そーそー。あの時は下の階と繋がるかと思ったッスよ。本気で」
阿虎の言葉に、順平が一言付け足す。
続いてゆかり。
「順平、アンタ何の話でも首突っ込んでくるのやめなさいよ。
えーと、私が印象に残っているのは…、シャドウが完璧に怯え切ってたことですね。
もう逃げ場が無くなって、追い詰められて、飛び掛って来て…、その結果は彼の言ったとおりです。
私、シャドウとはいえ、ちょっと同情…しました」
もう逃げ場が無くなって、追い詰められて、飛び掛って来て…、その結果は彼の言ったとおりです。
私、シャドウとはいえ、ちょっと同情…しました」
締めに順平。
「生身でも半端ないっス。向かってくるシャドウはスタンド使わずにほとんど自分で相手してたし。
天道が言ってたのだって、ゆかりッチが矢を番えようとした隙を狙ったシャドウに対してなんスから。
天道が言ってたのだって、ゆかりッチが矢を番えようとした隙を狙ったシャドウに対してなんスから。
あと、状況判断がバツグンッつーんスか?戦ってても周りが良く見えてんスよね、冷静だし」
そこまで聞いて、真田は呆れたような顔で口を開く。
「タルタロスの一部が破壊されても、通常の学校には特に影響は無いんだな・・・。
それはともかく、正に『聞きしに勝る』と言うわけか。
戦力的には大幅にアップだが、しかしな…」
戦力的には大幅にアップだが、しかしな…」
真田は、少しばかり難しい表情を浮かべている。見れば美鶴も似たような様子だ。
「何でッスか?新戦力は超強力。戦力増強、これで安心タルタロス。
いい事尽くめじゃないっスか」
いい事尽くめじゃないっスか」
3年生の表情に、順平は疑問の声を上げる。
「戦力的なバランス、と言うものがある。
確かにこのまま、空条先生に引っ張っていってもらえば、攻略は楽だろう。
しかし、それでは我々が成長できない。
未熟なまま上を目指しても、それでは意味が無いんだ。分かるな?」
確かにこのまま、空条先生に引っ張っていってもらえば、攻略は楽だろう。
しかし、それでは我々が成長できない。
未熟なまま上を目指しても、それでは意味が無いんだ。分かるな?」
諭すような口調で美鶴は一年全員に向かって言った。
「そっか…。考えたくないけど、空条先生が戦えない場合だってあるかもしれない。
その時に、私達だけじゃ何もできない。そんな事じゃ確かに困りますもんね」
その時に、私達だけじゃ何もできない。そんな事じゃ確かに困りますもんね」
呟くように言ったゆかりの言葉に一同は同意するように頷いた。
「しかし、実際どうする?」
真田が、当然の言葉を口にする。
いる以上、どこか頼りにしてしまうのは仕方が無い事だ。
そこからなし崩しに、頼る部分が多くなってしまう可能性もある。
いる以上、どこか頼りにしてしまうのは仕方が無い事だ。
そこからなし崩しに、頼る部分が多くなってしまう可能性もある。
「そうだな…」
PiPiPiPiPiPiPiPi!
考えようとした矢先に、携帯電話の着信音がロビーに響く。
「すまない、私だ」
考えようとした矢先に、携帯電話の着信音がロビーに響く。
「すまない、私だ」
断りを入れて、美鶴は携帯を取り出す。
「はい、桐条ですが…。これは、空条先生。
はい。はい、…分かりました。皆に伝えておきます」
はい。はい、…分かりました。皆に伝えておきます」
短い会話の後、パチリと携帯電話を閉じる。
「先生から?何の用事でした?」
伺うような声で、阿虎が尋ねる。
「話があるから、今夜タルタロスに集合して欲しいそうだ。
帰りが遅くなりそうなので、空条先生は現地集合と言う事らしい」
帰りが遅くなりそうなので、空条先生は現地集合と言う事らしい」
美鶴は先ほどの通話の内容を纏めて、皆に教える。
「話・・・ッスか。うわ、昨日の駄目出しとかだったらどうしよ!?」
順平が自分で言った言葉に身震いする。
今の順平の頭には、タルタロスのエントランスで自分を含む1年のメンバーが、
全員正座で説教されている光景が浮かんでいる。
今の順平の頭には、タルタロスのエントランスで自分を含む1年のメンバーが、
全員正座で説教されている光景が浮かんでいる。
「うっわ。それマジ洒落にならないんですけど。
自分達は頑張っているつもりでも、空条先生から見たらまだまだなトコ沢山あるだろうし。
…ホントにお説教覚悟したほうがいいかな…?」
自分達は頑張っているつもりでも、空条先生から見たらまだまだなトコ沢山あるだろうし。
…ホントにお説教覚悟したほうがいいかな…?」
少しばかり不安そうな顔でゆかりは阿虎を見る。
流石の阿虎といえども『どうでもいい』と返す事はできなかった。
流石の阿虎といえども『どうでもいい』と返す事はできなかった。