SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 来襲!冥土番長 (サマサさま)


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23区計画。それは、東京23区一つ一つに<番長>と呼ばれる超人たちを配置し、戦わせ、最後に残った者に
絶大な権力を与え日本の支配者として君臨させるという、次代の独裁者を生み出す恐るべき計画。
だが、それに真っ向から立ち向かう漢がいた。
彼の名は<金剛番長>。日本に残った、最後の硬派である。見るからに無骨でいかつい風貌、まさに漢である。
そんな彼は、なかば無理矢理に手渡されたチラシに嘆息し、目前の少女に目をやる。
「メイド喫茶<冥土印天国(メイド・イン・ヘヴン)>開店でーす!よろしかったら、来店お願いしまーす」
下手をすれば小学生にも見えそうな小柄な女の子。長い髪と泣き黒子が特徴的な、中々可愛らしい顔立ちだった。
そんな彼女の頭にはカチューシャ。身を包むのはエプロンドレス。手には箒。
俗に<メイドさん>といわれるスタイルである。その趣味の方にはたまらない服装だったが、あいにくと金剛は
日本最後の硬派なので、メイドさんに興味はない。チラシを手にしたまま、金剛は学校へと向かった。
「じゃ、お兄さん!ご来店、待ってるねー!」
手を振りながら、その少女は金剛を見送っていた。

さて、金剛が通う雷鳴高校。この学校のⅡ-A組は、ある意味学級崩壊の危機に瀕している。その原因は―――
「む?金剛番長。その手に持っているのは何です?」
尋ねてきたのは女性と見紛うほどの美貌を持った少年。和服の上に学ランをマントのように引っ掛け、机の上に
日本刀を置いた、銃刀法違反上等の漢―――居合番長。
「メイド喫茶?ほほう、我は行ったことはないが、最近流行っておるようだな。我が思うには、これも一つの宗教の
形と―――」
「まるで思わないね」
禿頭の、如何にも僧侶風の実は俗物、念仏番長。そして彼にすぐさまつっこみをいれたのは、ハンチング帽に目元を
隠したマスク、ヘソ出しルックの学ランという、何気にヤバい服装の漢、卑怯番長。
「しかし金剛番長、似合わないものを持ってるじゃないか。それとも実はそういう趣味だったのかい?」
「違う。駅前で無理矢理渡されたんだ。突っ返すのも悪いと思ったからな」
「ふーん。まあいいや。折角だし放課後皆で行ってみないかい?なにか<美味しいモノ>があるかもしれないよ」
ニヤリと笑う卑怯。彼の言う<美味しいモノ>とは、十中八九ケーキだのなんだののことではあるまい。

「美味しいものですか?いいですわね。けれど、喫茶店ということは、甘いものばかりでしょうか?」
上品に訊いてきたのは可憐な顔立ちの美少女。しかし彼女はその華奢な身体に、重機にも匹敵する暴力を有している。
可愛く、おしゃまで、筋肉質。それが彼女―――剛力番長である。
この四人はかつては23区計画の参加者として、金剛番長と闘った者たち。しかし今は、頼れる仲間たちである。
人、これをジャンプシステムと呼ぶ(掲載誌は週間少年サンデーであるが)。
それはともかく、剛力番長はにこやかに笑った。
「私は甘いものは苦手なので、申し訳ありませんけど遠慮しますわ…ああ、けれど美味しいものなんて聞くと、お腹が
空いているのを思い出しましたわ…失礼あそばせ」
言って、剛力は携帯を取り出し、誰かに連絡する。その数秒後、教室のドアが開き、学ランを着込み、巨大な鍋を軽々
と持った初老の漢が顔を出した。
「チャンコでございます。今日は瀬戸内海直送の海の幸を手当たり次第にぶち込んでみました」
「ありがとう。今日も美味しそうね」
その異様な光景に一切つっこみは入らない。平然と剛力は箸を取り出し、チャンコをパクつく。言っておくが、ここは
学校である。教室である。しかし気にしてはいけない。こんなことを気にしていたら、ここではやっていけないのだ。
「ま、いいか。それじゃあむさ苦しい漢四人だけど、メイド喫茶初体験と洒落込もうか」
卑怯は実に、楽しそうだった―――そして、放課後。
メイド喫茶<冥土印天国>に、四人は来店した。
「「「お帰りなさいませ、ご主人様!」」」
一斉に、にこやかに、可愛く頭を下げるメイドさんたち。彼女に案内され、四人は席に着く。店内は中々に小奇麗な
雰囲気だった。可愛らしいメイドさんたちも、言うまでもなく雰囲気作りに一役買っている。
「全く、嘆かわしい。若い娘たちが、こんな和の心の欠片もない、破廉恥な格好で…」
顔を赤らめつつ、ブツクサ文句を言う居合。彼は純情すぎる上に、洋風文化が嫌いなのだ。こういう店は彼にとって
苦手中の苦手だろう。そんな彼の肩をポンと叩きながら卑怯は笑った。
「いいんじゃない?こういうのも若いうちしかできないだろうし、面白いじゃない」
「うむ。中々繁盛しておるようだし、さぞ儲かるのだろうな」
俗物的な思考で語る念仏だった。
「ご主人様ぁ、今日は何になさいますか?」
メイドさんがにこにこ笑いながら注文を取る。各々好き勝手に注文したところで、念仏がメイドさんに声をかけた。
「いや、お嬢さん。我はこういう店には初めて来たが、いい店であるな」
「えへへ、ありがとうございますぅ」
「うむ。そこで我は、この店がもっといい店になるように協力したい」
念仏はにんまりと、実に怪しい笑みを浮かべながら、その手に筆ペンを握り締めていた。
「そこで、我が今日は特別にカチューシャにありがたーい経文を書いてしんぜよう!今なら本来4万円のところを
5割引の2万円!如何かな、お嬢さん?」
「い…いえ、結構です…」
先程までの笑顔を見事に引き攣らせ、メイドさんは後ずさる。しかし、念仏はその目をしかと見据えた。
「本当に!?本当にいいのかね、それで!?」
「う…」
その奇妙な眼力に気圧され、メイドさんはふらふらと財布を取り出し始めた。
「じゃあ…折角だし、お願いしますぅ…」
「あたしもぉ…」
すぐ近くにいた別のメイドさんまで影響されていた。金を受け取り、念仏はカチューシャに経文を書き始めた。
「全く、俗物め…」
そんな彼を見て露骨に顔を顰める居合。だがその直後、彼は硬直した。
「あー、かっこいいご主人様!あたし、この人の注文お取りしたーい!」
「あ、ずるーい!私もー!」
美少年―――それも頭に<絶世の>が来る居合に、メイドさんが殺到した。多数のメイドさんに囲まれ、居合は顔を
真っ赤にして俯いてしまった。メイドさんにはそんな態度が可愛いと映ったのか、さらにキャイキャイとメイドさん
たちは居合とスキンシップを図る。
「…………」
居合はもはやゆでダコのようになって、黙りこくるばかりだった。そんな一同を見て、金剛は真顔で呟いた。
「駄目だ、こいつら…」
金剛は仏頂面で、運ばれてきたプリンを食べた。食べた途端、その無骨な顔に満足げな笑みが浮かぶ。
「うめえ…!やっぱりプリンは最高だぜ…!」
とりあえず彼は、プリンさえ食べられるならば、そこがどこであれ天国なのだ。さすがに公式の登場人物紹介に
<プリンを食べることに強いこだわりを持つ>と書かれただけのことはある。
残る卑怯は、そんな彼らを面白そうに見つめるだけだった。
と、少々問題はあるものの、みんなして初体験のメイド喫茶というものを楽しんでいるようだった。
―――と。
「あ、お兄さん!来てくれたんだね!」
ん、とプリンを食べ終えた金剛が顔を上げると、そこにはチラシを配っていた例の少女。
えへへ、と可愛らしく金剛に笑顔を見せる。
「別に、来たくはなかったんだがな…」
「あー、来てくれてるのにそんなこと言って。お兄さんったら、ツンデレー。ま、それはいいとして、今日は
開店サービスということで、お兄さんには私から特別にご奉仕させてもらっちゃうよ。ほらほら、それじゃあ
あっちの個室にれっつゴ~」
少女は金剛の手を取り、強引に席を立たせた。
「おい、俺は別にそんなもん…」
「別にいいじゃない、金剛番長。こんな可愛い子のお誘いなんだし、行ってきなよ」
卑怯まで少女の後押しをした。念仏は経文を書くのに忙しく、居合は周囲の状況に構っていられない状態だ。
「全く…」
相変わらずの仏頂面で、金剛は仕方なく、手を引かれるまま個室に入っていった。
個室に入ったところで、金剛は少女に問いかけた。
「で?テメエは、何者だ?」
その言葉を聞いた瞬間、少女の目が一瞬、鋭い光を帯びる。
「…何者って?私はただのメイドさんだよ」
「そうか。ただのメイドか…なら聞くが…」
金剛は一息いれて、少女を睨み付けた。
「<ただのメイド>がどうして、俺が隙を見せるたびに、殺気を放つんだ?」
―――少女は、笑った。今度はにこやかにではなく、酷薄に。
「へえ…すごいね。ただのパワーだけのニブチンだと思ってたよ。ごめんね」
「認めたってことは―――聞くまでもないが、23区計画の参加者か」
「んー、ちょっと違うかな…<これから参加する予定>なんだよね」
「何だと?」
「驚くことじゃないでしょ、お兄さん―――いや、金剛番長さん。あなただって最初はただの部外者だった。けれど
居合番長を倒したことで、番長の名と統括区を得たんだ。それにならって私も、あなたを倒して、計画に参加する。
そして、私の理想国家を建国するんだよ…」
少女はエプロンドレスの上から、学ランを羽織りながら、堂々と名乗りを上げた。
「私の名は小泉ひなた―――又の名を<冥土番長>!金剛番長。悪いけど、あなたの統括してる区は、全部いただくと
するよ」
小泉ひなた。否、冥土番長は金剛に向けてビシッと人差し指を向けた。
「ちなみにあの三人の助けは期待しない方がいいよ。店内のメイドさんたちはみんな私の舎弟だからね」
「問題はない…俺がテメエを倒す。それだけだ!」
金剛は拳を振り上げ、冥土番長に向けて強烈な一撃を見舞う。対する冥土番長は、それをまともに受けて―――
まるで微動だにしなかった。
「―――!?」
「ざーんねん…私の着ているこのエプロンドレスは、近年米軍が開発した特殊繊維が織り込まれていてね。近距離から
のバズーカ砲の直撃ですら、傷一つ付きはしないんだよ」
得意げに説明する冥土番長。しかし、それでは肉体へのダメージは殺せても、衝撃までは殺せないはずだ。すなわち、
それに耐えたのは、純粋に冥土番長の肉体強度ということになる。
「なるほど―――伊達や酔狂で計画に参加するつもりはねえってことか」
「そういうことだよ。ではでは、見せてあげるよ。真の奉仕精神というものをね。さあ―――死闘(ご奉仕)を、始めよう。
メイドの土産に、冥土送りにしたげるよ」
言うが早いか冥土番長は頭からカチューシャを取り外し、金剛に向けて投げ付けた。それは複雑な軌道を描きながら、
凄まじい速度で金剛の肉体を切り裂き、冥土番長の手元に舞い戻る。
「これぞ冥土番長の奉仕技が一つ、カチューシャ・ブーメラン!如何に番長であっても、その動きを予測することも、
その速度を捉えることも不可能!」
「ぐっ…!」
わずかながら、金剛の顔に焦りが浮かぶ。それを好機と見て、冥土番長は手にした箒の先を金剛に向けた。
「お次はこれだよ―――奉仕技その二、ブルーム・マシンガン!」
「!」
反射的に両腕でガードを固める金剛。その身体を、箒―――に偽装した機関銃―――から飛び出した銃弾が容赦なく
肉を抉っていく。鉛の嵐が止んだ時、もはや金剛は傷だらけだった。
「うふふのふー。既に何人もの番長を倒してるっていうからどれほどの強さかと思ったけれど、意外と大したこた
ないね。それとも私が強すぎるのかなー?んー?」
にやにや笑う冥土番長。そんな彼女に、金剛は問いかけた。
「冥土番長。テメエは何故、こんなクソったれた計画に参加してまで、日本を支配したいんだ?」
「おや。そういうことを今聞くかね、金剛番長。まあいいか。メイドの土産に聞かせたげるよ、私の崇高なるプランを…」
冥土番長は余裕たっぷりに両手を広げる。
「金剛番長。あなたは<メイドさん>という言葉に、宇宙を感じたことはないかな?」
「ない」
一瞬で断言され、鼻白む冥土番長だったが、すぐさま反論する。
「つまんない漢だね、全く…メイドさんだよ。ああ、メイドさん!なんていい響きなんだろうね…!実に癒されるよ!
メイドさんはいいね。人類の生み出した偉大な文化だよ!」
冥土番長は段々と熱っぽく、陶酔した顔になっていく。
「私はそんな偉大なるメイドさんの力を持ってこの腐りきった日本を救いたい―――そう、私が日本の支配者となった
暁には、私自らがメイド長となり、一大メイド軍団を結成し、全日本国民に一家につき一人、メイドさんを配備する。
メイドさんがいる生活は肉体・精神に余裕を与え、ストレス社会なんて言葉はもはや死語となり、日本に平和とゆとり
をもたらす―――そう、それこそがこの冥土番長の目指す理想国家なのだよ!」
最後の辺りはもはや絶叫だった。しかし、金剛は冷ややかに彼女を見つめ、言い放つ。
「冥土番長…テメエは一つ、どうしようもなく矛盾している」
「―――矛盾?へえ…私のこのカンペキなプランに何か問題でも?負け惜しみも甚だしいよ…まあいいか。私の最後の
ご奉仕で、その口、永遠に閉じるといいさ。さあ、冥土送りだよ!」
言い終わると同時に、冥土番長はエプロンドレスの至る所から無数のカチューシャを取り出し、金剛に向けて投擲する。
そして一切のタイムラグなしに、マシンガンを発射。それは残弾など一つも残さぬ勢いで銃口から吐き出されていく。
「奉仕奥義、カチューシャ・ブーメラン百機編隊―――そしてブルーム・マシンガン全弾開放!」
それを全て喰らえば、もはや人間一人など塵も残さない―――だが、金剛は。金剛番長は、それを避けようともしない。
それどころか、自分からそれに向かっていく。
(勝った!金剛番長完ッ!)
そう思った冥土番長は、しかし、次の瞬間、己の認識の甘さに気付いた。襲い掛かる無数の兇器と兇弾を、その身で
全て受け止め、その身を血で赤く染めて―――なお、金剛番長の突進は止まらない!
「う、あ―――」
そして繰り出される、金剛番長の鉄拳!
「打舞流叛魔ァァァーーーーーっ!!!」
近距離からのバズーカ砲すら防ぐ特殊エプロンドレス―――だが、本気を出した金剛番長の一撃の前には、紙切れに
等しい強度しかない。
哀れ、冥土番長は吹っ飛び、壁に激突し、床に倒れ、そして、ぴくぴくと痙攣するだけとなった。意識はあるようだが、
もはや戦闘続行は不可能だろう。
「嘘…でしょ…こ…これが…金剛番長…強い…つよ、過ぎる…!」
呻くように冥土番長―――否、敗れ去った今、もはやただの<小泉ひなた>となった彼女は呟く。そんな彼女にかける
言葉もなく、金剛は部屋を出て行こうとした。
「ま…待ってよ!最後に…訊きたい!私の…私の全日本メイド計画のどこに、矛盾があるのさ!?」
ぴたっと金剛の足が止まり、その場で振り向いてひなたを一瞥する。そして、答えた。
「俺はメイドとかいうものはよく知らねえ。興味もないしな。だが、聞く限りメイドってのは、誰かに仕えて、奉仕する
ことが使命なんだろう?」
「そう!それこそがメイドさんだよ!いるだけで幸せな気分になれる、献身と奉仕の心に満ち溢れたいわば―――」
「そしてテメエもその一員なんだろうが。そんな奴が―――誰かに仕えるための存在が、日本を支配しようってのは、
一体どういう了見なんだ?」
「!」
それは―――まさしく死刑宣告に等しかった。自身のアイデンティティ、その全てを揺るがす一撃。
「テメエもメイドの端くれなら―――メイドとしてのスジを通しやがれ!」
「…………」
もはや声もなく、ひなたはがっくりと倒れ付した。それを見届けて、今度こそ金剛は部屋を後にするのだった。

「あれ?どうしたんだい、金剛番長。ボロボロじゃないか」
「ああ、ちょっとな…とにかく、こっちの用事は済んだ。俺は今日カルチャースクールの講習があるからそろそろ帰ろう
と思うんだが」
ちなみに彼が通っているのは料理教室である。無論、究極のプリンを作り出すためだ。以前作ったものは腹ペコの野良犬
にあげてしまったので、今度は更なる高みを求め、至高のプリンを目指しているのだ。
「ああ、そうだね。じゃあいこうか…あ、代金は開店記念でタダでいいってさ。さすがメイドさん、サービスいいね…
<美味しいモノ>も、たくさんあったことだし…ふふふ」
にこやかに語る卑怯。そんな彼を、メイドさんたちは憎しみと、それを遥かに越える恐怖を込めて睨み付けていた。
そして、その中の一人が、もう耐え切れないとばかりに泣き崩れた。そして叫ぶ。
「卑怯者…卑怯者~~~~~~~~~っっ…!!!」
「卑怯者?ふふふ…それはありがとう」
卑怯は―――卑怯番長は、本当に嬉しそうに笑った。
「この卑怯番長にとっては、それが最高の褒め言葉だよ」
言い捨て、意気揚々と自動ドアをくぐって街の雑踏へと消えていく卑怯番長。それを金剛と居合は、苦々しく見送った。
「何をやったんだ、あいつは…」
「あの卑怯者め…!」
その後ろで念仏は、実に十三人にも及ぶメイドさんからの経文の代金総額26万円を握り締め、ホクホク顔だった。

―――その夜、金剛はついに至高のプリンを生み出すことに成功した。しかし、帰り道でおやつのプリンをドブに落とし
泣いている女の子を見つけてしまい、結局彼の口には入らなかったという。
特技は無敵の金剛番長。しかしながら、今日は彼にとってついてない一日であった。