「……なんだか険悪な雰囲気になってきましたね、北斗さん」
「おもいっきり論点ずれてるがな」
「しかし、ケンカはいけませんよ。せっかくの修学旅行なんだから、
どうにかなりませんかね?」
「……うむ、妙案が閃いたぞ。貴様、今、ここで自己紹介してみろ」
「へ、何でですか?」
「いいから、してみろ。お前だって名前を呼ばれたがってたじゃないか」
「まあ、それはそうなんですけど……」
「いい機会だ。やれ」
「はぁ……、おい、皆、ちょっと聞いてくれないか。俺の名前」
「北斗の子分君、どさくさに紛れてなんてことを言い出すんだ!」
「そうだぞ、北斗の子分。いくら『旅の恥は掻き捨て』と言ってもやって
良いことと悪いことがあるんだぞ!」
「反応早いな、お前ら。ケンカしてたんじゃないのかよ」
「それはそれ、これはこれ。君が自己紹介をやり始めたら、とてもケンカ
なんてしてられないよ」
「そうそう、人命に関わってくる問題だからな」
「俺の名前は毒物か何かか!全く、北斗さんからも、こいつらにちょっと
言ってやって下さいよ」
「フッ、効果てきめんだな、俺の策略は。名づけて『アメリカとソ連の仲が
悪いんだけど、隕石が落下してきたら両国が団結して仲良くなっちゃったよ
って映画を見た気がする大作戦』だ……ん、我が子分よ、何か言ったか?」
「……いや、もういいです」
「なあ、お前らいつまで馬鹿話を続けているつもりなんだ?もう、そろそろ
外に出てみようぜ。俺らはずっと新幹線に乗りっぱなしだったんだし、
もう疲れたぜ」
「………………………………………」
「え、何でまた、静かになるんだよ?俺、変なこと言ったかな?」
「いや、前田君はてっきり旅行に来ていないとばかり」
「それ、さっきやっただろ!」
「流石、前田だ。陰の薄さは半端ねえ」
「うるせえぞ、林田!」
「まあ、まあ。でも、確かに前田君の言う通りだよね。とにかく外に出て
みないことには何も始まらない。よし、外に行ってみよう!」
「前田は陰が薄くて見失いやすいからな、グレてもいいけど、
はグレちゃダメだぞ。なんつって」
「黙れ、林田!」
~砂漠~
「ふ~、暑いな……」
「……確かに。新幹線から出てきたのは良いのだけれど、行けども行けども
砂漠ばかり……う~ん、このままじゃ遭難しちゃうね」
「そもそも俺ら、何しに来たんだっけ?」
「……さあ、修学旅行のはずだったんだけど、もはや観光というより乾行だよね」
「ああ、疲れた……・喉が渇いた……」
「全く、黙って聞いておれば、お前ら先ほどから愚痴ばかりではないか。少しは
シャキッとせい、シャキッっと」
「なんだよ、北斗偉そうに。お前だって遭難しかけているんだぞ」
「ふ、お前らと一緒にするな。俺は北斗財閥の次期総帥だぞ。地球上の
何処であろうと、居場所さえ分かれば救助隊が駆けつけることになっておるのだ」
「お、それは頼もしいな。流石、北斗だ」
「任せろ。俺様に抜かりはない。そこいらの愚民どもとは格が違うのだ……あ」
「どうしたんです?北斗さん」
「携帯忘れた……」
「マジに使えない奴だな、お前は。でも、運がいいぜ。あそこに公衆電話があるぞ」
「……日本の駅前でも消えつつある公衆電話が何故、砂漠で簡単に見つかるんだ?」
「つまらないことを言うな、神山。だから運が良いと言うのだ。では、早速……」
「どうだ、繋がったか?」
「いや、細かいのが無くて……どうしようかと」
「あ!?ちょっと財布見せてみろ……なんだよ、百円玉がたくさんあるじゃねえか。
それ使えばいいだろ」
「むう、しかし、それではお釣りが出ない」
「何、言っているんだよ。お前は大金持ちなんだからケチケチしなくてもいいじゃねえか」
「うむ、確かに俺は金持ちだ。しかし、だからと言って無駄遣いをすると
決めつけられては困る」
「別に無駄じゃないでしょ。命がかかっているんだから」
「まあ、北斗の言うことも分からないでもない。金持ちは貧乏人よりもケチ
だからこそ、金持ちだったりするから」
「人聞きの悪いことを言うな、林田。ケチでは無く、無駄遣いが嫌なだけと
言っておるだろうが」
「もう、北斗君がケチかどうかなんてどうでもいいでしょ!それよりも命の
心配をしようよ」
「いや、問題は先の方から片付けるに限る。で、だな、そもそも金持ちと
いうのは庶民のように現金など持ち歩く習慣が無いのだ。俺が百円玉の使い方に
難儀するのもなるほど納得がいく」
「何が『なるほど』だよ!ふざけるのも大概にしてくれないか」
「ははあ、天皇陛下が切符の買い方を知らないのと一緒という訳か」
「林田君、さっきから無責任にフォローを入れるの止めて」
「まあ、とにかく、これで俺がケチでないことは証明された訳だ。さて、
次の議題は公衆電話に百円玉を使うか、使わないかだが……」
「勿論、使うんだよね」
「ああ、流石に背に腹は変えられん。若干、気にはなるが、百円玉を投入する
ことにしよう……チャリン……プルルルル……あ、もしもし、俺だ……ああ、
そうそう……だから……え、そうなの?……ふ~ん、仕方が無いな。じゃあ、
金、勿体無いから切るぞ」
「ど、どうだった?」
「え~とね、場所が分からないから駄目だって」
「え、地球上の何処でも救助隊が駆けつけるんじゃなかったの!?」
「だから、場所さえ、分かれば来てくれるんだって。流石に『砂漠』だけじゃ
所在が掴めないらしい」
「……いや、『砂漠』以外にもヒントは山ほどあったように思うのだけど。
ベタなクイズ番組並みに」
「まあ、とにかくそういう訳だから。皆、諦めてくれ。百円玉ももう無いし」
「嘘つかないでよ!君、今、『金、勿体無いから切る』って喋ってたでしょう。
あ、内ポケットに百円隠した!」
「何を言う。証拠でもあるのか?」
「もう、しらばっくれて!ジャンプだ、ジャンプしてみてよ!」
「……ああ、もう、なんだか目眩がしてきたぜ。これじゃ、本当に
死んでしまう……ん、フレディーどうした?……お、皆!」
「北斗君、何、足のクッション使ってゆっくりジャンプしてんの!」
「お~い、皆!フレディーが何か見つけたみたいなんだ!」
「まだ高さが足りない!」
「おい、落ちつけ神山。向こうを見てみろ」
「……ん?ああ、本当、何か建物が見える!どうやら看板もあるみたいだね。
え~と、なになに、『BAR東京砂漠』……って、また、無駄に混乱を招く
店名だな」
「まあ、なにはともあれ、バーだったら何か飲ませてもらえるだろう。
行こうぜ、もう喉がカラカラだ」
「うん!」
「おもいっきり論点ずれてるがな」
「しかし、ケンカはいけませんよ。せっかくの修学旅行なんだから、
どうにかなりませんかね?」
「……うむ、妙案が閃いたぞ。貴様、今、ここで自己紹介してみろ」
「へ、何でですか?」
「いいから、してみろ。お前だって名前を呼ばれたがってたじゃないか」
「まあ、それはそうなんですけど……」
「いい機会だ。やれ」
「はぁ……、おい、皆、ちょっと聞いてくれないか。俺の名前」
「北斗の子分君、どさくさに紛れてなんてことを言い出すんだ!」
「そうだぞ、北斗の子分。いくら『旅の恥は掻き捨て』と言ってもやって
良いことと悪いことがあるんだぞ!」
「反応早いな、お前ら。ケンカしてたんじゃないのかよ」
「それはそれ、これはこれ。君が自己紹介をやり始めたら、とてもケンカ
なんてしてられないよ」
「そうそう、人命に関わってくる問題だからな」
「俺の名前は毒物か何かか!全く、北斗さんからも、こいつらにちょっと
言ってやって下さいよ」
「フッ、効果てきめんだな、俺の策略は。名づけて『アメリカとソ連の仲が
悪いんだけど、隕石が落下してきたら両国が団結して仲良くなっちゃったよ
って映画を見た気がする大作戦』だ……ん、我が子分よ、何か言ったか?」
「……いや、もういいです」
「なあ、お前らいつまで馬鹿話を続けているつもりなんだ?もう、そろそろ
外に出てみようぜ。俺らはずっと新幹線に乗りっぱなしだったんだし、
もう疲れたぜ」
「………………………………………」
「え、何でまた、静かになるんだよ?俺、変なこと言ったかな?」
「いや、前田君はてっきり旅行に来ていないとばかり」
「それ、さっきやっただろ!」
「流石、前田だ。陰の薄さは半端ねえ」
「うるせえぞ、林田!」
「まあ、まあ。でも、確かに前田君の言う通りだよね。とにかく外に出て
みないことには何も始まらない。よし、外に行ってみよう!」
「前田は陰が薄くて見失いやすいからな、グレてもいいけど、
はグレちゃダメだぞ。なんつって」
「黙れ、林田!」
~砂漠~
「ふ~、暑いな……」
「……確かに。新幹線から出てきたのは良いのだけれど、行けども行けども
砂漠ばかり……う~ん、このままじゃ遭難しちゃうね」
「そもそも俺ら、何しに来たんだっけ?」
「……さあ、修学旅行のはずだったんだけど、もはや観光というより乾行だよね」
「ああ、疲れた……・喉が渇いた……」
「全く、黙って聞いておれば、お前ら先ほどから愚痴ばかりではないか。少しは
シャキッとせい、シャキッっと」
「なんだよ、北斗偉そうに。お前だって遭難しかけているんだぞ」
「ふ、お前らと一緒にするな。俺は北斗財閥の次期総帥だぞ。地球上の
何処であろうと、居場所さえ分かれば救助隊が駆けつけることになっておるのだ」
「お、それは頼もしいな。流石、北斗だ」
「任せろ。俺様に抜かりはない。そこいらの愚民どもとは格が違うのだ……あ」
「どうしたんです?北斗さん」
「携帯忘れた……」
「マジに使えない奴だな、お前は。でも、運がいいぜ。あそこに公衆電話があるぞ」
「……日本の駅前でも消えつつある公衆電話が何故、砂漠で簡単に見つかるんだ?」
「つまらないことを言うな、神山。だから運が良いと言うのだ。では、早速……」
「どうだ、繋がったか?」
「いや、細かいのが無くて……どうしようかと」
「あ!?ちょっと財布見せてみろ……なんだよ、百円玉がたくさんあるじゃねえか。
それ使えばいいだろ」
「むう、しかし、それではお釣りが出ない」
「何、言っているんだよ。お前は大金持ちなんだからケチケチしなくてもいいじゃねえか」
「うむ、確かに俺は金持ちだ。しかし、だからと言って無駄遣いをすると
決めつけられては困る」
「別に無駄じゃないでしょ。命がかかっているんだから」
「まあ、北斗の言うことも分からないでもない。金持ちは貧乏人よりもケチ
だからこそ、金持ちだったりするから」
「人聞きの悪いことを言うな、林田。ケチでは無く、無駄遣いが嫌なだけと
言っておるだろうが」
「もう、北斗君がケチかどうかなんてどうでもいいでしょ!それよりも命の
心配をしようよ」
「いや、問題は先の方から片付けるに限る。で、だな、そもそも金持ちと
いうのは庶民のように現金など持ち歩く習慣が無いのだ。俺が百円玉の使い方に
難儀するのもなるほど納得がいく」
「何が『なるほど』だよ!ふざけるのも大概にしてくれないか」
「ははあ、天皇陛下が切符の買い方を知らないのと一緒という訳か」
「林田君、さっきから無責任にフォローを入れるの止めて」
「まあ、とにかく、これで俺がケチでないことは証明された訳だ。さて、
次の議題は公衆電話に百円玉を使うか、使わないかだが……」
「勿論、使うんだよね」
「ああ、流石に背に腹は変えられん。若干、気にはなるが、百円玉を投入する
ことにしよう……チャリン……プルルルル……あ、もしもし、俺だ……ああ、
そうそう……だから……え、そうなの?……ふ~ん、仕方が無いな。じゃあ、
金、勿体無いから切るぞ」
「ど、どうだった?」
「え~とね、場所が分からないから駄目だって」
「え、地球上の何処でも救助隊が駆けつけるんじゃなかったの!?」
「だから、場所さえ、分かれば来てくれるんだって。流石に『砂漠』だけじゃ
所在が掴めないらしい」
「……いや、『砂漠』以外にもヒントは山ほどあったように思うのだけど。
ベタなクイズ番組並みに」
「まあ、とにかくそういう訳だから。皆、諦めてくれ。百円玉ももう無いし」
「嘘つかないでよ!君、今、『金、勿体無いから切る』って喋ってたでしょう。
あ、内ポケットに百円隠した!」
「何を言う。証拠でもあるのか?」
「もう、しらばっくれて!ジャンプだ、ジャンプしてみてよ!」
「……ああ、もう、なんだか目眩がしてきたぜ。これじゃ、本当に
死んでしまう……ん、フレディーどうした?……お、皆!」
「北斗君、何、足のクッション使ってゆっくりジャンプしてんの!」
「お~い、皆!フレディーが何か見つけたみたいなんだ!」
「まだ高さが足りない!」
「おい、落ちつけ神山。向こうを見てみろ」
「……ん?ああ、本当、何か建物が見える!どうやら看板もあるみたいだね。
え~と、なになに、『BAR東京砂漠』……って、また、無駄に混乱を招く
店名だな」
「まあ、なにはともあれ、バーだったら何か飲ませてもらえるだろう。
行こうぜ、もう喉がカラカラだ」
「うん!」