「眼を覚ませ・・・だとぉ?」
屈辱に拳を震わせるシン、折角捨て去った情を取り戻せ?
眼なら覚めている、殺人拳は読んで字の如く『人を殺す為にある』のだ。
そして強さの源は『情愛』ではなく『執念』である。
ケンシロウが『怒り』という相手を絶対に許さない『執念』を持って自分を破ったように。
屈辱に拳を震わせるシン、折角捨て去った情を取り戻せ?
眼なら覚めている、殺人拳は読んで字の如く『人を殺す為にある』のだ。
そして強さの源は『情愛』ではなく『執念』である。
ケンシロウが『怒り』という相手を絶対に許さない『執念』を持って自分を破ったように。
「舐めるなよケンシロウ・・・刹活孔を突いた今なら、貴様の拳の性質はハッキリする。」
今までは剛と柔の中間、スピードとパワーを併せ持った拳だった。
肉体を強化する刹活孔は、スピード、パワー両方を上昇させる。
だが強化の比率はパワーの方が高い、必然的に剛の拳となる。
一撃必殺の拳を維持しつつ、手数で押す真似は筋肉の負担からできなくなる。
地面に突き刺していた剣を抜き、構える。
今までは剛と柔の中間、スピードとパワーを併せ持った拳だった。
肉体を強化する刹活孔は、スピード、パワー両方を上昇させる。
だが強化の比率はパワーの方が高い、必然的に剛の拳となる。
一撃必殺の拳を維持しつつ、手数で押す真似は筋肉の負担からできなくなる。
地面に突き刺していた剣を抜き、構える。
「なるほど、手数よりも一撃を・・・そして、俺の知らぬ剣技を身につけたなら剣を選ぶか。」
「そう、刹活孔を身につけても貴様に新しい技など身につきはしない。」
「俺の手の内はバレているが、お前の剣は見切っていない。そう言いたいのか。」
「そうだ、冥府から見ていたぞ、流石にこの世界に来てから腑抜けになってるとは思わなんだがな。」
「そう、刹活孔を身につけても貴様に新しい技など身につきはしない。」
「俺の手の内はバレているが、お前の剣は見切っていない。そう言いたいのか。」
「そうだ、冥府から見ていたぞ、流石にこの世界に来てから腑抜けになってるとは思わなんだがな。」
今度はスピード勝負ではなく、一撃必殺、どちらが先に当てるか。
相手の周囲を回るような消極的な戦法は取らず、正面からジリジリと距離を詰める。
ここで先に動いたのはケンシロウだった、シンから見ればこれは迂闊と言えるだろう。
相手の周囲を回るような消極的な戦法は取らず、正面からジリジリと距離を詰める。
ここで先に動いたのはケンシロウだった、シンから見ればこれは迂闊と言えるだろう。
シンは間合いに入るのを力を溜めて待っていたのだ。
両腕は脱力させ剣が地面につくほど下げているが、下半身には完璧な踏み込みをする条件が整っている。
完璧な踏み込みがあれば、腕に込める力は僅かでも十分に剣を加速させられる。
ケンシロウ側では加速をつけながら踏み込めば確かに威力は剣に劣らない、だが体重のコントロールに難がでる。
達人のケンシロウは一瞬でそれを行えるが、シンもまた達人、その一瞬があれば、
足を一歩前に出して剣を振れば真っ二つに出来る。
圧倒的有利、絶対的勝率、ケンシロウに確実な死を与えることができる。
両腕は脱力させ剣が地面につくほど下げているが、下半身には完璧な踏み込みをする条件が整っている。
完璧な踏み込みがあれば、腕に込める力は僅かでも十分に剣を加速させられる。
ケンシロウ側では加速をつけながら踏み込めば確かに威力は剣に劣らない、だが体重のコントロールに難がでる。
達人のケンシロウは一瞬でそれを行えるが、シンもまた達人、その一瞬があれば、
足を一歩前に出して剣を振れば真っ二つに出来る。
圧倒的有利、絶対的勝率、ケンシロウに確実な死を与えることができる。
「貰ったぞ・・・死神の星が墜ちる時が来たのだぁ!」
ケンシロウの胴体を真っ二つにするべく、剣を横に振った。
しかし、ケンシロウの拳はシンの肉体に向かってはいなかった。
向かうのは、剣・・・しかも刃の部分だった。
しかし、ケンシロウの拳はシンの肉体に向かってはいなかった。
向かうのは、剣・・・しかも刃の部分だった。
「阿呆がぁ!俺の蹴りに耐える業物を、正面から止められる物かぁぁぁ!」
拳を引き裂き鮮血が吹き出す、だが止まらないのは鮮血だけだった。
手首の辺りまで斬り裂いた所で完全に停止する。
熱と爆炎で肉や骨を溶かしつつ切り裂く最強の剣、ソーディアン。
その気になれば、目に映る物全てを灰塵と化すことも可能な究極の剣。
能力を解放したソーディアンの刀身に触れれば肉が蒸発しても可笑しくない。
それを拳一つ犠牲にして完全にストップさせた。
拳を引き裂き鮮血が吹き出す、だが止まらないのは鮮血だけだった。
手首の辺りまで斬り裂いた所で完全に停止する。
熱と爆炎で肉や骨を溶かしつつ切り裂く最強の剣、ソーディアン。
その気になれば、目に映る物全てを灰塵と化すことも可能な究極の剣。
能力を解放したソーディアンの刀身に触れれば肉が蒸発しても可笑しくない。
それを拳一つ犠牲にして完全にストップさせた。
「こ・・・・・こんな筈は・・・!」
唖然とするシン、突然目の前は真っ白になっていた。
何もない真っ白な世界、その世界にケンシロウと二人で立ち尽くしていた。
唖然とするシン、突然目の前は真っ白になっていた。
何もない真っ白な世界、その世界にケンシロウと二人で立ち尽くしていた。
「何故だ・・・・何故、俺はお前に勝てないんだ?」
二度の敗北、過去の敗北は怒りという執念に負けたのだ。
だが、今回の敗北は違っていた。
蘇り、邪悪な力に手を染め、想い人への愛を捨て去っても倒す執念を手にした。
完全な勝利を掴む為、誇りを捨て去り武器を手に取り闘った。
二度の敗北、過去の敗北は怒りという執念に負けたのだ。
だが、今回の敗北は違っていた。
蘇り、邪悪な力に手を染め、想い人への愛を捨て去っても倒す執念を手にした。
完全な勝利を掴む為、誇りを捨て去り武器を手に取り闘った。
「俺が死神の星ならば、貴様は愛に殉じる星・・・。『殺人拳』は確かに『殺す為の拳』。
だが『何の為に殺す』のか、『欲求』の為、『守る』為、それは扱う者の意思。
殺す為に作られた物全てが、殺戮の為に存在するのではない・・・力無き人々の希望となることもできる。」
だが『何の為に殺す』のか、『欲求』の為、『守る』為、それは扱う者の意思。
殺す為に作られた物全てが、殺戮の為に存在するのではない・・・力無き人々の希望となることもできる。」
そう、だがシンは他者の為に力を使うことは愚かだと思っていた。
力とは自分の為にあるもの、何者にも縛られたくなかった。
力とは自分の為にあるもの、何者にも縛られたくなかった。
「そう、使い道は自由だ。俺も望まれたのではなく、自らの意思で北斗の定めに従ってきた。
だが、生まれ持った星・・・お前は魂の、生き様の本質である『愛』を封じた。
魂を持たぬ拳、それで本当の力など出せる筈がない。」
眼が覚めた、青空を見つめながら地面にひれ伏していた。
眠ってしまった、無様な事に勝負の最中に夢へ落ちてしまった。
頬がピリピリする、口の中がズタズタだ。
だが・・・気持ち良かった。
だが、生まれ持った星・・・お前は魂の、生き様の本質である『愛』を封じた。
魂を持たぬ拳、それで本当の力など出せる筈がない。」
眼が覚めた、青空を見つめながら地面にひれ伏していた。
眠ってしまった、無様な事に勝負の最中に夢へ落ちてしまった。
頬がピリピリする、口の中がズタズタだ。
だが・・・気持ち良かった。
「それで負けたのか・・・俺は。」
もう体中に沸き立つ力は感じなかった。
だが、涼やかな風が体を取り巻くのを肌で感じ取れた。
常に暗黒が体を覆っていたので、まるで気付かなかった。
この世界は自分達の核で汚れた世界とは違う、ユリアがサザンクロスを拒む訳だ。
美しい町並み、廃屋の傍らに花が当然のように咲き誇る、そんな世界こそ彼女の理想。
だが、涼やかな風が体を取り巻くのを肌で感じ取れた。
常に暗黒が体を覆っていたので、まるで気付かなかった。
この世界は自分達の核で汚れた世界とは違う、ユリアがサザンクロスを拒む訳だ。
美しい町並み、廃屋の傍らに花が当然のように咲き誇る、そんな世界こそ彼女の理想。
「確かに俺にケンの様な生き方は出来ん・・・だが見ていてくれ。
お前が欲しい物はなんでもくれてやる、という言葉に嘘はない。」
空を見上げながら、誰の耳にも聞こえない程に小さく呟く。
気付けば、修業時代の様に愛称で呼んでいた。
お前が欲しい物はなんでもくれてやる、という言葉に嘘はない。」
空を見上げながら、誰の耳にも聞こえない程に小さく呟く。
気付けば、修業時代の様に愛称で呼んでいた。
先程シンに拳を叩きこんだ場所で、倒れ込んでいるケンシロウ。
立ち上がるべく左拳を支えに体を起き上がらせている。
右の拳は、中指と薬指の間を通って手首の辺りまで裂けている。
立ち上がるべく左拳を支えに体を起き上がらせている。
右の拳は、中指と薬指の間を通って手首の辺りまで裂けている。
左拳へ、全ての力を注ぐ。
ケンシロウの目前へと迫り、立ち上がるのを待つ。
お互いが全身全霊の一撃を繰り出せる状況を作り出す。
立ち尽くすシンの左拳の周辺が、闘気で歪んでいくのを見て意図に気づいた。
「シン・・・?」
「お前に言葉はいらん筈だ。」
ケンシロウの目前へと迫り、立ち上がるのを待つ。
お互いが全身全霊の一撃を繰り出せる状況を作り出す。
立ち尽くすシンの左拳の周辺が、闘気で歪んでいくのを見て意図に気づいた。
「シン・・・?」
「お前に言葉はいらん筈だ。」
立ち上がるケンシロウ、闘気は薄れ、肩で息をつき、弱り果てていた。
先程のシンの戦いぶりを見れば、誰が見てもケンシロウに勝つ見込みは無いと思うだろう。
しかし違っていた、シンの目に映るケンシロウは山のように大きく目の前に立ち塞がっていた。
ラオウの様に圧倒的な闘気がそうさせるのではない、恐怖が感覚を支配するのではない。
不確かで不安定だが何よりも温かで輝ける何か、それが『越えられない』ことを認識させる。
『見せられる』のではなく『見えてしまう』、『認めざるを得ない』のではなく『認めてしまう』。
自分がケンシロウの生き方を否定した理由は、ここにあるのかもしれない。
先程のシンの戦いぶりを見れば、誰が見てもケンシロウに勝つ見込みは無いと思うだろう。
しかし違っていた、シンの目に映るケンシロウは山のように大きく目の前に立ち塞がっていた。
ラオウの様に圧倒的な闘気がそうさせるのではない、恐怖が感覚を支配するのではない。
不確かで不安定だが何よりも温かで輝ける何か、それが『越えられない』ことを認識させる。
『見せられる』のではなく『見えてしまう』、『認めざるを得ない』のではなく『認めてしまう』。
自分がケンシロウの生き方を否定した理由は、ここにあるのかもしれない。
闘いに優しさや愛を持ち込む、生ぬるい考えを未だに納得はしていない。
しかしその甘さが実際に拳王を打ち破り、最後はラオウも愛を拳に纏って果てた。
ならば、今のケンシロウに最も必要なのはその甘さなのかもしれない。
言葉は無用、拳を撃ち合わせて迷う暇も無くしてみせる。
しかしその甘さが実際に拳王を打ち破り、最後はラオウも愛を拳に纏って果てた。
ならば、今のケンシロウに最も必要なのはその甘さなのかもしれない。
言葉は無用、拳を撃ち合わせて迷う暇も無くしてみせる。
両者構えを取る、雑念を振り払ったケンシロウの闘気は完全にシンを圧倒していた。
凄まじい威圧感を感じ取るシン、だが闘気から伝わるケンシロウの心を見てそれを振り払う。
悲しみ、闘うことの虚しさ、人々の希望になれない己の弱さへの絶望。
圧倒的なオーラが生み出すプレッシャーも、ケンシロウの心の内を見てしまえば空虚な物に思えた。
今、生み出されている威圧感は元々持ち合わせているオーラを一時的にコントロール出来ているだけである。
自分より強大な敵と立ち向かう為の物ではない、最も本来の力を取り戻しただけでも驚異ではあるが。
凄まじい威圧感を感じ取るシン、だが闘気から伝わるケンシロウの心を見てそれを振り払う。
悲しみ、闘うことの虚しさ、人々の希望になれない己の弱さへの絶望。
圧倒的なオーラが生み出すプレッシャーも、ケンシロウの心の内を見てしまえば空虚な物に思えた。
今、生み出されている威圧感は元々持ち合わせているオーラを一時的にコントロール出来ているだけである。
自分より強大な敵と立ち向かう為の物ではない、最も本来の力を取り戻しただけでも驚異ではあるが。
激戦に身を置き鍛え抜かれた肉体は相手がラオウであっても、体格を除けば互角に渡り合えるであろう。
しかし、今のままでは南斗六聖の面々を倒すことすら難しい。
『愛』を交えた慈しむ心から来る『哀しみ』なくしては、超えることは出来ない。
言葉が意味をなさない戦いの中に身を捧げた彼には、それを伝えることができる言葉は持ち合わせていない。
そして取った道は一つ、拳を通して伝えるのみ。
しかし、今のままでは南斗六聖の面々を倒すことすら難しい。
『愛』を交えた慈しむ心から来る『哀しみ』なくしては、超えることは出来ない。
言葉が意味をなさない戦いの中に身を捧げた彼には、それを伝えることができる言葉は持ち合わせていない。
そして取った道は一つ、拳を通して伝えるのみ。
技術や奥義は不要、必要なのはたった一撃、愛を取り戻す為の拳一つ。
南斗聖拳に属する拳法では、手刀を主体に闘う。
だが、シンの拳は力強く握りしめられていた。
お互いが、勝つ為ではなく相手の為の拳を打ち込もうとしていた。
ケンシロウの拳に愛を纏わせる為、そのシンの想いに答える為。
戦いの中で見つめあう二人の顔にほんの一瞬だけ頬笑みが見えた刹那、二つの拳が激突した。
南斗聖拳に属する拳法では、手刀を主体に闘う。
だが、シンの拳は力強く握りしめられていた。
お互いが、勝つ為ではなく相手の為の拳を打ち込もうとしていた。
ケンシロウの拳に愛を纏わせる為、そのシンの想いに答える為。
戦いの中で見つめあう二人の顔にほんの一瞬だけ頬笑みが見えた刹那、二つの拳が激突した。