SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 三年一組剣八先生! (サマサさま)


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死者の魂が導かれる世界―――ソウル・ソサエティ。
そこには現世から送られた魂とは別に、死神と呼ばれる者たちが存在している。
彼らの仕事は現世を彷徨う魂を安らかにソウル・ソサエティへと導くこと―――そして。
悪霊とでも言うべき存在<虚(ホロウ)>を倒すことである。
まさに死神の名の通り、彼らはこの世界の魂全てを司るのだ。
今回はそんな死神の中から、この男のある一日を紹介しよう―――

「ああん?なんだと、もういっぺん言ってみろ」
ドスのきいた声で、2メートルを越える巨大な男が聞き返した。
―――異様な風体の男である。黒装束に白い羽織。羽織の背中にはおおきく<十一>の文字。
死神は大別して十三隊に分かれており、総称して<護廷十三隊>と呼ばれる。この羽織は、男が十一番隊の隊長で
あることを示しているのだ。
右目には黒い眼帯、顔の左半分には派手な刀傷と、いかにも荒くれという容貌である。
そして、その髪型。一度見たらまず忘れられない、あまりにも破壊的なそのフォルム。
海栗とでも言おうか、観覧車とでも言おうか、クロノ・トリガーのラスボス第一形態とでも言おうか、トゲトゲに
逆立てた髪。その先端一つ一つには鈴がくくりつけられており、頭を動かすたびにチリーン…と鳴り響く。
彼こそは護廷十三隊十一番隊隊長―――更木剣八(ざらきけんぱち)である。
「ええ、ですから真央霊術院・三年一組の特別講師を、明日一日だけお願いできないかって話っすよ。予定してた
講師が急にダメになっちまったらしくて。隊長、明日は非番でしたよね」
報告してきた剣八の部下、斑目一角(まだらめいっかく)はそう答えた。禿頭が眩しいと評判の男前である。
「ハゲてんじゃねえ、剃ってんだ!」とは、本人の弁。
ちなみに真央霊術院とは、身も蓋もなく言えば、死神養成学校である。純粋培養の箱入りお嬢様―――ではなく、
優秀な死神を代々輩出している、歴史ある学院なのだ。
「きゃはは、剣ちゃんが先生?面白そ~」
剣八の背中から、ちょこんと小さな女の子が顔を出した。桃色の髪と、心底楽しそうな笑顔。そんな微笑ましい
彼女であるが、これでも十一番隊副隊長であり、いざとなれば眼光一つで大の大人を震え上がらせる強者だ。
名は、草鹿(くさじし)やちる。
「―――で?なんで俺にそんな話を持ってくるんだ?他の隊長にでも頼めばいいだろうが」
「他の隊長は仕事やら何やらで手が空いてないそうで」
「そうか。そりゃ残念だったな。俺も明日は暇潰しで忙しいと言っとけ」
「言い訳になってねーっすよ」
「あはは、いいじゃん剣ちゃん。楽しそうじゃん」
やちるもそう言って後押しする。剣八は面倒くさそうに脇腹を掻いていたが、やがて口を開いた。
「ちっ…折角の休日だってぇのに…まあいいさ」
剣八はにいっと唇の端を歪める。
「待ってろよ、院生のヒヨッコ共―――この俺が直々にぶった斬ってやるぜ!」
「いや、斬っちゃダメですって」
―――更木剣八。こういう男であった。

―――さて、一日経って、件の真央霊術院である。三年一組は朝からいつもよりも騒がしかった。
何しろ今日は、護廷十三隊の隊長が自分たちの講師をしてくれるというのだ。
死神候補生である彼らにとって隊長とは、まさしくスタータレントと言うべき存在なのだ。そんな雲の上の人が
目の前にやってくる。
まさに一大イベントというべきものである。
「どんな人だろうな」
「かっこいい人だといいね~」
キャッキャウフフと未来の死神たるフレッシュマン&プリティガールたちが話に花を咲かせている。
―――が、次の瞬間、全てが一瞬にして凍り付いた。
教室の外から、何かが―――恐るべき何かが近づいている!
その圧力だけで一部の生徒は泡を吹いて倒れたほどだ。
そして、大きな音を立てて、教室の戸が開かれた。そこに立っていたのは、そう、説明の必要もない―――
我らが十一番隊隊長・更木剣八!
ごくり、と唾を飲み込む院生たちを気にも留めず、剣八は堂々たる足取りで教壇に立つ。
「今日一日、お前らの特別講師をすることになった十一番隊隊長、更木剣八だ。よろしくな」
「あたしは副隊長の草鹿やちる!みんな、よろしくねー!」
院生たちは誰一人、口を開くこともできない。そんな一同に剣八の渇が飛ぶ。
「返事はどうした!?」
「は、ハイィっ!」
「よし、いい返事だ…いいか!最初に言っておく!」
バン!と教卓をぶっ叩く剣八。その勢いで教卓は粉々になった。
そして昨日寝ずに考えた(昼寝しすぎて眠れなかったからである)口上をぶちかました!
「俺はてめえらの生まれも育ちも経歴も問わねえ―――求めるのはただ一つ、強さだ!俺は強え奴が好きだ!
嫌いなのは弱え奴だ!他にはなにもいらねえ―――てめえらが本当に死神になりたいってんなら、俺から言う
ことはこれだけだ…強くなれ!そのためにはそれ以外の全てを犠牲にしても構わねえ!口からクソ垂れる前に
敵の一人でも斬り殺せ!日々の困難と逆境こそが、てめえらを非凡な死神にしてくれるだろう!」
シーン…と教室が静まり返った。院生たちは一様に顔を青ざめさせている。剣八はそんな彼らを尻目に、時間割
に目を落とした。
「一時限目は鬼道(きどう)の演習か…よし、お前ら、外に出ろ!泣いたり笑ったりできなくしてやらあ!」

―――演習場。
「さて、準備はいいか?」
「は、はい…ですが、あの、すいません。この時間は鬼道の演習…ですよね?」
「あん?そうだ。それがどうした」
鬼道。一般的な言い方をすれば<術>や<魔法>と呼ぶものであり、敵を直接攻撃したり、動きを封じたりと、
様々な効果が期待できる死神の秘術である。
「なのに、なんで俺たち…剣を持ってるんでしょう?」
「なんだ。そんなことかよ」
剣八は凶悪そうに笑った。
「鬼道なんて自分の腕だけで戦えねえ、そびえ立つクソみてえな奴の使うみみっちい技だ!そんなもん習うよりも、
実際に剣を握って組手をやってた方が遥かに有意義だ!分かったかヒヨッコ共!」
「わ、分かりましたぁ~~~っ!」
もはや半泣きになりながら組手を始める三年一組の面々。剣八はそれを見て、満足げであった。

―――二時限目。
「あの…二時限目はソウル・ソサエティの歴史学…ですよね…何故俺たちは外に出て腰にロープを付けられ、しかも
そのロープの先にはタイヤが括り付けられてるんでしょうか?」
「ああ?バカかてめえは。虚のケツにド頭つっこむぞ!教科書開いてお勉強なんかした所で、強え死神になれるか!
んなことしてる暇があったら体力作りだ!分かったかクソ野郎!」
「わ、分かりましたぁ~~~っ!」
やはり半泣きでタイヤを引きずって走り出す三年一組の面々。剣八はそれを見て、うんうんと頷いた。

―――三時限目。
「…もはや質問するのもアレですけど…三時限目は…」
まるでヒマラヤにでも行くかのような格好をさせられた三年一組の皆さん。
―――もはや多くは語るまい。

…………さて、この後もちょいとばかしハプニングはあったものの、ついに最後の授業となった。
奇跡的に三年一組の院生たちは一人も欠けることなく、この最後の授業に臨む。
今彼らはソウル・ソサエティではなく、現世へと来ていた。ちなみに彼らの姿は、普通の人間には見えないので、
集団で歩いていても後ろ指を差される心配はない。
「よしお前ら!最後の授業はここ現世で、ダミー虚を使っての実戦演習だ!適当にやってこい!」
指示はそれだけである。剣八はさっさと横になって、昼寝の態勢に入ってしまった。
「ほら、どうした?さっさと行きやがれ!」
「…はーい…」
院生たちのやる気は、明らかに氷点下を下回っていた。

「―――ったく、やってられねーよな」
院生の一人が、物陰でさぼりながら仲間たちとだべっていた。内容は―――剣八に対する悪口である。
「隊長なんて言って、単なる力馬鹿じゃないか。あんなのがトップの一人だなんて、護廷十三隊も人材不足なんじゃ
ねーの?案外、俺たちが入隊したら、あっさり出世できたりしてな」
「おいおい、言いすぎだって…けど、ま、確かに頭は悪そーだよな、あの人」
「それ以前に、ほんとに強いかどうかも疑問だね、俺は。確かにすげー威圧感はあるけどさ、実はああ見えて大した
ことないんじゃないの?」
「おまけに背中に女の子まで背負ってさ。実はヤバい趣味でもあるんじゃ?」
「ははは…」
―――その時だった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「た、助けてくれぇっ!」
「な、何だ!?」
ぎょっとして、だべっていた連中が物陰から出てきて―――隠れていればよかったと、心の底から後悔した。
「ほお…そこにもいたか、美味そうな連中が」
それは―――怪物としか言いようのない存在だった。巨大な芋蟲のような身体に、頭部には髑髏のような仮面。
その目の前にはダミー虚との実戦演習を行っていたはずの院生たちがいたが、一様に動かない―――いや、恐怖に
支配され、動けないのだ。
「あ…ああ…」
がちがちと、院生たちの身体が恐怖で震える。
これが―――これこそが―――本物の<虚>。全ての魂に仇為す、罪悪にして害悪なる存在!
「今日は運がいい…霊力の高い奴らが、こうもうじゃうじゃと…くっくっく、さあ皆の者、今日は祭りだ。存分に
喰らおうぞ!」
号令と共に、空間に裂け目ができて、そこから無数の手が伸びてきた。その奥からは、欲望に満ちた瞳が爛々と、
不気味に輝いていた。
「我が仲間たちも集まってきたぞ…!さあ、宴の時間だ…まずは貴様から喰ってやろう!」
「ひ…!」
一瞬にして巨大な腕で身体を掴まれ、院生は情けない呻き声を漏らす。
「い、嫌だ…死にたくない…助けて…誰か…」
しかし、仲間の院生たちは動くことさえできない―――
次は自分の番だ!その恐怖の前に、ただ怯えるばかりだった。
虚が焦らすように、恐怖する様を愉しむように、ゆっくりと大きな口を近づけ―――
頭から、真っ二つにされた。
「え…?」
虚の腕から解放された院生はよろよろと立ち上がり、周りを見渡した。果たして彼の救い主は、堂々たる足取りで、
悠然と修羅場へと踏み込んできた。
「ちっ…実戦演習のはずが、本当に実戦になるとはな…」
そう―――護廷十三隊・十一番隊隊長にして、三年一組特別講師―――更木剣八!
「大方、大量の霊圧が集まってるのを嗅ぎ付けてやってきたってとこだろうが、残念だったな」
剣八は、笑う―――それは、本当に、愉しそうに。頭上高く振り上げられた剣―――それは死神だけが使うことの
できる武器、斬魄刀(ざんぱくとう)。剣八のそれは、永い年月の中で一度も手入れをされたことがないかのように
ボロボロに刃こぼれしていながら、まるで豆腐を斬るかのように虚を更に一体、あっさりと両断した。
「餌は、てめえらだ」
そして剣八は、虚の大軍の中にその身を躍らせた―――!
「さーて、皆さんごちゅーもく。剣ちゃん先生の本日最後の授業です!」
それを横目にして、やちるは呆けたままの院生たちに向けて、にかっと弾けるような笑顔を浮かべた。
「先生が実際に虚と戦う手本を見せてくれます!さあ、お見逃しなく!」

―――そして。
「バ…バカな…百体の虚が…三十秒持たずに全滅…だと…?」
最後の虚もまた、それだけ言い残して消えていった。
「けっ…こんなもんかよ。ジジイのファックの方がまだ気合が入ってるぜ…ん?」
剣八は、自分を見つめる院生たちの目の輝きが違っているのに気付いた。
「ざ…更木隊長!いや…剣八先生!ありがとうございます!」
院生の一人が、深々と頭を下げながら大声で言い放った。先程、剣八の陰口を叩いていたうちの一人だ。
「俺…俺…先生のこと、誤解してました!隊長なんて名ばかりのただの乱暴者で、俺たちのことなんてウジ虫と
しか思ってないんじゃないかって…けど、けど、今の戦いを見て、自分の愚かさを知りました!あなたは本当に
俺たちのことを考えていてくれてたんだすね!」
「いや、別にそういうわけじゃなかったが…」
その勢いに、流石に剣八もちょっと引いていたが、院生は構わず畳み掛ける。
「俺…ここを卒業したら、必ず十一番隊に入って、もっと強くなります!」
「俺も!」
「ぼ…僕も!」
「私も!」
次々にそんな声が上がる。彼らの瞳の中には、剣八にたいする尊敬の念がドン引きするくらい輝いていた。
「よーしみんな!剣八先生を胴上げだ!」
「おっしゃあ!」
「おいおい、お前ら…」
反抗する間もなく、剣八は院生たちに担ぎ上げられ、高々と宙を舞った。何故か背景は川原になっていた。
剣八も最初は戸惑っていたが、次第に表情を緩めていく。そして、最後にこう呟いた。
「全く…とんだ休日だったが、こういうのも悪くはねえか」

―――数日後。
「隊長!どういうことっすか、これは!」
「なんだ一角、やかましいな」
「なんだじゃないですよ。見てくださいよ、これ!」
ばさっと大量の書類が、剣八の目の前を舞った。
「大量の請求書がウチに来てるんすよ!一体何をやったんですか!?」
「あー…こないだの特別講師の奴だな。経費で落としとけ」
「経費ってレベルじゃねーぞ!何で霊術院の特別講師なのにロケットランチャーとか90式戦車とか果ては水爆
まであるんですか!?」
「ああ、理科の授業で使ったアレだな」
「明らかに理科の授業じゃねー!」
一角は禿頭から湯気を立ち昇らせながらも、律儀に突っ込んでいた。
「ともかくどうすんですか。隊の予算を圧迫しまくりですよ」
ふうっと剣八は、溜息をついた。
「仕方ねえ…十一番隊隊員の今期のボーナスを全面的にカットするしかねえか」
「俺たちにまでとばっちり喰らわす気満々だよこの人!」
「へっ…未来ある若者たちを導くためだ。そんくらい、投資だと思っとけ!」
「柄にもなくいいこと言って無理矢理終わらせないでくださいよー!」
一角の悲鳴が、十一番隊隊舎に響き渡ったのだった―――