SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 戦闘神話51-3


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part.4
act2

「さぁて、星矢!檄!これからオニイサンと一緒に夜遊びと…」

「却下!」

「右に同じ!」

悪所に誘うのはいつも風間虎太郎なのだが、
さそうに相手が若すぎるのというのも理解の上だから性質が悪い。
だが、星矢にも檄にも通用しない。
なんだかんだ言って城戸沙織ことアテナに操を立てている不器用な星矢と、
年齢からくる気後れでそういった大人の階段を上れない檄なのだ。

「まったく、マジメだねぇ~。
 特に檄!お前さん毎日のおべんきょーでストレス溜めてんだろ?
 だったら、こう、オネエサンの中でこう、プワァーっ…」

ごん、と虎太郎の頭に星矢の鉄拳突っ込みが入る。

「下品!」

つまりはそういう事だ。
清廉潔白などとは言わないし、冥府に乗り込んだ際に強烈な屁をぶちかました星矢であるが、
苛烈とは言え魔鈴の弟子として育ったのだ。
そういった人品は「躾け」られているのである。



「まぁったく、つまらねぇなぁ、オマイさん達。
 若いうちからそんなんじゃ色々つまらないぞ?」

まだ言い足りなさそうな気配を見せる虎太郎だが、星矢がごきりと掌を鳴らした事で退くことにした。
星矢の裏事情を詳しく知らない事になっている「風間虎太郎」とはいえ、共に過ごす中で、
星矢の尋常ならざる立ち居振る舞いに気が付かぬほど愚鈍では無い。

渋々といった風を見せて星矢たちと虎太郎は別かれた。
そして、十分星矢とは間を取ったと判断した後、
虎太郎はもう一つの顔のために星矢の後を追って隠密行動を開始する。
彼が風間虎太郎を名乗り、星矢と同じ職場に居るのは、決して偶然などではない。
虎太郎の本来の主の命令により、星矢とその家族を護衛するためなのである。
星矢は地上最強の一人だ。どんなに油断し、隙だらけにみえても、その実、常在戦場の人。
いきなり襲い掛かったところで刺客のほうが返り討ちに会うだけだ。
だが、その姉星華はそうとはいえない。
普通よりバイタリティと体力のあるだけの人間だ、隙を突いて害をなす事など、容易いといえよう。
そのため、星矢のみならず姉にもこうした護衛が付いているのだ。
彼が星矢の護衛についている理由は、星矢にくる刺客の戦闘力の問題である。
言うまでもないが、星矢は神すら倒し得る神聖闘士だ、自然その刺客も強い。
その刺客に対して、戦力として数えられる者はわずか二人しか居ないため、この選択は当然といえる。
でも、護衛するならやっぱり綺麗なお嬢さんのほうが、と思ってしまうから星矢の護衛にまわされたのかもしれない。
彼の主はあれで中々嫉妬深い。
頭に矢をぶち込まれる程度ではすまないかもしれない。

「やぁー、仮面に鎧のオニィサン。
 こんな綺麗な月夜になんの御用かね?」

そうしているうちに、星矢につきまとうように、一人の戦士が現れた。
星矢を付けねらう勢力のうち、最も執拗な勢力の一人だ。
幸い、こちらに気がついては居ない。そのため、彼が布いた結界にまんまと入り込む結果になっていた。
だからといって先制攻撃などしないのがこの男だ。
その戦士の行く手を阻むため、「風間虎太郎」の顔を捨て去る。
三つの宝石のついたベルトを腰から抜き放ち、一振りすると、それは棍へと姿を変えた。

「邪魔だ」

彼の姿を認めた戦士は、掌に銀の槍を生むと、躊躇無く放つ。

「俺としても、邪魔といわれてハイソウデスかと引き下がれんのさ」

飄々とした風で銀槍を打ち払うと、そのまま戦士に飛び掛る、が戦士はこれを易々とかわす。
しかし追撃の横薙ぎは、彼の手の中で毒蛇のように伸びると、猛禽の鋭さをもって戦士のわき腹に抉りこまれる。
まるで生物のように変幻自在に戦士のガードの間隙を縫ってさらに一撃、鳩尾に叩きこまれた。

「オイオイ、名乗りくらいしてくれよ?
 …、ま、俺もそういわれたら困るがね」

腸をこねくり回されるような凄まじい痛みに一瞬とまった戦士を、彼は容赦なく叩き臥せる。
正中線に五連続の突き、右肩に一撃、左太ももに一撃、こめかみ、顎先、脾臓、
相手を無力化するという点にのみ絞られた攻撃に、戦士はなすすべも無く地を舐めた。
普段の飄々とした姿がうそのように、強い。
棍をまるで手足の延長のように扱うその姿は、夜空に輝く一つの星座を想起させた。


「なんせ、ホラ。」いうと、棍で月を示し、

「俺が惚れた女が、見てるんだからさ」無様に蹴り転がされ、うめき声を上げる戦士の胸板を踏みしめる。

「昔はそりゃあいろいろやったもんさ。
 巡り巡ったから変節漢だの言われたさ」

潮焼けした肌、精悍な相貌、力強い黒瞳。逞しい体躯。

「だが、それでも好いた女の為にこの命すててやったもん、さ」

その身を包むのは、薄汚れたツナギではなく、いつの間にか現れた月のように輝く鎧だ。
男は、哂う。
それは戦士にではない、戦士の主に向けたものだ。
夜の海に浮かぶ月のような、静謐でありながら力強い小宇宙が夜気を震わせる。

「残ー念、無ー念~♪
 お天とサンは、決して月にゃあ出会えねぇ~んだって伝えときな!オマイさんの主にな!」

棍を今は見えぬ太陽へ向かって突き上げるその姿、それは
神話に謳われた狩人、オリオンそのものである。

嘗て、天帝アポロンの策略によって命を落とした彼だったが、その死の瞬間、エイトセンシズに覚醒し、
亡者としての呪縛から辛うじて逃れることが出来た。
しかし、その代償は易くは無かった。
海皇子として授かった恵まれた小宇宙は、肉体の消失による存在維持のために、
また一から鍛えなおさねば成らなくなり、戦士としての再起は想像を絶するほどの時間を要した。
だが、諦めの悪さは海皇一族のお家芸。神話が過ぎ去り、英雄たちが消え果ても、オリオンは諦めなかった。
その忍耐は実を結び、西暦紀元後にこうして再生なったのである。

海皇ポセイドンの子として生まれ、流れてアテナの下で聖闘士として戦い、
さらに流れて月の女神の陣営にある彼は、
世にも珍しいことに三陣営からそれぞれ称号を得ている。
海皇の息子、最初の海将軍の一人、シードラゴン・オリオン。
その武名による最初の聖闘士の一人、聖闘士オリオン。
そして、彼が愛するものを護るためにたどり着いた道、月闘士(イエーガー)オリオン。

「調子にッ、乗るなッ!」

怒りをこめて胸の上の脚を払いのけると、戦士は銀槍をオリオンに向かって投げつける。
牽制と見ぬいたオリオンは、なんとその銀槍を引っつかんで戦士の肩に突き刺し、大地に彼を縫いとめた。
呻るような声を漏らすが、叫びはしないあたり、流石は戦士だ。

「しかしまぁ、オニィさんもしつこいねぇ…。
 いつもだった…ッ!
 しまった!」

そこでオリオンが振り返るのと、地上から無数の流星が夜空に駆け上がるのは同時だった。
今の今まで星矢に向けられた刺客は彼だけだったのだ、追い払っても二日三日もすれば再び現れる。
事前情報では、彼の勢力の持つ手勢は二名。
一人は度々星華をねらって彼の仲間と闘っていた、もう一人は目の前の戦士だ。
そう、三人目がいたのだ。
切り札たる三人目が。

「やっべぇ…、バレた!」

精悍な顔がさっと青ざめていた、彼の主の命令は、あくまでも秘密裏に星華星矢姉弟を護衛することである。

「いや、だいぶ前から気付いてたぜ?」


その声に振り返ると、星矢が立っていた。
最強のはずの敵を鎧袖一触といった風情の強さ、明らかにほかの神聖闘士とは一線を画していた。
なるほど、アポロンが危険視するわけだ。

「い、いよぉ!星矢!散歩か?
 お、それとも…」

みれば、いつの間にか血痕だけ残して戦士は逃亡していた。

「虎太郎さん、とぼけるはやめよう」

星矢の態度は友人に向けるものではない、大気が静かに震えていた。
戦闘態勢の星矢だった。
戦士一人を打倒した直後だけあって、少々気が立っている。
数秒にらみ合うと、虎太郎の顔に戻ったオリオンは、ふぅーっと長いため息を吐いた。

「とりあえず、場所移そうや、星矢。洗いざらい全部吐くから」












アポロンが星矢たち神聖闘士を敵視している。中でもハーデスに傷を与えた星矢を特に。
神は絶対であるからこそ神である。
故に、タナトスとヒュプノスを打倒した神聖闘士はその根幹を揺るがす存在として、
半減したオリンポスの神々の議題にアポロンが取り上げたのだ。
しかし、竈(かまど)の女神ヘスティアや、月と狩の女神アルテミスのとりなしもあり、
アポロンは大々的な行動に出れないで居た。
しかし、アポロンはそれでも彼女たちに隠れてこうした刺客を放っていた。
本来なら、こうした行動はオリンポス十二神次席である海皇ポセイドンが禁じねばならないのだが、
聖戦によって神としての力の大部分を封じられてしまった為、事実上野放しになっているのだという。
妹であるアルテミスや、位階がアポロンよりも低いヘスティアに止める術はなく、
そして地上に顕現したが故に、オリンポス宮殿から遠ざかったアテナはアポロンの行動を知る由も無い。
神と神とが争う場合、自陣営の人間を使って戦わせ、その結果をもって良しとせねば成らない。
それを破るような行動は、天帝の座にあり、オリンポス神の事実上の盟主として相応しからざる行動である。
故に、アルテミスはオリオンとリュカオンに命じてその妨害に当たらせたのだ。
それが彼女に出来る最大であった。

「と、ここまでが神々の大いなるシモ事情。
 で、こっからが人間たちの裏事情」

と、茶化した風にオリオンは言う。

星矢が聖闘士であり、聖域の中枢人物であるというのは、銀河戦争の一件もあり知られており、
各国の裏から注目を浴びていた。

だが、直接手出しは出来ないことは巨大な組織ほど十二分に理解している。
過去、前々聖戦終戦後のことだ、
聖域にちょっかいをかけた魔術師協会が壊滅したという事実があるからだ。
魔術師協会上層部が互いに殺しあい、協会に登録されていた魔術師全員がすべて変死したこの恐るべき事件は、
教皇シオンの名を裏で一躍有名した一件である。この一件以降、この世界から本物の魔術師は絶滅した。
聖域に入った者が聖域から出るには、聖闘士になるか死体になるかしかない、その恐怖伝説の始まりであった。
そして、現代ではイーグルサム(米国)と聖域には手を出すなというのは不文律となっている。

「だが、その不文律を破る者が昨今現れている。
 そういった連中からも星華星矢姉弟を護るようにも言われてんのさ、俺ぁ」

難しい顔で黙り込んだ星矢に、オリオンは虎太郎の調子に戻ると。

「それになぁ、知ってるか?神話の英雄ってのは平穏な死を迎えた奴なんて居ねぇ。
 ヘラクレスの大将、ベレロフォン、そして俺…。みんな非業の最期さ…。
 今の今まで女神の為に闘って英雄になったお前さんが、ようやく手にした平穏。
 それを護ってやりたいなって言うのが、ま、俺が護衛してる最大の理由だよ」

そう言って、朗らかに笑った。

「…すまん、虎太郎さん。俺、虎太郎さんの事誤解してたみたいだ」

「誤解したまんまでいいさ、俺ぁオマイさんみたいな奴が好きでな。
 一緒に馬鹿やんのも中々良いもんさ」

潮焼けした顔で満面の笑みを浮かべるオリオンに、星矢も釣られるようにして笑う。
「これが開戦の狼煙になるのだろう」という思いを胸に秘めて。







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