SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ その名はキャプテン 六十三話


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~バファル帝国主要都市メルビル~
今日も吟遊詩人の語る歌を効きながら、昼夜を問わず酒を飲み明かす者達が居た。
「あぁぁぁ~~~っ!うめぇ!」
豪快にジョッキに注がれたビールを一気に飲み干す中年のオヤジ。
その名もキャプテンホーク、相方のゲラ=ハは船の修理のため船大工と交渉中だ。

横でちびちびとオレンジジュースを飲む、逞しい男。
北斗神拳伝承者ケンシロウである、パブでジュースとはけしからん、どうにも食への意欲も貧相である。
テーブルには、サラダは残しても肉は残すなと教わらなかったのか、この…ド低能がァーッ!
「ケェーン!何してるんだ、お前も飲め!」
そう言ってジョッキをテーブルに叩きつける。

「酒は勘を鈍らせる・・・それに、俺の居た世界ではジュースすらも贅沢だ。」
そういってジュースの注がれたグラスを見つめる、北斗の使命。
戦いが終われば、また迷うのか俺は。
頭に纏わりつく靄を払う為、ジュースを飲み干すとビールへと手を伸ばした。

「なんだ、飲むんじゃねぇか。」
嬉しそうにケンシロウを見つめながらも、店主に酒の追加を頼む。
ビール、核戦争が起こる前は庶民の出来る贅沢の一つだった。

「がっ、はぁ・・・はぁ・・・。」
なんとも苦い、だが不思議と不快にならず心地よい気分にさせられる。
すっかり忘れきっていた味を今一度、思い出す。

飲み干して一息ついた途端、店主によってビールが注がれる。
横には、顔色一つ変えずにジョッキを空にするホークが居る。
「酒って奴はな、上品に飲むなら着飾って女の話でもしながらワインでも口にすりゃいい。」

「だがよ、俺達みたいな馬鹿は武勇を語り、それをコケにし、時には殴り合いながらビールを飲むんだぜ。」
そう言って、ホークはケンシロウの肩に手を置くと、ケンシロウも悟ったのか。
お互いに乾杯、と叫びながら、ビールがこぼれるのも気にせずジョッキをぶつけ合った。

酒が回ってきた、酔っぱらうのがこんなにもいい気分とは知らなかった。
ホークがサンゴ海での仕事を話してくれた、ホークの海賊行為は正直いい気分にはなれなかったが、
近づいた船を皆殺しにするという物ではなく、武力と金だけを奪う物だった。
「船を襲い、武器とお宝を奪えば殺す意味なんて無くなっちまう、俺は人殺しがしてぇ訳じゃねぇ。」
席を立つとこちらに背を向け、窓を開けて海を見つめるキャプテン・ホーク。
実力では自分に大きく遅れを取っている筈なのに、その背中は父親のように大きく見えた。

「未開の島へ宝を目指し・・・時には海軍まで相手に戦って・・・それでどうなるというんだホーク?」
振り向いた男の顔に移る笑顔が、最大の兄と重なる。
顔も、性格も兄とはまるで違うこの男の姿が何故。
やはり酒の飲みすぎなのだろうか。

「魔物に食われて骨にならなけりゃ、御縄になって豚箱いきだな。」
「骨にもならず、海軍からも逃げ延びたら?」
ホークの答えを待つ間もなく、ゲラ=ハがパブのドアを開いて店に入ってきた。

手早くパブのマスターに船に積み込む酒樽の代金を払い、ホークに耳打ちする。
「なにぃ?そりゃ急がねぇとまずいな。ゲラ=ハ、ケンに付き合ってやれ。」
すっかり質問の事など忘れ、店の外へと出て行くホーク。
それを呼び止めようと、声をかけようとするが呂律がまわらない。

テーブルの上でテーブルに転ぶ姿は滑稽で、普段のケンシロウらしさを微塵も感じさせなかった。
「あの人はお酒に強いですから、無理するとそうなりますよ。ストロベリーサンデーを一つ。」
ケンシロウの横に座り、メニューに目を通しながら店主に注文を出す。

「奇遇だなトカゲの兄さん、俺もそいつが大好物なんだ。奢ってくれよ。」
奥のテーブルに座った赤いコートの男が、ピザにかじりつきながら話を振ってきた。
「いいでしょう、同じ詩人の歌声の下に集う者として彼にも一つ。」

男に血の様に赤いゼラチン状のデザートが運ばれ、お礼とでも言いたいのかピザを一切れ投げてきた。
チーズを撒き散らすそれをしっかりとキャッチし口に運ぶ。

「ゲラ=ハ・・・何故、お前達は海賊を続ける。」
「唐突ですね、どうしてそんな事を聞くのですか?」
ケンシロウの突然の言葉に、酒へと伸ばした手を止めて代わりにスプーンを取る。

「ホークは人殺しに興味はないと言った、だが海賊とは・・・。」
「意外と奥が深いですよ、中には義賊であったり海軍を設立する者もいます。」
だが、聞いた話ではホーク達がしている事は略奪と宝探しだ。
他人を助ける事はあっても恵むような事はしないし、前の船でも少数で活動していたらしい。

巨大な口を持つゲラ=ハにはゼリー状の食物は食べ辛いのか、不器用であるせいか、
ストロベリーサンデーを乗せた皿には固まった血の様なゼリーが散らばっていた。
「他の道はないのか、漁師でもやってける筈だ。」

散らばったゼリーをスプーンで集め、口に放り込んで飲み込む。
「失礼、食器も食べ方も人間のマナーに従うと、どうにも上手くいきませんね。」
そこそこ溶けた氷で水割り同然になったウィスキーを手に取る。

「・・・あるのかもしれませんね。こう見えても私は、村では一、二を争う戦士です。
守人となってジャングルで仲間と暮らすのも悪くはないと思います。」
では、やはり戦いを求めているだけではないのか。
平穏を望む人々の為に、旅を共にした仲間を殺さなければいけないのだろうか。
悪を憎む血が、酒の力と相まってケンシロウの体を熱くする。

「キャプテンはもっとあるでしょう。あれだけの腕ですから漁師でも食いぶちには困らず、
海軍に入れば斧も水術も使えるあの人なら出世も出来ると思いますよ。」
所詮、同じなのか。
そう、レイも元々は悪党だった。
マミヤに出会い、アイリと再会せず、正義を忘れた復讐鬼であれば殺していたかもしれない。
どいつもこいつも歩む道を間違え、救いようが無くなるまで間違いを繰り返す。
レイは運が良かった、心が腐る前に死滅した世界で肉親と会えたのだから。
奴等の断末魔を忘れる為に、今は注がれた酒を飲み干す。

「私は、人間に対して閉鎖的な故郷が嫌で飛び出したのです。
ジャングルの奥深く、我々の生みの親であるサルーインを崇め続け、人を拒絶し続ける。
私はそれが嫌でジャングルを飛び出したのです、この広大な世界の一端で細々と暮らす。
そんな一生を無駄にするような生き方、勿体無いと思いましてね。」

気持ちは分かる、俺も広い世界で強敵との出会いと別れを重ねてきた。
しかし、他の道を選んでも世界を回れた筈だ、人殺しの理由にはならない。

「ゲッコ族を見慣れてない人たちからは、魔物に間違われたりしましたがね。
サルーインが作ったのだから魔物と言えば魔物ですが、我々にも人と変わらぬ心があります。
飛び出して早々に、世界の広さと厳しさを痛感して行く当てもなく彷徨ってました。」

「そこを拾われた訳か・・・。だが、お前にとっては恩返しだろうが、
その行為が人殺しに使われるというなら、俺は・・・。」
コップを強く握りしめて砕く、酒で力の制御が効かないのか、割れた事に気づく様子もなく俯くケンシロウ。

「いえ、恩返しではなく自分でこの道を進みたいと思ったのです。
私達も人間と同じなのです、破壊を望む心も持ち合わせています。
人を殺す事に躊躇いは持ちません、勿論、相手が同じゲッコの民でも敵であれば。
まぁ、少し良心が痛みますがね。あなたもそうだったのでしょう?」

そうだった、だと?一体何を・・・

「今のあなたには戸惑いがある。ワロン島で戦った時に違和感を感じました。
それに加えて、あなたの質問を聞いていれば分からなくもありません。
あなたは悪に慈悲を与えたくはないのです、ですが精神が、魂が拒否している。」

「化石魚だったか、あの魔物はこの世界で最強に近い魚類だと聞いた・・・。」
「最後の一瞬だけでしょう、まともだったのは。あなたに魔物が善か悪か、それが分かるとも思えません。」

数秒、酒場の中は時が止まっているかのように静まり返った。
その沈黙を破ったのは『声』、誰かがどこかで発した町全体に響き渡る程の絶叫であった。