SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 狂った世界で 序章 47-1


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「あ、シカマルー!」
「シカマルも召集?」
 いのとチョウジが、こちらに歩いてくるシカマルに向かって手を振る。
 シカマルは頷くと、軽く手を挙げて応じた。
「いのに、チョウジも……なーるほど。アスマ班、全員集合ってワケか」
 木の葉の里、火影執務室前。奈良シカマル、山中いの、秋道チョウジの三名が、顔を揃えていた。
 彼等第十班は、緊急任務との召集を受けて、火影執務室に呼び出されていた。
 シカマルは二人と視線を交わらせてから、代表するように一歩前へと進み出て、多少緊張した面持ちで、扉を叩く。
「失礼します」
「ああ」
 室内から返事が返ってくるのを確認して、シカマルたちは執務室に足を踏み入れる。
 五代目火影、綱手。その秘書兼お目付け役、シズネ。それから、彼女の胸に抱えられているトントン。
 そこには、いつもの二人+一匹の姿があった。だが、揃って、表情にはいくらかの翳りがあるようにも見える。
 最後に入室したチョウジが後手で扉を閉めるなり、綱手は三人を見回して、単刀直入に切り出した。
「よく来てくれた。早速で悪いが、緊急任務だ。木の葉崩し直後の混乱に乗じて、音のスパイが木の葉へ潜入していると、先日、暗部が突き止めた」
 言いながら、綱手は椅子を手前に動かして、机の引き出しを漁る。
「暗部からの情報によれば、明日の明朝、木の葉に潜入しているスパイと、音側の諜報部隊が直接接触、情報交換を行うらしい。場所はここだ」
 そして、引き出しから取り出した四つ折りの紙片を、事務机の上に広げて見せた。それは、木の葉の里周辺の地図だった。
 地図の一点――木の葉の里から東、数キロの地点――に、手書きの赤い丸が記されている。
「任務内容は、木の葉の内部情報を記したと思われる巻物の奪取、木の葉スパイと音諜報員の捕獲、もしくは抹殺」
「捕獲?」
 頓狂な声で、チョウジが聞く。


「ああ。出来ればイビキあたりに引き渡して、色々と聞き出したいからな。
 生け捕りが望ましいが、止むを得ない場合、生死は問わない、という訳だ。他に何か質問は?」
 綱手が一通り説明を終えると、シカマルが即座に挙手した。
「敵の人員、装備ですが、予想出来得る範囲で、どの程度のものになりそうですかね」
「音側の諜報部隊は人員、装備共に未知数だが……任務の性質上、少数精鋭の編成になるだろう」
「目立つのを嫌い、そう大人数にはならない、と」
「そうだ。木の葉側のスパイは、人数は一人か二人。中忍用のベストと、後はバックパックに、クナイ、手裏剣などの基本装備。
 お前と同じ装備だと考えてもらって差し支えない」
「了解」
「本任務は、Sランク任務になる。任務の難度……と言うよりは、その重要性を鑑みてのランク設定だ。心して取り掛かってくれ。頼んだぞ」
「はい!」
 三人は姿勢を正して、声を揃えた。

「何で、僕らなんだろうね? Sランクだよ、Sランク」
 帰り道。懐に隠しておいたスナック菓子を頬張りながら、チョウジは誰にともなく問いかける。
「おそらくは、急に入ってきた情報だからだろ。それに、木の葉崩しの影響はまだ色濃く残ってる。
 上忍を何人も、一定以上の規模の戦闘が想定できない任務に回すような余裕は、今の木の葉にはない。
 今回くらいの規模なら、オレたち……担当上忍不在の第十班でも任務遂行に支障はないって判断したんだろうさ」
 そこまで話して、シカマルは大きく溜め息をつく。その『判断』には多大な『妥協』が含まれていたであろうことは、容易に想像できたから。
 それに、昇格して間もないとはいえ、シカマルは三人の中では唯一の中忍。その分、任務における責任も重大だった。
「あー。出払ってなければ、アスマあたりに回ってきた任務かもしれねーなぁ、これは」
「いいじゃない。それだけ、シカマルが信頼されているってことなんだから。中忍選抜試験合格間もないのに、Sランク任務の指揮だなんて、きっと異例の抜擢よ」
 どこか物憂げな表情で空を見上げるシカマルの肩を、励ますようにいのが叩く。
「そういうもんかねぇ」
「そういうもんなの! シカマルはやればできるんだから。もう、呑気に昼行灯を演じている場合じゃないってことー」
「別にそんなもん演じてなんかいねーよ。ただ、緩急付けなけりゃ、やってられないだけで……」
 と、シカマルは途中で言葉を切り、後ろを振り返った。チョウジが一人、歩みを止めていたことに気が付いたからだった。
「どした? チョウジ」
「いや、その……今、誰かに、見られてたような気がして」
「視線? 鈍感なチョウジにしては、珍しいこと言うわねー」
 薄く笑いながらも、いのは油断なく周囲に目を遣り、気配を探る。


 通常、木の葉の里内部でここまで神経過敏になる必要はないのだが、先程聞いたばかりの任務の一件が、心にひっかかっていた。
 木の葉に潜入している音のスパイとやらが、シカマルたちの動きに勘付いた可能性もないとは言えないからだ。
「誰もいないみたいよ?」
 数秒の間を置いて警戒を解き、いのが首を横に振る。
「うーん、気のせいだったのかな?」
 ばつが悪そうに頭を掻いてから、チョウジは再び歩き出した。
 シカマルも念の為、周辺に注意を払ったが、不審者どころか猫一匹見当らなかった。
 これはいのの言う通り、チョウジの勘違いと考えるのが妥当だろう。
 しかし、シカマルはその正体不明の『視線』の話に、得体の知れない不安を覚えていた。
「何にも起こらなけりゃいいんだが……」
 シカマルの小さな呟きは、少し前を歩く二人に届かないまま、抜けるような青空に吸い込まれて消えた。

 夜。奈良家、シカマルの自室。
 シカマルは一通り装備を確認し終えると、バックパックの中身をテーブルに並べて、何やら細工を加えていた。
「めんどくせーけど、備えあれば憂いなしって言うしなぁ」
 独り言を零しながら、黙々と手を動かす。動かしながらも、任務のことを考える。
 巻物の奪取、捕獲に使えそうな術は……オレの影真似、影首縛り、いのの心転身、心乱心。
 それらの術が持つ特性を最大限に活かす為には……
 ふと、作業に夢中になっていたことに気付いて、壁に吊り下げられた時計に目を向ける。
 別れ際に決めた任務開始時刻まで、一時間を切っていた。
 スパイと諜報部隊が落ち合うのは早朝なのだが、現場を抑える立場のシカマルたちは、その先手を取り、網を張っておかねばならない。
「さーて、そろそろ出るか」
 シカマルはベストに袖を通すと、テーブルの上に並べた忍具を手早くバックパックに収める。
 よし、と気合を入れて、任務モードにスイッチを切り替えてから、いのとチョウジの待つ集合場所へと急いだ。