ボブルの塔でのゲマ一行との激戦、ゾーマの出現、バーンとの邂逅等。
今回のドラゴンオーブ争奪戦において多くの敵と出会い、戦々恐々したが、念願のダイと再会出来たという喜びを改めて実感し、
その夜、六人は枕を高くして眠る事が出来た。
ポップとラーハルトは待ち望んでいた者に再会出来た事が余程嬉しいのだろう。
彼等は無意識の内に涙をながしていたのであった。
~魔界 ゾーマの城~
その城は標高が2000メートルはあるであろう山脈に包まれた小さな島の中心にそびえ立っていた。
周辺で生活している魔物も、この城から発せられるオーラを感じ取らずにはいられない。
同時に、それだけの力を持つ“彼”には敬意を払い、絶対的な服従を誓う事を余儀なくされる。
だがこの城で生きる魔物、および周辺の魔物は、その主に永遠に仕えていく事が大変名誉であるのだ。
「ふっ少々取り乱してしまったようだな。全く、奴は千年経ってもまるで変わらぬ男よ」
この禍々しい城の主、ゾーマが多少笑みをこぼしながらバーンとの再会を思い出す。
「失礼します」
玉座の間に爬虫類の様な顔をした、一人の魔族が入室した。
「ゾーマ様、私を呼ばれるとは…一体どのようなご用件でしょうか?」
「バラモスよ…そなたにはこれから地上へ上がってもらう」
ゾーマは表情を変えずに続けた。
「そなたならあの地上を制圧する事も出来るだろう。期待しているぞ、バラモス」
バラモスには分かっていた。これまでこの主君は地上を制圧せよ等という命令を発した事はない。
元々彼には地上を欲しよう等という欲は無い。興味を持たれてはいないのだ。
そうであるにも関わらず、地上を制圧せよとの命令、これは再会した大魔王バーンへのアンチテーゼである。
これまでバーンとヴェルザーのいざこざを文字通り、高みの見物を繰り返していたが、ここに来てバーンの行動に干渉しようと思った事も
彼に直接会った事により、何らかの心境の変化があったのだろう。
地上を消滅し、魔界に太陽の光をもたらすのが早いか、地上を支配し魔物が魔界と地上を巡回する世の中になる事の方が早いか……
ゾーマにとってしてみれば単なる遊戯に過ぎない。バーンが死に、ヴェルザーと膠着状態にあり、刺激の無くなった日常に
突如として降り立った復活した大魔王バーン。
退屈とも言える日常を変え、暇を持て余していた大魔王が戯れに地上でも制圧してみるか。程度の考えである。
「仰せの通りに!!」
バラモスが我が主君に敬礼をし、ゆっくりと退室していった。
彼はゾーマが最も信頼を置いている部下である。遊戯とはいえ、多少は制圧の確立も高い方が面白い。
ゾーマがバーンやヴェルザーと違う最大の理由は具体的な野望が無いという事だろう。
だからバーンとヴェルザーの争いにも自分は手を出すような事はない。彼等には地上支配、地上消滅と、明確な大計画が存在する。
だが彼にはその目的が無い。ある程度の力を有する者達はゾーマの考えは理解する事が出来ないだろう。
少なくともバーン・ヴェルザー・ゾーマの三者は自己の目的を容易に達成出来る程の力を持っている事は魔界の誰もが知っている。
自分がゾーマならば地上の支配ないしは消滅を実行すると考える魔族は少なくはない。せっかくの部下も宝の持ち腐れだろうと他の魔族は思っている。
だがゾーマは自己の快楽の為に動く大魔王である。
生ある者が今際の際に精一杯の雄叫びを上げて朽ち果てていく姿を見る事にとてつもない快感を覚える。
快楽殺人者の様なものだ。もちろんそのような事は分かっていて部下達はゾーマに服従する。
支配や消滅といった目的を持たず、己の快楽の為に動くゾーマに彼等は目的を持って動く魔王とは違う魅力を感じ、
永久に主君につき従っていくのだ。
逆にゾーマにはバーンやヴェルザーを始め、目的を持つ者の思考の方が理解できなかった。
バーン達の計画が仮に成功するとしても、生ある者はいつか滅びる。
バーンやヴェルザーの計画は、多少は他の魔族の為とも言える動機があった。それが彼の理解出来ない点である。
生ある者はいつか朽ち果てる。バーン・ヴェルザーのやっている事はある意味自分の死後の魔族の繁栄も考えているとでも言う様な計画だ。
逆にゾーマにはそれほど他者に興味を持てない。例外は部下のみである。
いつか朽ち果てる身であるというのにわざわざ魔族の為に働くという事がゾーマにとっては馬鹿馬鹿しいことだ。
つまりこの遊戯もゾーマにとって目的というものにはならない。必ず成功させよう等という精神は全くない。
だが、ゾーマの勢力が及んでいない地域の魔族は必ずゾーマが地上の支配を狙っていると誤解し、止めようとするだろう。
ゾーマはそれも考慮に入れた上で“地上支配ごっこ”の様なことを始めた。
自分に仇なす者達ならば殺せばいい。むしろゾーマはバーンを含め、自分に立ち向かってくる者を作る為にこんな遊びを企画したのだ。
自分に挑んで、我が腕の中で息絶えていく者を作る為に……
玉座の間から出たバラモスは入り口に立っていた二体の魔物に顔を向けた。
「何だ?このワシに用でもあるのか?」
五本の首を持つ龍がバラモスに近付く。
「ゾーマ様のお気に入りだからといって調子に乗らぬ事だな」
一方でバラモスにそっくりな魔物が口を開く。
「まあまあ、兄者も別に調子に乗っている訳ではないだろうし、いきなりケンカ腰にならなくてもいいじゃないか」
バラモスの弟は口ではそう言いつつも、眼はバラモスを認めていなかった。
だが実際実力はバラモスが二人に比べて上である。だからこそ主君も彼に全幅の信頼を寄せている。
「このワシに喧嘩を売るという事は、同時にこのワシを信頼して下さっているゾーマ様に反旗を翻すという事になるぞ」
バラモスは落ち着いた口調で二人に伝え、城を出た。
「クッッ、クソォ!!!!」
バラモスの弟が地面を殴りつけ、地団太を踏んだ。
~天空城~
ボブルの塔での戦いから一夜明け、六人は瞬間移動呪文で天空城へ降り立った。
「待ちかねていたぞ。これで我らが主、マスタードラゴン様が復活なされる。有り難い、勇者達よ」
勇者と呼ばれ、少々赤面するポップであった。
「プサンはどこへ行った?」
ラーハルトが長老を少し睨みつける。長老は何故?と問うた。
「プサンが来れば分かる。さあ、どこにいるのか教えてもらおう」
「今プサンは天空人だと嘘の証言をし、城へ侵入したことで牢獄に入っているが。
訳が有るのならば直ぐに釈放しよう」
牢獄から出たプサンは服も汚れ、みすぼらしい格好でダイ達の前に姿を現した。
「おお、それはドラゴンオーブ!!ダイ殿、それを渡して貰えますか?」
「え、いいけど……」
ダイからプサンに手渡されたドラゴンオーブはその淡い光をより一層強く輝かせる。
その大きな光はやがてプサンを包み、ダイ達一行を包み、天空城を優しく包み込んだ。
「うっ、眩し!!」
ポップが慌てて眼を塞ぎ、やがて光が消え、辺りの状況が確認出来るほど視界が回復した時、
そこにプサンの姿はなく、黄金色に光り輝く竜が存在していた。
「ま……まま……」
余程驚いているのだろう。長老は開いた口が塞がらなかった。それはダイ・ポップ・マァムにとっても同じ事である。
しかしラーハルトだけはやはりとでも言いたいような顔でその様子を見守っていた。
「マスタードラゴン様!!!!!」
普段は冷静な長老もこの時ばかりは流石に平静を保てない。そうでなくても先程まで牢獄に閉じ込めていたのだから。
自分は殺されてしまうかもしれない……それよりもただただ最愛の主君に対し申し訳ない事をしてしまった。
いっその事自分で死んでしまおうかとも思った。
「も、申し訳もございません!!!!」
「いや、良い。お主としても城を守る為の業務を全うしていた事は分かっている。
私が留守の間、御苦労だった」
「な、なんかいきなり喋り方変わりすぎじゃねえか?」
ポップが鼻水を垂らしながら突っ込んだ。
「ダイ、そして仲間達よ。改めて紹介しよう。我こそが天空を統べる者、マスタードラゴンなり」
その威風堂々とした姿は思わずダイに固唾を呑ませた程だった。
今回のドラゴンオーブ争奪戦において多くの敵と出会い、戦々恐々したが、念願のダイと再会出来たという喜びを改めて実感し、
その夜、六人は枕を高くして眠る事が出来た。
ポップとラーハルトは待ち望んでいた者に再会出来た事が余程嬉しいのだろう。
彼等は無意識の内に涙をながしていたのであった。
~魔界 ゾーマの城~
その城は標高が2000メートルはあるであろう山脈に包まれた小さな島の中心にそびえ立っていた。
周辺で生活している魔物も、この城から発せられるオーラを感じ取らずにはいられない。
同時に、それだけの力を持つ“彼”には敬意を払い、絶対的な服従を誓う事を余儀なくされる。
だがこの城で生きる魔物、および周辺の魔物は、その主に永遠に仕えていく事が大変名誉であるのだ。
「ふっ少々取り乱してしまったようだな。全く、奴は千年経ってもまるで変わらぬ男よ」
この禍々しい城の主、ゾーマが多少笑みをこぼしながらバーンとの再会を思い出す。
「失礼します」
玉座の間に爬虫類の様な顔をした、一人の魔族が入室した。
「ゾーマ様、私を呼ばれるとは…一体どのようなご用件でしょうか?」
「バラモスよ…そなたにはこれから地上へ上がってもらう」
ゾーマは表情を変えずに続けた。
「そなたならあの地上を制圧する事も出来るだろう。期待しているぞ、バラモス」
バラモスには分かっていた。これまでこの主君は地上を制圧せよ等という命令を発した事はない。
元々彼には地上を欲しよう等という欲は無い。興味を持たれてはいないのだ。
そうであるにも関わらず、地上を制圧せよとの命令、これは再会した大魔王バーンへのアンチテーゼである。
これまでバーンとヴェルザーのいざこざを文字通り、高みの見物を繰り返していたが、ここに来てバーンの行動に干渉しようと思った事も
彼に直接会った事により、何らかの心境の変化があったのだろう。
地上を消滅し、魔界に太陽の光をもたらすのが早いか、地上を支配し魔物が魔界と地上を巡回する世の中になる事の方が早いか……
ゾーマにとってしてみれば単なる遊戯に過ぎない。バーンが死に、ヴェルザーと膠着状態にあり、刺激の無くなった日常に
突如として降り立った復活した大魔王バーン。
退屈とも言える日常を変え、暇を持て余していた大魔王が戯れに地上でも制圧してみるか。程度の考えである。
「仰せの通りに!!」
バラモスが我が主君に敬礼をし、ゆっくりと退室していった。
彼はゾーマが最も信頼を置いている部下である。遊戯とはいえ、多少は制圧の確立も高い方が面白い。
ゾーマがバーンやヴェルザーと違う最大の理由は具体的な野望が無いという事だろう。
だからバーンとヴェルザーの争いにも自分は手を出すような事はない。彼等には地上支配、地上消滅と、明確な大計画が存在する。
だが彼にはその目的が無い。ある程度の力を有する者達はゾーマの考えは理解する事が出来ないだろう。
少なくともバーン・ヴェルザー・ゾーマの三者は自己の目的を容易に達成出来る程の力を持っている事は魔界の誰もが知っている。
自分がゾーマならば地上の支配ないしは消滅を実行すると考える魔族は少なくはない。せっかくの部下も宝の持ち腐れだろうと他の魔族は思っている。
だがゾーマは自己の快楽の為に動く大魔王である。
生ある者が今際の際に精一杯の雄叫びを上げて朽ち果てていく姿を見る事にとてつもない快感を覚える。
快楽殺人者の様なものだ。もちろんそのような事は分かっていて部下達はゾーマに服従する。
支配や消滅といった目的を持たず、己の快楽の為に動くゾーマに彼等は目的を持って動く魔王とは違う魅力を感じ、
永久に主君につき従っていくのだ。
逆にゾーマにはバーンやヴェルザーを始め、目的を持つ者の思考の方が理解できなかった。
バーン達の計画が仮に成功するとしても、生ある者はいつか滅びる。
バーンやヴェルザーの計画は、多少は他の魔族の為とも言える動機があった。それが彼の理解出来ない点である。
生ある者はいつか朽ち果てる。バーン・ヴェルザーのやっている事はある意味自分の死後の魔族の繁栄も考えているとでも言う様な計画だ。
逆にゾーマにはそれほど他者に興味を持てない。例外は部下のみである。
いつか朽ち果てる身であるというのにわざわざ魔族の為に働くという事がゾーマにとっては馬鹿馬鹿しいことだ。
つまりこの遊戯もゾーマにとって目的というものにはならない。必ず成功させよう等という精神は全くない。
だが、ゾーマの勢力が及んでいない地域の魔族は必ずゾーマが地上の支配を狙っていると誤解し、止めようとするだろう。
ゾーマはそれも考慮に入れた上で“地上支配ごっこ”の様なことを始めた。
自分に仇なす者達ならば殺せばいい。むしろゾーマはバーンを含め、自分に立ち向かってくる者を作る為にこんな遊びを企画したのだ。
自分に挑んで、我が腕の中で息絶えていく者を作る為に……
玉座の間から出たバラモスは入り口に立っていた二体の魔物に顔を向けた。
「何だ?このワシに用でもあるのか?」
五本の首を持つ龍がバラモスに近付く。
「ゾーマ様のお気に入りだからといって調子に乗らぬ事だな」
一方でバラモスにそっくりな魔物が口を開く。
「まあまあ、兄者も別に調子に乗っている訳ではないだろうし、いきなりケンカ腰にならなくてもいいじゃないか」
バラモスの弟は口ではそう言いつつも、眼はバラモスを認めていなかった。
だが実際実力はバラモスが二人に比べて上である。だからこそ主君も彼に全幅の信頼を寄せている。
「このワシに喧嘩を売るという事は、同時にこのワシを信頼して下さっているゾーマ様に反旗を翻すという事になるぞ」
バラモスは落ち着いた口調で二人に伝え、城を出た。
「クッッ、クソォ!!!!」
バラモスの弟が地面を殴りつけ、地団太を踏んだ。
~天空城~
ボブルの塔での戦いから一夜明け、六人は瞬間移動呪文で天空城へ降り立った。
「待ちかねていたぞ。これで我らが主、マスタードラゴン様が復活なされる。有り難い、勇者達よ」
勇者と呼ばれ、少々赤面するポップであった。
「プサンはどこへ行った?」
ラーハルトが長老を少し睨みつける。長老は何故?と問うた。
「プサンが来れば分かる。さあ、どこにいるのか教えてもらおう」
「今プサンは天空人だと嘘の証言をし、城へ侵入したことで牢獄に入っているが。
訳が有るのならば直ぐに釈放しよう」
牢獄から出たプサンは服も汚れ、みすぼらしい格好でダイ達の前に姿を現した。
「おお、それはドラゴンオーブ!!ダイ殿、それを渡して貰えますか?」
「え、いいけど……」
ダイからプサンに手渡されたドラゴンオーブはその淡い光をより一層強く輝かせる。
その大きな光はやがてプサンを包み、ダイ達一行を包み、天空城を優しく包み込んだ。
「うっ、眩し!!」
ポップが慌てて眼を塞ぎ、やがて光が消え、辺りの状況が確認出来るほど視界が回復した時、
そこにプサンの姿はなく、黄金色に光り輝く竜が存在していた。
「ま……まま……」
余程驚いているのだろう。長老は開いた口が塞がらなかった。それはダイ・ポップ・マァムにとっても同じ事である。
しかしラーハルトだけはやはりとでも言いたいような顔でその様子を見守っていた。
「マスタードラゴン様!!!!!」
普段は冷静な長老もこの時ばかりは流石に平静を保てない。そうでなくても先程まで牢獄に閉じ込めていたのだから。
自分は殺されてしまうかもしれない……それよりもただただ最愛の主君に対し申し訳ない事をしてしまった。
いっその事自分で死んでしまおうかとも思った。
「も、申し訳もございません!!!!」
「いや、良い。お主としても城を守る為の業務を全うしていた事は分かっている。
私が留守の間、御苦労だった」
「な、なんかいきなり喋り方変わりすぎじゃねえか?」
ポップが鼻水を垂らしながら突っ込んだ。
「ダイ、そして仲間達よ。改めて紹介しよう。我こそが天空を統べる者、マスタードラゴンなり」
その威風堂々とした姿は思わずダイに固唾を呑ませた程だった。