SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ それぞれの思惑・後篇


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巨大な湖の畔に、その館は聳え立っていた。
屋根も外壁も真っ赤に塗りたくられた、悪魔の館―――人はそれを<紅魔館>と呼び、畏れた。
その一室では、悪魔達による饗宴(サバト)が繰り広げられていた―――

「セイヤァッ!」
中国風の衣装を纏い、長い赤髪を振り乱し拳を振るう女性。
まるで舞い踊るように美しい体捌きだ。
更に体内で練り上げた<気>をその拳に込め、可憐な両腕を鉄槌と化す。
「―――烈虹真拳!」
彼女は紅魔館の門番にして拳法の達人<華人小娘>紅美鈴(ホン・メイリン)。
人の身では決して到達できない境地に至ったその絶技を指先一つで受け止めたのは、大吸血鬼レミリア。
「くっ…」
「まだまだね。こんなんじゃ準備運動にもならないわ」
「も…申し訳ありません」

「なら、これはどうかしら?」

背後からの声。
「火符―――アグニシャイン!」
襲い掛かる無数の火球。
「続けて木符―――シルフィホルン!」
そして鋼すら切り裂く鎌鼬が群れを成して迫り来る。
それを放ったのは、ゆったりしたローブに身を包んだ病弱そうな少女。紅魔館の地下に存在する大図書館の管理人
にして、レミリアの数少ない友人でもある<動かない大図書館>パチュリー・ノーレッジ。
レミリアは軽く腕を振るい、魔力の風を起こす。たったそれだけの動作で、彼女は大魔術を相殺した。
「ふん、相変わらずビタミンAが足りてないわね」
「あらま…私としては、本気で殺すつもりだったんだけどね」
「甘いわよ、パチェ。灰も残さないつもりで来なさい」

「では、お言葉に甘えて―――咲夜の世界」

―――ありのまま起こった事を記そう。
気が付けばレミリアの周囲を、優に百を超える銀のナイフが取り囲んでいた。
それは催眠術や超スピードなどというチャチなものでは断じてない。
ナイフを放った張本人である<完全で瀟洒な従者>十六夜咲夜(いざよい・さくや)の恐るべき能力の片鱗だ。
「―――殺人ドール!」
そして全てのナイフが一斉にレミリア目掛けて飛びかかり―――瞬きの間に全て叩き落とされた。
「いいタイミングだったけど、残念ね。そんなナイフじゃ林檎にも刺さらないわよ」
「ふふ…カリスマ溢れるお嬢様も…凛々しいですわぁ~~~~~っ!」
ブブーっと鼻血を噴き出す咲夜さん。結局お嬢様であれば何でもいいらしい。
「でも、お嬢様は急にどうなされたんでしょう?修行なんてらしくもない」
「例のトーナメントがあるからでしょ」
美鈴の疑問に、パチュリーが答えた。
「それでもレミィのガラじゃないとは思うけどね」
「何とでも言いなさい。私はどうしても欲しいのよ、あの方の…賢者イヴの秘宝が」
「へー。でも、それだけじゃなさそうね。誰か、ブチのめしてやりたい相手がいるんじゃなくて?」
「…フン。分かったような口を利かないで」
鼻を鳴らしつつ、レミリアは親指を噛む。
思い出されるのは、屈辱の記憶だ。
「今のままじゃ、サンレッドには勝てないわ…」
あの夜の闘いは、お互いに全力ではなかった。
とはいえ、どちらがより余裕を残していたかといえば、サンレッドの方だろう。
まだ奴は、真の力を見せてはいない。その確信があった。
「外の世界のヒーロー…そんなに強かったのですか?」
「…かなりね。それだけは認めざるをえない。だからこうして、鍛え直してるのよ」
「お嬢様にそこまで言わせるとは…武に生きる者として、是非とも手合わせを望みたいものです」
「やめときなさい、美鈴。貴女じゃ一撃でやられるのがオチよ」
「酷っ!せっかく武人キャラらしく振る舞ったのに!」
「やかましいわ、居眠り門番」
抗議の声を無視して、舌打ちする。
「とはいえ…三人がかりでもこれじゃ、身体も温まらないわね」

「じゃあ、あたしが相手したげよっか?お・ね・え・さ・ま♪」

部屋の壁が、砕け散った。
予備動作もクソもない、それは完全なまでの破壊にして、破滅だった。
究極の破壊を体現してみせたのは、砕けた壁から悠然と部屋に侵入(はい)ってきた幼い少女―――
年の頃はレミリアとそう変わりなく見える。
ブロンドの髪を靡かせたその姿は、よく出来た人形のようだ。
背中にはまるで枯れ木の枝を思わせる不気味な翼。

<悪魔の妹>フランドール・スカーレット。
レミリアの実妹であり、彼女と同等の実力を持つ強大な吸血鬼である。

「い…妹様…!」
咲夜が顔を引き攣らせ、後ずさる。美鈴とパチュリーも同様だ。
「あらぁ?そんなに怖がらなくてもいいじゃない。あたしだって紅魔館のお嬢様なのにぃ。プンプン」
両手の人差し指を立てて、頭にツノを作ってみせる。
可愛らしい仕草だが、咲夜達にとっては猛獣が牙を剥いたようにしか見えない。
レミリアも恐るべき吸血鬼だが、少なくとも力と凶暴性を自制する術は知っている。
知っているというだけだが、ともかく知っている。
だがフランドールは、それを知ろうとすらしない。
何一つ分からぬまま、無邪気な幼子の心のまま、絶大な力を何の遠慮も忌憚もなく振るうのだ。
姉であるレミリアですらそんな妹を持て余し、館の一室に幽閉せざるをえなかった。
そんな事をしても無駄だと知りながら。
フランドールがその気なら、今こうしているように、平然と出てこれるのだから―――
だが。
今のレミリアにとっては、彼女が出てきてくれたのは好都合だった。
「いいでしょう、フラン」
レミリア・スカーレットが変質する。
これまではどれだけ派手に闘おうとも、幼い少女としての一面は常にあった。
だが今の彼女を見て、そんな印象を抱く者など皆無だろう。
そこにいるのは傲慢にして偉大な月下の女帝―――レミリア・スカーレット!
「久しぶりに、姉妹水入らずで遊びましょうか」
「うふふ、嬉しいなぁ。楽しいなぁ。お姉様と殺し合いごっこだぁ!」

―――二対の悪魔の死闘は、一昼夜に及び続いた。
その光景を見ていた紅魔館の面子は揃って口を閉ざし、ただ恐怖だけを顔面に張り付けていたという。

<永遠に紅い幼き月>レミリア・スカーレット。
彼女は幻想郷最大トーナメント準決勝において再びサンレッドと相対し、雌雄を決する事となる。


所変わって、白玉楼。
―――今にも雨が降りそうな曇天だった。
暗い空の下、白玉楼の庭園で二人の剣士が睨み合う。
<半人半霊>魂魄妖夢。
<銀刀>望月ジロー。
妖夢が手にするのは<楼観剣>と銘打たれた長刀。
妖怪の刀匠によりて鍛え上げられた妖刀。
ジローが手にするのは刀身に銀がコーティングされた無骨な日本刀。
数多の同族の血を吸い、彼の二つ名の由来となった銀刀。
二人は既に半刻に渡って、僅かな身じろぎすらせずに向い合っていた。
互いに正眼に構えた剣もまた、時が止まったように動かない。
はらり、と彼等の間に木の葉が落ちる―――
「参るっ!」
それを合図として、先に動いたのは妖夢だった。一歩で間合いを詰め、一呼吸で九の斬撃を繰り出す。
だがそこに、ジローの姿は既にない。彼は高く跳躍して妖夢の剣をかわし、頭上から銀刀を振り下ろす。
妖夢もそれを読んでいた。素早いバックステップで距離を取り、ジローの剣が空を斬る。
両者が態勢を整えたのは完全に同時。
横薙ぎの一撃を繰り出したのも同時。
キィン―――澄んだ音を響かせて、互いの得物が弾かれて宙を舞い、地に突き立った。
「…ふう。中々どうして、相当の使い手じゃないですか」
楼観剣を地から引き抜き、鞘に収めて、一気に噴き出した汗を拭いながら妖夢はジローを称える。
「おかげでいい鍛錬になりました。ありがとうございます」
「こちらこそ」
ジローも帽子を取り、頭を下げた。
「よき剣士に出会えました。剣に生きる者の端くれとして、喜ばしい限りです」
「もう。そんなにおだててもパンツはあげませんからね!」
「いらん!」
「またまた。<パンツ>と聞いた瞬間、その無愛想な顔がちょっと綻んだのを確かに見ましたよ」
「バ…バカな!私はそのようなハレンチな男では…!」
「ああ、ごめんなさい幽々子様。妖夢はこのゲス男によって汚されてしまいました…」
「違ぁぁぁぁぁうっ!それでも私はやってないっ!」
「ま、冗談はともかく」
妖夢は背筋を伸ばし、ジローを見つめる。
「あなた、本当にトーナメントに出場するつもりですか?」
「…言いたい事は分かります。とても優勝できる腕ではないと言いたいのでしょう?」
「はい。ぶっちゃけるとそうです」
竹を割ったような率直な言葉だ。ジローは思わず苦笑してしまう。
「私と互角の腕を持つからには、実力的には幻想郷でも上中下のうち、上には分類されるでしょう―――けれども
上の上に位置する連中。例えば八雲紫様―――例えばレミリア・スカーレット。そういう相手と闘ったら、間違いなく
あなたは負けます」
「でしょうね。そのくらいは分かります」
自嘲するでもなく、軽く答えるジロー。妖夢はそれに構わず続ける。
「無様な敗北。それだけならまだいい。命があればやり直せる―――所詮はお祭り騒ぎのようなものですからね。
命まで奪い合うような闘いにはならないでしょう。死ぬ前に降参すればいいだけです」
けれど。妖夢は続ける。
「あなたの気の入れようから見ると、負けを認めるようには思えません。殺されると分かった上で、それでも突き
進んでしまうんじゃなかろうかと」
「おや、心配してくれてるんですか?可愛い女の子の胸を痛めさせてしまうとは、我ながら罪深い」
「あなたの心配なんかしちゃいません。勝手にやってればいいでしょう」
皮肉な物言いのジローに対し、妖夢はいつになく真摯に語る。
「私が心配してるのは、あなたが死んだら悲しむ人がいるんじゃないか、という事です」
「…………!」
脳裏に浮かぶのは、弟の―――コタロウの笑顔。
その隣には、アヒル口の少女。
親しい何人かの友人。その中にはサンレッドやヴァンプ将軍の姿もあった。
「<賢者イヴ>というのがあなたにとってどれだけ大切な存在かは想像に難くありません。その遺産とやらに執着
するのも、仕方ないとは思います―――でも、死んだら何にもならないでしょう」
「…死ぬ気なんてありませんよ」
ジローは皮肉っぽく、笑って答えた。
「私にはまだ<使命>が残っていますから。それを果たすまでは、死んではならないんです」
「ふーん…何か、それを果たした瞬間に死んじゃいそうですね」
「そうですね…否定はしません」
「してくださいよ。そんな言い方だと不安になるじゃないですか」
「お?やはり心配してくれているのですね。おお、ありがたやありがたや」
「ケッ!調子乗ってんじゃねーですよ、百年しか生きてねーガキが!」
「…………参考までに、妖夢さんはどのくらいの歳なのですか?」
「えっと…多分あなたの三倍くらいは生きてますかね」
大先輩だった。
「申し訳ありません。お年寄りの方に大変失礼をしました。バスではシルバーシートを譲りましょう」
「あらまあ、いいんですよ。それより私の年金のために馬車馬のように働いてくださいね、ガキンチョ」
「いやあ、実を言うと私は国に金なんて納めてないんですよ、吸血鬼ですから」
「おっと、これは失礼。あなたは女性の世話になってるから、確定申告の必要がないんですね?<何か縛るモノ>
なんですね?」
「ははは。これは手厳しい。あんまり嫌味ばかりだと、口元の小皺が増えますよ?」
「うふふ。そんな事を言ってると、寝てる間に心臓に杭が刺さってても知りませんよ?」
仲がいいんだか悪いんだかよく分からん不毛な会話は、その後一時間近くも続いたという。


―――その頃、厨房にて。ヴァンプ様は夕飯の支度を始めていた。
「さて、ジローさんは妖夢ちゃんの相手をしてるし、レッドさんとコタロウくんも幽々子さんに頼まれて買い物に行ってる
事だし、私も働かないとね!」
割烹着を見事に着こなし、気合十分である。包丁を握り締め、まな板に野菜を並べる。
「クックック…では、始めるとするか」
ヴァンプ様の目付きが変わった。お人好しの悪の将軍から、闘う漢(おとこ)の燃える瞳へ。
眠れる獅子が今、目覚めた。
そう、厨房は彼にとって戦場なのだ!
その華麗にして優美なる包丁捌きは、ジローと妖夢の剣技にも劣らぬ芸術であったという―――


―――さて、我等がヒーロー・天体戦士サンレッドとその一番弟子(自称)望月コタロウは買い物である。
人間の里。
機械文明の欠片も感じない、昔ながらの不便でありつつ活気に満ちた生活が営まれている事は、道行く人々の表情
から窺い知れた。
そんな中で真っ赤なマスクのヒーローと、天使のような金髪美少年の取り合わせは異様過ぎる。
思いっきり注目を浴びていたが、二人は特に気にしていないようだった。
「ヒーローが異世界に来て、やる事はおつかいって…間違ってるだろ、色々」
レッドさん、マナー違反の歩きタバコしながらいきなり愚痴である。
「しかも、行き先を訊いたら<香霖堂って店なんだけど、行けば分かるわよ。明らかにおかしな店だから>ときたもん
だ。いい加減すぎんだろ」
「もう、そんなに暗くなっちゃダメだよ。ほら、見てごらん。空はこんなにいい天気!」
コタロウがビシっと指し示した空は先も言った通り、今にも泣き出しそうな曇天である。
「…じゃ、ないね。レッドさん、この世界を明るく照らしてよ。太陽の戦士でしょ?」
「そういう方面の能力じゃねーんだよ、俺は…世界を照らせとか言ってんじゃねー、吸血鬼なのに」
そう言って、レッドはコタロウの姿を見つめる。
ふわふわの金髪に、海のような青蒼の瞳。
太陽なんてへっちゃら。ニンニクたっぷりのラーメンも大好き。
クリスマスには聖歌も唄う。
「今更だけどお前、ホントにジローとは全然違うのな…」
「そうなんだよねー。兄弟なのに、不思議でしょ?でも、これはね」
「…兄弟だからだろ」
笑顔で何かを言おうとするコタロウに先んじて、レッドは言った。
「ジローは強えけど、太陽だのニンニクだの聖歌だの弱点だらけだ。お前は弱っちいけど、ジローの苦手なモンは
全部へっちゃらだろ?だからよ…」
レッドはタバコの煙を吐き出し、コタロウを見つめた。
「お互いにダメな所を助け合えるようにって…そういう風になったんじゃねえのか?俺はそう思うけどな」
そう答えた。けれどこの兄弟について、結局の所レッドは殆ど分かっていない。
もしかしたら、もっと別の理由―――
目を覆いたくなるほど残酷で悲しく、それでいて涙せずにいられない崇高で優しい秘密があるのかもしれない。
そんな風に思えてならなかった。
「そう。それなんだよ、レッドさん!」
けれどコタロウは、いつになくおセンチなレッドに向けて、いつもの明るい笑顔を向ける。
「兄者もそう言ってたんだよ。二人が助け合えるようにって、ぼくらのお母さんが知恵を絞って考えてくれたんだよ
って。だからね」

「ぼくも大きくなったらレッドさんぐらい強くなって、兄者を助けてあげるんだ!」

「そっか」
レッドは素気なく答えて、コタロウの頭をポンと叩いた。
「ジローが言うんなら、そうなんだろな」
「うん!」
「けど、俺ぐらいに強くなるってのは無理だろ。お前、ヘッポコだしよ」
「ええ~~~…そんな事ないよ!誰もが最初は弱いけど、頑張って強くなるんだからね!」
「いーや、お前の弱さは努力で補える範囲を越えてる。どれだけ頑張っても人間じゃハンマ星人にゃ勝てねーのと
同じだっての」
「ひっどーい!レッドさんのバカー!」
「かかか、空き地の野良犬(生後数ヶ月)を倒せるようになってから言いやがれ」
プリプリ怒るコタロウを軽くあしらいつつ、レッドはコタロウと歩幅を合わせて道を往く。
やがて人間の里は遠ざかり、深い森が見えてきた。その入口に建つ一軒屋に、二人は目を奪われた。
「…あれか」
<香霖堂(こうりんどう)>という看板を掲げたその店は、異様の一言だった。
玄関の脇に雑然と並ぶタヌキの置物だのサッカーボールだのバス亭の看板だの、統一性がないにも程がある。
「うっわー、楽しそうな店だね!」
「そうか?ゴチャゴチャしててうっとーしーとは思うけどよ」
「レッドさんったら、そんな事ばっか言って。さあ、レッツ&ゴー!」
「爆走すんじゃねーよ…あ、コケた」


「おや、見ない顔だね?はじめまして。僕は店主の森近霖之助(もりちか・りんのすけ)だ」
店に入るなり出迎えたのは、昔風の衣装を着込んで眼鏡をかけた若い男。
見かけは何処にでもいそうな優男だが、どことなく曲者の風格も漂わせている。
(あんま気が合いそうにはねーなー)
そんな失礼な事を考えながら、レッドは幽々子から渡されたメモを霖之助に差し出す。
「これを見せれば分かるって言われたんだけどよ」
「ふむ…ああ、君は西行寺家の使いなのか。とすると、もしや噂の外の世界から来たヒーローかい?」
「あん?何でんな事を知ってんだ」
「これさ」
言うまでもなく文々。新聞である。まだそれに目を通した事のなかったレッドとコタロウは、その内容に驚く。
「こんなんが発行されてたのか…俺達の事までバッチリ書いてるし」
「何処で調べたんだろね」
「清く正しく、射命丸文。神出鬼没の彼女にかかれば、記事にできない事件はないよ…さて、それでは少し待って
いてくれ。注文の品を用意するから」
霖之助が店内をガサゴソと探り始める。それを待っている間、レッドはぐるりと店内を見回してみた。
「ふーん…色んなモンがあんだな」
「幻想郷には、様々な世界から色々な物が紛れ込んでくるんだ。僕はそれを拾って、売り物にしている」
「はあー。随分と楽な商売だな」
「ははは。魔理沙の奴にもよく言われるよ」
「でも、何の道具なのかとか全然分からないんじゃない?」
コタロウの疑問に対し、霖之助は「そうでもないよ」と答えた。
「僕にはちょっとした能力があってね…初めて見た道具でも、その名前と用途がすぐに分かるのさ」
「へえー。すごいじゃん!」
「ふふ。そうは言っても、実はそんなにすごくないんだけどね」
例えば、と霖之助は扇風機を示した。
「これは扇風機といって、風を送って涼しくなるための道具だ…ここまでは分かる」
「うん」
「でも何が動力なのか、どうすれば動いてくれるのか…それは分からない。色々試してみるしかないんだ」
「うーん、それは結構不便かも」
「だね。けれど、使い方が分かればしめたものさ。外界の技術の恩恵にあやかることができるからね」
くすり、と霖之助は笑ってみせた。
「実を言うと気に入ったモノは売らずに、自分の持ち物にしている」
「せこくねーか、それ」
「そう言ってくれるなよ。役得さ、これも―――そうそう、最近じゃこんなのも見つけたよ」
霖之助が懐から取り出したのは、くの字型の奇妙な物体―――そう、銃だった。
普通の銃と違いカラフルな色合いで、まるでヒーローが使う兵器のようだ。
「これはね、サン―――」
「サンシュートじゃねーか!」
レッドは霖之助を遮り、その手からサンシュートをひったくる。
「ウチの工具箱にでも入ってるもんだと思ってたのに…」
「はあ…君の持ち物だったのか。気付かない内に幻想入りしてしまったんだね」
世間は狭いもんだ、と霖之助は呟く。
「兵器として使うつもりはないけど、デザインが気に入ったから手元に置いておきたかったんだけどね…所有者が
現れたのなら仕方がない。必要な物なら、返すよ」
「あ?いや、まあ、俺のだけど、別にそこまで必要ってわけじゃ…」
だが、サンシュートは(一応)己の頼れる相棒だ(多分)。
返してくれると言ってるんだから、お言葉に甘えるべきかもしれない。
「…じゃあ、悪いけど持ってくぞ」
「悪い事はないさ。道具が本来あるべき場所に戻っただけだからね…さて」
どうやら注文の品も包み終わったらしい。霖之助は大きな袋をレッドに手渡し、人好きのする笑みを見せた。
「どうかまた、御贔屓に」


紆余曲折を経て、サンレッドの手に戻ったサンシュート。
果たしてその実力が発揮される日は訪れるのだろうか。
それは誰にも分からない―――


おまけ

「ゆゆちゃーん。おつかい、終わったよー」
コタロウは、香霖堂で包んでもらった袋を幽々子に渡した。
「ご苦労様。ふんふふふふふーんふふふっふーん♪…ああっ!」
幽々子は、恐るべき過ちに気付き、彼女には珍しく声を荒げた。
「コ…コタロウ!おつりで勝手に金平糖なんて買っちゃダメじゃない!」
「ごめん…どうしても食べたかったから、つい…」
「まあまあ、そう怒ってやるなよ」
「もう…ああっ!」
幽々子は再び声を荒げた。
「サ…サンレッド!勝手にタバコを買っちゃダメじゃない!しかも1カートン!」
「わ…悪い…切れてたもんだから、つい…」