part.7
少女人形の美しい光沢のある黒い翼のなぎ払い、それをアドニスは単純に飛んで避け、
貴鬼は何時もの様に空間転移で避けていた。
貴鬼は何時もの様に空間転移で避けていた。
「…!?」
そう、驚愕する少女人形の真後ろへと。
ごめんよ、と一声かけると。
ごめんよ、と一声かけると。
「クリスタル・ネット!!」
アリエスの一党の誇る鉄壁の捕獲網が彼女を捕らえていた。
この技は、詰まる所クリスタル・ウォールの応用系である。
クリスタル・ウォール自体、対手との零距離で用いれば
面攻撃の打撃技として通用するという一面を持っている事を鑑みると
まさしく蜘蛛の糸の如き束縛を可能としていた。
事実、かつての聖戦でムウが用いた時、対手であった冥闘士・地妖星パピヨンのミューは
なす術もなく捕らえられていた。
空間を支配しようと飛び回る相手には、非常に有効な手段なのだ。
この技は、詰まる所クリスタル・ウォールの応用系である。
クリスタル・ウォール自体、対手との零距離で用いれば
面攻撃の打撃技として通用するという一面を持っている事を鑑みると
まさしく蜘蛛の糸の如き束縛を可能としていた。
事実、かつての聖戦でムウが用いた時、対手であった冥闘士・地妖星パピヨンのミューは
なす術もなく捕らえられていた。
空間を支配しようと飛び回る相手には、非常に有効な手段なのだ。
「よぉーし、人形のアソコが…」
虎眼、いや、ごがんという、骨が金属にカチ当たった重い音が廃墟の空間に響き渡った。
そろりそろりと少女人形のスカートに手を伸ばしていたアドニスの頭に貴鬼が拳骨を落としたのだ。
そろりそろりと少女人形のスカートに手を伸ばしていたアドニスの頭に貴鬼が拳骨を落としたのだ。
「お前な、いくらバキスレでもやって良いネタと悪いネタあるぞ。
職人諸氏に詫び入れて来やがれ」
職人諸氏に詫び入れて来やがれ」
貴鬼は、幼年期から愛用しているブレスレット、元は二の腕につけていた腕輪だ、
をメリケンサックのように握りこんでアドニスに拳骨をくれていた。
因みにこの腕輪、貴鬼の師・ムウお手製の一品であり、
聖衣の修復時に余ったオリハルコン・ガマニオン・銀星砂で出来ている。
強度だけなら十分に黄金聖衣レベルであったりする。
そんなモンでぶん殴られたら、いくら石頭のアドニスでも悶絶は必至だ。
事実、アドニスは声も無くのた打ち回っている。
をメリケンサックのように握りこんでアドニスに拳骨をくれていた。
因みにこの腕輪、貴鬼の師・ムウお手製の一品であり、
聖衣の修復時に余ったオリハルコン・ガマニオン・銀星砂で出来ている。
強度だけなら十分に黄金聖衣レベルであったりする。
そんなモンでぶん殴られたら、いくら石頭のアドニスでも悶絶は必至だ。
事実、アドニスは声も無くのた打ち回っている。
「あきれた…。
人間の牡は想像以上に下劣ねぇ…」
人間の牡は想像以上に下劣ねぇ…」
苦笑交じりの嘆息、
少女人形は漫才で捕らえられてしまったことが余程精神的に堪えたと見えて、ぐったりとしていた。
もうどうにでもなれ、と微妙にやさぐれた空気すら漂わせている。
少女人形は漫才で捕らえられてしまったことが余程精神的に堪えたと見えて、ぐったりとしていた。
もうどうにでもなれ、と微妙にやさぐれた空気すら漂わせている。
「で、確認するけど、君はローゼンメイデンの一人でいいんだね?」
纏う空気を一遍させて、貴鬼は少女人形に語りかけた。
威圧、黄金の聖衣を纏うことを許されたものだけが持つ威圧感だった。
並の人間なら気絶必至の壮絶な威圧をうけても、少女人形はすまし顔だった、表向きは。
貴鬼もアドニスも鋭敏な感覚を有する黄金聖闘士だ、彼女が今、
怯えに近い感情を誇りという理性でムリヤリ押さえ込んでいる事ぐらい容易に察しえた。
威圧、黄金の聖衣を纏うことを許されたものだけが持つ威圧感だった。
並の人間なら気絶必至の壮絶な威圧をうけても、少女人形はすまし顔だった、表向きは。
貴鬼もアドニスも鋭敏な感覚を有する黄金聖闘士だ、彼女が今、
怯えに近い感情を誇りという理性でムリヤリ押さえ込んでいる事ぐらい容易に察しえた。
「…先ほどは失礼、お嬢さん。
僕の名はアドニス。ピスケスのアドニス。
もしよろしければ、お名前を教えていただけないかな?」
僕の名はアドニス。ピスケスのアドニス。
もしよろしければ、お名前を教えていただけないかな?」
一転、貴公子然とした態度でアドニスは彼女に自己紹介を行った。
呆気にとられる貴鬼をよそに、彼女は
呆気にとられる貴鬼をよそに、彼女は
「あら、下劣な人間なくせに礼儀は知っているのね」
元がいいだけに得だよな、そう思う貴鬼だが、ここはアドニスに任せることにする。
普段の行動が思春期丸出しのエロガキな分、こういったギャップは失笑を通り越して驚愕ものだ。
小さい子供やある程度年上の人間のあしらいなら貴鬼が得手とするが、
女性に関しては途端に年齢相応の無様を晒してしまうのだ。
これが師・ムウならば泰然とした面持ちを崩さずに居るのだろうな、と詮無き事を思うあたりが、貴鬼の未熟の証明だ。
女性に対して割と素っ気無い態度を取ってしまう為か、貴鬼の周りには女っ気が無い。
対するアドニスは、エロガキぶりからくるひょうきんな態度が妙に女性陣に受けが良いらしい。
なんか、不公平だなぁ。その呟きを聞かないでおく優しさくらいアドニスにはある。
互い、女の子が気になる年頃だ。
そういう事もあるさ。ああ若人よ
普段の行動が思春期丸出しのエロガキな分、こういったギャップは失笑を通り越して驚愕ものだ。
小さい子供やある程度年上の人間のあしらいなら貴鬼が得手とするが、
女性に関しては途端に年齢相応の無様を晒してしまうのだ。
これが師・ムウならば泰然とした面持ちを崩さずに居るのだろうな、と詮無き事を思うあたりが、貴鬼の未熟の証明だ。
女性に対して割と素っ気無い態度を取ってしまう為か、貴鬼の周りには女っ気が無い。
対するアドニスは、エロガキぶりからくるひょうきんな態度が妙に女性陣に受けが良いらしい。
なんか、不公平だなぁ。その呟きを聞かないでおく優しさくらいアドニスにはある。
互い、女の子が気になる年頃だ。
そういう事もあるさ。ああ若人よ
「私の名は水銀燈。
誇り高きローゼンメイデンの第一ドール、そして…」
誇り高きローゼンメイデンの第一ドール、そして…」
喩え、蜘蛛の糸に囚われていようとも、捕囚の辱めを受けようとも、その姿に、その視線に込められた誇りは
些かの綻びも無かった。
気高き銀の乙女、それが彼女に対して貴鬼の、アドニスの抱いたイメージだった。
些かの綻びも無かった。
気高き銀の乙女、それが彼女に対して貴鬼の、アドニスの抱いたイメージだった。
「もっとも優れたローゼンメイデンよ」
「手荒な事をしてすまなかった。
オイラとしては君に手を上げるつもりは無かったし、
ちょっとしたお手伝いをお願いしたかっただけなんだ」
オイラとしては君に手を上げるつもりは無かったし、
ちょっとしたお手伝いをお願いしたかっただけなんだ」
貴鬼は出来る限り優しい声色で、だが威圧感をますます強くして言葉を紡ぐ。
対する少女人形は、無言だ。
尋問戦術の一つ、怖い刑事と優しい刑事という奴だ。
貴鬼が怖い刑事役、アドニスが優しい刑事役という分担を即興で割り振ったのは、
まさに親友同士だからこそできる息の合ったコンビネーションだといえよう。
参ったね、と貴鬼は内心思う。
ここまで意固地になられては、たぶん殺されたって協力しない。貴鬼は完全に交渉方法を間違えたことを理解した。
とりあえずは、鏡の中から出ないと、と思う。
空間転移を行ってみてわかったが、此処は世界の薄皮のような場所だ。亜空間とでも言うべきだろうか?
貴鬼は師から伝え聞いたサガの技を思い出していた。
アナザー・ディメンション、
巨大な小宇宙によって異次元への穴をこじ開け、そこへ敵を叩きこむという豪快な技だ。
空間転移を得意とした師や前教皇、もしくは一輝ほどのデタラメな生還能力をもった人間でなければまず生還は不可能だろう、
黄金聖闘士同士の戦闘で用いられたケースはない為分からないが、おそらく特殊能力系統に強くなければ生還は黄金聖闘士とて
一人では難しいだろう。
なによりこの技はたとえ見切ったとしても回避が出来ない。
その亜空間に閉じ込められた以上、一輝ほどの小宇宙の爆発力を持たなければ生還は不可能だろう。
幸い、アドニスも自分も黄金聖闘士だ。この亜空間に人二人が通れる程度の風穴は開けられるだろう。
だが、それではこの少女人形を放置する事になる。
それだけは避けたい。
捨てられた子犬のような瞳をしたさびしげなこの少女人形を捨て行く事は、貴鬼の性分が許さなかった。
最初見たときから貴鬼には分かっていた、彼女は無理をしていると。
何故ならば、この親友と同じ気配がするからだ。
その原因が一体なのかはまだ分からないが、
過度の攻撃性は臆病さの裏返し、それを貴鬼は経験的に知っている。
師・ムウが戦死した直後の貴鬼自身と、出会った直後の荒れに荒れていたアドニスと同様の、
激情をただ怒りと攻撃性で覆い尽くし、悲鳴をあげる心をムリヤリ騙した姿。
そして、先代の不逞に、今の自分の無力さに歯噛みし、
日々の懊悩を飲み込んで心を鋼で覆いつくし、瓢げ者を装う今の親友と同じ空気を持っている。
貴鬼は知る由もないが、彼の親友の懊悩は、貴鬼の思い至るモノ以外にもある。
とにかく、できれば温順にこの状況を打破したい、拳銃は最後の武器だ。
対する少女人形は、無言だ。
尋問戦術の一つ、怖い刑事と優しい刑事という奴だ。
貴鬼が怖い刑事役、アドニスが優しい刑事役という分担を即興で割り振ったのは、
まさに親友同士だからこそできる息の合ったコンビネーションだといえよう。
参ったね、と貴鬼は内心思う。
ここまで意固地になられては、たぶん殺されたって協力しない。貴鬼は完全に交渉方法を間違えたことを理解した。
とりあえずは、鏡の中から出ないと、と思う。
空間転移を行ってみてわかったが、此処は世界の薄皮のような場所だ。亜空間とでも言うべきだろうか?
貴鬼は師から伝え聞いたサガの技を思い出していた。
アナザー・ディメンション、
巨大な小宇宙によって異次元への穴をこじ開け、そこへ敵を叩きこむという豪快な技だ。
空間転移を得意とした師や前教皇、もしくは一輝ほどのデタラメな生還能力をもった人間でなければまず生還は不可能だろう、
黄金聖闘士同士の戦闘で用いられたケースはない為分からないが、おそらく特殊能力系統に強くなければ生還は黄金聖闘士とて
一人では難しいだろう。
なによりこの技はたとえ見切ったとしても回避が出来ない。
その亜空間に閉じ込められた以上、一輝ほどの小宇宙の爆発力を持たなければ生還は不可能だろう。
幸い、アドニスも自分も黄金聖闘士だ。この亜空間に人二人が通れる程度の風穴は開けられるだろう。
だが、それではこの少女人形を放置する事になる。
それだけは避けたい。
捨てられた子犬のような瞳をしたさびしげなこの少女人形を捨て行く事は、貴鬼の性分が許さなかった。
最初見たときから貴鬼には分かっていた、彼女は無理をしていると。
何故ならば、この親友と同じ気配がするからだ。
その原因が一体なのかはまだ分からないが、
過度の攻撃性は臆病さの裏返し、それを貴鬼は経験的に知っている。
師・ムウが戦死した直後の貴鬼自身と、出会った直後の荒れに荒れていたアドニスと同様の、
激情をただ怒りと攻撃性で覆い尽くし、悲鳴をあげる心をムリヤリ騙した姿。
そして、先代の不逞に、今の自分の無力さに歯噛みし、
日々の懊悩を飲み込んで心を鋼で覆いつくし、瓢げ者を装う今の親友と同じ空気を持っている。
貴鬼は知る由もないが、彼の親友の懊悩は、貴鬼の思い至るモノ以外にもある。
とにかく、できれば温順にこの状況を打破したい、拳銃は最後の武器だ。
「…ッ!貴鬼!」
アドニスの鋭い叱咤の声に、貴鬼はそこではじめて廃墟の町並みが細かく震えていることに気が付いた。
「何をした!お前ッ!」
驚愕を隠さずに少女人形に誰何すると、当の少女人形もこちらと同じ表情をしていた。
「ごめん、君もしらないのか?」
一瞬我を忘れた己を恥じ、素直に謝るが、廃墟の町並みの振動はもはや地震というべき物へと変貌していた。
この空間を維持していたのが彼女だとするなら、これは彼女の意思なのだろうが、
当の彼女にその傾向が全く見られない、つまりは…
この空間を維持していたのが彼女だとするなら、これは彼女の意思なのだろうが、
当の彼女にその傾向が全く見られない、つまりは…
「異常事態発生ってことか!」
アドニスの、妙に楽しそうな叫び声。貴鬼は驚愕から覚醒し、状況を確認すべく当たりを見回す。
「水…?」
廃墟の空間のそこかしこから、水が滲み出していた。
いや、染み出すなどという生易しい状態ではない、もはや洪水といっていいほどの量になっていた。
いや、染み出すなどという生易しい状態ではない、もはや洪水といっていいほどの量になっていた。
「旅行運最悪だな、オイラたち…」
「たちは余計だ!たちは!
お前だけだろ!飛行機乗ればダイハード!船にのればポセイドンアドベンチャー!
陸路を行けば追いはぎ盗賊アメアラレ、則巻アラレは地上最強!
入管で聖衣聖櫃が引っかかったのもお前だけだろう!」
お前だけだろ!飛行機乗ればダイハード!船にのればポセイドンアドベンチャー!
陸路を行けば追いはぎ盗賊アメアラレ、則巻アラレは地上最強!
入管で聖衣聖櫃が引っかかったのもお前だけだろう!」
「最後のは今は関係ないだろ!
お前だってこの間エウロペさんに…」
お前だってこの間エウロペさんに…」
瞬間、鉄砲水が三人に襲い掛かっていた。
「今年は水難の相がでてたっけ。
僕、泳げないんだけどなァ…」
僕、泳げないんだけどなァ…」
水銀燈を抱えて跳びあがりながらしみじみと、アドニスは呟いた。
「そうは言うがね、ピスケス。
私が溺れさせた人間よりも、バッカスが溺れさせた人間のほうが多いのだよ?」
私が溺れさせた人間よりも、バッカスが溺れさせた人間のほうが多いのだよ?」
それは静謐といっていい程の声音だった。
だが、その声音が辺りに響いた瞬間、空間が軋んだ。
廃墟の空間を満たした水は、海水だったのだ。
余りにも巨大な小宇宙によって、空間が軋みをあげていた。
貴鬼の、アドニスの主、戦と智の女神アテナの小宇宙を遥かに凌駕する、恐るべき巨大な小宇宙。
現在地上にこれほどまでに巨大な小宇宙をもった存在など、アテナ以外には一柱しかない。
だが、その声音が辺りに響いた瞬間、空間が軋んだ。
廃墟の空間を満たした水は、海水だったのだ。
余りにも巨大な小宇宙によって、空間が軋みをあげていた。
貴鬼の、アドニスの主、戦と智の女神アテナの小宇宙を遥かに凌駕する、恐るべき巨大な小宇宙。
現在地上にこれほどまでに巨大な小宇宙をもった存在など、アテナ以外には一柱しかない。
「海皇…ッ」
呻くようにアドニスは呟く。
もはや先ほどまでの飄々とした空気は霧散していた。
呼吸すら、意識せねば停まってしまうだろう。
総身に小宇宙を漲らせねば、アドニスは恐らく腰砕けになっているはずだ。
もはや先ほどまでの飄々とした空気は霧散していた。
呼吸すら、意識せねば停まってしまうだろう。
総身に小宇宙を漲らせねば、アドニスは恐らく腰砕けになっているはずだ。
「…ポセイドンッ!」
貴鬼は、震えた。
四年前、貴鬼は海皇神殿にて死にかけている。
キグナス氷河の兄弟子であり、北氷洋を守護する海将軍・クラーケンのアイザックに接触し、
貴鬼は彼からライブラの聖衣を守る為に文字通り盾となった。
幸いにして、氷河に死地を救われたものの、その記憶は師・ムウの死と並び、今も尚悪夢として貴鬼を苛む時がある。
四年前、貴鬼は海皇神殿にて死にかけている。
キグナス氷河の兄弟子であり、北氷洋を守護する海将軍・クラーケンのアイザックに接触し、
貴鬼は彼からライブラの聖衣を守る為に文字通り盾となった。
幸いにして、氷河に死地を救われたものの、その記憶は師・ムウの死と並び、今も尚悪夢として貴鬼を苛む時がある。
「そうか、アリエス。
君はあの時の小僧か?
大きくなったなぁ」
君はあの時の小僧か?
大きくなったなぁ」
莞爾と笑う、一見すれば無精ひげの似合う好青年にしか見えない彼だが、その空気は先ほどの貴鬼の威圧の比ではない。
「…そういうアンタこそ、ずいぶんとむさ苦しくなったじゃないか」
貴鬼はようやくそれだけ吐き出した。
「ああ、この髭かね?
似合っているだろう、海皇だからね。相応の威厳が必要なのだよ。
髭は手っ取り早い男性のシンボルだからね」
似合っているだろう、海皇だからね。相応の威厳が必要なのだよ。
髭は手っ取り早い男性のシンボルだからね」
まさか裸になって見せるわけにもいくまい、そう冗談めかして言ってみせるが、
誰もその笑いにつられる者は居ない。
誰もその笑いにつられる者は居ない。
「まどろっこしい事は抜きだ!
何が目的だ!海皇ポセイドン!」
何が目的だ!海皇ポセイドン!」
アドニスの叫びを柳に風とばかりに流して、海皇は言う。
「私の目的か…。
そうだな、まずは探し物と言っておこうか?
ローゼンメイデンを探していてね、足繁く捜し歩いていたのだよ。
いや、広大で参ったよ、この領域は」
そうだな、まずは探し物と言っておこうか?
ローゼンメイデンを探していてね、足繁く捜し歩いていたのだよ。
いや、広大で参ったよ、この領域は」
笑みを滲ませた声音と、膨れ上がる小宇宙。相反する二つの感情は、まさしく波濤の如し。
「生憎と、オイラも探していたんだよ、彼女たちをね。
いやぁ~、参ったなぁ。探し物が被っちゃったよ」
いやぁ~、参ったなぁ。探し物が被っちゃったよ」
軽口を叩く事すら全力を振り絞らなければならないという異常。
かつて星矢はこの海皇に向かって「諦めが悪いのが玉に瑕でね」とのたまったという。
今の貴鬼には、星矢のその恐れ知らずの肝っ玉が羨ましくて仕方が無かった。
かつて星矢はこの海皇に向かって「諦めが悪いのが玉に瑕でね」とのたまったという。
今の貴鬼には、星矢のその恐れ知らずの肝っ玉が羨ましくて仕方が無かった。
「そうか、そうか…
ところで、私の流儀を知っているかね?」
ところで、私の流儀を知っているかね?」
小宇宙の爆発は津波と化して三人に襲い掛かった。
「欲しいものは、力ずくで奪いとる」
いっそ怒号だったらのならば、これほど震えることも無かっただろう。
笑みと共に吐き出されたポセイドンの静かな声は、ただ、恐ろしかった
笑みと共に吐き出されたポセイドンの静かな声は、ただ、恐ろしかった