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「最強伝説の戦士 黒沢 51-7」(2007/09/13 (木) 23:02:54) の最新版変更点
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戦士クウガの力を完全に覚醒させた黒沢が、溢れる力を持て余すかのように拳を
振りかぶってゴオマに向かった。そして必殺パンチ! のつもりが、突然後ろから
その拳を引っ張られて急ブレーキ、後方へとつんのめってしまった。
「な、何だっ!?」
振り向いて自分の手を見れば、白く太い糸が絡み付いていた。遥か向こう、岩場を
越えて森の奥から伸びている糸。そしてその糸を強く引っ張って、まるでゴム仕掛けの
ように森から跳んで来たのは、クモの頭部を持つ土色の肌の怪人。
「い、1号か!」
「ジガギヅシザバ・クウガ! ゴラゲゾボソギデバゾガゲデジャス! ズ・グムン・バザ!」
(久しぶりだな、クウガ! お前を殺して名を上げてやる! ズ・グムン・バだ!)
クモ男、グムンは跳んで来た勢いそのままに黒沢を蹴り倒した。そして倒れた黒沢を、
また糸を引っ張ってムリヤリ立たせて、
「させるかっ!」
次の一撃が来る前に、黒沢は手に絡まった糸を外してグムンから離れた。が、すかさず
後ろからゴオマに羽交い絞めにされ、
「ジュスガバギ・クウガ!」
(許さない、クウガ!)
ゴオマの牙が、黒沢の肩に食い込んだ。生体装甲の隙間をぬって、強化皮膚を突き破って。
変身したとはいえ常人と何ら変わらない、黒沢の赤い血が吹き出す。
黒沢は激痛の脂汗を浮かべながら足掻いてもがいてじたばたするが、ゴオマは離れない。
そうこうしてる間に正面からはグムンが来る。そして背後からは、
「3号おおぉぉっ!」
野明が来た。拾った拳銃二丁を両手に持って、左右からゴオマの耳に押し当てて撃つ! が、
確かに銃弾が耳から頭蓋に撃ち込まれたというのに、それでもゴオマは平然としている。
黒沢を羽交い絞めにしている力を全く緩めることなく、牙だけ抜いて、ニヤリと笑って
振り向いて、ゴオマは野明に自慢げに言い放った。
「ボンバロボ・ゴセビパヅグジョグギバ……」
(こんなもの、俺には通用しな……)
「と自慢するタイプよね、あんたは! 黒沢さん、前向いたまま目を瞑ってっ!」
え、と黒沢が聞き返すより早く、野明はポケットからあるものを取り出した。
3号=ゴオマに逃げられてはまずいと火炎瓶の時に悟って、奴の弱点だとは知りつつ
使えなかった武器だ。
先日、病院から出て黒沢と戦った時、パトカーのライトに苦しんで逃げたゴオマ。コウモリ男
な外見に違わぬ弱点を備えているらしい。
そう思って、野明が用意してきたもの。ピンを抜いて、すぐさま自分で自分に目隠しして、
「喰らえっ! あたしたち警察官が知る、この世でイチバン強烈な光!」
ゴオマの眼前で、スタングレネードが炸裂した。常人ならばたちどころに視力を奪われ、
それにより判断力を失って反射的に体を丸めてしまう閃光弾である。
それを、通常の日光や蛍光灯すら苦手とするコウモリ種怪人・ゴオマが浴びたのだから……
「ギィィアアアアアアアアァァァァァッ!」
この世のものとも思えぬ悲鳴を上げて、ゴオマは黒沢を突き放した。空中を引っ掻きまくって
もがき苦しみ、暴れ、そして羽ばたき舞い上がる。
少しずつ明けつつある東の夜空に背を向けて、森の方へと逃げ出した。しかも、
「ボシャブバ……ッ!」
(小癪な……っ!)
ゴオマに羽交い絞めにされていた黒沢を挟んで、野明と相対する形になっていたグムン
も目を焼かれたようだ。ゴオマほど苦しんではいないし常人のように丸まってはいないが、
やはり視力は完全でないらしく、黒沢への攻撃ができないでいる。
もちろん、その黒沢は野明に背を向けていたので、
「よっしゃああああぁぁっ、勝機!」
ゴオマ相手には不発に終わった渾身のパンチを、グムンの顔面に叩き込む。頭蓋が
陥没したんじゃないかって手応えだったが流石にそんなことはなく、苦しみながらも
グムンは倒れない。どころか、もう視力が回復しつつあるのか果敢に殴り返してくる。
白い姿の時より大幅に強くなったとはいえ、黒沢自身がまだクウガの力を使いこなせては
いない。ゴオマに深々と喰らいつかれた肩の傷も痛むので思うように戦えず、グムンの
拳を、脚を、爪を、次々と受けてしまう。
何とかしないと、何かないか、と黒沢が念じたその時、足……特に右足が、急に熱くなった。
「! これかっ!」
右の中段回し蹴りがグムンに命中! 息を詰まらせたのか、グムンの動きが止まる。
すかさず左の前蹴りを打つ、が、
「ボンバベシ!」
(こんな蹴り!)
グムンはその足をキャッチした。両手でしっかりと握って放さず、
「よぉし放すなっ!」
黒沢は左足をグムンに持たせたまま、右脚一本で大地を蹴って跳躍。見上げるグムンを
見下ろして、その胸板へと豪槍の如き右の蹴り……一瞬、その足に炎が灯った……を、
叩き込む!
「おおおおぉぉりゃああああああああぁぁぁぁっ!」
爆音が響き、たまらずグムンは黒沢の足を離して吹っ飛び倒れ、黒沢は右足から
煙を立てて着地する。
荒い呼吸の黒沢と不安な面持ちの野明の目の前で、グムンは苦しそうに立ち上がった。
その胸、黒沢が蹴り込んだ辺りに、何か紋章のようなものが象られ……炎で描かれている。
それをグムンは両手で押さえ、だが押さえきれないらしく、
「ボソグ……ジャデデジャス……ボ……ボ・ボソグ! ジャデデジャス……!」
(殺す……やってやる……こ……こ、殺す! やってやる……!)
紋章の炎が胸から全身へと走り広がる。グムンは顔を上げ呪詛の視線を黒沢に放ち、
「クウウゥゥガアアアアァァァァッッ!」
断末摩の叫びを上げ、火柱と化し爆発! 多くの人命を奪った邪悪の肉体が今、四散した。
その、強大なる邪悪を倒した戦士はというと、
「……か…………かっ……た? 終わっ…………た……んだよ…………な」
体の色が赤から白へ、そして人間・黒沢へと変化していく。自身の意識の喪失と共に。
「黒沢さんっ!」
野明が駆け寄って抱きとめようとしたが間に合わず、黒沢は大地に倒れ伏した。
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