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4月22日 午前10時45分
授業の合間の短い休み時間。
少しの間の自由を満喫しているのか、教室から廊下まで、ざわざわと騒がしい。
しかし、その中で唯一、張り詰めた緊張感を漂わせているクラスがあった。
高等部2年F組である。
その緊張感の理由。それは少しばかり教室内の声に耳を傾けてみれば理解できるだろう。
「次の授業は・・・あれだよな」
「ああ・・・生物だ」
「休み・・・・・・とか、ないかな?」
「・・・俺、部活の朝錬で早めに出てきたんだけどさぁ。
その時、学校に来てるの見ちまった・・・」
「お前・・・空気読めよ・・・。俺らのかすかな望みを吹き消すなよ」
「・・・ワリィ。でも早めに覚悟しといたほうが良くねぇ?」
「まさか、自分のクラスに『リアル女王の教室』みたいな教師が来るとは思ってなかったわ」
「男だから『帝王の教室』か・・・?」
「響きがより怖いのは何でだろうね・・・」
「何でよりによって、私達クラスが最初の授業なわけ?
事前情報がなくて対応取れないよ・・・」
そう、空条承太郎の最初の授業に当たる、哀れな子羊たちのクラスだ。
昨日の一喝を受け、生徒たちは承太郎を、最恐の新任教師と評価していた。
そんな周りを見て小声で順平がゆかりに漏らす。
「・・・なんか、皆すげぇビビッてんな」
ゆかりは軽く溜め息を吐いて、同じく小声で返す。
「でも、仕方ないんじゃない?第一印象がアレじゃあさ」
思い浮かべる昨日の光景。
「まぁ・・・確かに」
天道の言葉に、2人はそろって頷いた。
新任の挨拶の一発目に一喝である。どれだけ肝が据わっていればできる事であろうか。
キーンコーンカーンコーン。
そんな生徒達を余所に、無情にも授業再開の鐘が鳴る。
教師を待つ室内の生徒は、まるで処刑を待つ囚人のようだ。
時計の秒針の動く音が響く教室の静寂を破るように、ガラリと扉を滑らせ、巨体が教室に入ってくる。
そのままツカツカと教壇に進み、ピタリと止まって、生徒に向き合う。
「自己紹介は昨日もしたが・・・空条承太郎だ。
これから一年、お前達に生物を教える。では出席を取るぜ・・・」
張り詰めた空気の中、授業が進行していく。
生徒は、その殆どが、カチンコチンの堅苦しい授業になると思っていた。
だが・・・実際はその逆であった。
授業の本筋を進めつつ、承太郎自身が海洋調査の時に見た美しい光景や、
面白い生態をもつ海の生物の話などを挟む、飽きの来ない授業だった。
そうして、授業が終わる頃には、一番受けたくない授業筆頭から
次の授業が一番楽しみな授業に格上げされる事になった。
が、やはり甘くはないと認識させる事もあった。それは授業が中盤に差し掛かった頃の事。
(ふぁ。やっべぇ。タルタロス行かなくて暇だったからって、夜更かししすぎたかぁ?
漫画って読み出すと止まらなくなんだよなぁ)
窓の外を見つつ考えているのは、今回の出来事の主役、スチャラカ高校生代表の伊織順平である。
そして何かを思いついた顔で、間を挟んだ隣に座る天道を見る。
(そうだ、後でコイツにノート見せてもらえばいいじゃん。
ゆかりッチは見せてくんねーけど、こいつならいけんじゃねぇ?)
と、勝手にノートを見せてもらえる事を前提にした考えを完結させると、机に伏せて眠りに落ちた。
だが、その行動はすでに、承太郎の監視下に置かれていた。
承太郎は、すっとチョークを顔の前に構え、狙いをつける。
「オラァッ!」
気合と共に打ち出されたチョークは、棒手裏剣のような軌道を描き、
順平の頭部に直撃すると同時に粉々に砕け散った。
「ギニャーーー!!?」
順平は当たった場所を押さえて飛び起きた。
かなりのパワーが乗ったチョークを食らったせいか、少し涙目になっている。
「多少の私語は黙認するが、居眠りだけは見逃さねーぜ。
聞いてりゃ多少なりとも頭に入るが、寝ちまったらそうはいかねーからな」
そしてその後も居眠りする生徒は一人の例外もなくチョークの洗礼を受ける事になった。
後日、承太郎の知らないところで『ツキコーのゴルゴ』と呼ばれるようになるのはまた別の話である。
同日 午後5時47分
昼間のうちにSPW財団のスタッフが、荷物や足りない家具などを運び終えている手はずなので、
学園での仕事が終わった後、承太郎はまっすぐ巌戸台分寮に向かった。
寮に着くと、S.E.E.S.のメンバー全員がロビーで承太郎を待っていた。
「ようこそ、巌戸台分寮へ。・・・これから宜しくお願いします、空条先生」
代表して美鶴が承太郎に挨拶をする。
そのほかのメンバーも口々に歓迎の言葉を述べる。
「こちらこそ宜しく頼むぜ。タトゥーとドラッグ以外は口出ししねぇから安心しな。
酒やタバコなんかは、学校以外じゃとやかく言わねーぜ」
堅物そうに見える承太郎から飛び出した言葉に、目を丸くするメンバーたち。
自分の高校時代に、かなり好き勝手やっていたので、その辺は寛大な承太郎であった。
その後、歓迎会も兼ね、皆で少しばかり豪華な夕食をとることになった。
その席で、2年F組の3人が承太郎の授業がとても面白かった事を承太郎に言うと、
『イバルだけで能なしな教師にはなりたくねえだけだぜ』と、小さく笑ってそう返したそうだ。
夕食後は、影時間までそれぞれ自由な時間を過ごし、0時前に学園の正門前に集合する事になった。
同日 影時間
承太郎を含むS.E.E.S.のメンバーがタルタロスのエントランスに集まっている。
戦いの前の緊張を解す為の準備運動(ちなみに真田が提案した)をしている時に、順平が声を上げた。
「あっ、そうだ!そう言えば空条先生の、その・・・スタンドでしたっけ?
それの――『能力』、教えてもらえる約束でしたよね?」
その言葉に、全員が運動をやめ、承太郎を見る。
「そうだったな。皆、集まってくれ」
承太郎が声を掛けると、5人は承太郎の前に集まる。
集まったところで、美鶴が質問する。
「先に一つお聞きしておきたいのですが、『近距離格闘タイプ』と仰られましたが、
実際にはどれくらいの力があるのですか?
ナビゲートをする立場としては戦力の把握はしておきたいので」
それを聞き、承太郎は軽く腕を組み、少しの間考える。
「そうだな・・・、測ったことが無いから数値で言う事はできんが・・・。
パワーは鉄格子をブチ折って、真っ二つに引き裂ける。
後は猛スピードで迫ってくるコンボイトラックを殴り飛ばした事もある。
スピードは・・・至近距離で発射された銃弾を弾く事くらいは容易い。
精密機械以上の正確な動きも可能だ。
ああ、一度聞いているだろうが、俺のスタンドは『スタープラチナ』と言う」
スタンドの身体能力、とでも言うのか、ともかくスペックを聞き、一同は唖然とする。
「な、何だその反則的な強さは・・・」
驚きの中に悔しさの混じった声で、真田が呟いた。
「じゃ、じゃあ改めて能力のほうをお願いします」
呆然としてしまいそうな空気を変えるため、ゆかりが話を戻した。
「解った。能力は・・・理解しにくいだろうが『最大で5秒間時間を止める事ができる事』だ。
時の止まった空間でなぜ5秒と感じるかは解らんが、ともかく最大5秒だ」
その説明に、順平が不満そうな声を上げる。
「えぇ?たった5秒なんスか?だって、いち、にぃ、さん、しい、ご!
って、これだけっすよ?何もできないじゃないっスか」
その言葉に、承太郎は少し苦笑を浮かべる。
そんな順平に真田が呆れた声で言う。
「順平、お前それを本気で言っているのか?」
「え?俺なんかおかしいこと言いました?」
「その前の話を聞いてなかったのか、お前は。
銃弾を弾けるスピードと、猛スピードのトラックを殴り飛ばす力の前に、5秒間『も』無防備でいるんだぞ?
5秒間に何発拳を喰らうかなんて考えたくも無い」
真田の言葉で順平は初めてスタープラチナの能力の恐ろしさを理解し、血の気が引く感覚を味わった。
「む・・・無敵じゃないっスか」
その言葉に承太郎は首を振る。
「強くはあっても、無敵と言う事は有り得ない。相性というものがある。
これはどんなスタンドでも、そしておそらく、お前達のペルソナにも当てはまるだろう。
『調和する二つは完全なる一つに優る』―――お前達の学校にあるオブジェに書いてある言葉だ。良く覚えておくといい。
重要なのは、欠けた部分を補える仲間を持つ事、そして自分の長所を発揮できる闘いのスタイルを持つ事だ」
承太郎が話し終えてから、おずおずとゆかりが口を開く。
「あ、あのー。私からも一つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「なんだ?答えられることなら答えるぜ」
「何で、学校に赴任するのが遅れたんですか?」
ゆかりとしては普通の、戦いには関係ないごく普通の質問をしたつもりだった。
「昔の仲間の・・・墓参りのために、フランスにな・・・」
懐かしさと悲しさ、そして寂しさのこもった声が、エントランスに響いた。
「あ・・・ごめんなさい」
「いや、いい。知らなかった事だし、聞きたくなるのも理解できるからな」
重苦しい空気がエントランスを支配する。その空気を破るように、バカ明るい声で順平が美鶴に尋ねる。
「きっ、桐条先輩!この前までは、俺とゆかりッチと阿虎でタルタロス攻めてましたけど、
今日からはそこに空条先生を加えるって事でいいっスか?」
順平の頑張りを無駄にしないように、美鶴も明るめの声を心がけて話す。
「あ、ああ。そうだな。その通りだ、伊織。後は現場のリーダーだが・・・」
ゆかりもそれに続く。
「やっぱり、最年長って事で、空条先生?」
そう言われた承太郎に皆の視線が集まる。
「いや・・・。リーダーはころころ変えないほうがいいだろう。
今までやった奴がそのままリーダーでいいと思うぜ」
承太郎は普段通りの声で提案する。
その言葉を受けて、真田が、阿虎の肩をぽんと叩く。
「それじゃあ、これまで通り、お前に任せたぞ。やれるな?」
阿虎は、少し考えるような仕草をした後、力強く頷いた。
その場を締めるように美鶴が一歩前にでて、力強く言う。
「それでは、ここに改めてタルタロスの攻略を宣言する!!」
―――この瞬間から、真のタルタロス攻略がスタートした―――
To Be Countinue ...
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