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「その名はキャプテン 49-1」(2007/05/24 (木) 14:29:58) の最新版変更点
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第五十九回「光の行末」
生まれて初めて他の生物に背を向けた。
四方八里を焦土と化す自分の雷を自らの力と変えた鳳凰が、後ろから迫る。
熱い、溶岩ですら喉の渇きを潤す清水にすぎないと思っていたが熱さとはここまで堪えるのか。
煮えたぎる溶岩も、全てを凍りつくす凍土も自分には緑の生い茂る平原と変わりはない。
なのにすぐ後ろに迫る、この異常なまでの熱風、どうしてこんな熱を放っている?
灼熱の風が撫でるようにして皮膚を滑って行く度に、鉄よりも硬い皮が焦げていく。
どんな生物よりも速いと信じていた足で全力で駆け抜けた。
だが鳳凰の吐息から逃れる事は出来ない、熱い風が喉を通して呼吸を狂わせる。
ついに追いつかれた、岩石を消し飛ばすほどの高温が体を包み込んでいく。
雷が体中を這いずり回る、こうして自分に剣を向けた愚かな狩人を屠ってきた。
だが、無駄だった。
見ると鳳凰の翼に雷が集中していく。
自分の最大の武器を封じられている以上、成す術は無かった。
角を握りしめる魔手に、より一層の熱が注ぎ込まれる。
痛い、これまで狩人の攻撃を如何ほどにも思わなかった自分が痛みに震えている。
自分の頭から何かがポタポタと垂れてくる、それに混じった破片を見る限り自分の角のようだ。
溶けた、どんな物も貫く筈の自分の角が今では溶岩のようにドロドロになっている。
絶望に追い打ちを掛けるかのようにして体中を包む熱が温度を上げる。
嫌だ、死にたくない、生き延びて子を残さなければ種族が滅んでしまう。
熱が引き始めた、願いが通じたのだろう、苦しみから解放される。
開かれた眼には『光』が見えた、殺された仲間の光と全く同じ光。
迎えが来たのだ、これでようやく楽になれる。
そして獣は、眼を閉じた。
二度と開くことのない眼を。
不思議だ、ディムロスが居ないのに体中が熱く煮えたぎる。
放たれた雷で麻痺したのか、体が存在しないかのようにさえ感じられ、羽根の様に軽く浮き上がった。
燃え上がる闘志は翼を形作り、ついに独力で空を飛ぶまでに至った。
背を向けて走り出す幻獣が気のせいかスローモーションを見てるかのように遅い。
少し遠いが今なら追いつける、そう思って翼を動かしてみる。
唯の一度の羽ばたきで背後に暴風が巻き起こったのが分かる、近づくのが速すぎて、
見えない手がキリンを引っ張ってるかの様にさえ思えた。
真後ろから炎の翼でキリンを包み込み、焼き焦がしていく。
驚くキリンが体中に電撃を這いまわらせているが、全て紫電を通して吸収している。
鳳凰の翼から炎で出来た羽が舞い散り、それを一枚握ってみた。
美しい羽が手に溶け込んでいき、灼熱の拳を作り上げた。
苦しみ、悶えている幻獣の角へと手を伸ばす。
厳格だった畏怖すべき雷角は、まるでゼリーの様にドロドロになってしまった。
巻き起こる熱風で呼吸困難に陥り、恐怖でパニックまで引き起こしている。
これで終わりにしよう、爆炎の魔手に神からの贈物の様に聡明で優美な光が集う。
灼熱から灼光へと変貌を遂げた英雄の拳で、頭部を包み込む。
力強い閃光が周囲を照らしたと同時に、美しい獣の吐息が消えた。
戦いの終わりと同時に、鳳凰の翼は飛び去り、獣の雷も一部を紫電に残し四散した。
自分でも信じられないくらいの力、背後に残った戦いの跡を見て唖然としてその場に座り込むスタン。
「俺が・・・やったのか?」
鳳凰の翼が溶かした床には巨大な穴が出来上がり、穴の向かい側に仲間の姿が見えた。
穴を覗き込むと一階の床には円形に地面を残し、その周りで溶岩が沸々と湧き上がっていた。
熱の中心地は蒸発したので、溶岩が下に落ちなかった為にこのような形状になったのだろう。
「シィット!よく見たら熱で焦げるわ、雷落くらっちまうわで穴だらけじゃねぇか!」
(おーおー、お気に入りのお洋服が台無しだなお坊ちゃまよぉ。)
すっかり焼け焦げてしまったコートから武器を抜き取り、肩に担ぐ。
(ブルー、ありゃメルビル図書館の武術書に載ってる奥義って奴だぜ。
確か『鳳凰天駆』って奴だ、闘気を体に巻きつけて敵に突っ込むんだがよ。)
だが、って事はまだ何かあるかと思い聞こうとしたがそれより速くファッツが答える。
(アレにはもう一段階上の秘奥義ってのがあるらしいぜ。)
「そいつぁ・・・ファンタスティックな話だぜ、アレ以上強くなっちまったら本当に化物だな。
だがよ、確か秘奥義の文献は探したけどなかった筈、残念な話だ。」
スタンの方へと目を向ける、既にルーティが座り込むスタンに駆け寄り、声を掛けているので心配はいらない。
休んでいたテオドールとラファエルも周囲を警戒しながらスタンに近寄る。
「スタン!アンタ、ディムロスも無いのにどうやったの?」
聞いてはみたが返事が返ってこない、意識がハッキリしていないのだろう。
まずは休ませることにして、スタンを横にしてやった。
周囲に散らばった溶けかけの瓦礫を足でどかしながらスタンの方へと近づいて行く。
「それにしても今日はバテちまう奴が多いな。しかも張り切り過ぎて。」
途中で嫌味を言うのも忘れない、ブルーとの決闘で力尽きたラファエルには耳が痛かった。
横で笑いを堪えるテオドールから視線を移し、頬を赤くしながら恨めしそうに見ている。
横になって一分も経っていないのにいびきをかいて眠り込んでいるスタン。
とても先程まで闘っていた人物とは思えないほどだらしない顔を晒している。
裏表のない、真っすぐな心を持った男の顔だった。
「さてと、残念だがここでお別れだぜ。」
振り返るとブルーが壁を背に銃を構えていた。
無愛想だがジョークを言う時はいつも笑っていたブルー。
いまはその顔に笑みは浮かんでいなかった。
咄嗟に武器を構えるラファエルとルーティ。
だが、瞬時に己の無力を悟る。
距離が開き過ぎている、ソーディアンの下級晶術なら間に合うかもしれない。
だが、キリンの雷にも耐えるブルーを一撃で倒せる筈はない。
「・・・やはりな、なんとなくこうなる気はしていた。」
老騎士の鋭い眼光がブルーを見据える、その手に剣は握られてはいなかった。
「スタン君が眠ってしまったのは、君にとって好都合だったな。」
「テオドール様、何を・・・?」
困惑してブルーに背を向け、テオドールの方へと振り向く。
銃声が廃墟の中に響き渡ると同時に、ラファエルの足もとに無数の弾痕が刻まれる。
「ボーイ、覚えておきな・・・戦場では、本当に信頼できる人間以外には背を向けるな。
例え仲間であってもだ、背を向けるならそれなりの力と覚悟を身につけてからにしな。」
足もとに放たれたサラマンダーの砲撃へと目をやると、分厚い石で出来た床を貫通していた。
無理だ、鋼鉄の盾をもっても、いや龍鱗で作られた盾をもってしても防げそうにない。
足が自ずと後ろに下がっていく、離れるほど剣の間合いが遠ざかり、
不利になるのが分かっていても、サラマンダーの驚異的な威力と連射能力を知ってしまった今では逆らえない。
「アンタの目的は何?私達をどうするつもり?」
ルーティが足を少しずつ滑らせるようにして前へと出る、
軽い装備と本人の身軽さを最大限に生かして飛び込む気だろう。
「止めときなお嬢ちゃん、俺は早撃ちだって得意だぜ。」
その言葉にピクリと体が動く、ブルーがその動作の内にサラマンダーを分離し、
二丁の銃へと変形させて左右に構える、ラファエルは知っている。
前方180度の敵を全て粉々に砕く無敵の銃。
サラマンダーがあの姿になった時、逃げ場はどこにもない事を。
進む事も退く事も出来ない窮地に追い込まれ、沈黙するしかない二人。
だが、この状況下で老騎士だけが口を開いた。
「二人とも止めるんだ。何もしなければ彼の方から撃つことは無い。
ブルー・・・別れの前に教えてくれ、君は一体何者なんだ?」
テオドールの言葉にいつもの笑みを口に浮かべるブルー。
武器を下ろす気はないようだが、問いには答えてくれるのか口を開いた。
「俺は人間さ・・・ちょっと進化しただけのな。」
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第五十九回「光の行末」
生まれて初めて他の生物に背を向けた。
四方八里を焦土と化す自分の雷を自らの力と変えた鳳凰が、後ろから迫る。
熱い、溶岩ですら喉の渇きを潤す清水にすぎないと思っていたが熱さとはここまで堪えるのか。
煮えたぎる溶岩も、全てを凍りつくす凍土も自分には緑の生い茂る平原と変わりはない。
なのにすぐ後ろに迫る、この異常なまでの熱風、どうしてこんな熱を放っている?
灼熱の風が撫でるようにして皮膚を滑って行く度に、鉄よりも硬い皮が焦げていく。
どんな生物よりも速いと信じていた足で全力で駆け抜けた。
だが鳳凰の吐息から逃れる事は出来ない、熱い風が喉を通して呼吸を狂わせる。
ついに追いつかれた、岩石を消し飛ばすほどの高温が体を包み込んでいく。
雷が体中を這いずり回る、こうして自分に剣を向けた愚かな狩人を屠ってきた。
だが、無駄だった。
見ると鳳凰の翼に雷が集中していく。
自分の最大の武器を封じられている以上、成す術は無かった。
角を握りしめる魔手に、より一層の熱が注ぎ込まれる。
痛い、これまで狩人の攻撃を如何ほどにも思わなかった自分が痛みに震えている。
自分の頭から何かがポタポタと垂れてくる、それに混じった破片を見る限り自分の角のようだ。
溶けた、どんな物も貫く筈の自分の角が今では溶岩のようにドロドロになっている。
絶望に追い打ちを掛けるかのようにして体中を包む熱が温度を上げる。
嫌だ、死にたくない、生き延びて子を残さなければ種族が滅んでしまう。
熱が引き始めた、願いが通じたのだろう、苦しみから解放される。
開かれた眼には『光』が見えた、殺された仲間の光と全く同じ光。
迎えが来たのだ、これでようやく楽になれる。
そして獣は、眼を閉じた。
二度と開くことのない眼を。
不思議だ、ディムロスが居ないのに体中が熱く煮えたぎる。
放たれた雷で麻痺したのか、体が存在しないかのようにさえ感じられ、羽根の様に軽く浮き上がった。
燃え上がる闘志は翼を形作り、ついに独力で空を飛ぶまでに至った。
背を向けて走り出す幻獣が気のせいかスローモーションを見てるかのように遅い。
少し遠いが今なら追いつける、そう思って翼を動かしてみる。
唯の一度の羽ばたきで背後に暴風が巻き起こったのが分かる、近づくのが速すぎて、
見えない手がキリンを引っ張ってるかの様にさえ思えた。
真後ろから炎の翼でキリンを包み込み、焼き焦がしていく。
驚くキリンが体中に電撃を這いまわらせているが、全て紫電を通して吸収している。
鳳凰の翼から炎で出来た羽が舞い散り、それを一枚握ってみた。
美しい羽が手に溶け込んでいき、灼熱の拳を作り上げた。
苦しみ、悶えている幻獣の角へと手を伸ばす。
厳格だった畏怖すべき雷角は、まるでゼリーの様にドロドロになってしまった。
巻き起こる熱風で呼吸困難に陥り、恐怖でパニックまで引き起こしている。
これで終わりにしよう、爆炎の魔手に神からの贈物の様に聡明で優美な光が集う。
灼熱から灼光へと変貌を遂げた英雄の拳で、頭部を包み込む。
力強い閃光が周囲を照らしたと同時に、美しい獣の吐息が消えた。
戦いの終わりと同時に、鳳凰の翼は飛び去り、獣の雷も一部を紫電に残し四散した。
自分でも信じられないくらいの力、背後に残った戦いの跡を見て唖然としてその場に座り込むスタン。
「俺が・・・やったのか?」
鳳凰の翼が溶かした床には巨大な穴が出来上がり、穴の向かい側に仲間の姿が見えた。
穴を覗き込むと一階の床には円形に地面を残し、その周りで溶岩が沸々と湧き上がっていた。
熱の中心地は蒸発したので、溶岩が下に落ちなかった為にこのような形状になったのだろう。
「シィット!よく見たら熱で焦げるわ、雷落くらっちまうわで穴だらけじゃねぇか!」
(おーおー、お気に入りのお洋服が台無しだなお坊ちゃまよぉ。)
すっかり焼け焦げてしまったコートから武器を抜き取り、肩に担ぐ。
(ブルー、ありゃメルビル図書館の武術書に載ってる奥義って奴だぜ。
確か『鳳凰天駆』って奴だ、闘気を体に巻きつけて敵に突っ込むんだがよ。)
だが、って事はまだ何かあるかと思い聞こうとしたがそれより速くファッツが答える。
(アレにはもう一段階上の秘奥義ってのがあるらしいぜ。)
「そいつぁ・・・ファンタスティックな話だぜ、アレ以上強くなっちまったら本当に化物だな。
だがよ、確か秘奥義の文献は探したけどなかった筈、残念な話だ。」
スタンの方へと目を向ける、既にルーティが座り込むスタンに駆け寄り、声を掛けているので心配はいらない。
休んでいたテオドールとラファエルも周囲を警戒しながらスタンに近寄る。
「スタン!アンタ、ディムロスも無いのにどうやったの?」
聞いてはみたが返事が返ってこない、意識がハッキリしていないのだろう。
まずは休ませることにして、スタンを横にしてやった。
周囲に散らばった溶けかけの瓦礫を足でどかしながらスタンの方へと近づいて行く。
「それにしても今日はバテちまう奴が多いな。しかも張り切り過ぎて。」
途中で嫌味を言うのも忘れない、ブルーとの決闘で力尽きたラファエルには耳が痛かった。
横で笑いを堪えるテオドールから視線を移し、頬を赤くしながら恨めしそうに見ている。
横になって一分も経っていないのにいびきをかいて眠り込んでいるスタン。
とても先程まで闘っていた人物とは思えないほどだらしない顔を晒している。
裏表のない、真っすぐな心を持った男の顔だった。
「さてと、残念だがここでお別れだぜ。」
振り返るとブルーが壁を背に銃を構えていた。
無愛想だがジョークを言う時はいつも笑っていたブルー。
いまはその顔に笑みは浮かんでいなかった。
咄嗟に武器を構えるラファエルとルーティ。
だが、瞬時に己の無力を悟る。
距離が開き過ぎている、ソーディアンの下級晶術なら間に合うかもしれない。
だが、キリンの雷にも耐えるブルーを一撃で倒せる筈はない。
「・・・やはりな、なんとなくこうなる気はしていた。」
老騎士の鋭い眼光がブルーを見据える、その手に剣は握られてはいなかった。
「スタン君が眠ってしまったのは、君にとって好都合だったな。」
「テオドール様、何を・・・?」
困惑してブルーに背を向け、テオドールの方へと振り向く。
銃声が廃墟の中に響き渡ると同時に、ラファエルの足もとに無数の弾痕が刻まれる。
「ボーイ、覚えておきな・・・戦場では、本当に信頼できる人間以外には背を向けるな。
例え仲間であってもだ、背を向けるならそれなりの力と覚悟を身につけてからにしな。」
足もとに放たれたサラマンダーの砲撃へと目をやると、分厚い石で出来た床を貫通していた。
無理だ、鋼鉄の盾をもっても、いや龍鱗で作られた盾をもってしても防げそうにない。
足が自ずと後ろに下がっていく、離れるほど剣の間合いが遠ざかり、
不利になるのが分かっていても、サラマンダーの驚異的な威力と連射能力を知ってしまった今では逆らえない。
「アンタの目的は何?私達をどうするつもり?」
ルーティが足を少しずつ滑らせるようにして前へと出る、
軽い装備と本人の身軽さを最大限に生かして飛び込む気だろう。
「止めときなお嬢ちゃん、俺は早撃ちだって得意だぜ。」
その言葉にピクリと体が動く、ブルーがその動作の内にサラマンダーを分離し、
二丁の銃へと変形させて左右に構える、ラファエルは知っている。
前方180度の敵を全て粉々に砕く無敵の銃。
サラマンダーがあの姿になった時、逃げ場はどこにもない事を。
進む事も退く事も出来ない窮地に追い込まれ、沈黙するしかない二人。
だが、この状況下で老騎士だけが口を開いた。
「二人とも止めるんだ。何もしなければ彼の方から撃つことは無い。
ブルー・・・別れの前に教えてくれ、君は一体何者なんだ?」
テオドールの言葉にいつもの笑みを口に浮かべるブルー。
武器を下ろす気はないようだが、問いには答えてくれるのか口を開いた。
「俺は人間さ・・・ちょっと進化しただけのな。」
~講座~
鳳凰天駆 テイルズシリーズお馴染みの技。使い勝手がいいか悪いかはシリーズによる。
特筆するのは威力の高さ。全シリーズ通してかなりの高攻撃力である。
グラフィックも中々カッコいい、お勧めはエターニアのリッド君の鳳凰天駆。
灼光拳 名前は出してないが一応それっぽいのを文中で使ったつもり。
声優と相まってどう聞いても○ャイニング○ィンガーなのだが、
今では喉をやられてしまっているので婦女子の好物、
種ガンガルのイ○ークのように聞こえてしまう。
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