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「天体戦士サンレッド ~絶望の宴!最凶ヒーロー兄弟・本土上陸」(2010/01/19 (火) 19:33:45) の最新版変更点
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―――意表を突いた展開。それは物語にとって大切な要素の一つである。
されど、これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、人知を超えた怪人やヒーローの世知辛い日常を綴る物語。
それゆえに読者の皆様方には<どうせいつもの日常風景が垂れ流されるんだろ、ケッ>なんて思われるのだ。
うん。その通りなんです、すいません。
「いらっしゃいませ!ピ○・キャ○ットへようこそ!」
フリフリ可愛らしい制服に身を包んだ、ピンク髪の少女がにこやかに接客する。
そう、前回レッドさんに全力で闘ってもらえたある意味幸運、ある意味凶運の悪の姫君・エニシアである。
悪の軍団を率いる彼女は、今日はどうやらファミレスのバイトに精を出している様子だった。
「よー、エニシアちゃん。相変わらず可愛いねー」
「ちわっす!」「ちわっす!」
店に入ってきたのは、モグラ型怪人コンビのモギラとモゲラを引き連れたアリジゴク怪人・アントキラーさん。
「あ!アントさんじゃない。最近よく来てくれるね」
「いやー、もう三日に一度はエニシアちゃんの顔見ないと落ち着かなくて(笑)」
「またまたー。私より可愛い人なんて、この店にはたくさんいるじゃない」
「何言ってんの。今やウサ兄さんと並ぶ○ア・キャロッ○川崎店の看板娘じゃないの。なあ、お前ら」
「そうっすよ。もっと自分に自信持っていいんすよ」
「よっ、この癒し系!悪のアイドル!」
モギラとモゲラもアントキラーに続き、エニシアを褒め称える。先輩に追従してのおべっかでなく、本心である。
確かにアントキラーの言う通り、可愛い店員が多い事で有名なこの店でも、エニシアは頭一つ抜きん出た美少女
だ。その人気ぶりたるや、この漢に並ぶほどである。
「こらっ!エニシアちゃん、通路で立ち話してたらダメでしょ!」
思わず抱きしめたくなるような愛くるしい声で叱ってきたのは、そう、我等がアニソルのリーダー・ウサコッツ。
(※忘れていらっしゃる方が大半でしょうが、このSSではウサコッツはここでバイトしてます)
彼はエニシアの先輩として、彼女を厳しく戒める。
「す、すいません。ウサ先輩」
「バイトだってお金もらってる以上はプロなんだよ!?お客さんとお話しするのもサービスの一環だけど、きちんと
席に案内してからにしなよ!」
プリプリ怒るが、姿が愛らしいので全然怖くない。客や店員からは<きゃー!怒ってるウサちゃんも可愛いー!>
と黄色い声が上がる始末だ。
それでも直接の後輩であるエニシア、そしてアントさん率いる三人組怪人はしゅんとしてしまう辺りは流石である。
「アントキラーも、お客さんだからって何してもいいわけじゃないんだよ?<お客様は神様>というけど、マナーは
きっちり守ってもらわないと、困るのはお店なの!」
「はい!すんません、ウサ兄さん」
「すんませんっした!」「すんませんっした!」
「よし、反省したならいいよ。じゃあエニシアちゃん、席に案内してあげて」
「はい!ではアントさんにモギモゲさん、こちらへどうぞ」
丁寧な仕草で三人を案内するエニシア。それを見ながらウサコッツはうんうん、と頷くのだった。
そんな先輩と後輩の心温まる交流の中に、闖入者はやってきた。
「―――おい、お前ら。丁度よかった、ここにいたのか」
赤いマスクの今一つ影の薄い主人公・サンレッドである。
今日のTシャツは<バター飴・ジンギスカン・熊カレー>。これ、実は今回の伏線ね。テストに出るよ。
「あ…レッド!何しに来たのさ!」
「何だよ、ウサ公。いきなりケンカ腰か…別に仕事の邪魔しにきたわけじゃねーよ。ちょっと話があってな…」
いつになくテンションの低いレッドさんである。しかしてその顔つきは、どこか真剣であった。
「おう、お前ら。ちょっと座らせてもらうぞ」
アントさん達の席に、返事も待たずにさっさと座る。実に嫌な先輩っぽさである。
「え、でも…」
「ああ?何だよ、また病院に行きてーのか、コラ」
「…どうぞ座ってください」
流石のアントキラーもレッドさんに対してはそう言うしかない。レッドさんは早速タバコを吹かし始めた。
何となく重苦しい雰囲気である。そんな空気を打ち破るように、エニシアが注文を取りにやってきた。
「アントさん、御注文は…あれ?レッドさんも来てたんだ。あ、もしかして私に会いに来てくれたり?」
「あー、まあ、そんなトコだよ」
「うふふ、嬉しい。でも、浮気はダメだよ?そんな事したら、かよ子さんに言い付けちゃうからね」
「バーカ。そんなマセたセリフはあと十年経ってから言えっての…しかし、今日もバイトかよ?」
「うん!今日も明日もバイトだよ。だって夢(世界征服)のためには、グータラなんてしてられないもの」
エニシアはロリリッ!と表情を引き締め、決意を熱く語った。
(※ロリリッ!とは、ロリィな女の子がキリッ!とした時にどこからともなく放たれる効果音です)
「…そりゃ感心だ。けど、明日は休め。絶対休め。何が起きても休め。つーかもう、アジトに鍵かけて引きこもれ。
絶対に外を出歩くんじゃねーぞ。いいな」
「え?」
レッドさんの発言に、エニシアは目を丸くする。そりゃこんな訳の分からん事を突然言われりゃそうなるだろう。
「どういうことっすか、レッドさん」
アントキラーが会話に割って入る。レッドさんは気だるげにタバコの煙を吐き出した。その姿は、怯えているように
さえ見える。宇宙最強とすら思える戦闘力の持ち主である、この漢が。
「…北海道にな、ヤベーくらいタチの悪いヒーロー二人組がいる。その人らにとっちゃ正義なんざ口実で、ただ単
に悪の怪人をしばき倒し、ぶっ殺す事が大好きっつー、とんでもねー連中だ」
ごくり、と悪の怪人達は唾を飲み込む。
このチンピラヒーローのサンレッドがこうも言うのだ。それだけで相当トンデモな二人組に違いない。
「そ、それは怖いね…でも、そのヒーローさん達は北海道にいるんでしょ?私達には関係ないよね?ねえ?」
エニシアの口調には、そうであってくれという切なる願いが込められていた。だがレッドさんは無情に首を横に振る。
「二人は北海道の怪人なんざとっくの昔に皆殺しにしちまってて…今は日本各地を回って、怪人狩りしてるんだよ。
けど成果が上がらなくて、もう怪人だったら誰でもいいってくらいのテンションになっちまってる…」
だらだらと、脱水症状を起こすんじゃないかというくらいの汗が額を流れ落ちる。
「そして、俺に連絡があったんだよ…明日、来るって…」
「ま…まさか…」
「そのまさか…明日、来るんだよ。神奈川県川崎市溝ノ口に!」
ヒイっと、誰ともなく悲鳴を上げた―――!
「俺の先輩…兄弟戦士アバシリンが!しかも、手当たり次第に殺る気満々で!」
天体戦士サンレッド ~絶望の宴!最凶ヒーロー兄弟・本土上陸
―――そして、翌日。フロシャイム川崎支部アジト。
そこはアバシリン来襲の報を受けた川崎市在住の悪の皆さんの緊急避難所と化していた。
カーテンは固く閉ざされ、電灯は消され、蝋燭だけが唯一の光源。
皆は一様に防災頭巾を被り、お先真っ暗な顔で俯いている。
範馬勇次郎と江田島平八がタッグを組み、しかも殺る気満々でやって来るも同然なのだから、それも仕方なかろう。
「ああ、もう…何で姉貴や兄貴が全員海外に遠征してて俺一人で留守番って時に、こんな事になんだよ…」
吸血鬼のヤフリーくんは、今にも灰になって消滅しそうな程の恐怖に震えていた。
彼もまたコタロウ経由でレッドさんから連絡をもらい、こうして川崎支部へ身を寄せているのだった。
頼れる家族は上記の理由で不在、産まれ立ての仔鹿のように怯えるしかなかった彼をヴァンプ様達は快く迎えた。
今は吸血鬼も怪人もない、彼等は同じ脅威に立ち向かう同志である。
「…エロパロ板的展開ヤダ…婦女暴行ヤダ…凌辱ヤダ…触手ウネウネも人体改造もヤダヤダァァァァァッ!」
レッドさんから如何な話を聞かされたか、エニシアちゃんは悪夢の如き想像にすっかり怯えて、某アスキーアート
のように泣き叫んでいた。
(彼女はエロパロ板サモンナイトスレにて、色々悲惨な経験をしていたりします。御了承下さい)
ああ、見える。並行世界で肉便器の如き無惨な扱いを受ける自分の姿が。
きっと数時間後には、同じ不幸が我が身に降りかかるのだ。
「姫様、大丈夫です!俺達が必ずや鬼畜野郎アバシリンの魔の手から、姫様を御守りします!」
軍団員の皆様は、決死の覚悟で己の姫君を守り通す決意を固めつつ、ガチガチ歯を鳴らしていた。
「あー…百年バイトして、折角貯金したのになー…どうせならもっと贅沢すんだった…」
アントキラーはすっかり命を諦めていた。
「オメーはまだいいよ、アント。そうやって後悔する事が出来るんだから。俺なんて、ロクに後悔する事もねーよ…
ああ、四千年生きたけど特に悪い事もなかったけど、いい事もなかったなー…バレンタインで母ちゃん以外から
チョコ貰った事もねーし…ああ、義理チョコでいいから欲しかった…」
死を前にして、カーメンマンは己の特になにもなかった人生を嘆いていた。
「チクショー!せめて最期にカップ麺を喰いまくってやる!」
秘蔵のカップ麺コレクションを並べて、メダリオはヤケ喰いしていた。
「ああ…抹殺したかったなあ、レッドさん…征服したかったなあ、世界…」
虚ろな瞳で、ヴァンプ様は力なく呟く。
他の怪人達も似たようなもので、実に終末的なムードが漂っていた。
そんな中、ヒムが神妙に呟く。
「北海道の兄弟戦士アバシリンか…ここ川崎で、その名を聞くとはな」
「ヒムくん…もしかして、アバシリンの二人と何かあったの?」
ヴァンプ様からの質問に、ヒムは顔を暗くしながら答えた。
「オレの先輩にフレイザードという男がいた…戦場とあらば手段を選ばず勝利に固執し、女の顔も平然と焼き潰す
非道な男だったが、後輩に対しては面倒見のいい岩石生命体でな。オレや仲間も随分世話になった…」
魔界立魔界中学校に在籍していたあの頃。
仲間と共に不良のレッテルを張られ、親からも教師からも見放されていた。
そんな中、同じく札付きのワルだったフレイザード先輩だけは、自分達に何かと世話を焼いてくれたものだ。
(おい、ヒム。これ、もう見飽きたからやるよ)
無骨漢キャラを気にしてエロ本も買えない自分のために、それを譲ってくれた。
(ガラスを割ったのはオレだ。こいつは関係ねえ!)
これ以上内申が悪くなったら退学というフェンブレンのために、罪を被ってくれた事もある。
(全く、情けねえ。こんくれえ自分で直せよな)
自転車のチェーンが外れて困っていたシグマを、憎まれ口を叩きながらも助けてくれた。
(テメエなんかに何が分かるんだ!こいつは金属生命体だ。腐ったミカンじゃねえ!)
ブロックをネチネチいびっていた嫌味な教師の胸倉を掴み、そう言い放ったものだ。
(へっ!お前ら、こんな連中に手こずってんじゃねえぞ!)
ザボエラ中学との抗争で危機に陥った時に、汗だくになって駆けつけてくれた時には、思わず涙が出た。
頼れる先輩だった。最高の先輩だった―――
「そんなフレイザード先輩は、例に漏れず世界征服を企み、北海道へ旅立った―――」
「あ…ま、まさか…!」
「そう。殺られたのさ、アバシリンに…!」
ヒムはぐっと、拳を握り締めた。
「実家に届けられた先輩の遺体は、原形を留めない程に惨たらしくもグチャグチャにされていた…あそこまでする
必要があったってのかよ、チクショウ…!先輩は、ちょっとばかり世界征服を企んでただけじゃねえか!」
「ヒムくん…」
ヴァンプ様は、そっとヒムの肩に手を置くしかなかった。
「悔しい…!オレは悔しいんだよ!先輩の仇がそこにいるってのに、コソコソ隠れるしかないのが!」
本当は今すぐに飛び出して、アバシリンにこの拳を叩きつけたい。
だが―――
「サンレッドすらビビらせるような奴相手に、今のオレじゃどう足掻いても勝ち目はねえ…くそっ…くそぉっ…!」
自分はこうして、悔し涙を流すしかないのか―――そんなヒムに、ヴァンプ様はそっと語りかける。
「悔しいなら、強くなればいいんだよ」
「将軍さん…」
「ヒムくん。その涙を、忘れちゃダメだよ。今の悔しさを忘れない限り…ヒムくんはきっと、もっと強くなれるよ」
「…へっ。変わってるよ、あんた。商売敵のオレを励ましてどうすんだ、全く…」
「はは。やっぱり私って、悪の将軍らしくないのかな。ダメだね、私ってば」
「ああ、全然な…けど、ありがとよ。ハドラー社長とアルビナスさん以外じゃ、あんたくらいのもんだよ。オレなんか
を気遣ってくれた大人は…」
涙は止まる事はないが、心に重く圧し掛かっていた何かは消えていた。ヴァンプ様とヒムは、立場は違えど目的
を同じくする者同士、力強く笑い合った。
地獄と化した川崎に咲いた、友情という名の華一輪。 世界征服を企む悪の怪人同士とはいえ、その美しさに偽り
などない。絶望の中で灯った希望に、悪の皆さんは僅かながら救われた気分だった。
その時。
カチャン―――
「え…い、今のは…」
玄関の鍵が開いた音に、一同は一気に顔面蒼白になった。
ギシッ…ギシッ…床が軋む音が、どんどん近付いてくる。
「あ、ああ…しまった…縁側の下に隠しておいた合鍵、回収しておくの忘れてた…!」
「ええーっ!」
「何してんすか、ヴァンプ様!」
「ご、ごめん…!」
「ヴァンプさんを責めてる場合じゃねーっすよ!どうすんですか!?」
「ヤダァァァァァァッ!肉奴隷人生ヤダヤダヤダヤダァァァァァァァァァッッッ!」
「姫様ぁぁぁぁ!どうかあなただけでもお逃げくださいぃぃぃぃ!」
「時が見える…」
「あれ?死んだはずのじいちゃんとばあちゃん…どうしたんだよ、そんな河の向こうで手を振って」
混乱と恐慌に陥る悪の権化達。しかし、敢然と立ち上がる漢が一人。
「ヒ…ヒム?お前…」
「皆、早く逃げろ。その時間くらいは、稼いでやる」
その横顔には単なる復讐心だけではない、壮烈なまでの覚悟が滲んでいる。
「そ、そんな!出来ないよ、キミだけ置いて逃げるだなんて!」
「いいんだ、将軍さん」
ヒムは今にも死地へ赴くとは思えない、爽やかな笑顔をヴァンプ様に向けた。背中からは後光が射して見える。
「この場所は、随分と居心地がよくてな…へっ。オレとした事が情が移っちまったらしい。自分の命なんか捨てて
構わねえ…それでも、あんた達にこんな所で死んでほしくねえんだ!」
がしっと、ヴァンプ様の手を握り締めた。
「オレの夢を、託すぜ。どうかオレの分まで生きて、世界征服を成し遂げてくれよ」
「…………!」
圧倒的なまでの漢っぷり。誰が予想しただろうか。このおちゃらけSSで、こんな燃え展開が来ようとは。
それは一同の今にも消えかけていた<勇気>という名の光に、確かに火を点けた。
「けっ…一人でカッコつけようったって、そうはいかねーぜ、ヒムちゃんよ」
「おうよ。悪の怪人がヒーローにビビってどうすんだっての!」
カーメンマンとメダリオが口火を切り、それは皆に伝染していく。
「はん…ほんっとバカっすねー、皆さん。一時のテンションに流されて、わざわざ死にに行こうだなんて…ま、俺
もそんなバカの一人か」
腰の刀を抜き放ち、ヤフリーは牙を剥き出しにする。
「…皆。私だけ助かろうなんて思わないよ。私達<エニシア軍団>は生きるも死ぬも一緒だよ。そうでしょ!?」
「ひ、姫様…分かりました!我々は地獄までも、姫様に付いていきます!」
悪夢から目覚め、エニシアは己の家族たる軍団員と共に立ち上がった。
そして我らがヴァンプ様も、悪の将軍としての威厳をこれでもかとばかりに発して号令をかけた。
「―――フロシャイム川崎支部、全軍出撃!我等に歯向かう兄弟戦士アバシリンを抹殺するのだ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
ヒムはその光景に涙しそうになるのを堪え、先頭に立って憎むべき敵・アバシリンを待ち受ける。
一致団結。今、全ての悪があらゆる垣根を越えて、一つとなった。もはや彼等に、恐れる物など何もない。
それこそは結束の力。時に強大なる神々すらも退ける、決して断ち切れぬ絆がもたらす奇跡なのだ!
そして、ガラガラと戸が開き―――
「あん?何だよお前ら、そんな張り切っちゃって。俺だよ俺、皆のヒーロー・サンレッドだよ。ははははは」
一気に脱力する悪の皆さん。そんなヴァンプ様達を見下ろし、レッドさんはガハハハと豪快に笑う。
「おい、カーテン開けろカーテン!蝋燭なんか立てて辛気くせーぞ!」
ちょちょいのぱっぱでカーテンを開いていくレッドさんである。相変わらず人の返事なんか聞いちゃいない。
「…いや、あの、レッドさん。今日はアバシリンさんが来るんじゃ…」
ヴァンプ様は顔を真っ青にしながらレッドさんに問うが、彼はへらへらしながら陽気に答える。
「ああ、それなんだけどよ!なんか北海道にデビルエゾジカ組とかいう連中が攻めてきたらしくってさー。アバ先輩
は喜び勇んで北海道に帰って行っちまった!つーわけでさ、もう何も心配いらねーってわけ!いやー、よかったな
お前ら!死ななくて済んで!命ってホント大事だもんなー、粗末に捨てるもんじゃねーっての!」
ぎゃははははは!とバカ笑いするレッドさん。愕然としていた一同ではあったが、次第に命が助かったという実感が
沸き起こり、はあーっと安堵の溜息がそこかしこで漏れる。
「あー…気ぃ抜けたぜ、チクショウ…へへっ。まあこれで、また世界征服に向けて強くなれるってもんだぜ!」
「その意気だよ、ヒムくん。死んじゃったら何にもならないからね!よーし、皆!今日は腕によりをかけて御馳走を
作るから、ウチでご飯食べていきなさいよ!」
「おおーっ!さっすがヴァンプ様!生きててよかったー!」
「ヴァンプ様の美味しい料理が食べられるのも、命があるからだよなー!」
「ほんと、命って大切だよなー!」
「そうっすねー!というわけで、吸血鬼の俺も命の輝きに感謝しながらゴチになるっす!」
「うんうん。生きてるって素晴らしいよね!ねっ、皆!」
「その通りです、姫様!」
「命、バンザーイ!」
こうして世界征服を企む悪党達は、命の大切さをしみじみと噛み締めたのでした。
めでたしめでたし。
―――天体戦士サンレッド。
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!
なお、北海道を襲ったデビルエゾジカ組の怪人は、一匹残らず八つ裂きにされたそうですが、それはまた別の話。
皆も一つしかない命が惜しかったら、世界征服を企んだとしても、北海道にだけは絶対行かないようにね!
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