壱Qフィールド ◆JZARTt62K2
「みぃ~、だから何度も言うように、僕はウサギさんみたいに隠れているのですよ」
「そしてさっき遭遇したような変態に喰われる、と? 冗談じゃない、寝覚めが悪すぎるわ」
「まったく、哀は強情さんなのです」
「武器が一つしかないのに二手に分かれるわけにはいかないでしょう?」
「そしてさっき遭遇したような変態に喰われる、と? 冗談じゃない、寝覚めが悪すぎるわ」
「まったく、哀は強情さんなのです」
「武器が一つしかないのに二手に分かれるわけにはいかないでしょう?」
数分間に及ぶ梨花と灰原の論争は、結局梨花が折れる形で決着した。
踊り場の真ん中で随分と無防備な二人だったが、運良く危険人物とは出会わなかったようだ。
意地の張り合いを終えた少女たちはタイムロスを埋めようと、急いで階段を駆け下りた。
4階から離れるにつれ、だんだんと物音が聞こえなくなっていく。
1階に着くころには、二人の耳にはもう何も聞こえなくなっていた。
そして現在、灰原たちは保健室へと向かって長い廊下を歩いている。梨花の傷を治療するためだ。
踊り場の真ん中で随分と無防備な二人だったが、運良く危険人物とは出会わなかったようだ。
意地の張り合いを終えた少女たちはタイムロスを埋めようと、急いで階段を駆け下りた。
4階から離れるにつれ、だんだんと物音が聞こえなくなっていく。
1階に着くころには、二人の耳にはもう何も聞こえなくなっていた。
そして現在、灰原たちは保健室へと向かって長い廊下を歩いている。梨花の傷を治療するためだ。
「僕の応急処置をしたらすぐに4階に向かうのですよ、哀」
「あなたをリンクとかいう子に預けた後でね」
「大切な人がどうなってもいいのですか?」
「……彼がいると確定したわけではないわ」
「あなたをリンクとかいう子に預けた後でね」
「大切な人がどうなってもいいのですか?」
「……彼がいると確定したわけではないわ」
江戸川コナンがいるかもしれないという推測は、結局のところ決定的証拠がない。
コナンの声が聞こえたかもしれない、という状況証拠のみである。
ただの聞き間違いだと言われればそれまで。危険を侵させてまで向かうほどのことではない。
むしろ、そんなことぐらいで二手に別れるほうが馬鹿馬鹿しい。
そう、灰原は考えようとした。のだが。
コナンの声が聞こえたかもしれない、という状況証拠のみである。
ただの聞き間違いだと言われればそれまで。危険を侵させてまで向かうほどのことではない。
むしろ、そんなことぐらいで二手に別れるほうが馬鹿馬鹿しい。
そう、灰原は考えようとした。のだが。
(欺瞞、ね)
自嘲の吐息が少女の唇を湿らす。
灰原は、4階にコナンがいるかもしれないと思い始めていた。
この広い島において江戸川コナンが近くにいる可能性。普通ならば『低い』と考えるのが妥当だろう。
だが、ここは島の中央部で、しかも人が集まりそうな『小学校』。“あの”コナンがこの場所を目指す確率は決して低くはない。
1階に下りきってしまった灰原の耳にはもう何も聞こえないが、踊り場で聞いた声は確かに彼のものだった、ような気がする。
4階の声のことも考慮すると、江戸川コナンが4階にいることは十分考えられる。
とても推理とは言えない、いわば女の勘だ。だが、灰原には妙な確信があった。
心配でないと言えば嘘になる。だが、それよりも。
灰原は、4階にコナンがいるかもしれないと思い始めていた。
この広い島において江戸川コナンが近くにいる可能性。普通ならば『低い』と考えるのが妥当だろう。
だが、ここは島の中央部で、しかも人が集まりそうな『小学校』。“あの”コナンがこの場所を目指す確率は決して低くはない。
1階に下りきってしまった灰原の耳にはもう何も聞こえないが、踊り場で聞いた声は確かに彼のものだった、ような気がする。
4階の声のことも考慮すると、江戸川コナンが4階にいることは十分考えられる。
とても推理とは言えない、いわば女の勘だ。だが、灰原には妙な確信があった。
心配でないと言えば嘘になる。だが、それよりも。
(私は、自分のせいで梨花が死ぬのが嫌なんだわ)
運命と戦えと古手梨花は言った。
だから、灰原哀は自分の選択に対して後悔しないことに決めた。
罪を滅ぼせと古手梨花は言った。
だから、灰原哀はこれ以上罪を重ねないようにしようと誓った。
安易に行動してはならないのだ。それが、梨花の提案であったとしても。
特に、梨花を死なせるような選択肢は絶対に避けなければならない。
恩人である梨花を死なせてしまって何が罪滅ぼしか。
もし梨花を死なせてしまったら、きっとその罪は滅ぼせない――
だから、灰原哀は自分の選択に対して後悔しないことに決めた。
罪を滅ぼせと古手梨花は言った。
だから、灰原哀はこれ以上罪を重ねないようにしようと誓った。
安易に行動してはならないのだ。それが、梨花の提案であったとしても。
特に、梨花を死なせるような選択肢は絶対に避けなければならない。
恩人である梨花を死なせてしまって何が罪滅ぼしか。
もし梨花を死なせてしまったら、きっとその罪は滅ぼせない――
(――なんて、いくら言い訳を重ねたところで意味がないわね)
灰原は苦笑した。
結局、理屈や論理などどうでもいいということなのだろう。
灰原哀は、単純に古手梨花に生きていてほしかった。
自分を絶望の淵から救い出してくれた少女に、生きていてほしかったのだ。
一時的な感情なのかもしれない。薬による興奮から出た気持ちなのかもしれない。
それでも、灰原哀は確かにそう思ってしまった。
結局、理屈や論理などどうでもいいということなのだろう。
灰原哀は、単純に古手梨花に生きていてほしかった。
自分を絶望の淵から救い出してくれた少女に、生きていてほしかったのだ。
一時的な感情なのかもしれない。薬による興奮から出た気持ちなのかもしれない。
それでも、灰原哀は確かにそう思ってしまった。
(工藤君。4階にいるのがあなただとしたら、悪いけどもう少しだけ耐えてちょうだい。
いくつもの事件を切り抜けてきた貴方ならその程度は楽勝でしょう?)
いくつもの事件を切り抜けてきた貴方ならその程度は楽勝でしょう?)
勿論、4階にいるかもしれないコナンのことを忘れているわけではない。
不確定の情報とはいえ、4階に行く覚悟はできていた。後は、梨花をリンクに引き渡すだけである。
灰原は足早に保健室に向かって進み――
不確定の情報とはいえ、4階に行く覚悟はできていた。後は、梨花をリンクに引き渡すだけである。
灰原は足早に保健室に向かって進み――
『――何ィッ!?』
男の子の悲鳴を聞いた。
「今の悲鳴、保健室の中から……」
「リンクッ!」
「リンクッ!」
灰原が言葉を発し終わるのも待たずに梨花が駆け出す。
廊下を猛ダッシュする梨花の後を、慌てた灰原が追う。
保健室に、最悪の仇敵が待っているとも知らず……。
廊下を猛ダッシュする梨花の後を、慌てた灰原が追う。
保健室に、最悪の仇敵が待っているとも知らず……。
※ ※ ※ ※ ※
甘い香りが立ち込める一室で、二人の少年が倒れていた。
リノリウムの床に突っ伏す顔は焦燥で満たされ、手足は自らの感覚を求めるように痙攣している。
動けない二人を見下ろすのは純白のマスクをつけた袴姿の人間。
いや、人間と称するのは間違っているかもしれない。
額に張られた十字創膏は『第三の目』を隠す魔物のようであり、身体中に装着された茶色いシールも不気味さを醸し出していた。
そしてなにより、その余裕。
二人の人間を叩き伏せたにも関わらず、彼の態度は全く変わっていなかったのだ。
奢りもせず、焦りもせず、恐れもせず、喜びもせず、憂いもしない。
ただ、平然とその場に立っていた。
それがどれほど強靭な精神を要する行為かは言うまでもない。
リノリウムの床に突っ伏す顔は焦燥で満たされ、手足は自らの感覚を求めるように痙攣している。
動けない二人を見下ろすのは純白のマスクをつけた袴姿の人間。
いや、人間と称するのは間違っているかもしれない。
額に張られた十字創膏は『第三の目』を隠す魔物のようであり、身体中に装着された茶色いシールも不気味さを醸し出していた。
そしてなにより、その余裕。
二人の人間を叩き伏せたにも関わらず、彼の態度は全く変わっていなかったのだ。
奢りもせず、焦りもせず、恐れもせず、喜びもせず、憂いもしない。
ただ、平然とその場に立っていた。
それがどれほど強靭な精神を要する行為かは言うまでもない。
「では、とりあえず武器を回収させてもらいます。どうやらこの島には手の早い方々が多いようですからね」
発する言葉も平坦そのもの。まるで、流れ作業の一環のようだ。
てくてくと乱れぬ足取りで近づいてくる一休に、リンク達は恐怖した。
保健室の中は未だに甘い香りで満たされており、二人は吐き気と脱力感でまともに動けない。
対する一休はマスクを装着しており、ある程度自由に動き回れるのだ。
身動きできない状態で、正体不明の化物に近づかれる。どれほどのプレッシャーなのかは想像に難くない。
てくてくと乱れぬ足取りで近づいてくる一休に、リンク達は恐怖した。
保健室の中は未だに甘い香りで満たされており、二人は吐き気と脱力感でまともに動けない。
対する一休はマスクを装着しており、ある程度自由に動き回れるのだ。
身動きできない状態で、正体不明の化物に近づかれる。どれほどのプレッシャーなのかは想像に難くない。
「く、るなっ」
「安心してください。説明が終わったらお返ししますよ」
「安心してください。説明が終わったらお返ししますよ」
ぬけぬけと言い放った一休は、リンクと小狼から武器を回収し始めた。
軽やかな手つきで『剣』のカード、あるるかん、二人のランドセルを順番に引き剥がしていく。
リンクと小狼は懸命に逃げようとしたが、脳は筋肉への伝達業務を放棄している。
胃に蟠る不快感も厄介だった。少年達は腹痛と頭痛で目の前の敵に集中できない。
碌な抵抗もできずに武器を奪われた二人は、屈辱に顔を歪ませた。
梨花の安全の確認。コナンやネギの援護。傷の治療。二人がやるべきことは山ほどある。
学校内にはまだ殺人鬼がいる可能性が高く、梨花に至っては目の前の坊主に何かされたかもしれない。
一刻も早く動く必要があるのだが、現実はその行動を許してくれなかった。
二人そろって危険な敵の手に落ちているのが現状だ。焦燥感だけが少年達の頭に降り積もっていく。
なんて情けない、とリンクはほぞをかんだ。小狼も悔しそうに拳を握り締めている。
だが、惨劇はこの程度では終わらなかった。
軽やかな手つきで『剣』のカード、あるるかん、二人のランドセルを順番に引き剥がしていく。
リンクと小狼は懸命に逃げようとしたが、脳は筋肉への伝達業務を放棄している。
胃に蟠る不快感も厄介だった。少年達は腹痛と頭痛で目の前の敵に集中できない。
碌な抵抗もできずに武器を奪われた二人は、屈辱に顔を歪ませた。
梨花の安全の確認。コナンやネギの援護。傷の治療。二人がやるべきことは山ほどある。
学校内にはまだ殺人鬼がいる可能性が高く、梨花に至っては目の前の坊主に何かされたかもしれない。
一刻も早く動く必要があるのだが、現実はその行動を許してくれなかった。
二人そろって危険な敵の手に落ちているのが現状だ。焦燥感だけが少年達の頭に降り積もっていく。
なんて情けない、とリンクはほぞをかんだ。小狼も悔しそうに拳を握り締めている。
だが、惨劇はこの程度では終わらなかった。
「さて、次は身体検査ですね」
「何ィッ!?」
「何ィッ!?」
一休の手がリンクのベルトに伸び、あっさりと金具を外した。
黒革のベルトが緩み、緑のツナギが大きくたわむ。
リンクの顔が恥辱に染まったが、一休は構いもしない。
変わった帯ですね、と感心までしている。
一休は変態ではない。決してない。
今回の行為も、リンク達が隠しているかもしれない武器を発見するためのものだ。
別に男色家というわけではない。神職者には同性愛者が多いという話もあるが、一休は違う。
ただ、お互いに何も装備せず、落ち着いて話し合いたかっただけなのだ。
相手の動きを完全に封じている状態では、何を言ったところで信用など得られるはずがない。
だから一休は換気によって、リンク達の毒を抜こうとした。
だが、二人に武器を持たせたままでは、力で捻じ伏せられてしまう。
それならばということで、一休は二人の装備を解除したのだった。
武器を回収した上で話し合い、誤解を解いたところで武器を返す。
そう悪い作戦ではない。少なくとも、殺意がないことは証明できる。
それに、口を使った戦いならば一休の十八番。相手がしっかりと話を聞いてくれれば、誤解などたちどころに消し去れるだろう。
しかし、大きな穴が一つ。
今までの行動を見ればわかるように、彼は致命的なまでに『タイミング』が悪い。
歯車は、正しく噛み違える。
黒革のベルトが緩み、緑のツナギが大きくたわむ。
リンクの顔が恥辱に染まったが、一休は構いもしない。
変わった帯ですね、と感心までしている。
一休は変態ではない。決してない。
今回の行為も、リンク達が隠しているかもしれない武器を発見するためのものだ。
別に男色家というわけではない。神職者には同性愛者が多いという話もあるが、一休は違う。
ただ、お互いに何も装備せず、落ち着いて話し合いたかっただけなのだ。
相手の動きを完全に封じている状態では、何を言ったところで信用など得られるはずがない。
だから一休は換気によって、リンク達の毒を抜こうとした。
だが、二人に武器を持たせたままでは、力で捻じ伏せられてしまう。
それならばということで、一休は二人の装備を解除したのだった。
武器を回収した上で話し合い、誤解を解いたところで武器を返す。
そう悪い作戦ではない。少なくとも、殺意がないことは証明できる。
それに、口を使った戦いならば一休の十八番。相手がしっかりと話を聞いてくれれば、誤解などたちどころに消し去れるだろう。
しかし、大きな穴が一つ。
今までの行動を見ればわかるように、彼は致命的なまでに『タイミング』が悪い。
歯車は、正しく噛み違える。
「リンクッ、何があったのッ!」
廊下を激しく叩く音が聞こえた後、唐突に保健室の扉が開かれた。
ピシャリと、鋭い音が部屋の中に響く。
ピシャリと、鋭い音が部屋の中に響く。
「おや」
「なっ……」
「え、あ?」
「なっ……」
「え、あ?」
梨花が保健室のドアを開けたとき、ちょうど一休はリンクの服を脱がしにかかっていた。
緑のツナギが半分以上捲り上げられ、しなやかで細い身体が覗いている。
梨花の姿を確認したリンクは安堵に頬を緩めたが、すぐに羞恥とも屈辱とも取れる表情に戻った。
知り合いの女の子にいきなり裸を見られたのだ。リンクの耳は先端まで真っ赤である。
小狼はリンクを助けようともがいていたが、その努力は今のところ徒労に終わっている。
そして、一休。
彼は、仰向けのリンクに馬乗りになっていた。服を脱がしつつ、腰をしっかりと下ろした体勢で。
緑のツナギが半分以上捲り上げられ、しなやかで細い身体が覗いている。
梨花の姿を確認したリンクは安堵に頬を緩めたが、すぐに羞恥とも屈辱とも取れる表情に戻った。
知り合いの女の子にいきなり裸を見られたのだ。リンクの耳は先端まで真っ赤である。
小狼はリンクを助けようともがいていたが、その努力は今のところ徒労に終わっている。
そして、一休。
彼は、仰向けのリンクに馬乗りになっていた。服を脱がしつつ、腰をしっかりと下ろした体勢で。
「あ……え……」
「……まさか、両刀使いだとは思わなかったのですよ。フ、フフフ……」
「……まさか、両刀使いだとは思わなかったのですよ。フ、フフフ……」
その現場を押さえた女の子二人は、非常に気まずそうな顔である。
灰原は頬を桜色に染め、呆気に取られたような顔をしている。流石に“こういう絡み”には免疫がないのだろう。
梨花は唇の端をヒクつかせ、こめかみに青筋を浮き上がらせていた。そのまま、ゆっくりと勇者の拳を掲げる。
何故まだ生きているのか。
お前はまともな格好ができないのか。
特に、身体中に張り付けている絆創膏はなんだ。
というか、なんでここにいるのか。
その体勢はなんだ。
リンクに何をしているのか。
私達に手を出しただけでは物足りなかったのか。
言いたいこと(ツッコミ)は色々思いついた梨花だったが、うまく言葉にできない。
本能的な怒りは、彼女の頭を溶鉱炉のようにかき乱していた。
爆発5秒前で震える時限爆弾のような梨花に対して、一休は言葉を選んだ。
相手を落ち着かせるには、自身が落ち着いていないといけない。
そう思った一休はこう言った。とても落ち着いた声で。
灰原は頬を桜色に染め、呆気に取られたような顔をしている。流石に“こういう絡み”には免疫がないのだろう。
梨花は唇の端をヒクつかせ、こめかみに青筋を浮き上がらせていた。そのまま、ゆっくりと勇者の拳を掲げる。
何故まだ生きているのか。
お前はまともな格好ができないのか。
特に、身体中に張り付けている絆創膏はなんだ。
というか、なんでここにいるのか。
その体勢はなんだ。
リンクに何をしているのか。
私達に手を出しただけでは物足りなかったのか。
言いたいこと(ツッコミ)は色々思いついた梨花だったが、うまく言葉にできない。
本能的な怒りは、彼女の頭を溶鉱炉のようにかき乱していた。
爆発5秒前で震える時限爆弾のような梨花に対して、一休は言葉を選んだ。
相手を落ち着かせるには、自身が落ち着いていないといけない。
そう思った一休はこう言った。とても落ち着いた声で。
「お久しぶりです。まずは話を聞いていただけませんか?」
もちろん、リンクの腹に馬乗りになったまま。
梨花はキレた。
梨花はキレた。
「このッッッッッッッッ、○モ坊主がァァァァァッッッッ!!!!」
轟音とともに勇者の拳が巨大化し、変態小坊主を押し潰そうと空気を引き裂く。
正義の鉄槌の威力を知っている一休は、勇者の拳が発動される前に動いていた。
正義の鉄槌の威力を知っている一休は、勇者の拳が発動される前に動いていた。
「ばっ!!!」
倒れこむように伏せた一休の頭上を、勇者の拳が通り過ぎる。
破壊の拳が保健室に顕現し、獲物(ボケ)を食い損ねて衝撃波を撒き散らした。
強ツッコミの余波を受けた棚が倒れ、薬品や割れたガラスがばら撒かれる。
数十種類の雑音が不快な合奏曲を奏でた。
破壊の拳が保健室に顕現し、獲物(ボケ)を食い損ねて衝撃波を撒き散らした。
強ツッコミの余波を受けた棚が倒れ、薬品や割れたガラスがばら撒かれる。
数十種類の雑音が不快な合奏曲を奏でた。
「だ、だめよ梨花! 医療道具がなくなったらあなたを治療できないじゃない!」
「ごめんなさい、つい……。でも、一発殴っておかないと気が済まなかったのよ」
「私も同意見だけど、その武器はマズイわ。もっと静かにやりましょう」
「ごめんなさい、つい……。でも、一発殴っておかないと気が済まなかったのよ」
「私も同意見だけど、その武器はマズイわ。もっと静かにやりましょう」
少女達の会話を聞きながら、一休は思った。
このままでは殺されると。
二人の言葉には一休への気遣いが微塵も含まれていない。きっと容赦などしてくれないだろう。
古手梨花などは言葉遣いすら変わっており、冷静でないことが手に取るようにわかる。
一体どのような誤解を受けたのか皆目見当がつかないが、二言三言ではとても解けそうにない。
こちらは攻撃する気がないのに一方的に攻撃されたら、それこそ勝負にならない。しかも、相手は二人なのだ。
とんちを閃かせようにも、状況が悪すぎる。このままでは瞬殺されてしまう。
このままでは殺されると。
二人の言葉には一休への気遣いが微塵も含まれていない。きっと容赦などしてくれないだろう。
古手梨花などは言葉遣いすら変わっており、冷静でないことが手に取るようにわかる。
一体どのような誤解を受けたのか皆目見当がつかないが、二言三言ではとても解けそうにない。
こちらは攻撃する気がないのに一方的に攻撃されたら、それこそ勝負にならない。しかも、相手は二人なのだ。
とんちを閃かせようにも、状況が悪すぎる。このままでは瞬殺されてしまう。
(できれば取りたくなかった手段ですが、四の五の言ってはいられないようですね)
「いい加減……どいてくれ……」
「いい加減……どいてくれ……」
一休の下でリンクが呻いた。
一休が伏せたということは、リンクに身体全体で覆いかぶさっていることを意味する。
半裸のリンクに対してその体勢は色んな意味で危なかったが以下割愛。
一休は申し訳なさそうに頭を下げると、近くに落ちていた大きめのガラス片を手に取った。
勇者の拳によって砕け散った棚のガラスだ。
一休が伏せたということは、リンクに身体全体で覆いかぶさっていることを意味する。
半裸のリンクに対してその体勢は色んな意味で危なかったが以下割愛。
一休は申し訳なさそうに頭を下げると、近くに落ちていた大きめのガラス片を手に取った。
勇者の拳によって砕け散った棚のガラスだ。
「本当は、こんな方法は取りたくなかったのですが……」
本気で遺憾の意を示しながら、一休はガラスの切っ先をリンクの目に突きつけた。
少しでも力を入れれば、目玉を抉り出せる位置だ。
一休の凶行に、梨花と灰原の顔が強張る。
少しでも力を入れれば、目玉を抉り出せる位置だ。
一休の凶行に、梨花と灰原の顔が強張る。
(ついにやってしまいました。ここからが正念場になりそうです)
一休は落ち着いて思考を巡らせていた。慌てず、騒がず。
『梨花ちゃんに、何をした!?』とリンクは叫び、一休の胸倉に掴みかかってきた。
あの行動は、リンクが梨花を思いやっているという証拠である。まさか赤の他人の心配などしないはずだ。
そして、梨花も真っ先にリンクの名前を叫んでいた。二人が仲間だということはほぼ間違いないだろう。
ここまで考えた一休は、一つの決断を下す。
緊急回避の手段として人質をとることを選択したのである。
その理由は、是が非でも言葉の戦いに持ち込む必要があったからだ。
暴力では勝ち目がないが、交渉に持ち込めば口八丁でどうにでもなる。
一休の特技はあくまでも『口』なのだから。
『梨花ちゃんに、何をした!?』とリンクは叫び、一休の胸倉に掴みかかってきた。
あの行動は、リンクが梨花を思いやっているという証拠である。まさか赤の他人の心配などしないはずだ。
そして、梨花も真っ先にリンクの名前を叫んでいた。二人が仲間だということはほぼ間違いないだろう。
ここまで考えた一休は、一つの決断を下す。
緊急回避の手段として人質をとることを選択したのである。
その理由は、是が非でも言葉の戦いに持ち込む必要があったからだ。
暴力では勝ち目がないが、交渉に持ち込めば口八丁でどうにでもなる。
一休の特技はあくまでも『口』なのだから。
(あわてない、あわてない……。ですが、一休みはできそうにありませんね)
一休はリンクにガラス片を向けたまま、きっぱりと言い放った。
当然、落ち着き払った冷静な声で。
当然、落ち着き払った冷静な声で。
「それでは、武器を捨てていただきましょうか」
【D-4/学校校舎1F保健室/1日目/真昼(昼から移り変わった直後)】
【一休さん@一休さん】
[状態]:背中と腰の打撲に湿布。身体のあちこちに大量の絆創膏。
額の中央に大きな絆創膏で×印。顔の形にフィットした大袈裟なマスク。
[装備]:シャインセイバー(サモナイト石・無)@サモンナイト3
体操着(着物の下)、教科書(服の下に仕込んである)、活性炭入りマスク
[道具]:基本支給品×2、エルルゥの薬箱の中身(ワブアブの粉末(残数2)、カプマゥの煎薬(残数3)、
ネコンの香煙(残数2)、紅皇バチの蜜蝋(残数3)) @うたわれるもの
あるるかん@からくりサーカス、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
クロウカード「剣」@CCさくら(カード状態)、きせかえカメラ@ドラえもん(充電済み)
体操着袋、チョーク数本、雑巾、ブリキのバケツ、ホース数m、教科書数冊、100円ライター
[思考]:これは、説明が大変そうですね……。
第一行動方針:あわてない、あわてない。
第二行動方針:これまでに遭遇した人々の誤解を、どうにかして解きたい。(無理なら逃げる?)
第三行動方針:驚く事ばかりだけれど、周囲への理解と食料の確保をしたい。
第四行動方針:余裕があれば、森にでも骨格標本を埋葬し供養したい。
基本行動方針:ゲームをうまく脱出する。
[備考]:懐と体操着袋とバケツに細かい荷物を分けて入れています。
水道の使い方、窓や扉のカギの開け方、100円ライターの使い方を理解しました。
ブルーを不思議な力(スタンガン)を持った神仙または学術者の類と思っています。
【一休さん@一休さん】
[状態]:背中と腰の打撲に湿布。身体のあちこちに大量の絆創膏。
額の中央に大きな絆創膏で×印。顔の形にフィットした大袈裟なマスク。
[装備]:シャインセイバー(サモナイト石・無)@サモンナイト3
体操着(着物の下)、教科書(服の下に仕込んである)、活性炭入りマスク
[道具]:基本支給品×2、エルルゥの薬箱の中身(ワブアブの粉末(残数2)、カプマゥの煎薬(残数3)、
ネコンの香煙(残数2)、紅皇バチの蜜蝋(残数3)) @うたわれるもの
あるるかん@からくりサーカス、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
クロウカード「剣」@CCさくら(カード状態)、きせかえカメラ@ドラえもん(充電済み)
体操着袋、チョーク数本、雑巾、ブリキのバケツ、ホース数m、教科書数冊、100円ライター
[思考]:これは、説明が大変そうですね……。
第一行動方針:あわてない、あわてない。
第二行動方針:これまでに遭遇した人々の誤解を、どうにかして解きたい。(無理なら逃げる?)
第三行動方針:驚く事ばかりだけれど、周囲への理解と食料の確保をしたい。
第四行動方針:余裕があれば、森にでも骨格標本を埋葬し供養したい。
基本行動方針:ゲームをうまく脱出する。
[備考]:懐と体操着袋とバケツに細かい荷物を分けて入れています。
水道の使い方、窓や扉のカギの開け方、100円ライターの使い方を理解しました。
ブルーを不思議な力(スタンガン)を持った神仙または学術者の類と思っています。
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿に裂傷。歩行に少し影響。『ネコンの香煙』の煙を吸って、吐き気と脱力感(煙が引くまではまともに動けない)。
[服装]:中世ファンタジーな布の服など(ベルトが外され、緑色のツナギが捲り上げられて半裸)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:色々と……最悪だ……
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:自分と小狼の傷の手当てをする。
第三行動方針:梨花を守る
第四行動方針:最初に死んだ子(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:ゲームを壊す
参戦時期:エンディング後
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、何らかの人外の存在ではないかと強く疑っています。
[状態]:左太腿に裂傷。歩行に少し影響。『ネコンの香煙』の煙を吸って、吐き気と脱力感(煙が引くまではまともに動けない)。
[服装]:中世ファンタジーな布の服など(ベルトが外され、緑色のツナギが捲り上げられて半裸)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:色々と……最悪だ……
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:自分と小狼の傷の手当てをする。
第三行動方針:梨花を守る
第四行動方針:最初に死んだ子(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:ゲームを壊す
参戦時期:エンディング後
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、何らかの人外の存在ではないかと強く疑っています。
【小狼@カードキャプターさくら】
[状態]:腹部に刺し傷。『ネコンの香煙』の煙を吸って、吐き気と脱力感(煙が引くまではまともに動けない)。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:……くそっ!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:自分とリンクの傷の手当てをする。
第三行動方針:手当てが済んだら、上の階に向かったコナンを追うか、森に向かったネギを追うか……?
第四行動方針:桜を探し、守る
第五行動方針:仲間を集める
第六行動方針:最初に死んだ(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:桜とともに島を脱出する。
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、何らかの人外の存在ではないかと強く疑っています。
[状態]:腹部に刺し傷。『ネコンの香煙』の煙を吸って、吐き気と脱力感(煙が引くまではまともに動けない)。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:……くそっ!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:自分とリンクの傷の手当てをする。
第三行動方針:手当てが済んだら、上の階に向かったコナンを追うか、森に向かったネギを追うか……?
第四行動方針:桜を探し、守る
第五行動方針:仲間を集める
第六行動方針:最初に死んだ(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:桜とともに島を脱出する。
[備考]:金糸雀のことを、ゲームに乗るつもりの人物だと判断しました。
一休のことを、何らかの人外の存在ではないかと強く疑っています。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:色々と疲労困憊。全身に無数の打ち身と擦り傷(骨折などは無い)。腕力低下(ワブアブの毒)
[服装]:体操服。体操着に赤ブルマ着用。
[装備]:勇者の拳
[道具]:基本支給品、5MeO-DIPT(24mg)、平常時の服
[思考]:リンク……!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(できれば殺す)
第二行動方針:同行者を増やす。
基本行動方針:生き延びて元の世界に帰る。ゲームには乗らない。
参戦時期:祭囃し編後、賽殺し編前
[備考]:一休さんの事は変態性犯罪者と認識しています。
[状態]:色々と疲労困憊。全身に無数の打ち身と擦り傷(骨折などは無い)。腕力低下(ワブアブの毒)
[服装]:体操服。体操着に赤ブルマ着用。
[装備]:勇者の拳
[道具]:基本支給品、5MeO-DIPT(24mg)、平常時の服
[思考]:リンク……!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(できれば殺す)
第二行動方針:同行者を増やす。
基本行動方針:生き延びて元の世界に帰る。ゲームには乗らない。
参戦時期:祭囃し編後、賽殺し編前
[備考]:一休さんの事は変態性犯罪者と認識しています。
【灰原哀@名探偵コナン】
[状態]:健康、薬の余韻なのか疲労を感じていない
(完全に切れたら一気にドッと来る?)
[服装]:子供服。着方が乱暴でなんか汚れてる。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、エスパー錠@絶対可憐チルドレン、エスパー錠の鍵@絶対可憐チルドレン
ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)
[思考]:この……!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:それが一段落してから、4階の様子を窺いたい。
第三行動方針:罪を滅ぼす方法を考える。梨花は死なせない。
基本行動方針:最後まで足掻き続ける。もう安易に死は望まない。
参戦時期:24巻終了後
[備考]:一休さんの事は変態性犯罪者と認識しています
[状態]:健康、薬の余韻なのか疲労を感じていない
(完全に切れたら一気にドッと来る?)
[服装]:子供服。着方が乱暴でなんか汚れてる。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、エスパー錠@絶対可憐チルドレン、エスパー錠の鍵@絶対可憐チルドレン
ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)
[思考]:この……!
第一行動方針:目の前にいる危険な小坊主(一休)をなんとかする(最悪殺す)
第二行動方針:それが一段落してから、4階の様子を窺いたい。
第三行動方針:罪を滅ぼす方法を考える。梨花は死なせない。
基本行動方針:最後まで足掻き続ける。もう安易に死は望まない。
参戦時期:24巻終了後
[備考]:一休さんの事は変態性犯罪者と認識しています
[備考]:現在、D-4の学校の1階・保健室に、『ネコンの香煙』を焚いた甘い煙が満ちています。
一休はマスクをしていますが、あまり長時間滞在していると吐き気に襲われるかもしれません。
梨花と灰原は廊下にいるので無事ですが、保健室から漏れ出てくる煙を吸い込んだ場合影響を受けます。
窓を開けるなどして換気をすればリンク・小狼はある程度動けるようになるかもしれません。
一休はマスクをしていますが、あまり長時間滞在していると吐き気に襲われるかもしれません。
梨花と灰原は廊下にいるので無事ですが、保健室から漏れ出てくる煙を吸い込んだ場合影響を受けます。
窓を開けるなどして換気をすればリンク・小狼はある程度動けるようになるかもしれません。
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≪119:混沌の学び舎にて(4) | 一休さんの登場SSを読む | 141:真実は煙に紛れて(1)≫ |
≪119:混沌の学び舎にて(4) | リンクの登場SSを読む | 141:真実は煙に紛れて(1)≫ |
≪119:混沌の学び舎にて(4) | 李小狼の登場SSを読む | 141:真実は煙に紛れて(1)≫ |
≪119:混沌の学び舎にて(5) | 古手梨花の登場SSを読む | 141:真実は煙に紛れて(1)≫ |
≪119:混沌の学び舎にて(5) | 灰原哀の登場SSを読む | 141:真実は煙に紛れて(1)≫ |