目次

    これもまた「第三回君誰大会」の続きです。やっと本編が終わりました。

     君誰大会    「本音と微笑みは決戦の彼方に」


「そもそも、あなたがのろのろと決断を渋っているからこんな事態になったんです。」
「ぐ、それを言われると……」
「決断しなさい! さあ!」

 いつもの喫茶店で、いつもの面子+いろいろの、総勢二十名ほど。
 そんな大所帯で、店内の客の七、八割は関係者だ。
 そして、さっきの決断を迫られているのが俺ことキョンで、決断を迫っているのが何故だか分からないが喜緑さんだ。

 なんだろう。これからだってのにひどい充足感を感じる。
 あれか。ようやく決着が付きそうだからか。
 まあいい。なかなか言い出せなかったものの、俺が誰を選ぶか、なんてのは二年前から決まってる。
 いい機会だから、決着つけよう。

「俺は、佐々木のことが好きだよ。」

 そのときだ。

 ぼんっ!
 主に何かが爆発した際に用いられるであろうその擬音を、しかし今正に使うべきだろうと俺は思う。
 何故なら、佐々木が真っ赤になって「はひゃ! ひゃわわわわわ……」なんていってるから。
 いやー、可愛いねぇ。

「あのね、キョン、可愛いって言ってくれるのは嬉しいんだけどね、ちょっとみんなの前だから恥ずかしいかなとか思うわけだけど、どうかな。」
「かーわーいーいー。」
「うひゃあ!」

 やばい。かなりかわいい。いやまじで。
 どうやらそう思っているのは俺だけじゃあないようだ。
 まず橘。やつはもう既に堕ちてる。『真っ赤になった佐々木さん………かゎぃぃ……ふりふりのドレスとか着せたら…………きゃー!』とか言ってる。むしろ逝ってる。
 次に、以外にもハルヒ。堕ちかけている。『かわい………いやいやだめよなに考えてるのよあたしは! 仮にも恋敵だったのよ! でも………』と揺れ動く感情に翻弄されているようだ。

 面白いな。まだまだやりたいな。いいかな。いいよね。

「良くないよ!」
「俺の心を読んだ!?」
「口に出てたよ!」

 まさか、こんなところで解説体質が裏目に出るとは。
 ならば、最終手段!

「ええっ! キョンってこんな力あったの!?」
「女子一人抱きかかえられないで何が男子高校生だ!」
「それはそうなのかもしれないけど降ろしてー!」
「ははは、照れんな♪」

「まさか、アレが無敵モード?」
「キョン君がアグレッシブですぅ。」
「ラブラブね。むしろラヴ?」


    ◆ ◆ ◆


「さて、さて………どうしよう。」

 お祭り気分というものは一回冷めるとそれはそれは恥ずかしいものである。本当に。古泉のように厚顔無恥だったり、ハルヒや鶴屋さんのごとく日常的にハイテンションだったりするのならそんなに気にしないでいられるのだが、残念なことに俺は基本的に省エネで暮らしてきたので、残りの命を全て燃やし尽くすかのようなさっきのあれは思い返すだけで恥ずかしい。もう嫌だ。おうち帰りたい。

「て、テンションの落差が激しいね。僕と一年離れている間に、いったい何があったんだい?」

 夏休みの最後二週間を一万五千回繰り返したり、孤島行ったり野球したり映画撮ったりラグビー見たり世界が改変したりナイフで刺されたり雪山に行ったり推理大会したり小説書いたり幽霊退治したりした。

「そ、それはまた、色々あったんだね。ねえキョン、いい加減いつも通りになってくれないか? ちょっと僕もうこのままじゃ泣きそうだよ。」

 それはいかん。俺は全生命力を使い、力を振り絞って佐々木の膝の上から頭を離そうとし、あえなく失敗してまた佐々木の膝枕に眠った。ああ、本当はこれって膝枕じゃなくて腿枕なんじゃないのか?
 膝に頭を乗せたら崩れ落ちないようにするのに必死にならないといけない。

 あ゛ー、佐々木の腿はいいなー。

「あのね、ここは春になれば桜が舞いカップルが散歩するような並木道だけどね。だからと言ってこんなに暑い夏に周りを熱がらせるような行為をしてもいいというわけではないんだよ。だから、ね? そろそろ起き上がってくれないかな? 周りの視線を感じないのかな? ね、見えてるかな、あの辺の茂み。涼宮さんのカチューシャだけが見えてるね。頭隠してカチューシャ隠さずだね。あと鶴屋さんらしき黒髪がそこの地面に広がっているんだけれど。他の部分は全く見えないのに髪だけってちょっと怖いね。あと川の対岸にいる茶髪ストレートなビン底めがねの彼女は髪を降ろした橘さんかな。その傍らには古泉君と森さんらしき人たちもいるし。とりあえずそんなにいろんな人に見られてるんだから起き上がって。…………って寝ぼけた振りしておなかの方向いちゃダメ! ちょ、どこ見てるの……いいから起きてえ!」


    ◆ ◆ ◆


 ここはキョンと佐々木がいちゃついている河原の対岸。
 ここでは三人の人が向こうの様子について喋っています。
 正確には、二人が喋って、一人が無視されています。

「ねえ、森さん。」
「なんでしょうか。」
「っていうかその格好は何ですか。そのめがね今時ありえませんよ。」
「いいじゃないですか変装ですよ。それより森さんスタイルいいですよねー。うらやましいどころではないです。揉んでいいですか?」
「いけません。それよりさっき話そうとしてたことは何なのですか?そんなことを言うために呼びかけたんですか?」
「ああ、男尊女卑の時代は遠く、今や女尊男卑ですか。」
「あのですね。私は佐々木さんの友達であるとともに佐々木さんを神と崇める人な訳ですよ。最早新興宗教かというくらいに。」
「友達になれてるのかは彼女に聞いてみないと。」
「その上、キョンさんが好きなわけです。」
「争ってましたしねぇ。」
「そこで、キョンさんと佐々木さんが絡み合ってるあのベンチはまさにシャングリラな訳です。ユートピアです。桃源郷な上アガルタです。正にヘブン。あそこにダイブしたいくらいです。してもいいですか?」
「だめですよ! あなた何考えてるんですか!」
「ふむ……一理あります。」
「園生も何考えてるの!?」


    ◆ ◆ ◆

 一方こちらは佐々木達がいちゃついてる河原。の茂みの中や木の上。
 いろんな人がいろんな様子で語り合っています。

「はるにゃん、カチューシャはどうしたんだい?」
「ああ鶴屋さん、カチューシャはあそこの茂みにおいてるのよ。こうしたら向こうに注意が行ってもこっちにはこないでしょ?」
「なるほど、一理あるね。で、実はあの茂みにみくるがいるんだよね。」
「あ、ほんとだ。」
「キョン君たちは気付くかな。あそこにいるのはみくるだって。」
「まあ、こっちに来ない限り気付かないだろうね。」
「え、国木田? どこにいるの?」
「気配を消すのは得意だから、ちょっと木の上に。これなら気付かれないでしょ。」
「意外とすごいわね。」

「ちょ、ちょっと有希ちゃん、いい加減諦めなさい!」
「諦める、という言葉は私の辞書にはない。」
「その台詞はかっこいいけど諦めは知っておいて!」
「知識では知っている。ただ、理解できないだけ。」
「じゃあ理解しなさい!」

 二人が座るベンチより、あるいはこちらの方がカオスかもしれない。


    ◆ ◆ ◆


 しかし、河原では特に何事もなく。
 時と所が変わって。今日は夏休みの終わりに入りかかった頃。
 キョンは、久しぶりに佐々木家にお邪魔していた。

 まさか、あ、あれは!
 伝説の∫○∵◆∴∑じゃないか!

「いきなりなんだい? というかこの状況のどこに積分記号が登場するのかが分からないのだけど。」
「違うぞ。あれは伝説のインテグラル丸何故ならば四角故にシグマだ。」
「余計分からないよ。確かに数式みたいになってるけど、意味が通じないよ。」
「つまりはだ、四角だから丸を積分して、それから出たものがシグマだと言うことだ。」
「ごめん、更に訳わかんない。それよりもだよ。今僕らはどこにいるのかは分かっているよね?」
「佐々木の家だな。まさか佐々木家に∫○∵◆∴∑があるなんてな。」
「その話はもういいから。それより、今日は君の学校でもうすぐテストだから勉強を教えてくれって君が頼んできたんだろう? とりあえず今日は古文と英語と現代国語をする予定だったと思うんだけど。」
「隊長………∫○∵◆∴∑が……俺を見ています……」
「生物なの!?」
「結論を言うとだ。飽きた。」
「早いね! まだ一時間くらいしか経ってないよ?」
「その一時間で古文の範囲はやりきったからいいじゃねーか!」
「確かに驚異的な集中力とスピードだったけど、まさかそれを言うために?」
「違うな。」
「ああよかった、そんなバカな理由じゃなくて。」
「佐々木といちゃつくためだ!!!」
「……………。」
「ん、どうしたんだ、いきなり固まって。」
「えぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!」
「ん、いいリアクションだ。」
「べ、勉強したかったんじゃないの?」
「どこの世界に勉強するためだけに彼女の家にお邪魔するやつがいる。」
「テスト前っていうのはもうちょっと励んだほうがいいんじゃないかなぁ!」
「大丈夫。お前と励むから。」
「何を! どのように!」
「保健体育を、実技で、かな。」
「言い方変えたらただの変態だよねぇ!」
「ん、何を言ってるんだ? バスケのルールとか球技系は実技でやったほうが覚えが早いだろ? ……それとも、えろいことでも想像したか。」
「い、いいいいいやいやいやいやいやいや、ちがうちがう違うよ? バスケ! バスケだよね! 分かってるって分かってる!」
「全く、何で体育の筆記テストとかがあるんだろうな。めんどくさいだけだっての。」
「そそそそうだね! 体育なんて実技テストで十分だよね!」
「じゃあ、保健の実技を手伝ってくれるか?」
「うん、いいよ。……………あれ?」
「ありがとう佐々木。保健の実技、手伝ってくれるんだよな?」
「ええとえとえと、そそそ、それはつまりえっとその………アレ?」
「そうだな、アレだな。何で後ずさりするんだ?」
「それなら、何で君は僕の服を脱がそうとするのかな?」
「それはね、お前を食べるためだよ!」
「初っ端から赤頭巾エンド!? ってやぁーーっ!!」


    ◆ ◆ ◆


「ひっく、ひぃぅう………………もうお嫁にいけない……。」
「大丈夫だ。俺が貰うから。」
「キョン、ありがと………って元々君が原因じゃないか!」
「まあ、そうとも言うな。」
「しかも、あんなことまでして…………。」
「具体的な行為までは及んでないけどな。」
「それが逆に恥ずかしかったよ! 君の専門は羞恥プレイかい!? あんな事するなんて…………。」
「教科書片手に、部位の名称を確認。」
「絶対にそれテストに出ないよね! どう考えても!」
「俺の知的好奇心は満たされたぞ?」
「僕の精神はずたずたにされた挙句丁寧に千切られたけどね!」
「どれ、確かめてみよう。」
「ひぅ……ってなんでそこで胸を触る!」
「古今東西、精神や魂と呼ばれるものは心臓部分に宿っていると思われてきた。」
「それはそれとしていきなりはないだろう! っていうか精神とかは手じゃ触れないから精神なんだろ!」
「ごめん、胸に触りたかった。」
「やっと本音を言ったな! って、素直になったからといって続きをしていいわけじゃないよ!」
「あ゛ー、あ゛ー、聞こえな~い♪♪」
「ちょっ、だめ、や、やめ、キョン! いい加減怒るよ!」
「…………すまんかった。」
「ふう、あのね、キョン、そういうことは場の雰囲気とか空気を読んで、そのうえでいけそうなときにようやく具体的な行為に及ぶべきなんだよ。だから君のようにがっつきすぎてると嫌われるよ?」
「佐々木は、俺のことが嫌いになったか?」
「べ、別にそういうわけじゃなくて、い、一般論として言っているだけであって………ちょっと、いい空気になんてなってないよ!」
「ははっ、照れんな(溢れ出んばかりの愛を込めて)」
「違うよ!? だからやめてっていってるでしょー!」

 悲鳴のような、嬌声のような。
 とりあえず、町内に響き渡った。


    ◆ ◆ ◆


「今からサバトを始めます。」

 重く、暗く、空気さえも闇色をしていそうな、湿気た地下室。

 囚われているのは、平凡な一人の男。手足を縛られ、口をふさがれたその哀れな様は、まるで地を這う虫けらのよう。ご丁寧にも、額に貼られた札には「蟲けら」と書かれている。

 捕らえているのは、黒いローブを来た集団。背格好は150センチほどから、170センチほどまでの三人。ただ、みな一様に威圧感を放っている。

「今宵の生贄は一匹。哺乳綱偶蹄目シカ科ホエジカ属に分類されるシカです。」
「ほががひががげーぼー!」
「生贄がわめいているようですね。通訳してくれますか? BSLG。」
「きちんとBattleship Long Gateと呼んでほしい。あと、どうやら『俺は鹿じゃねーぞー!』といっているらしい。どう思う、Citrus?」
「ばかですねえ、キョンといえば哺乳綱偶蹄目シカ科ホエジカ属に分類されるシカじゃないですか。」
「多分、キョン違い。」
「まあまあ二人とも、落ち着いて。」
「Forest、どうする? 処刑方法。」
「それはまあ、宗主であるBamboo Woodに聞いたほうがいいんじゃないですか?」
「でも、彼女はこの『女の敵を撲滅しようサバト』については知らなかったはずですよ? 教えてませんし。」
「あら、そうなの?」
「そう。仮にも彼氏をこんな目に合わせるのは彼女のやり方ではないと思われる。ただ、見ていて少しやりすぎだと思ったので、」
「そうですよ。いくらなんでもアレはやりすぎだったのです! なので、制裁です。」
「孕ませておいて、あの女のところに行くの……?」
「そんな事実はなかったはずですよ、Battleship Long Gateさん。」
「想像妊娠という言葉を知っている? あれを使えば、『やっぱり、嘘だったんですね。………中に誰もいませんよ。』というあの冥台詞を使うことができる。」
「名の字が違いますよながt……Battleship Long Gateさん!」
「というか、この暗号って意味あるんですか? ほぼそのまま名前じゃないですか。」
「あります! この暗号を使うと、サバトっぽくなります。」
「ほぼ無意味ですよね。さて、結局制裁はどうするんです?」
「もう、普通に痛めつけるのでいいんじゃないですか?」
「まあ、あなたたちがいいならそれでいいんですけどね。」
「私としては、一回性転換させてみたい。」
「さささ流石にそれはちょっと彼の人生を大きく左右するというか!」
「大丈夫。私の力でちょっと情報を弄くるだけだから。少ししたら戻す。」
「それならいいんじゃないですか? ……失敗しませんよね、Battleship Long Gateさん。」
「きっと大丈夫。では、実行する。」

 唱える呪文は人には聞き取れず、そして確実に彼を彼女へと変えていく。
 出来上がったものは。

「うわあ、意外と可愛い。」
「………………周囲の空間を凍結、固有空間を実行…」
「ちょ、長門さん、それはなんだか危ない感じ!?」
「ほがぎはにほひはー!」
「なんて言ってるんですか?」
「『俺に何をしたー』だって。」
「あれ、Battleship Long Gateさんは?」
「ちょっと眠ってもらったわ。流石に空間ごと凍らされたくなかったもの。しかし……」
「ええ。これは……」

 長門の禁断の技で出来上がったのは、いわゆる『キョン子』だった。
 だるそうだが可愛い顔に、ポニーテール。
 詳しくは、グ○グルとかで画像検索でもしてくれればたくさん出てくると思う。

「ええ。分かります。この私ですらお持ち帰りしたくなるこの容姿。Battleship Long Gateさんがああなってしまうのも無理はありませんね。」
「Forestさん、いっしょにあんなことやこんなことしません? この子に。」
「ええ、そうですね、女の子の気持ちを分からせるにはいいやり方ですしね。」
「ええそうです。これはおしおきなんですよ。Bamboo Woodさんにあんな事したから。」
「そうですねえ。同じようなことをやり返されるというのはいい薬になるでしょう。」
「だから、仕方ないんですよね、えへへ、えへへへへ………」
「ふが、ふがが、はへへーーーっ!」
「はめて、ですか? 残念ながらあれは付いていないので…。」
「もう、かわいいですねえ、虐めたくなっちゃいますよ♪」
「Forestさんが本気だ……!」
「ひゃ、やーーーーーっ!!!」


「ひどい。」
「すいませんて。だってあなたわたしたちごと凍らせようとしてたでしょ。」
「流石に凍るのは嫌だったので、眠らさせていただきました。」
「賠償を要求する。」
「そう来ると思ってました。はい。」
「………………………これは。」
「ふふっ、いい顔でしょ。たぁっぷり虐めた後に、やめてくださいって言わせたときのですよ。」
「で、これが虐めているときの写真です。」
「………家宝にする。」
「機嫌直してくれましたか?」


    ◆ ◆ ◆


 佐々木家の前に放置されている物体が一つ。
 ご丁寧にもリボンで包装されているその物体は、人の形をしていた。
 というか、ただのキョン子インリボンだった。
 如何いう事かというと、『リボンで包装兼少年誌では見せられない所を隠した裸のキョン子』だった。想像力の豊かな方はその姿を幻視できたと思う。あっ、胸元部分はわきの下を一周してるんじゃなくて首を回って交差する感じです。……そうそう、その先が下にもつながって一本のリボンで巻いてる感じ。結び目は首の後ろで。
 ちなみに、両手は後ろに回されてリボンで一緒に縛られているので自力で脱出不可能。いい仕事しましたね森さん。
 しかも、その服装? で放置されているため顔は真っ赤。最早男だった頃の面影はない。
 先ほど橘がインターホンを押していったので、もうすぐ佐々木が出てくるだろうから、そこでこの服装で野外に放置されるのはおわるけど、でもその代わり佐々木にじっくりと見られるわけで、いや背に腹は変えられぬというか、悪いな男でも女になっても胸のサイズは変わらなくて! どうせブラすら必要ないですよ! 本来は男だけどなんか悔しい!
 と、キョン子が百面相をしていると佐々木が出てきた。さよなら俺のプライド。こんにちはアブノーマルな世界。

「………………………………どちら様でしょうか?」

 ああ、男だったときとかなり顔が違うんですね。でも実は妹さんにも少し似ていたり。

「橘さんから『キョンを置いとくので入れてあげてくださいね』とのことだったんだが、まさか。」
「…………御明察。」
「君もキョンというあだ名なのかい? 奇遇だね、私の彼もなんだ。」
「え、いや、そうじゃなくて。」
「君のあだ名はキョンじゃないのかい?」
「いや、そうなんだけどそうじゃなくて!」
「へえ、どういうことかな?」
「その、俺がその彼氏なんだ!」
「思いっきり『彼女』だけど?」
「それは………佐々木を虐めてたあの日のことで長門に変えられて………森さんと橘に虐められて……。……………………ごめんなさいごめんなさいもうしませんからお尻だけはやめてくださいおねがいします。」
「どうやら、本当に、キョン、なんだね………分かった、入りたまえ。」
「あのー、手結ばれてて立てないんですよ……。」
「仕方ないね、よいしょっと。」
「わ、お、落ちる。」
「できるだけバランスを保ってね。」
「そんな事しないでも、解いたら……………。」
「どうやらそれは一本のリボンで結ばれていてね、解いたら全裸だよ?」
「ありがと。浅はかだった。」

 で、またまた佐々木家の佐々木の部屋。

「じゃあ、解くよ。」

 まずは首の後ろの結び目を解く。そこから、左右の乳首(乳房、といえるほどの立派なものではない。悪いかこんちくしょーめが!)が露になっていき、背中を回って腕を一周。そこからお尻を通って後ろから股の下を潜り抜け、また後ろに回って手首をぐるぐる。それで全部解けた。

「やっぱり、一本のリボンだったね。」
「よくやるよ。」
「おやおや、強気だね。全裸だというのに。」
「って、そうだった! 佐々木! 服貸してくれ!」
「はい、これ。」
「ありがと………ってブラとか着け方わかんねー!」
「取りかたは分かるくせに。とりあえず下を穿いて。」
「おう。」
「上はつけてあげる。ほいっと。」
「ありがと。」
「なんだか、妹の世話をしている気分というのが分かってきたよ。」
「悪かったな、妹で。」
「いやいや、これでも結構楽しんでいるよ? もし妹がいたら、こんなんだろうなーって感じ。」
「妹とはエロい関係にはならんぜ?」
「なるかもしれないよ? ……嘘だよ、そんな目で見るな。別にレズのケはない。」
「そうかい。あ、これ着りゃいいんだな。」
「ああ。ただ………」
「ひゃあっ!」
「君が相手なら、百合もいいかもしれないね?(天使のような満面の笑み)」
「ちょ、冗談はやめろ、さっき着けたばっかだからそれ! それもさっき穿いたばっかだし!」
「責められる気分を、体感してみたらどうだい?(復讐も込めた満面の笑み)」
「その台詞も森さんと橘から聞いたぁんーーっ!」
「確認してあげるよ。ちゃんと『女の子』になったのか……(酷薄さを備えた満面の笑み)」
「とってつけた口実でしょそれはーっ!」
「さ、お風呂に行こうか。『スミズミマデ』洗ってあげるよ。(危ない目をした満面の笑み)」
「何する気!?」
「なあに、ちょっと棒を使うだけだよ。…………………女の子の痛み、分からせてあげる。(じっとりとしたいやらしい満面の笑み)」
「やめてぇーーーーーーーっ!!!」

 明らかな嬌声が、町内に響き渡った。

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最終更新:2009年08月18日 09:43