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    目次

      これも「第三回君誰大会」の続きです。やっとハルヒ出てきました。


    君誰大会    「ある穏やかな春の日」


「そもそも、あなたがのろのろと決断を渋っているからこんな事態になったんです。」
「ぐ、それを言われると……」
「決断しなさい! さあ!」

 いつもの喫茶店で、いつもの面子+いろいろの、総勢二十名ほど。
 そんな大所帯で、店内の客の七、八割は関係者だ。
 そして、さっきの決断を迫られているのが俺ことキョンで、決断を迫っているのが何故だか分からないが喜緑さんだ。

 俺は、何時だって現状維持派だ。
 何故なら、その方が楽だし、何より悲しいことや苦しいこと、辛いことが少ない。
 自分にとっても、周りにとっても。
 だけど、今のこの状況はそれを許しちゃあくれない。
 だから、決めなきゃならんのだろう。
 幸いなことに、答えはある。ただ言ってこなかっただけで。
 ここまでお膳立てされりゃあ、嫌でも言うしかないだろう。
 臆病な自分に別れを告げなきゃならんのなら、蹴っ飛ばしてさよならしてやる。
 ずいぶん待たせたな。よし、言っちまうか。

「ハルヒ、一緒に帰るか。」

 ……あれ?
 この口が言うことを聞きやがりませんよ?
 何時まで恥ずかしがってんだ。
 そうは言っても今まで脱力して生きてきたのにその台詞は不可能だろ。
 ああもう使えねえな!

 しかし、他のやつらはそれで理解してくれたようだ。
 なんというか、持つべきものはよき友人である。

「じゃあキョン、涼宮さんとお幸せに。」
「はるにゃん、離しちゃダメにょろ!」
「さて、ここは僕たちが支払っておきますので、どうぞごゆっくり。」
「一樹ぃ、あの二人の初々しい所見てきちゃダメ?」
「流石にそれは野暮ってものですよ。」

 ありがたい。
 何故かさっきから黙ってしまったハルヒの手を引いて、喫茶店を出る。
 いつもと違い、閉鎖空間のときと同じようにハルヒが着いてくる。
 喫茶店内からあふれ出てきた殺気は、見なかったことにしよう。


    ◆ ◆ ◆


 ところで、七夕伝説の詳細ってモノを知っているだろうか。
 別に知ってても知らなくても支障はないんだが、アレには意外と色々なルーツがある。
 日本の神話だったり、中国のやつだったり。
 簡潔にまとめるなら『仕事も忘れていちゃついた二人が女の父親に川の向こうとこっちに分けられて、一年に一度雨が降らなかったらカササギに助けられて会うことができる』となる。
 これでも十分に長いか。
 俺的にはラヴロマンスの真っ最中であろう二人に願いをかなえてもらおうなんてナンセンスだと思っているのだが。
 あと、川は三途の川を表してて、川のこっちに来た織姫がかぐや姫の正体なんじゃないかと浅知恵を働かせてみたんだが。
 違うか。

 閑話休題。
 ああ、これは閑話休題なんだ。
 別にこの話を延々と続けてもいいと思うんだが、流石にそれは隣にいるこいつに失礼だろうと思う。

「なあ、いい加減喋ったらどうだ?」
「…………………………。」

 この三点リーダは長門じゃない。
 そもそも、さっきの展開から長門を連れ歩いてたら俺はどれだけ外道なんだという話だ。
 というわけで、隣にいるのはハルヒである。
 『時間断層の原因』であり、『自律進化の可能性』な上、『神様』扱いまでされちまっているこいつだが、俺にとっては『可愛い彼女』だ。
 まだ本格的に告白してないけど。
 そんなハルヒがここまで押し黙っちまってるのは、さて、何故だろうな。
 気恥ずかしさが先にたって口が動かないのか。
 そりゃないか。
 一年前の灰色空間でははっきりと出なかった答えも、今なら口に出せる。
 涼宮ハルヒは、俺にとっての憧れで、だから一緒に居たかったし、好きだともいえる。
 幼い頃に諦めたものを追い求めているこいつが、まぶしく見えたからだろうか。
 そんなこんなで遠まわしにハルヒが好きだということを伝えたわけだが、その辺りから黙ってしまったとは、やはりそこらに原因があるのか。
 カマかけてみようか。

「なあ、ハルヒ。そんなに黙っちゃって……………俺のこと嫌いか?」
「そんなわけないじゃない!」
「じゃあ、俺のこと、好きか?」
「当たり前じゃない!」
「じゃあ、なんで黙ってたんだ? 恥ずかしくて喋れないのか。そうかそうか。」
「そ、そんなんじゃないわよ! 違うって!」
「……………………本当に?」
「………いじわる。」

 ……………………………………………………………今のは反則だと思うんだ。

 これが、上目遣いの威力か!
 くっ、甘く見てたぜ。だがしかし!
 一度喰らった技をもう一度喰らうわけにはいかんのだよ。
 さあ来い!

「お、怒っちゃったの?」
「いや違うさただ単にお前の上目遣いの威力が強すぎてっていうかやめてくれそれは起こしてはならない禁断の魅惑兵器だったんだ畜生誰か俺の理性をキャッチ&テイクヒアプリーズ!」
「何言ってんのよあんたは!」
「おお。真っ赤な顔で怒られても全く怖くない。初めて知った。むしろかわいい。」
「か、かわ……」
「真っ赤になっちゃってかーわいー。」
「もう、何言ってんのよ!」

 すたすたと先へ行ってしまわれた。
 うん、これで少しは元気も出ただろう。

 だがしかし、ここで一つ問題がある。
 正直な所、この後の予定を何一つ決めていないのだ。
 まあ、突発的な事態だったとはいえ、こういうときは男がエスコートするもんだと相場が決まっている。
 なので、俺は今必死にない知恵を働かせているのだが。
 …………聞いたほうが早いか。

「なあハルヒ。どっか行きたい所とかあるか?」
「別にないけど。なに、目的地もないわけ?」
「全くその通りだ。Exactlyとでも言えばいいか?」
「はあ。そこは男がエスコートするべき所でしょ!」
「だよなぁ。俺としてはこの辺をぶらぶら散策するのも悪くはないと思うんだが。」
「それもそうね…………じゃあ、先に不思議なものを見つけたほうの勝ちで。」
「いつもの不思議探索と変わりねえじゃねえか。」
「いいのよ! 行くわよ!」
「急ぐ必要はねえだろ!」
「何言ってんの! 善は急げって言うじゃない!」
「別に善でもねえよ!」


    ◆ ◆ ◆


 所変わって。

「やっぱりキョンは涼宮さんを選んだ、か…………。」
「やはり、というのはどういう意味?」
「いやね、キョンは昔から不思議なことをさがしてきたでしょ? で、そんなキョンにとって涼宮さん自体が不思議な人なわけ。だから、幾分魅力的に見えたんじゃないかしら? ってこと。」
「まあ、落ち着くとこに落ち着いた感がありますけどね。」
「朝比奈さんはこの結末を知ってたのかな?」
「すいません、やっぱり禁則事項です。宇宙的にはどうなんですかぁ?」
「別に、情報統合思念体は時空を超越してるとはいえ、涼宮さん周りは分からなかったみたいよ。」
「補足するなら、最近思念体の力が弱まってきている気がする。」
「そんなこと、私たちの前で言っていいんですか?」
「あら橘さん、どうせ敵対するつもりはもうないんでしょう?」
「見せ場を作るくらいいいじゃないですか。」
「たいした見せ場じゃないと思うけどね。それより、その子がいるのにこんな話をしていていいの?」
「? その子って誰ですか?」
「吉村さん。」
[〈(『あ゛!!』)〉]
「ま、いいけどね。」
「あの、何が『あ゛』なんですか?」
「いやね、あの、ちょっと、知られたくないっていうか、企業秘密って言うか、そんな感じなんだけど。」
「彼女の記憶を凍結する。大丈夫。骨も残らない。」
「最早それ凍結じゃないわよ! 有希ちゃんやめなさい!」
「ふぇ、長門さん、呪文唱えちゃダメです!」


    ◆ ◆ ◆


 何だろう。駅前の方向からものすごい悪寒が。

 まあ、きっとやつらが何かやらかしたんだろう。
 できるだけ被害が少なければいいんだが。
 古泉だけとか。
 まあ、高望みはいけないよな。
 谷口にも犠牲になってもらえばいいか。
 あ、ていうか他のやつらは大概いたのに谷口だけは喫茶店にいなかったよな。
 あれか。一人だけはぶられたか。
 まあ谷口だしな。

「さて。二人でいるのに何故こんな長々とモノローグを言っているのかといえばそれはつまりハルヒが喋れない状況にあるからで、と言うか喋れるはずなんだが集中してしまって寂しいのでモノログってたわけだが、つまり今何をしていたのかと言えば映画を見ていた。」
「どうしたのよいきなり。」
「いやな、俺が好きなの見ていいぞって言ってお前がチョイスしたから文句はないんだがな、二人きりの初デートといっても過言ではないこの状況であえてグロい映画を見るその心境が分からない。」
「キョン…………………さっきからよそ向いてるけど、もしかして怖いの苦手?」
「ははは何を言ってイルノヤラ。」
「そう………そうなの怖いのが苦手なのうふふふふひそれはいいことを聞いたわねえへへへ楽しみだわ。」
「怖い。怖いから。何よりその笑い方がなにやら今正にスクリーンに映ってる彼女を彷彿とさせるからやめてくださいお願いします。」
「あらそう。じゃあ、あっちのキャラの真似はいかが? くっくっく、ゾクゾクスルですぅ。」
「あ、それは別に怖くないわ。」
「何で!? 色物さはどっこいどっこいだったじゃない!」
「いやな、笑い声が『くっくっく』な時点で佐々木みたいで怖くない。」
「いやな分類!」
「ついでにな、ぞくぞくするですの用法は、『はァぁ、ぞくぞくするですぅ』だ。」
「『はァぁ』って何よ!!」
「ついでにいうなら、思いっきり嗜虐的な笑みを浮かべながらだとなお良いな。」
「何その講義!」
「仲間としては『モっと! もッと罵っテ!』とかがあるな。『ハァハァ、お着替え、しましょうね………』とかもあるな。」
「なんなのその台詞集! どっからもってきた!」
「真秀場とかからかな。」
「どこ!? てか何?」
「まあそれは置いといて、さ。やらないか?」
「なにをよ! そしてもし阿部高和的な意味だとしたらセクハラだわ! 断固抗議する!」
「どっちかってえと『殺らないか?』的な意味で使ったんだがな。」
「誰を!」
「なあ……交換殺人に………興味ないか……?」
「あったら怖いわよ!」
「ちぇ、やってくれるかと思ったのに。」
「その『やる』はやっぱり『殺る』なんでしょうねぇ!」
「いやいや、『犯る』かもしれないぞ?」
「あたしもうあんたが信じられなくなってきたわ!」
「知ってたか? 夫婦の間には適度な緊張感が必要なんだってさ。」
「こんな緊張感はいらないわよ!」
「おいハルヒ。そんなにうるさくすると周りに迷惑だろ?」
「たった今映画終わったけどね! そしてあんたが言うな!」
「まあそうかっかするな。怒ると年取ったとき怒ってるようなしわができるぞ。」
「笑ってても笑いじわができるし無表情だったらたれてくるから変わんないわよ。」
「長門にはしわはできそうにないけどな。」
「デート中に他の女の名前を出すあんたのその根性を叩きなおしてあげるわ。」
「すまんな。お詫びといっちゃ何だが、ほら、周りを見ろ。」
「何よ。」
「歓楽街だ。」
「どこつれて来てんのよ!」
「ははは、照れんな☆」
「こんなのキョンじゃない!」
「まあ、それはおいといて、ハルヒ。」
「何よ。いきなり真剣な表情を演じちゃって。」
「やらないか?」
「結局そこに戻るのね!」
「いやいや、今度は真剣な意味だ。」
「真剣にその台詞を言うなんてどこまで腐ってるのよ。」
「すまんな。恥ずかしいのには慣れてないんだ。もし俺がエロゲの主人公だったらここらで周りがどんなとこかに気付いて引き返そうとするお前を引きとめて『僕は……したいな。』とか言えるんだろうが。」
「そっちの方がまだましよ!」
「ほほう。つまりそういうことをしたいと捉えていいのか?」
「別に好きにしたら!」
「じゃあ入ろうかハルヒ。大丈夫。優しくするから………」
「その言葉がこれほど信頼できないなんて初めてよ!」
「大丈夫。痛くない紐でするから。」
「何を! なにをよ! 縛るの!?」
「蝋燭………膣鏡……荒縄…………ビーズ…浣腸………ボールギャグ……じゅるり。」
「タースーケーテーッ!!!」


    ◆ ◆ ◆


「……………………。」
「…………やっぱり怖いか?」
「……さっさといきなさいよ。」
「怖いんならやめてもいいんだぞ?」
「早くいけって言ってるのよ!」
「ハルヒ。」
「ッッ……何よ。」
「強がらなくてもいいんだぞ。俺の前でだったら、強がらなくてもいい。」
「何よ。」
「ハルヒ。」
「だから何!」
「なあ、頼むから、泣くな。ほんと、頼むから。」
「泣いてない。泣いてないってば!」
「大好きだ。だから、俺にも弱いとこを見せてくれ。」
「このばかぁ! ばかやろぅ………」

「すいませーん、後ろ詰まってるんで早めにお願いしまーす。」
「ちっ、係員め、空気を読みやがらねえ。」
「でもやっぱりおばけ屋敷こわいー!」


    ◆ ◆ ◆


「ハイこれ。」

「なんだ? ああ、弁当か。ありがとうな。」
「べ、別に好きでやったわけじゃないわよ。ただ料理を作ってみてもいいかなと思ってお母さんに教えてもらって、一つ作るも二つ作るも同じことだったからやっただけで。」
「おー、純粋なツンデレだ。かわゆすかわゆす。」
「な、別にツンデレじゃないわよ! ほら、早く食べれば!」
「いただきます。」
「………………………。」
「どうした?」
「食べるって、そっちの意味じゃないわよ!」
「食べればって彼女に言われたらこっちしかないだろ。」
「ああもう! 何でこんなにいじわるになったの! 去年辺りはあたしに振り回されてたのに!」
「その分のツケが回ってきたんだろ。」


    ◆ ◆ ◆


「あまり涼宮さんをからかうのはやめていただきたいのですがねー。」
「つい、ついな。ハルヒがかわいいからついやっちまったんだ。」
「お陰でこちらはいつ閉鎖空間が出るかびくびくし通しですよ。」
「大丈夫だろ。なんだかんだ言って、あいつも結構この状況を楽しんでるから。」
「まあ、彼氏ができて楽しくないって聞きませんからねえ。」
「だから、そんなに怯えないでも大丈夫だといっておこう。」
「まあ、最近涼宮さんの力が弱まってきている気がしていますしね。」
「そうか。そりゃ良かった。」
「まあ、そうはいってもまだまだ世界中にイエティを発生させるくらい簡単にできるくらいは残ってるんですけどね。」
「微妙なチョイスだな。せめてネッシーとかにしとけよ。」
「モケーレ・ムベンベって言う響きには心躍ると思いません?」
「カメルーンまで行ってこい。」
「あと、ツチノコは個人的にいてほしいです。」
「まあ、日本が誇るUMAだしな。アレだ、頭が金槌みたいになってる蛇だよな。」
「諸説様々あるらしいですけど、まあそれで正しいのではないかと。」
「来年の七夕にはなんかしたいな。」
「何です薮から棒に。」
「いや、今年の七夕は去年と似たり寄ったりだったからさ、来年はなんかパーッと派手にしたいと思ってな。」
「あなたまで涼宮さんみたいなことを言うんですね。類友の進化系ですか?」
「ま、自分に似ているとか話が合うとかいうのは一緒にいてて楽しいだろうしな。ただ、来年やるとなると朝比奈さんが大学生なんだよなぁ。」
「そこらへんはどうとでもなるんじゃないですか? なにせ彼女はあれでも未来人ですし、それを抜きにしても一日休むくらいたいしたことないでしょう。なんなら単位を改竄してもいいですし。」
「そんなことぐちぐち悩まずに、今やればいいのよ!」
「うわっ、いつからそこに?」
「今さっきよ。それより、みくるちゃんが未来人のどうのって、何の話?」
「え、えっとですね、あの…………」
「朝比奈さんの名前の話だ。」
「名前?」
「朝比奈みくる、だろ? 『みくる』を漢字で書いたら『未来』になるんじゃないかと思ってな。」
「それはそうだけど、そんな親父ギャグで喜ぶのあんたくらいよ?」
「古泉だって若干はまってたじゃないか。」
「あら、そういやそうね。」
「いえ、僕ははまってたわけじゃなくてキョン君に合わせただけですよ?」
「おい、ずるいぞお前。俺一人に罪を着せる気か!」
「すいません。僕だって命は惜しいんです。」
「キョン、覚悟しなさい!」
「なにをだよ!」
「いや、つまらないことを言った罰?」
「なんだそれは。そんなもんいちいち喰らってたらこっちの身がもたん!」
「あんたはどんだけつまらないこという気なのよ!」
「そういうつもりじゃねえよ!」
「じゃあどういうつもりだったのよ。」
「あの、えっと、その場のノリっていうか……すいません。」
「分かればよろしい。」

「つまらないこといったら謝らないといけないなんて、キョン君は芸人さんにでもなったんでしょうか?」
「おそらく、アレも含めての『その場のノリ』だと思われる。」
「日本語って難しいですね。」
「今の会話からその台詞が出てくるあなたの頭もそれなりに難しい。」
「そんな、褒めないでくださいよう。」
「日本語の選択を誤った? いや、私の言葉は伝えたい意思を正確に表していたはず。何故?」
「長門さん、ツッコミって物について覚えましょう。大丈夫、覚えやすいです。」


    ◆ ◆ ◆


「なあ古泉。」
「何でしょうか?」
「これもまた、平穏な日常ってやつだよな。」
「全くその通りかと。」
「一応いっとく。これからもあいつが迷惑を掛けるが、よろしく。」
「そこは素直にこれからもよろしくでいいんですよ? そっちの方が嬉しいですし。」
「すまんな、二人とも素直じゃないんだ。」
「分かってますよ。」



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