いつか見た、懐かしい未来 ◆IEYD9V7.46
ある日、一本の草は突然無造作に摘まれ、見知らぬ土地へと植えられた。
その土地は、今まで草が過ごしていた日当りのよい長閑な丘とは、
比較に値しないくらい凄惨で、酷薄な世界だった。
暖かな陽光など望むべくも無く、土壌から吸い上げられる水と養分は、
生を保つのがやっとという有様。
生きるには過酷であり、死ぬには不足している苦痛。
その加減は喝采を贈りたくなるほどに絶妙なもの。
どう考えたって、誰かが悪意を持って計算した末に産まれた世界だとしか思えなかった。
その土地は、今まで草が過ごしていた日当りのよい長閑な丘とは、
比較に値しないくらい凄惨で、酷薄な世界だった。
暖かな陽光など望むべくも無く、土壌から吸い上げられる水と養分は、
生を保つのがやっとという有様。
生きるには過酷であり、死ぬには不足している苦痛。
その加減は喝采を贈りたくなるほどに絶妙なもの。
どう考えたって、誰かが悪意を持って計算した末に産まれた世界だとしか思えなかった。
死にたくない。普通に立っているだけじゃ、すぐに死んでしまう。
恐怖と狂気に中てられてしまった草は、あっさりと自分が何者なのかを忘れた。
もともと大した名前なんてついてはいない。
鮮やかな花弁で目を惹けるわけでもなければ、芳烈な香りで癒しを与えられるわけでもない。
秀麗な草花たちの中に混ざれば、一本だけひどく浮いてしまう。
あるいはその華やかな列に埋もれて呆気なく消えてしまう。そんな、名無し草だったから。
自分の在り方を見失った草に残っていたのは、純粋な生存本能だけだった。
粗悪で僅少な水と栄養を少しでも求めて、ひたすら固い地面に根を下ろす。
下に掘ればきっと水が見つかる、広く掘ればきっと美味しいご飯にありつける。
その思いに囚われた草は、我武者羅に動きつづけた。
時には他の草花の邪魔までして、貪戻に光と水と栄養を求めつづけた。
恐怖と狂気に中てられてしまった草は、あっさりと自分が何者なのかを忘れた。
もともと大した名前なんてついてはいない。
鮮やかな花弁で目を惹けるわけでもなければ、芳烈な香りで癒しを与えられるわけでもない。
秀麗な草花たちの中に混ざれば、一本だけひどく浮いてしまう。
あるいはその華やかな列に埋もれて呆気なく消えてしまう。そんな、名無し草だったから。
自分の在り方を見失った草に残っていたのは、純粋な生存本能だけだった。
粗悪で僅少な水と栄養を少しでも求めて、ひたすら固い地面に根を下ろす。
下に掘ればきっと水が見つかる、広く掘ればきっと美味しいご飯にありつける。
その思いに囚われた草は、我武者羅に動きつづけた。
時には他の草花の邪魔までして、貪戻に光と水と栄養を求めつづけた。
そうして勝手気侭に私腹を肥やしてから、草は気づいた。
すぐ近くに、一輪の小さな花が咲いていることに。
鮮紅と呼ぶのが相応しい、小さく可憐でありながら強烈な印象を焼き付ける花だった。
ただし、それはあくまで第一印象に過ぎない。
よくよく観察してみると、赤い花びらには今にも裂けるのではないかというくらいに
不自然な皺が寄り、左右に広げられた葉からも瑞々しさが失われ、力なくしおれている。
――ねえ、君。どうしたの?
そう話し掛けようとした草は、ギリギリのところで踏みとどまった。
尋ねるまでもなく、理由が分かった。
奔放に伸ばした自分の根が、花の周辺にまで達してしまい、
花に行くはずだった水と養分を奪っていたのだ。
その事実を認識している間にも、まるでビデオが早回しにされているように、
みるみるうちに花が枯れていく。
カサカサになった花弁が一枚、また一枚と落ちる。
その身を優しく撫でるはずの微風は、茎を折ろうとする悪質な暴風のようにまで見えた。
しなびた葉が重力に屈して、とうとう地面にへたりこんでしまったとき。
――駄目だ! と、草は絶叫した。
「あ」とか「い」とか文章にならない震えた声を出したあとに、やっとのことでそう叫べた。
生きるために他者を騙し、傷つけようとまでした草は、
最後の一線を踏み越える前に本来の自分のあり方――優しい心を取り戻すことができた。
燭火のごとく弱い光。
けれども、確かに胸に灯った光はその身を奮い立たせ、
もう絶対、生きるために他のものを騙したり、傷つけたりはしないと心に決ることができた。
すぐ近くに、一輪の小さな花が咲いていることに。
鮮紅と呼ぶのが相応しい、小さく可憐でありながら強烈な印象を焼き付ける花だった。
ただし、それはあくまで第一印象に過ぎない。
よくよく観察してみると、赤い花びらには今にも裂けるのではないかというくらいに
不自然な皺が寄り、左右に広げられた葉からも瑞々しさが失われ、力なくしおれている。
――ねえ、君。どうしたの?
そう話し掛けようとした草は、ギリギリのところで踏みとどまった。
尋ねるまでもなく、理由が分かった。
奔放に伸ばした自分の根が、花の周辺にまで達してしまい、
花に行くはずだった水と養分を奪っていたのだ。
その事実を認識している間にも、まるでビデオが早回しにされているように、
みるみるうちに花が枯れていく。
カサカサになった花弁が一枚、また一枚と落ちる。
その身を優しく撫でるはずの微風は、茎を折ろうとする悪質な暴風のようにまで見えた。
しなびた葉が重力に屈して、とうとう地面にへたりこんでしまったとき。
――駄目だ! と、草は絶叫した。
「あ」とか「い」とか文章にならない震えた声を出したあとに、やっとのことでそう叫べた。
生きるために他者を騙し、傷つけようとまでした草は、
最後の一線を踏み越える前に本来の自分のあり方――優しい心を取り戻すことができた。
燭火のごとく弱い光。
けれども、確かに胸に灯った光はその身を奮い立たせ、
もう絶対、生きるために他のものを騙したり、傷つけたりはしないと心に決ることができた。
その心変わりが気に入らなかったのか。あるいは単なる気紛れなのか。
瞬きよりも短い時間。
そのあいだに、草はまたも場所を移動させられていた。
その事実に気付いた主因は、いきなり降り注いだ太陽の光。
さっきまでの自分が、追い求めてやまなかったものだ。
自分の根が掴んでいるのは相変わらずの貧土だが、
つい先ほどまでいた暗い日陰の世界からすれば、天国と言っても差し支えのない。
光に満ち溢れた、場所だった。
そのあいだに、草はまたも場所を移動させられていた。
その事実に気付いた主因は、いきなり降り注いだ太陽の光。
さっきまでの自分が、追い求めてやまなかったものだ。
自分の根が掴んでいるのは相変わらずの貧土だが、
つい先ほどまでいた暗い日陰の世界からすれば、天国と言っても差し支えのない。
光に満ち溢れた、場所だった。
頭上に、一人の男がいなければの話だが。
紛れもない、男は草をこの地獄に連れてきた張本人だった。
草はガタガタとその身を揺らし、竦然とする。
その内心を知りながら、いや、知っているからこそ。
ニタリ、と愉快そうに男が笑う。
同時に、燦燦と降り注いでいた陽の光が唐突に陰った。
雲かな? 草は恐怖も忘れて呑気にそう思う。
しかし、そんなはずはなかった。
何か、黒くて大きなものが太陽と草の間に割って入っている。
アスファルトだった。
道路を四角く切り取って持ってきたような、石油の残りかす。
現実にもあるそれが、非現実的に宙に浮いていた。
身じろぎ一つもできないでいた草は、ゆっくりと落下し始めた塊を見て叫声をあげた。
いやだ、うそだ、ゆるして、ごめんなさい。
延々と続く叫びを封殺するように、冷たいアスファルトはその温度そのままに、冷酷に草を押しつぶした。
押しつぶして、当然その声は途絶えた。
暖かで眩しい天光は、もう草には届かない。
草に許されたのは、アスファルトの天上と一片の光も存在しない暗闇の世界だけだった。
草はガタガタとその身を揺らし、竦然とする。
その内心を知りながら、いや、知っているからこそ。
ニタリ、と愉快そうに男が笑う。
同時に、燦燦と降り注いでいた陽の光が唐突に陰った。
雲かな? 草は恐怖も忘れて呑気にそう思う。
しかし、そんなはずはなかった。
何か、黒くて大きなものが太陽と草の間に割って入っている。
アスファルトだった。
道路を四角く切り取って持ってきたような、石油の残りかす。
現実にもあるそれが、非現実的に宙に浮いていた。
身じろぎ一つもできないでいた草は、ゆっくりと落下し始めた塊を見て叫声をあげた。
いやだ、うそだ、ゆるして、ごめんなさい。
延々と続く叫びを封殺するように、冷たいアスファルトはその温度そのままに、冷酷に草を押しつぶした。
押しつぶして、当然その声は途絶えた。
暖かで眩しい天光は、もう草には届かない。
草に許されたのは、アスファルトの天上と一片の光も存在しない暗闇の世界だけだった。
* * *
野比のび太の運は底なしに悪い。
ぼーっと外を歩いていれば、当たり前のように犬の尻尾を踏んで何百メートルも追いかけられる。
ジャイアンやスネオが空き地に作った落とし穴にも、吸い寄せられるように簡単に引っかかる。
不幸なことは、いつも向こうのほうから勝手にやってくる。
ゆえに幸運がやってくること、例えば宝くじの当たりを期待するなんて以っての外だった。
仮に当たったとしても、それは大体ドラえもんの道具頼りの話なのである。
買う度に増えるのは溜息の回数と役目を果たした紙屑ばかり。
そうして、いつしかくじを買うこと自体殆どなくなっていった。
どうせ買っても当たりはしないのだから、最初からそんなものを買ってもしょうがない。
そう、諦めていたから。
ぼーっと外を歩いていれば、当たり前のように犬の尻尾を踏んで何百メートルも追いかけられる。
ジャイアンやスネオが空き地に作った落とし穴にも、吸い寄せられるように簡単に引っかかる。
不幸なことは、いつも向こうのほうから勝手にやってくる。
ゆえに幸運がやってくること、例えば宝くじの当たりを期待するなんて以っての外だった。
仮に当たったとしても、それは大体ドラえもんの道具頼りの話なのである。
買う度に増えるのは溜息の回数と役目を果たした紙屑ばかり。
そうして、いつしかくじを買うこと自体殆どなくなっていった。
どうせ買っても当たりはしないのだから、最初からそんなものを買ってもしょうがない。
そう、諦めていたから。
だから、今回も外れてくれると信じていた。
『――穢れ無き魂を持つ幼子達よ。久しいな』
放送が始まって、のび太は慌てながらも地図と名簿を取り出した。
テストができないのび太にだって、この放送の意味と、
やらなければならないことくらい分かっている。
テストができないのび太にだって、この放送の意味と、
やらなければならないことくらい分かっている。
『まず禁止区域の発表を行う』
地面に広げた地図に、ガリガリと鉛筆を突き立てる。
禁止エリアの情報が淡々と告げられていく。
禁止エリアの情報が淡々と告げられていく。
『23時よりA-1』
ビクリ、と背筋が強制的に伸ばされ、思わず西のほうを振り向く。
(こ、ここの隣りくらいじゃないか!?)
しかし、落ち着いて考えてみたらまだ時間があることに気付き、ホッと胸を撫で下ろす。
(こ、ここの隣りくらいじゃないか!?)
しかし、落ち着いて考えてみたらまだ時間があることに気付き、ホッと胸を撫で下ろす。
『次はこの放送までに命を落としてしまった者達の名前を発表する。01番明石薫……』
(……やっぱり、本当に殺し合いが起こっているんだ。
あの子豚の他にも、死んじゃった人はたくさんいたんだ)
知らない名前が読み上げられ、のび太は名簿上に黙々とバツ印を付けて行く。
胸が痛かった。名前にバツを付けると、まるで自分が今まさにその人を殺しているような
錯覚が湧き起こってしまい、どうしようもなく怖かった。
そして――
あの子豚の他にも、死んじゃった人はたくさんいたんだ)
知らない名前が読み上げられ、のび太は名簿上に黙々とバツ印を付けて行く。
胸が痛かった。名前にバツを付けると、まるで自分が今まさにその人を殺しているような
錯覚が湧き起こってしまい、どうしようもなく怖かった。
そして――
『07番磯野カツオ』
息が詰まった。
遂に、知っている人の名前が呼ばれてしまった。
一緒に過ごした時間は短かったし、交わした言葉だって少ない。
けれど、この島に来た直後、弥彦と一緒に自分といてくれたというだけで充分だった。
それだけで、のび太は安心することができたのだから。
のび太にとって、これが一つ目の不幸。
遂に、知っている人の名前が呼ばれてしまった。
一緒に過ごした時間は短かったし、交わした言葉だって少ない。
けれど、この島に来た直後、弥彦と一緒に自分といてくれたというだけで充分だった。
それだけで、のび太は安心することができたのだから。
のび太にとって、これが一つ目の不幸。
『18番城戸丈。24番小岩井よつば』
対するこちらは、一つ目にして最後の幸運。
もちろん、人の死を告げる放送に良いことなんてあるはずがないし、あってはならない。
けれど、不謹慎だと思いつつものび太は喜ばずにはいられなかった。
(お兄さんは、生きている!)
そう。あのとき自分とひまわりを逃がすために、
一人勇敢にリリスに立ち向かったグリーンの名前が、呼ばれなかった。
諦め半分で名簿上のグリーンの名前を注視していたのび太は、
放送がグリーンの名前を飛び越して、その先の名前を読み上げたことに気がついた。
(すごい! お兄さんはちゃんと逃げられたんだ!)
瞳に光が宿り、小刻みに震えていた身体に一本の芯がしっかりと通る。
希望が繋がった。この殺し合いの暴力にグリーンは負けなかったのだから。
冷静に首輪と脱出のことまで考えていた頼れる少年が、生き残ってくれた。
別れ際に見たグリーンの力強い姿と言葉を思い返したのび太は、
まるで漫画の中の正義の味方が、そのまま飛び出してきたみたいだと歓喜した。
希望が胸一杯に風船のように膨らんた瞬間。
もちろん、人の死を告げる放送に良いことなんてあるはずがないし、あってはならない。
けれど、不謹慎だと思いつつものび太は喜ばずにはいられなかった。
(お兄さんは、生きている!)
そう。あのとき自分とひまわりを逃がすために、
一人勇敢にリリスに立ち向かったグリーンの名前が、呼ばれなかった。
諦め半分で名簿上のグリーンの名前を注視していたのび太は、
放送がグリーンの名前を飛び越して、その先の名前を読み上げたことに気がついた。
(すごい! お兄さんはちゃんと逃げられたんだ!)
瞳に光が宿り、小刻みに震えていた身体に一本の芯がしっかりと通る。
希望が繋がった。この殺し合いの暴力にグリーンは負けなかったのだから。
冷静に首輪と脱出のことまで考えていた頼れる少年が、生き残ってくれた。
別れ際に見たグリーンの力強い姿と言葉を思い返したのび太は、
まるで漫画の中の正義の味方が、そのまま飛び出してきたみたいだと歓喜した。
希望が胸一杯に風船のように膨らんた瞬間。
『25番剛田武』
ぷつり、と。
希望の袋に、針を刺された。
希望の袋に、針を刺された。
「……………………え?」
声ともつかない間抜けな音を出すのが、精一杯だった。
止まらない。心に空いた穴から、たった今生まれた希望が漏れ出す。
流れ出た希望が、絶望に食われてどんどん死んでいく。
今わかった。さっき口をついて出たのは自分の声なんかじゃない。
穿たれた穴から飛び出した希望が最期にあげた、薄弱な断末魔だったのだ。
同時に、のび太の身体からも力が失われ、鉛筆が地に落ち、カラカラと音を立てた。
止まらない。心に空いた穴から、たった今生まれた希望が漏れ出す。
流れ出た希望が、絶望に食われてどんどん死んでいく。
今わかった。さっき口をついて出たのは自分の声なんかじゃない。
穿たれた穴から飛び出した希望が最期にあげた、薄弱な断末魔だったのだ。
同時に、のび太の身体からも力が失われ、鉛筆が地に落ち、カラカラと音を立てた。
『26番ゴン』
放送が続く。だけど、のび太の耳にそんなものは入らない。
絶望がケタケタと笑いながら耳と心に蓋をする。
絶望がケタケタと笑いながら耳と心に蓋をする。
『……では、次の放送は午前六時の予定だ。その時にまた会う事にしよう。
これにて放送を終了する』
これにて放送を終了する』
結局、のび太は放送が終わるまでずっと動かなかったし、何も喋らなかった。
ただただ膝をついて、焦点の合わない瞳を、
橙と紺色によるグラデーションに彩られた夜空に向けるだけ。
放送の残響が完全に掻き消え、耳が痛くなるほどの静謐さが訪れる。
時間が止まった世界。
その中でふいに、強い風が吹いた。
冷々とした夜風が目にしみたのだろうか。
のび太の両目から静かに涙が溢れ出し、
ただただ膝をついて、焦点の合わない瞳を、
橙と紺色によるグラデーションに彩られた夜空に向けるだけ。
放送の残響が完全に掻き消え、耳が痛くなるほどの静謐さが訪れる。
時間が止まった世界。
その中でふいに、強い風が吹いた。
冷々とした夜風が目にしみたのだろうか。
のび太の両目から静かに涙が溢れ出し、
「ウソだ……」
流れ始めた涙が、感情の堰を切った。
「ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだあーーーーっ!!」
人目を全く気にすることなく、のび太は空に向かって吼えた。
その行動がどれだけ目立ち、どれだけ危険なのかを理解できていない。
理解できないほどに、のび太は暴走した。
そして、
その行動がどれだけ目立ち、どれだけ危険なのかを理解できていない。
理解できないほどに、のび太は暴走した。
そして、
「信じないぞ! 僕はおまえの言うことなんか信じないからなっ!」
正常な思考能力を奪われたのび太は、愚考に走った。
友達の死を信じたくない、おまえの言ってることは間違いだ。
聞こえ方だけなら、運命に抗い、決意を促す美しい言葉。
だが、否定する根拠も力も伴っていないそれは、
聞き分けのない子供が駄々をこねているのと何ら変わらない。
むしろ、この殺し合いを管理しているジェダのもたらす情報を、
頭から否定することは、そのまま死に直結するかもしれない悪手だ。
友達の死を信じたくない、おまえの言ってることは間違いだ。
聞こえ方だけなら、運命に抗い、決意を促す美しい言葉。
だが、否定する根拠も力も伴っていないそれは、
聞き分けのない子供が駄々をこねているのと何ら変わらない。
むしろ、この殺し合いを管理しているジェダのもたらす情報を、
頭から否定することは、そのまま死に直結するかもしれない悪手だ。
「ジャイアンが死んだりするもんか! そんなわけないだろぉ!」
それでも、のび太は認めようとはしない。
ジェダの言うことを論破する材料は何もないのに、ただ泣き叫ぶ。
惨めで、情けない慟哭が辺りに響き続ける。
負け犬の遠吠えとはよく言ったものだ。
やはり、のび太はダメな子供だった。
幾度も世界を救ってきたはずなのに、ドラえもんがいなければ何も出来ないのだ。
その事実が、ここで無様に露呈する。
のび太の精神がガラガラと音を立てて崩れていく。
ジェダの言うことを論破する材料は何もないのに、ただ泣き叫ぶ。
惨めで、情けない慟哭が辺りに響き続ける。
負け犬の遠吠えとはよく言ったものだ。
やはり、のび太はダメな子供だった。
幾度も世界を救ってきたはずなのに、ドラえもんがいなければ何も出来ないのだ。
その事実が、ここで無様に露呈する。
のび太の精神がガラガラと音を立てて崩れていく。
「っ……死ぬもんか…………死ぬわけないよぉ……ジャイアァン……」
しゃくりあげていた声がどんどん小さくなる。
もう、声を張り上げる力さえ残っていなかった。
薄志弱行。最初から無理だったのだ。
何もできないのび太が、このバトルロワイアルに抗うことなど。
戦う力がない。貫き通す意志もない。
のび太は、全てにおいて無力だったのだから。
もう、声を張り上げる力さえ残っていなかった。
薄志弱行。最初から無理だったのだ。
何もできないのび太が、このバトルロワイアルに抗うことなど。
戦う力がない。貫き通す意志もない。
のび太は、全てにおいて無力だったのだから。
――――否。
違う。無力などではない。
まだ、のび太には信じるものがある。
放てる言葉と守りたい想いが残されている。
だから、突き立てることができる。
夜天に響いた悪魔の声、その向こうに対して。
心の友が生きているという、確かな証を。
まだ、のび太には信じるものがある。
放てる言葉と守りたい想いが残されている。
だから、突き立てることができる。
夜天に響いた悪魔の声、その向こうに対して。
心の友が生きているという、確かな証を。
「だって、僕は見たんだ……」
喉から搾り出す。
「21世紀の未来で、僕はしずかちゃんと結婚していて……」
俯いた顔をゆっくりと上げる。
「スネ夫は貿易会社の社長になって忙しそうに働いていて……」
涙と鼻水でグシャグシャになった顔を、空に向ける。
「ジャイアンは大きなスーパーを経営していて――」
深呼吸。そして、
喉から搾り出す。
「21世紀の未来で、僕はしずかちゃんと結婚していて……」
俯いた顔をゆっくりと上げる。
「スネ夫は貿易会社の社長になって忙しそうに働いていて……」
涙と鼻水でグシャグシャになった顔を、空に向ける。
「ジャイアンは大きなスーパーを経営していて――」
深呼吸。そして、
「――みんな、幸せに暮らしていたんだっ!!!」
天に届かんばかりの怒号を打ち上げた。
その叫びは転機だ。
人が産まれたときにあげる声。産声という名の転機。
その叫びは転機だ。
人が産まれたときにあげる声。産声という名の転機。
「ジェダぁ!! もう一度言うぞお!! 僕はおまえの言うことなんか信じない!!」
言葉が止まらない。
体内から湧き出る叫びは、封じてしまえば身を砕く。
だから、吐き出さずにはいられない。
たとえ、それが愚かな行為であったとしてもだ。
体内から湧き出る叫びは、封じてしまえば身を砕く。
だから、吐き出さずにはいられない。
たとえ、それが愚かな行為であったとしてもだ。
「僕が信じるのはドラえもんが見せてくれた未来だけだ!!
みんな揃って大人になって! 時間が経っても仲が良くて!
たまには一緒にお酒を飲みあって、楽しそうに昔話をしていた――
――そんな未来だけだあっ!!! それ以外認めるもんかあぁっ!!!」
みんな揃って大人になって! 時間が経っても仲が良くて!
たまには一緒にお酒を飲みあって、楽しそうに昔話をしていた――
――そんな未来だけだあっ!!! それ以外認めるもんかあぁっ!!!」
荒い息遣いが、咆哮に取り残される。
叫び終えたのび太は、何キロも走ったあとのように肩で息をした。
のび太が信じたもの。
それはどこの誰とも分からない冥王の、冷徹な宣告などではない。
いつも自分のことを思ってくれた、掛替えのない親友が見せてくれた暖かい未来だ。
あの風景があるのを知っているから、のび太は希望を失わずに済んでいる。
あの未来に辿りつきたいから、のび太は足掻くことができる。
叫び終えたのび太は、何キロも走ったあとのように肩で息をした。
のび太が信じたもの。
それはどこの誰とも分からない冥王の、冷徹な宣告などではない。
いつも自分のことを思ってくれた、掛替えのない親友が見せてくれた暖かい未来だ。
あの風景があるのを知っているから、のび太は希望を失わずに済んでいる。
あの未来に辿りつきたいから、のび太は足掻くことができる。
――けれど。
(……本当は、僕だってわかってるよ……。ジャイアンは、きっともう……)
戻ってこない。
ドラえもんの道具を使っても、死んだ人間を生き返らせることはできない。
仮にできたとしても倫理や法律、色んな事情が許さないだろう。
でも、もしかしたら。
どこかに希望の抜け道があって、ジャイアンを生き返らせられるんじゃないか?
ジェダは極悪な時間犯罪者なのだから、タイムパトロールが何とかしてくれれば、
またジャイアンに逢うことができる、そんな特例が許されるんじゃないか?
そう願わずにはいられなかった。
願い。
戻ってこない。
ドラえもんの道具を使っても、死んだ人間を生き返らせることはできない。
仮にできたとしても倫理や法律、色んな事情が許さないだろう。
でも、もしかしたら。
どこかに希望の抜け道があって、ジャイアンを生き返らせられるんじゃないか?
ジェダは極悪な時間犯罪者なのだから、タイムパトロールが何とかしてくれれば、
またジャイアンに逢うことができる、そんな特例が許されるんじゃないか?
そう願わずにはいられなかった。
願い。
――私は最後まで残った子を救世主として迎え『何でも好きな願いを……
願いといえばこれだ。
ジェダの言うことを信じるなら、やはりこれが一番確実だと思えてしまう。
だけど、
(黙ってよ)
のび太は一瞬で自分の弱い心と、空隙に滑り込むジェダの甘言をまとめて葬り去る。
この島のルールに則って、人を殺してジャイアンを生き返らせるなんて発想は、
既にのび太の中には存在していない。
確かに、のび太は殺し合いの圧力に潰されて、堕ちるところまで堕ちた。
女の子も赤ん坊も、更には子豚までも、本気で手にかけようとした。
あのときのままだったなら。負の方向に歩み続けたままだったなら。
ジャイアンの死によって、のび太は二度と引き返せない畜生道へ進むしかなかっただろう。
だが、のび太は気付けたのだ。
人を殺すことは間違っているということに。
自分が陥れた少女、シャナが死んでしまう直前になって、
のび太は自分の本質、世界だって救ってこれた優しい心を取り戻すことができた。
だから、のび太は揺らがない。
幾多の冒険がのび太に残していった勇気の種が、今ここで芽を吹き、成長を始める。
しかし、その決意は身を裂くほどに悲壮なものだ。
のび太が人を殺さないと心に決めれば決めるほど、
ジェダにジャイアンを蘇生させてもらうことから遠ざかるのだから。
それでも、のび太は人を殺さない。
ジャイアンのことを、大切に思っていないわけじゃない。
人を殺すのが怖いわけでもない。いや、怖いけれど我慢できないわけじゃない。
どんなに勇気を振り絞っても、やっぱり自分の命は大事だ。
襲われたときに、正当防衛で殺してしまうことだってあるかもしれない。
だから、そのくらいの覚悟はできている。
でも、私利私欲を満たすためだけに、人を殺すわけにはいかない。
なぜなら、そうしてしまったら最後――
ジェダの言うことを信じるなら、やはりこれが一番確実だと思えてしまう。
だけど、
(黙ってよ)
のび太は一瞬で自分の弱い心と、空隙に滑り込むジェダの甘言をまとめて葬り去る。
この島のルールに則って、人を殺してジャイアンを生き返らせるなんて発想は、
既にのび太の中には存在していない。
確かに、のび太は殺し合いの圧力に潰されて、堕ちるところまで堕ちた。
女の子も赤ん坊も、更には子豚までも、本気で手にかけようとした。
あのときのままだったなら。負の方向に歩み続けたままだったなら。
ジャイアンの死によって、のび太は二度と引き返せない畜生道へ進むしかなかっただろう。
だが、のび太は気付けたのだ。
人を殺すことは間違っているということに。
自分が陥れた少女、シャナが死んでしまう直前になって、
のび太は自分の本質、世界だって救ってこれた優しい心を取り戻すことができた。
だから、のび太は揺らがない。
幾多の冒険がのび太に残していった勇気の種が、今ここで芽を吹き、成長を始める。
しかし、その決意は身を裂くほどに悲壮なものだ。
のび太が人を殺さないと心に決めれば決めるほど、
ジェダにジャイアンを蘇生させてもらうことから遠ざかるのだから。
それでも、のび太は人を殺さない。
ジャイアンのことを、大切に思っていないわけじゃない。
人を殺すのが怖いわけでもない。いや、怖いけれど我慢できないわけじゃない。
どんなに勇気を振り絞っても、やっぱり自分の命は大事だ。
襲われたときに、正当防衛で殺してしまうことだってあるかもしれない。
だから、そのくらいの覚悟はできている。
でも、私利私欲を満たすためだけに、人を殺すわけにはいかない。
なぜなら、そうしてしまったら最後――
(……きっと、僕は僕じゃなくなっちゃうんだよ。
人を殺して帰れたとしても、知らんぷりすれば誰にも分からないかもしれない。
ドラえもんやみんなに話しても、仕方ないよって赦してもらえるのかもしれない。
でも、ダメなんだ。そんなの僕には耐えられない。
人殺しになっちゃったら、そこからどんなに頑張っても。
たとえジャイアンが生き返ったとしても。
……僕は、あの未来に行けなくなる。
みんなと一緒に、笑っていることができなくなる。
……そんなの、イヤなんだ……)
人を殺して帰れたとしても、知らんぷりすれば誰にも分からないかもしれない。
ドラえもんやみんなに話しても、仕方ないよって赦してもらえるのかもしれない。
でも、ダメなんだ。そんなの僕には耐えられない。
人殺しになっちゃったら、そこからどんなに頑張っても。
たとえジャイアンが生き返ったとしても。
……僕は、あの未来に行けなくなる。
みんなと一緒に、笑っていることができなくなる。
……そんなの、イヤなんだ……)
のび太が人を殺さないのは、自分のため。
自分の心を、守るため。
残酷な言い方をすれば、自分の心と友達の命を秤にかけて、
自分の心のほうに重きを置いたのだ。
ジャイアンにはもう逢えないかもしれないのに。
生き返らせるチャンスは、これっきりかもしれないのに。
のび太はそれを、ふいにしようとしている。
ここにはない不確かな要素が、ジャイアンを助けてくれると祈って。
みんな一緒に、21世紀の未来に辿り付けると願って。
ありもしない奇跡を、それでも信じる。
だから、謝った。
自分の手で助けてあげれらないことを、とにかく謝った。
自分の心を、守るため。
残酷な言い方をすれば、自分の心と友達の命を秤にかけて、
自分の心のほうに重きを置いたのだ。
ジャイアンにはもう逢えないかもしれないのに。
生き返らせるチャンスは、これっきりかもしれないのに。
のび太はそれを、ふいにしようとしている。
ここにはない不確かな要素が、ジャイアンを助けてくれると祈って。
みんな一緒に、21世紀の未来に辿り付けると願って。
ありもしない奇跡を、それでも信じる。
だから、謝った。
自分の手で助けてあげれらないことを、とにかく謝った。
「ごめんよぉ、ジャイアン……。
僕は、……弱虫だから、ッ、……こう、思ってないと……」
僕は、……弱虫だから、ッ、……こう、思ってないと……」
両手を地面につく。
最後の叫声。
最後の叫声。
「もう一歩も! ――――歩けないんだよぉーーーーーーっ!!!
ごめん! ごめんよジャイアーーーーーーン!!!」
ごめん! ごめんよジャイアーーーーーーン!!!」
出来損ないの土下座みたいな体勢で、のび太はわんわんと泣いた。
泣いているあいだにも、夕日が力尽きていき、辺りが闇に包まれていく。
しかし、そんなことはどうだっていい。
たとえ世界が闇に満ちたとしても、光は自分の中にちゃんとある。
だから、今はただ。
泣くための時間と場所さえあれば、それでいい。
泣いているあいだにも、夕日が力尽きていき、辺りが闇に包まれていく。
しかし、そんなことはどうだっていい。
たとえ世界が闇に満ちたとしても、光は自分の中にちゃんとある。
だから、今はただ。
泣くための時間と場所さえあれば、それでいい。
* * *
日が完全に落ちきったころ。
島全体に、夜の帳が完全に掛けられたころ。
暗く、荒涼とした地面に、人影がぽつりと直立している。
島全体に、夜の帳が完全に掛けられたころ。
暗く、荒涼とした地面に、人影がぽつりと直立している。
地面から立ち上がったのび太は、唯一の光源、
太陽に代わって空に浮かんだ、月を眺めていた。
優しく、ぼんやりと光る月だ。
月明かりに照らされたのび太の顔と身体は、ぐちゃぐちゃになっている。
涙、汗、鼻水、唾、血。
パッと思いつく人間の体液、その殆どが一同に会していた。
挙句の果てに、乾いたとはいえズボンには失禁の染みまで残っている。
しかし、それが何だというのか。
月を見やるのび太の瞳は、どこまでも澄み切っている。
覗き込めば、磨礪を重ねた鏡のように像を返せる双眸だ。
眉は逆八の字のように強く吊り上り、引き結んだ口は真一文字。
背筋には決して折れない鉄心が真っ直ぐと。
心臓は力強く拍動し、熱い血液が全身を駆け巡る。
握り締めた拳。地を踏みしめる足。
大丈夫。
身体中にこびりついた、泥と汚水は何の障害にもならない。
太陽に代わって空に浮かんだ、月を眺めていた。
優しく、ぼんやりと光る月だ。
月明かりに照らされたのび太の顔と身体は、ぐちゃぐちゃになっている。
涙、汗、鼻水、唾、血。
パッと思いつく人間の体液、その殆どが一同に会していた。
挙句の果てに、乾いたとはいえズボンには失禁の染みまで残っている。
しかし、それが何だというのか。
月を見やるのび太の瞳は、どこまでも澄み切っている。
覗き込めば、磨礪を重ねた鏡のように像を返せる双眸だ。
眉は逆八の字のように強く吊り上り、引き結んだ口は真一文字。
背筋には決して折れない鉄心が真っ直ぐと。
心臓は力強く拍動し、熱い血液が全身を駆け巡る。
握り締めた拳。地を踏みしめる足。
大丈夫。
身体中にこびりついた、泥と汚水は何の障害にもならない。
「……行こう!」
決意を言葉にして、自分の中に刻み込む。
寸退尺進の意気込みを胸に、一歩一歩、歩みを進め始める。
のび太は生まれ変わった。
でも、それで変えられたものなんて多くはない。
急に力が強くなったわけでも、頭が良くなったわけでも、足が速くなったわけでもない。
今だって、ドラえもんや他の人が助けに来てくれることを願っている。
けれど、その想いは今までとは少し違うもの。
(まずは、自分の足で真っ直ぐと歩こう)
今までは、ドラえもんが来てくれること、誰かがなんとかしてくれることに縋っていた。
自分では何もしようとしないで、ただ他の誰かに寄りかかっていただけだった。
もう、そんなことはしない。
他の人を信頼はする、けれど任せっぱなしにはしない。
心境の変化と共に、心の底に沈んでいた言葉が再浮上する。
寸退尺進の意気込みを胸に、一歩一歩、歩みを進め始める。
のび太は生まれ変わった。
でも、それで変えられたものなんて多くはない。
急に力が強くなったわけでも、頭が良くなったわけでも、足が速くなったわけでもない。
今だって、ドラえもんや他の人が助けに来てくれることを願っている。
けれど、その想いは今までとは少し違うもの。
(まずは、自分の足で真っ直ぐと歩こう)
今までは、ドラえもんが来てくれること、誰かがなんとかしてくれることに縋っていた。
自分では何もしようとしないで、ただ他の誰かに寄りかかっていただけだった。
もう、そんなことはしない。
他の人を信頼はする、けれど任せっぱなしにはしない。
心境の変化と共に、心の底に沈んでいた言葉が再浮上する。
――お前の用事だろう、お前が片付けるんだ。
今なら、グリーンの言葉にしっかりとした意思を返すことだってできる。
(分かったよ、お兄さん。やってみる)
(分かったよ、お兄さん。やってみる)
僕はダメ人間だ。
そんなことは分かっている。
生きていても、何の役にも立たないのかもしれない。
それでも、それを解かった上で前に進むんだ。
半人前以下、“0.5”の僕がやらなければいけないのは、“1”の人の足を引っ張る掛け算なんかじゃない。
“1”の人を助けて“1.5”にする足し算だ。
簡単な計算くらい、僕にだってできる。
この島にいるみんなと力を合わせて、絶対に生きて帰るんだ。
生きて帰って、もう一度確かめるんだ。
いつか見た未来が、消えたりなんかしないってことを。
そんなことは分かっている。
生きていても、何の役にも立たないのかもしれない。
それでも、それを解かった上で前に進むんだ。
半人前以下、“0.5”の僕がやらなければいけないのは、“1”の人の足を引っ張る掛け算なんかじゃない。
“1”の人を助けて“1.5”にする足し算だ。
簡単な計算くらい、僕にだってできる。
この島にいるみんなと力を合わせて、絶対に生きて帰るんだ。
生きて帰って、もう一度確かめるんだ。
いつか見た未来が、消えたりなんかしないってことを。
* * *
アスファルトに埋もれた草は、それでも死ぬことはない。
何も見えない真っ暗な世界にいても、自分が伸びるべき方向は判っている。
伸びる先には黒く、堅い天井。
ちっぽけな草の弱さを嘲笑する、強靭で、重厚な壁。
貧相な草は、必死でその身を壁に叩きつけ、立ち向かう。
葉先がボロボロになっても、芯が折れてしまっても、絶対に止まらない。
何も見えない真っ暗な世界にいても、自分が伸びるべき方向は判っている。
伸びる先には黒く、堅い天井。
ちっぽけな草の弱さを嘲笑する、強靭で、重厚な壁。
貧相な草は、必死でその身を壁に叩きつけ、立ち向かう。
葉先がボロボロになっても、芯が折れてしまっても、絶対に止まらない。
――無理、無駄、無謀だ。愚か者め。
絶望を誘う声が届く。だが、草はその進撃を緩めない。
蔑みたければ、思う存分そうすればいい。
しかし、心して待っていろと忠告しておく。
なぜなら、草は思い出せたのだから。
諦めずに、何度も頭上の掩蓋を突き続ければ、いつか突き破ることができるということを。
アスファルトを断ち割って堂々と生きている、路傍の雑草の存在を思い出せたのだから。
だから、草もまた同じように目指すのだ。
黒い天井を突き抜けたその先。
いつか見た暖かい太陽の光に、再び出会うために。
抜けた先に広がるのが、暗鬱とした曇天だったとしても構わない。
草はただひたすら晴天を信じて、空を目指すだけなのだから。
蔑みたければ、思う存分そうすればいい。
しかし、心して待っていろと忠告しておく。
なぜなら、草は思い出せたのだから。
諦めずに、何度も頭上の掩蓋を突き続ければ、いつか突き破ることができるということを。
アスファルトを断ち割って堂々と生きている、路傍の雑草の存在を思い出せたのだから。
だから、草もまた同じように目指すのだ。
黒い天井を突き抜けたその先。
いつか見た暖かい太陽の光に、再び出会うために。
抜けた先に広がるのが、暗鬱とした曇天だったとしても構わない。
草はただひたすら晴天を信じて、空を目指すだけなのだから。
【B-1/道路/1日目/夜】
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:心身ともに疲労、鼻骨骨折、額に小さな切り傷
[装備]:なし
[道具]:グリーンのランドセル(金属探知チョーク@ドラえもん、基本支給品(水とパンを一つずつ消費)、
アーティファクト『落書帝国』@ネギま!(残ページ無し))、ひまわりのランドセル(基本支給品×1)
[服装]:いつもの黄色いシャツと半ズボン(乾いた失禁の染み付き)
[思考]:暗いよ、怖いよ。でも、行かないと!
第一行動方針:リルルたちを追って、北東の街へ向かってみる。
第二行動方針:最初の子豚≠ジャイアンだと確信するために、ジャイアンを探す。出来るなら、埋めてあげたい。
基本行動方針:もう、他の人を殺そうとしたり嘘をついたりは絶対にしない
[備考]:「子豚=ジャイアン?」の思い込みは、今のところ半信半疑の状態。
[備考]:剛田武の名前が呼ばれた以降の第一回放送を聞いていません。
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:心身ともに疲労、鼻骨骨折、額に小さな切り傷
[装備]:なし
[道具]:グリーンのランドセル(金属探知チョーク@ドラえもん、基本支給品(水とパンを一つずつ消費)、
アーティファクト『落書帝国』@ネギま!(残ページ無し))、ひまわりのランドセル(基本支給品×1)
[服装]:いつもの黄色いシャツと半ズボン(乾いた失禁の染み付き)
[思考]:暗いよ、怖いよ。でも、行かないと!
第一行動方針:リルルたちを追って、北東の街へ向かってみる。
第二行動方針:最初の子豚≠ジャイアンだと確信するために、ジャイアンを探す。出来るなら、埋めてあげたい。
基本行動方針:もう、他の人を殺そうとしたり嘘をついたりは絶対にしない
[備考]:「子豚=ジャイアン?」の思い込みは、今のところ半信半疑の状態。
[備考]:剛田武の名前が呼ばれた以降の第一回放送を聞いていません。
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