迷走(後編) ◆aAwQuafMA2
森の中を走り続けて、どれほど時間が経ったろう。
城から離れなければならない、さっきの子の所に戻らなければならない、ベルカナの所に戻りたい、
誰か知っている人に会いたい、錯綜する気持ちが心を足を迷走させる。
日は照っているのに、さむけを感じる。頭が重く、熱い。発熱しているのだろうか。
胴震いし、立ち止まった。
汗がたくさん流れ、肌を濡らしていた。体中の傷が、熱を伴いずきずきと痛む。
のろのろと歩き出す。立ち止まっていると、やがてはその場にうずくまって動けなくなってしまう、
そんなおそれがあった。
どっちに行けば、さっきの子のところに戻れるのだろう。
木々が高く茂り、少し前までいたはずの城の影すら見えなかった。
森の中で完全に方向を失い、イエローはさまよい歩く。
城から離れなければならない、さっきの子の所に戻らなければならない、ベルカナの所に戻りたい、
誰か知っている人に会いたい、錯綜する気持ちが心を足を迷走させる。
日は照っているのに、さむけを感じる。頭が重く、熱い。発熱しているのだろうか。
胴震いし、立ち止まった。
汗がたくさん流れ、肌を濡らしていた。体中の傷が、熱を伴いずきずきと痛む。
のろのろと歩き出す。立ち止まっていると、やがてはその場にうずくまって動けなくなってしまう、
そんなおそれがあった。
どっちに行けば、さっきの子のところに戻れるのだろう。
木々が高く茂り、少し前までいたはずの城の影すら見えなかった。
森の中で完全に方向を失い、イエローはさまよい歩く。
視界が少し開ける。
そして、逢いたい人を、ようやく見つけた。
そして、逢いたい人を、ようやく見つけた。
死体で。
+++
野放図な金蝿の飛行音が、耳の奥にまとわりつく。
「何、してるの……!」
悲鳴をあげたつもりだったのに、力がはいらなくて、泣き声のようにしかならなかった。
「……!」
背骨の浮く白い背中に桃色の髪を垂らした少女が、はっとして振り向く。
人の少女を模した裸身は、血とその他の体液で汚らしく濡れていた。
「レッドさんに、何、してるの……」
もはや、本人と確認できるものは手にはめられている見覚えのあるグローブしかない姿になったレッドを、
イエローは見るしかない。
悲鳴をあげたつもりだったのに、力がはいらなくて、泣き声のようにしかならなかった。
「……!」
背骨の浮く白い背中に桃色の髪を垂らした少女が、はっとして振り向く。
人の少女を模した裸身は、血とその他の体液で汚らしく濡れていた。
「レッドさんに、何、してるの……」
もはや、本人と確認できるものは手にはめられている見覚えのあるグローブしかない姿になったレッドを、
イエローは見るしかない。
レッドだったものは原型を半ば残したまま、食べ残しの焼き魚のように骨を覗かせ五臓六腑をくつろげて、そこに在る。
頭の上半分を割られ、疎らに頭髪で縁取られた鉢の皿に載せられたほぐれた脳肉がまとめ盛られている。
胴体は縦に切線をいれられ、左右に拡げられて潰れた巨大な海星のような傷口を晒している。
鳥籠のように並んだ肋骨の中に、くすんだ色合いの、とりどりの中身が詰まっているのが見える。
汚いとか、気持ち悪いとは不思議と思わなかった。
ただ、最低なのは、場にたちこめる悪臭だった。
露出した腸から湯気とともに立ち昇る汚物の臭いと血のねばつくようなむっとする臭いが混じり合って、
強烈な臭気が森の澄んだ空気を濁らせていた。
だから蝿が乱れ飛んでいるのだ。
この場に立っているだけで頬や手足に時折大きめの蝿が当たり、むず痒い感覚を残していく。
口の中を危ない唾がせりあがって充たし、嘔吐衝動がつきあげる。
レッドは、イエローの憧れの人であった。なにか数段高い所にいる、特別な存在だった。
その人の死体がこんなにひどい臭いをさせていることが、悲しかった。
頭の上半分を割られ、疎らに頭髪で縁取られた鉢の皿に載せられたほぐれた脳肉がまとめ盛られている。
胴体は縦に切線をいれられ、左右に拡げられて潰れた巨大な海星のような傷口を晒している。
鳥籠のように並んだ肋骨の中に、くすんだ色合いの、とりどりの中身が詰まっているのが見える。
汚いとか、気持ち悪いとは不思議と思わなかった。
ただ、最低なのは、場にたちこめる悪臭だった。
露出した腸から湯気とともに立ち昇る汚物の臭いと血のねばつくようなむっとする臭いが混じり合って、
強烈な臭気が森の澄んだ空気を濁らせていた。
だから蝿が乱れ飛んでいるのだ。
この場に立っているだけで頬や手足に時折大きめの蝿が当たり、むず痒い感覚を残していく。
口の中を危ない唾がせりあがって充たし、嘔吐衝動がつきあげる。
レッドは、イエローの憧れの人であった。なにか数段高い所にいる、特別な存在だった。
その人の死体がこんなにひどい臭いをさせていることが、悲しかった。
血染めのダイレクと共に現れたイエローを見て、リルルは長曾禰虎徹を握ったままつんのめるように体を起こす。
その右手に握られた、レッドの身体を切り刻んだ刀は体液と脂でぬめって曇り、
もはや斬れ味のようなものは残っていないのは一目瞭然だった。
イエローに侍る巨大なダイレクと比べて、損傷を負ったロボット一体と、貧相な刀一本。
状況を判断し、逃げようと慌てて踏み出すリルルを牽制するように、ダイレクが回り込んで退路を塞ぐ。
狼狽し、警戒するリルルに、イエローは幽鬼のような足取りで一歩一歩近づく。
その右手に握られた、レッドの身体を切り刻んだ刀は体液と脂でぬめって曇り、
もはや斬れ味のようなものは残っていないのは一目瞭然だった。
イエローに侍る巨大なダイレクと比べて、損傷を負ったロボット一体と、貧相な刀一本。
状況を判断し、逃げようと慌てて踏み出すリルルを牽制するように、ダイレクが回り込んで退路を塞ぐ。
狼狽し、警戒するリルルに、イエローは幽鬼のような足取りで一歩一歩近づく。
+++
……頭が、ひどく痛む。
前にレッドさんを見たのはいつだろう。
いっしょに話したのはいつだったろう。
ボクは帽子の中身のこと、ちゃんと言ったっけ?
いっしょに話したのはいつだったろう。
ボクは帽子の中身のこと、ちゃんと言ったっけ?
目の前には、レッドがいる。
そこにはもう何の面影もない。ただの解剖途中の死体であった。
なのにそれはレッドだった。
唯一生前の姿を残していた手にはめられているグローブが、それを教えていた。
そこにはもう何の面影もない。ただの解剖途中の死体であった。
なのにそれはレッドだった。
唯一生前の姿を残していた手にはめられているグローブが、それを教えていた。
……頭が、痛い。
イエローの背後には、ダイレクが控えている。
人を殺せる、紛うことなき凶器がすぐ側にある。
目の前には、レッドを命絶えたのちも辱めていた相手がいる。
人を殺せる、紛うことなき凶器がすぐ側にある。
目の前には、レッドを命絶えたのちも辱めていた相手がいる。
レッドより大事な人なんて、イエローにはいなかった。
レッドは、イエローの憧れの人だった。
強くて、優しくて、ポケモン達にも好かれていた。
こんな見知らぬ女の子に、こんな所で、こんな無残に殺されていい人間ではなかった。
レッドは、イエローの憧れの人だった。
強くて、優しくて、ポケモン達にも好かれていた。
こんな見知らぬ女の子に、こんな所で、こんな無残に殺されていい人間ではなかった。
ダイレクは、その分厚い刀身をぶん回して空を切り、リルルに襲い掛かる。
イエローの心に従い、ダイレクの重い刃は少女の細い首をたやすく刈り取る。
イエローの心に従い、ダイレクの重い刃は少女の細い首をたやすく刈り取る。
+++
できるわけがなかった。
ダイレクはイエローの意思をすなおに映して、ただふわふわと浮いて動きもしない。
ダイレクはイエローの意思をすなおに映して、ただふわふわと浮いて動きもしない。
泣きたかった。
激情を行動にできないのは弱さだった。
復讐を行動に移せないのは無力だった。
激情を行動にできないのは弱さだった。
復讐を行動に移せないのは無力だった。
後先を忘れ、激情のおもむくまま、リルルを傷つけてしまえばよかったのである。
勿論、そうしてレッドが生き返るわけはない。やってしまえば虚しさが残るだけだ。
しかし、少なくとも足は動くようになるだろう。心は力を取り戻すだろう。
もう一度手を血に汚してしまえば、「あともどりができない」という意味で、
少なくともイエローの進む道は明確に定まり、もう迷うことも、さまざまな理不尽に苦しむこともなくなるだろう。
しかし、できるわけがなかった。
できるわけがないのがイエローだった。
勿論、そうしてレッドが生き返るわけはない。やってしまえば虚しさが残るだけだ。
しかし、少なくとも足は動くようになるだろう。心は力を取り戻すだろう。
もう一度手を血に汚してしまえば、「あともどりができない」という意味で、
少なくともイエローの進む道は明確に定まり、もう迷うことも、さまざまな理不尽に苦しむこともなくなるだろう。
しかし、できるわけがなかった。
できるわけがないのがイエローだった。
リルルは、イエローが攻撃してくるようすがないのを見て訝しむ。
警戒しながら、そっと声をかけてみる。
「あなた、どうして泣くの?」
「……」
イエローは、悲しみに顔を歪めるでもなく、小さくうつむいてはらはらと涙をこぼし続けている。
リルルはその表情をロボットらしい遠慮のなさで覗きこみ、
人間が何ごとかを閃いた瞬間によくそうする仕草を真似て目をしばたかせた。
リルルはこの表情を見たことがある。
そうだ、確かにメモリーに残っている。
あの、最期の一瞬前の表情。
リルルを殺そうとして、でもできなかった少年の浮かべた、あの表情。
あのとき、サトシは確かこう言った。
警戒しながら、そっと声をかけてみる。
「あなた、どうして泣くの?」
「……」
イエローは、悲しみに顔を歪めるでもなく、小さくうつむいてはらはらと涙をこぼし続けている。
リルルはその表情をロボットらしい遠慮のなさで覗きこみ、
人間が何ごとかを閃いた瞬間によくそうする仕草を真似て目をしばたかせた。
リルルはこの表情を見たことがある。
そうだ、確かにメモリーに残っている。
あの、最期の一瞬前の表情。
リルルを殺そうとして、でもできなかった少年の浮かべた、あの表情。
あのとき、サトシは確かこう言った。
「”こころが、いたくなった”の?」
リルルの言葉に、イエローはうなずいた。
頬を伝う涙を掌でぬぐって、まだ涙を流し続ける。
「どうして、こころがいたくなるの?」
「……しなせるつもりじゃなかったのに……」
「?」
「そんなつもりじゃなかったのに、」
そんなつもりじゃなかった。
そう呟いて涙をこぼしていること、それこそが偽善性だった。
ベルカナを守るため、葵と対峙した時との違いはひとつ。
イエローは、「レッドを殺した」という言葉をリディアから聞かされたとき……
怒りではなく、明確な殺意をリディアに対しておぼえてしまったのだ。
言い訳は、なにより自分自身に対してきかなかった。
こらえきれない嗚咽が漏れた。
自分だって、ワタルと変わらなかったんだ。
自分の勝手な想いを理由に、ダイレクを人殺しの道具に使ってしまった。
リルルの言葉に、イエローはうなずいた。
頬を伝う涙を掌でぬぐって、まだ涙を流し続ける。
「どうして、こころがいたくなるの?」
「……しなせるつもりじゃなかったのに……」
「?」
「そんなつもりじゃなかったのに、」
そんなつもりじゃなかった。
そう呟いて涙をこぼしていること、それこそが偽善性だった。
ベルカナを守るため、葵と対峙した時との違いはひとつ。
イエローは、「レッドを殺した」という言葉をリディアから聞かされたとき……
怒りではなく、明確な殺意をリディアに対しておぼえてしまったのだ。
言い訳は、なにより自分自身に対してきかなかった。
こらえきれない嗚咽が漏れた。
自分だって、ワタルと変わらなかったんだ。
自分の勝手な想いを理由に、ダイレクを人殺しの道具に使ってしまった。
「そんなつもりじゃないのに、誰かを死なせたの」
イエローはうなずいた。
リルルの無機質な口調はどこか怖かったが、感情が込められていない分、すなおに耳を傾けていられた。
「そう」
リルルは、動揺も見せない。
「人って、理屈にあわないことをするんでしょう。そうするつもりじゃないのに、してしまうこと、あるんでしょう。
それで、”こころがいたくなって”、かなしくなったの?」
リルルは、ごくなにげなく、ここに来て学習したことを喋ってみる。
背後の事情はよくわからないので、与えられた情報から文脈を推測して言葉を選んでみた。
そうしたら、よく意味のわからない文章になってしまった。
「……」
イエローは黙りこくる。
リルルは、自分が文脈推測を誤ったのかと首をかしげる。
「……私、なにか間違ったことを言った?」
少し自信なさげに問う。
「……ううん。…………キミの言うことで、あってる」
少し間をおいて、小さな声で答えが返ってきた。
リルルは意思疎通が成功したことに小さなよろこびを覚える。
背後をちらりと見やる。
ぎろりと睨み返されたが、剣はリルルを攻撃してくるそぶりはない。
相手は、どうやらリルルの敵ではないようだった。
それを踏まえて安心し、リルルはさらに深く踏み込んでみる。
「あなたは、どうしてこころがいたくなるの?」
「……人を傷つけるのは、なにがあってもいけないことなんだ……。やっちゃいけないことを、ボクはしたんだ。
……だから、こころが、いたくて……」
イエローの頬を、新たな涙が伝う。
リルルはそれを凝視する。その水滴の奥にある、リルルの知らないものを知ろうとする。
「そうするつもりでなくたって、そうするつもりだったって、誰かを殺すのは、よくないことなんだ。
……ボクは……」
リルルは、核心に踏み込む。
「仲間を大事にするのは人間も同じ。それくらい、私だってわかる。
私が知りたいのは、別のこと。
――――相手がロボットだったとしても、人間は傷つけたり、殺してはいけないと思うの?」
「ロボット……?」
「私はロボットなのよ。人間とちがう生き物なの」
イエローの目の前に、リルルはあえて左手首断面の露出した機械を見せた。
「……あなたは、ロボットを傷つけたり、こわしたりすることにも心が痛むの?」
イエローは、自分のポケモンたちのことを想った。
人間と違う、ふしぎないきものたち。
――首を縦に振っていた。
「あたりまえだよ! どんな相手だって……傷つけるのは、殺すのは、よくないことなんだ!」
殺してしまった少女の姿が蘇る。新たに涙もあふれた。
自身の発した言葉で心を苛み、その痛みに涙を流すことでしか、イエローの壊れそうになった心は癒されない。
だが、次のリルルの言葉で、そんなささやかな自慰にひたっていた心も吹き飛ばされる。
イエローはうなずいた。
リルルの無機質な口調はどこか怖かったが、感情が込められていない分、すなおに耳を傾けていられた。
「そう」
リルルは、動揺も見せない。
「人って、理屈にあわないことをするんでしょう。そうするつもりじゃないのに、してしまうこと、あるんでしょう。
それで、”こころがいたくなって”、かなしくなったの?」
リルルは、ごくなにげなく、ここに来て学習したことを喋ってみる。
背後の事情はよくわからないので、与えられた情報から文脈を推測して言葉を選んでみた。
そうしたら、よく意味のわからない文章になってしまった。
「……」
イエローは黙りこくる。
リルルは、自分が文脈推測を誤ったのかと首をかしげる。
「……私、なにか間違ったことを言った?」
少し自信なさげに問う。
「……ううん。…………キミの言うことで、あってる」
少し間をおいて、小さな声で答えが返ってきた。
リルルは意思疎通が成功したことに小さなよろこびを覚える。
背後をちらりと見やる。
ぎろりと睨み返されたが、剣はリルルを攻撃してくるそぶりはない。
相手は、どうやらリルルの敵ではないようだった。
それを踏まえて安心し、リルルはさらに深く踏み込んでみる。
「あなたは、どうしてこころがいたくなるの?」
「……人を傷つけるのは、なにがあってもいけないことなんだ……。やっちゃいけないことを、ボクはしたんだ。
……だから、こころが、いたくて……」
イエローの頬を、新たな涙が伝う。
リルルはそれを凝視する。その水滴の奥にある、リルルの知らないものを知ろうとする。
「そうするつもりでなくたって、そうするつもりだったって、誰かを殺すのは、よくないことなんだ。
……ボクは……」
リルルは、核心に踏み込む。
「仲間を大事にするのは人間も同じ。それくらい、私だってわかる。
私が知りたいのは、別のこと。
――――相手がロボットだったとしても、人間は傷つけたり、殺してはいけないと思うの?」
「ロボット……?」
「私はロボットなのよ。人間とちがう生き物なの」
イエローの目の前に、リルルはあえて左手首断面の露出した機械を見せた。
「……あなたは、ロボットを傷つけたり、こわしたりすることにも心が痛むの?」
イエローは、自分のポケモンたちのことを想った。
人間と違う、ふしぎないきものたち。
――首を縦に振っていた。
「あたりまえだよ! どんな相手だって……傷つけるのは、殺すのは、よくないことなんだ!」
殺してしまった少女の姿が蘇る。新たに涙もあふれた。
自身の発した言葉で心を苛み、その痛みに涙を流すことでしか、イエローの壊れそうになった心は癒されない。
だが、次のリルルの言葉で、そんなささやかな自慰にひたっていた心も吹き飛ばされる。
「どうして、殺すのがよくないことなの?」
あまりにも当たり前のことを聞かれ、慟哭も忘れてイエローは絶句する。
「わたし、ここに来てひとり死なせたわ。あなたと同じで、そうするつもりでないのに、こわしてしまった。
でも、なにかそれだといけないことがあったかしら? わたし、同胞のロボットをこわすのはよくないことだとわかってる。
でも、人間を殺すことがわるいとは思えない」
イエローは涙をぬぐわないまま、リルルを見つめた。
「キミは……悲しいって気持ちがわかるなら、どうして人を傷つけるの?」
「だって、あなたとわたしは違うじゃない。わたしはロボットで、あなたは人間。
ロボットどうしで差別するのはよくないことだけれど、人間とロボットなら差別しなきゃおかしいでしょ?
ロボットは万物の長で、人間はロボットの道具。人間がロボットをこわすのは残虐で野蛮で絶対に許せないことだけど、
ロボットが人間をこわすのは別に悪いことじゃないもの」
イエローの瞳が、思いがけないことばを聞いて動揺したように揺れる。
「……キミには、他の人を思いやる心がないの……?」
リルルの瞳が、思いがけないことばを聞いて動揺したように揺れる。
「……他人を、思いやるこころ……?」
あまりにも当たり前のことを聞かれ、慟哭も忘れてイエローは絶句する。
「わたし、ここに来てひとり死なせたわ。あなたと同じで、そうするつもりでないのに、こわしてしまった。
でも、なにかそれだといけないことがあったかしら? わたし、同胞のロボットをこわすのはよくないことだとわかってる。
でも、人間を殺すことがわるいとは思えない」
イエローは涙をぬぐわないまま、リルルを見つめた。
「キミは……悲しいって気持ちがわかるなら、どうして人を傷つけるの?」
「だって、あなたとわたしは違うじゃない。わたしはロボットで、あなたは人間。
ロボットどうしで差別するのはよくないことだけれど、人間とロボットなら差別しなきゃおかしいでしょ?
ロボットは万物の長で、人間はロボットの道具。人間がロボットをこわすのは残虐で野蛮で絶対に許せないことだけど、
ロボットが人間をこわすのは別に悪いことじゃないもの」
イエローの瞳が、思いがけないことばを聞いて動揺したように揺れる。
「……キミには、他の人を思いやる心がないの……?」
リルルの瞳が、思いがけないことばを聞いて動揺したように揺れる。
「……他人を、思いやるこころ……?」
イエローは、足元に『広がる』レッドを見おろした。
「……キミやボクが悲しいと思ったり、痛いと思ったりするのと同じように、
他の人も痛いと思ったり、悲しいって思ったりするんだ。だから、誰かを傷つけたり、悲しませちゃいけないんだよ……」
リルルは無言でイエローの言葉に耳を傾ける。
イエローと対話しながらリルルは外面的には無表情だったが、その内部ではめまぐるしい情報の処理が行われていた。
「人間でも、ポケモンでも、ロボットでも……きっと誰にだって、その人を大切に思うひとがいるんだ。
もし、怪我をして痛い思いをしてたら心配するし……死んでしまったら、すごく悲しい……」
リルルはイエローをまねて、解体途中の傍らの死体を横目で見遣る。
「これは、あなたの大切なひとだったの?」
指差すリルルに、イエローは大きくうなずいた。
「レッドさんは、ボクの、大事な人だったんだ。なのに……なのに、なんで……なんで、こんなことするの……」
頭がぐちゃぐちゃして、言葉もぐちゃぐちゃになる。
悲しいのか、怒りたいのか、謝りたいのか、自分でも選べないまま、イエローは胸にふつふつと浮いてくる
感情の迸りをそのまま言葉にして出だす。
リルルは再び背後のダイレクに警戒しながらも、イエローに逆に問いかける。
「どうして? 痛みを感じるわけでもないでしょう? こわれてしまったら、それはただのモノだわ。
それは、ロボットも人間も同じじゃない。こわれたあとのモノは解体され、分析されて、データを残し、誰かの役に立つモノよ。
自分がこわれてしまった後でも誰かの役にたてること、いいことでしょう? どうして人間はいやがるの?」
「……死んじゃったら、人もなにもかも、モノと変わらないのかもしれないってのは、ボクだってわからなくないよ……。
でも、レッドさんは、死んじゃって、もうモノでしかなかったとしても……ボクにとっては、大事なモノなんだ。
傷つけられるのは嫌なんだ」
リルルは、あらためてレッドを見た。
外も中身も確かめてみたけれど、やはりそれは人間でしかなかった。リルルが奴隷と思っている種であった。
ただ、もしこれがロボットの同胞であったら、やはり悲しいと思ったりするのかしら、と漠然と頭の中でシミュレートしてみた。
…………リルルの望む結果は出なかった。
「……私には、わからないわ。人間がわからない」
「……キミやボクが悲しいと思ったり、痛いと思ったりするのと同じように、
他の人も痛いと思ったり、悲しいって思ったりするんだ。だから、誰かを傷つけたり、悲しませちゃいけないんだよ……」
リルルは無言でイエローの言葉に耳を傾ける。
イエローと対話しながらリルルは外面的には無表情だったが、その内部ではめまぐるしい情報の処理が行われていた。
「人間でも、ポケモンでも、ロボットでも……きっと誰にだって、その人を大切に思うひとがいるんだ。
もし、怪我をして痛い思いをしてたら心配するし……死んでしまったら、すごく悲しい……」
リルルはイエローをまねて、解体途中の傍らの死体を横目で見遣る。
「これは、あなたの大切なひとだったの?」
指差すリルルに、イエローは大きくうなずいた。
「レッドさんは、ボクの、大事な人だったんだ。なのに……なのに、なんで……なんで、こんなことするの……」
頭がぐちゃぐちゃして、言葉もぐちゃぐちゃになる。
悲しいのか、怒りたいのか、謝りたいのか、自分でも選べないまま、イエローは胸にふつふつと浮いてくる
感情の迸りをそのまま言葉にして出だす。
リルルは再び背後のダイレクに警戒しながらも、イエローに逆に問いかける。
「どうして? 痛みを感じるわけでもないでしょう? こわれてしまったら、それはただのモノだわ。
それは、ロボットも人間も同じじゃない。こわれたあとのモノは解体され、分析されて、データを残し、誰かの役に立つモノよ。
自分がこわれてしまった後でも誰かの役にたてること、いいことでしょう? どうして人間はいやがるの?」
「……死んじゃったら、人もなにもかも、モノと変わらないのかもしれないってのは、ボクだってわからなくないよ……。
でも、レッドさんは、死んじゃって、もうモノでしかなかったとしても……ボクにとっては、大事なモノなんだ。
傷つけられるのは嫌なんだ」
リルルは、あらためてレッドを見た。
外も中身も確かめてみたけれど、やはりそれは人間でしかなかった。リルルが奴隷と思っている種であった。
ただ、もしこれがロボットの同胞であったら、やはり悲しいと思ったりするのかしら、と漠然と頭の中でシミュレートしてみた。
…………リルルの望む結果は出なかった。
「……私には、わからないわ。人間がわからない」
「そう。……ボクも、ポケモンのことはよくわかるけどロボットのことはよくわからない。
でも、知ろうとすることはできる」
イエローは、手を伸ばしリルルの左腕をとった。
「! さわらないで……」
リルルはおののいて退こうとするが、背後にダイレクがゆらめているのを思い出し踏みとどまる。
右手には未だ長曾禰虎徹がある。何かおかしなことをしたら、即座に切りつけるつもりであった。
だが、かけられたのは思わぬやさしげな言葉だった。
「痛くない?」
リルルは戸惑いを浮かべながら応える。
「……いたいわ」
リルルの痛々しくちぎれた手首に手をかざしてみながら、イエローは表情をくもらせる。
「ボクの力は……効かないみたい」
「……なにしてるの」
「え? ……ケガしてるから、手当てを……」
「そうじゃないわ。――どうして、あなたがわたしのケガを心配する必要があるの?」
「それは、……だって……」
イエローは言いよどむ。
いつもなら簡単に答えられることなのに、この状況を思うと、なぜかうまく言葉が出てこなかった。
「……そんなの、ボクにもよくわからないよ」
イエローは手を止めない。
身にまとったシーツの布を引き裂き、傷口を保護するように何重にも巻きつけ、端を結ぶ。
リルルは、イエローを見据える。動揺隠しの露骨な軽蔑さえ滲ませて、言う。
「――私、あなたの大事な人を勝手にいじくってこんなふうにしてしまったんでしょう。
あなたおかしいわよ。
もし、私があなたで、あなたが私で、こわれた体を冒涜されたのがメカトピアの同胞だったら、絶対にあなたを許さないわ」
でも、知ろうとすることはできる」
イエローは、手を伸ばしリルルの左腕をとった。
「! さわらないで……」
リルルはおののいて退こうとするが、背後にダイレクがゆらめているのを思い出し踏みとどまる。
右手には未だ長曾禰虎徹がある。何かおかしなことをしたら、即座に切りつけるつもりであった。
だが、かけられたのは思わぬやさしげな言葉だった。
「痛くない?」
リルルは戸惑いを浮かべながら応える。
「……いたいわ」
リルルの痛々しくちぎれた手首に手をかざしてみながら、イエローは表情をくもらせる。
「ボクの力は……効かないみたい」
「……なにしてるの」
「え? ……ケガしてるから、手当てを……」
「そうじゃないわ。――どうして、あなたがわたしのケガを心配する必要があるの?」
「それは、……だって……」
イエローは言いよどむ。
いつもなら簡単に答えられることなのに、この状況を思うと、なぜかうまく言葉が出てこなかった。
「……そんなの、ボクにもよくわからないよ」
イエローは手を止めない。
身にまとったシーツの布を引き裂き、傷口を保護するように何重にも巻きつけ、端を結ぶ。
リルルは、イエローを見据える。動揺隠しの露骨な軽蔑さえ滲ませて、言う。
「――私、あなたの大事な人を勝手にいじくってこんなふうにしてしまったんでしょう。
あなたおかしいわよ。
もし、私があなたで、あなたが私で、こわれた体を冒涜されたのがメカトピアの同胞だったら、絶対にあなたを許さないわ」
動揺したようにイエローの肩が震える。
ここは激昂し、リルルを傷つけようとするのがいちばん正しい反応だとリルルは思う。
なのに、サトシも、目の前の少女も、リルルを殺せなかった。殺そうとはしなかった。
人間はおかしい。
なぜ、自分や自分の大切な同胞が傷つけられたというのに、ヒトはその敵を傷つけるのを拒むのか。
なのに、サトシも、目の前の少女も、リルルを殺せなかった。殺そうとはしなかった。
人間はおかしい。
なぜ、自分や自分の大切な同胞が傷つけられたというのに、ヒトはその敵を傷つけるのを拒むのか。
だが、それでも布を巻いたリルルの左手首を両手で包んだまま、イエローはぽつりとつぶやく。
「…………レッドさんも、きっと痛かったと思うから」
「どういう意味? それがどうして私を心配する理由になるの」
「……だって、キミも同じように痛いんだって思ったら、こうせずにはいられないんだ。
おかしいかもしれないけど、自分でもよくわからないけど、誰かが傷つくのは、なんだって嫌だから……」
リルルの左手首の断面に巻かれた布に、ぽたりとしずくが落ちる。
「理屈にあわないわ……」
こんな時どんな顔をすべきなのか、どんな振る舞いをすべきなのかわからなくて、自分でも困ったように
リルルはイエローに握られた左手を引こうとする。
「理屈じゃないよ。……誰かが死ぬのは、誰だって、悲しいよ……」
きっとあの女の子も、家族や仲間とか、誰かにだいじに思われていただろう。
そのことを思うと、イエローはつらい。
声をあげて泣き伏したくなる。
できるならずっと悲しみと悔悟の情に服していたい。
丈の遺志とか、ベルカナの信頼とか、何もかもを打ち棄って、涙が涸れるまで、悲しみが薄れるまで、
気が済むまでずっとずっと泣いていたい。
(でも、きっと、そんなことゆるされないから)
立ち止まって泣き続けるなんて不謹慎だ。
悲しくてもう何もしたくないなんて言語道断だ。
「…………レッドさんも、きっと痛かったと思うから」
「どういう意味? それがどうして私を心配する理由になるの」
「……だって、キミも同じように痛いんだって思ったら、こうせずにはいられないんだ。
おかしいかもしれないけど、自分でもよくわからないけど、誰かが傷つくのは、なんだって嫌だから……」
リルルの左手首の断面に巻かれた布に、ぽたりとしずくが落ちる。
「理屈にあわないわ……」
こんな時どんな顔をすべきなのか、どんな振る舞いをすべきなのかわからなくて、自分でも困ったように
リルルはイエローに握られた左手を引こうとする。
「理屈じゃないよ。……誰かが死ぬのは、誰だって、悲しいよ……」
きっとあの女の子も、家族や仲間とか、誰かにだいじに思われていただろう。
そのことを思うと、イエローはつらい。
声をあげて泣き伏したくなる。
できるならずっと悲しみと悔悟の情に服していたい。
丈の遺志とか、ベルカナの信頼とか、何もかもを打ち棄って、涙が涸れるまで、悲しみが薄れるまで、
気が済むまでずっとずっと泣いていたい。
(でも、きっと、そんなことゆるされないから)
立ち止まって泣き続けるなんて不謹慎だ。
悲しくてもう何もしたくないなんて言語道断だ。
悲しみに淫することはたやすい。
しかし、イエローにはすべきことがあった。携えた首輪の重みがあった。
泣いて、自暴自棄になって、立ち止まっている暇はなかった。
しかし、イエローにはすべきことがあった。携えた首輪の重みがあった。
泣いて、自暴自棄になって、立ち止まっている暇はなかった。
++
(……相手を思いやるこころ。
それは、そんなに大事なものなの?
こころって、何かしら。
それは、人間にはあって、ロボットにはないものなのかしら)
それは、そんなに大事なものなの?
こころって、何かしら。
それは、人間にはあって、ロボットにはないものなのかしら)
リルルは、やはり人間がわからない。
しかし、今のリルルは、それに強く興味を持つ。わからないことを、知りたいと思う。
この場に放り込まれてから、いや、もっと前――使命のために地球に赴き、のび太という少年と触れてから、
あきらかにリルルは変化していた。
ロボットの論理が支配する社会から隔離され、自分ひとりで考え情報を取捨選択し動かねばならないという状況下におかれて、
リルルは少しずつ自分の頭で考えるようになっていた。
それは、リルルの存在理由を考えると非常に危険な兆候である。
ふつうのロボットは人間を知りたがりはしない。ただ、使おうとするだけだ。それが奴隷と主人の正常で健康的な関係である。
だが、いまのリルルはあきらかに逸脱していた。人間を「知りたい」と思っているのである。
しかし、今のリルルは、それに強く興味を持つ。わからないことを、知りたいと思う。
この場に放り込まれてから、いや、もっと前――使命のために地球に赴き、のび太という少年と触れてから、
あきらかにリルルは変化していた。
ロボットの論理が支配する社会から隔離され、自分ひとりで考え情報を取捨選択し動かねばならないという状況下におかれて、
リルルは少しずつ自分の頭で考えるようになっていた。
それは、リルルの存在理由を考えると非常に危険な兆候である。
ふつうのロボットは人間を知りたがりはしない。ただ、使おうとするだけだ。それが奴隷と主人の正常で健康的な関係である。
だが、いまのリルルはあきらかに逸脱していた。人間を「知りたい」と思っているのである。
ダイレクが地面を掘り返している横で、イエローはレッドの死骸の残骸を掻き集めて拾っていた。
その途中でレッドのグローブに目を留め、冷たくなった手からそっと抜き取って懐におし抱く。
ここから、絶対に生きて帰ろう。
せめてこの形見とともに、一緒にマサラに帰ろう。
「……?」
頭上に影を感じ、振り仰ぐとリルルがのぞきこんでいた。
「……手伝うわ」
「……どうして?」
戸惑いを見せるイエローに、隣にしゃがみこみながら無表情に答える。
「そんなの、私にもわからないわ」
その途中でレッドのグローブに目を留め、冷たくなった手からそっと抜き取って懐におし抱く。
ここから、絶対に生きて帰ろう。
せめてこの形見とともに、一緒にマサラに帰ろう。
「……?」
頭上に影を感じ、振り仰ぐとリルルがのぞきこんでいた。
「……手伝うわ」
「……どうして?」
戸惑いを見せるイエローに、隣にしゃがみこみながら無表情に答える。
「そんなの、私にもわからないわ」
イエローとリルルは、二人でレッドの死体の残骸を埋葬した。
【D-3/森/1日目/真昼】
【イエロー・デ・トキワグローブ@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:全身に擦り傷と打撲(行動にやや支障)、シーツ一枚きりを纏ったほとんど半裸姿、深い悲しみ、精神不安定
[装備]:魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー、レッドのグローブ、おみやげのコイン@MOTHER2
[道具]:シルフェのフード@ベルセルク、スケッチブック、基本支給品、首輪@城戸丈、リルルの服
[思考]:…………。
第一行動方針:レッドを埋葬したあと、リディアを埋葬しにさっきの場所に戻る
第二行動方針:グリーンやブルーと合流し、このゲームを破る方法を考える
第三行動方針:丈の友人と合流し伝言を伝え、協力を仰ぐ
第四行動方針:丈の首輪を調べる。または調べる事の出来る人間を探す。
基本行動方針:絶対にゲームに乗らない。生きてマサラに帰る。
参戦時期:2章終了時点(四天王との最終決戦後。まだレッドに自分の正体を明かしていない)
[備考]:魔剣ダイレクのソードエレメンタル系は魔力を必要とするため使用不可
[状態]:全身に擦り傷と打撲(行動にやや支障)、シーツ一枚きりを纏ったほとんど半裸姿、深い悲しみ、精神不安定
[装備]:魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー、レッドのグローブ、おみやげのコイン@MOTHER2
[道具]:シルフェのフード@ベルセルク、スケッチブック、基本支給品、首輪@城戸丈、リルルの服
[思考]:…………。
第一行動方針:レッドを埋葬したあと、リディアを埋葬しにさっきの場所に戻る
第二行動方針:グリーンやブルーと合流し、このゲームを破る方法を考える
第三行動方針:丈の友人と合流し伝言を伝え、協力を仰ぐ
第四行動方針:丈の首輪を調べる。または調べる事の出来る人間を探す。
基本行動方針:絶対にゲームに乗らない。生きてマサラに帰る。
参戦時期:2章終了時点(四天王との最終決戦後。まだレッドに自分の正体を明かしていない)
[備考]:魔剣ダイレクのソードエレメンタル系は魔力を必要とするため使用不可
【リルル@ドラえもん】
[状態]:左手溶解、故障有(一応動くが、やや支障あり)、体にレッドの体液が付着、人間への強い興味
[装備]:長曾禰虎徹@るろうに剣心
(※レッドの体液でべっとりと汚れ、切れ味がほとんどなくなっている)
[道具]:基本支給品×2、命の水(アクア・ウイタエ)一人分@からくりサーカス
さくらの杖@カードキャプターさくら、クロウカード(花、灯、跳)@カードキャプターさくら
[服装]:シーツを体に巻いて要所を隠し、左手にはシーツ裂を巻いて露出した機械部分を隠している
[思考]:なんでこんなことしてるのかしら?
第一行動方針:とりあえず、イエローを手伝う。
第二行動方針:ネスを追い、その記憶を消去する。一人では敵わないので、協力者が欲しい
第三行動方針:強い参加者のいる可能性を考え、より慎重に行動する。
第四行動方針:兵団との連絡手段を探す
第五行動方針:自分に危害を加えるおそれのある「ロボット以外の参加者」には容赦しない
第六行動方針:のび太を見つけたら、一緒に行動する(利用する)
基本行動方針:このゲームを脱出し(手段は問わない)、人間についてのデータを集めて帰還する
参戦時期:映画「のび太と鉄人兵団」:中盤
(しずかに匿われ、手当てを受ける前。次元震に巻き込まれた直後からの参戦)
[状態]:左手溶解、故障有(一応動くが、やや支障あり)、体にレッドの体液が付着、人間への強い興味
[装備]:長曾禰虎徹@るろうに剣心
(※レッドの体液でべっとりと汚れ、切れ味がほとんどなくなっている)
[道具]:基本支給品×2、命の水(アクア・ウイタエ)一人分@からくりサーカス
さくらの杖@カードキャプターさくら、クロウカード(花、灯、跳)@カードキャプターさくら
[服装]:シーツを体に巻いて要所を隠し、左手にはシーツ裂を巻いて露出した機械部分を隠している
[思考]:なんでこんなことしてるのかしら?
第一行動方針:とりあえず、イエローを手伝う。
第二行動方針:ネスを追い、その記憶を消去する。一人では敵わないので、協力者が欲しい
第三行動方針:強い参加者のいる可能性を考え、より慎重に行動する。
第四行動方針:兵団との連絡手段を探す
第五行動方針:自分に危害を加えるおそれのある「ロボット以外の参加者」には容赦しない
第六行動方針:のび太を見つけたら、一緒に行動する(利用する)
基本行動方針:このゲームを脱出し(手段は問わない)、人間についてのデータを集めて帰還する
参戦時期:映画「のび太と鉄人兵団」:中盤
(しずかに匿われ、手当てを受ける前。次元震に巻き込まれた直後からの参戦)
+++
茂みの影で、ククリは一部始終を聞いていた。
逃げようかとも思ったのだが、できずにククリは茂みの影で息を殺していた。
目を覚ましたら、なぜだか涙が出てとまらなくて、視界がほとんどきかなくなっていた。
ここがさっきと全然違う場所ということしかわからないうえ、目がよく見えないのにひとりであてずっぽうに逃げ出す勇気はなかった。
向こうから土を掘る音が聞こえる。
やっぱり、いまのうちに逃げるべきなんだろうか。
でも、聞こえてきた会話の限りだと、あの女の子がただの怖い悪人じゃないのかもしれないという思いが沸いてきて、ククリを悩ませる。
自分はどうするべきなのだろう?
迷って、ククリは空を仰ぐ。
(勇者さま……、いま、どこにいるの……?)
逃げようかとも思ったのだが、できずにククリは茂みの影で息を殺していた。
目を覚ましたら、なぜだか涙が出てとまらなくて、視界がほとんどきかなくなっていた。
ここがさっきと全然違う場所ということしかわからないうえ、目がよく見えないのにひとりであてずっぽうに逃げ出す勇気はなかった。
向こうから土を掘る音が聞こえる。
やっぱり、いまのうちに逃げるべきなんだろうか。
でも、聞こえてきた会話の限りだと、あの女の子がただの怖い悪人じゃないのかもしれないという思いが沸いてきて、ククリを悩ませる。
自分はどうするべきなのだろう?
迷って、ククリは空を仰ぐ。
(勇者さま……、いま、どこにいるの……?)
【D-3/森/1日目/真昼】
【ククリ@魔法陣グルグル】
[状態]:「なみだ」(魔力消費と電撃のダメージは、休息(少なくとも二時間以上)により、ほぼ回復)
[装備]:ベホイミの杖@ぱにぽに
[道具]:基本支給品、インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、目覚まし時計@せんせいのお時間
[服装]:ファンタジーに普通のローブ姿?
[思考]:どうしよう……
第一行動方針:逃げようか逃げまいか迷っている
第二行動方針:できれば、間に合わなくてもゴンくんとフランドールちゃんの所に……
第三行動方針:勇者さまとジュジュちゃんとトマくんを探す。
基本行動方針:勇者さまと合流してジェダを倒す
[備考]:ゴンに対する誤解は解けた。ゴンとフランドールの戦いを自分のせいだと思っている。
[備考]:気絶したまま運ばれていたことにより、地図上の現在位置を知らない(森の中、ということしかわからない)。また、ネスを見ていない。
【ククリ@魔法陣グルグル】
[状態]:「なみだ」(魔力消費と電撃のダメージは、休息(少なくとも二時間以上)により、ほぼ回復)
[装備]:ベホイミの杖@ぱにぽに
[道具]:基本支給品、インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、目覚まし時計@せんせいのお時間
[服装]:ファンタジーに普通のローブ姿?
[思考]:どうしよう……
第一行動方針:逃げようか逃げまいか迷っている
第二行動方針:できれば、間に合わなくてもゴンくんとフランドールちゃんの所に……
第三行動方針:勇者さまとジュジュちゃんとトマくんを探す。
基本行動方針:勇者さまと合流してジェダを倒す
[備考]:ゴンに対する誤解は解けた。ゴンとフランドールの戦いを自分のせいだと思っている。
[備考]:気絶したまま運ばれていたことにより、地図上の現在位置を知らない(森の中、ということしかわからない)。また、ネスを見ていない。
+++
ネスは額に脂汗を浮かべ、リディアの傷口にかがんで必死に精神力を集中していた。
「しっかりして!」
全力でライフアップを使っているはずなのに、これしか回復しないなんてへんだ。
「死にたくない……」
苦しげな息の下から、緑髪の女の子がかぼそい声をつむぐ。
「死なせないよ。死なないはずなんだ!」
目の前がクラクラし、手足が氷のように冷たく感じる。PPが底をつきかけている。
冷静に考えれば、どうみても助からない子に精神力をつぎこんでしまうのはやめるべきだったが、
ネスは意固地になってPSIを使い続けていた。
ネスを急き立て意地にさせるのは、いまや人命救助の使命感より、自分のPSIに寄せていた信頼が崩されそうな恐怖であった。
自分には、この子を助けてあげられるチカラがあるはずなのに!!
殺し合いの遊戯に、癒す力の存在など無粋である。
誰かの嘲笑が、脳裏に浮かんだ。
「しっかりして!」
全力でライフアップを使っているはずなのに、これしか回復しないなんてへんだ。
「死にたくない……」
苦しげな息の下から、緑髪の女の子がかぼそい声をつむぐ。
「死なせないよ。死なないはずなんだ!」
目の前がクラクラし、手足が氷のように冷たく感じる。PPが底をつきかけている。
冷静に考えれば、どうみても助からない子に精神力をつぎこんでしまうのはやめるべきだったが、
ネスは意固地になってPSIを使い続けていた。
ネスを急き立て意地にさせるのは、いまや人命救助の使命感より、自分のPSIに寄せていた信頼が崩されそうな恐怖であった。
自分には、この子を助けてあげられるチカラがあるはずなのに!!
殺し合いの遊戯に、癒す力の存在など無粋である。
誰かの嘲笑が、脳裏に浮かんだ。
リディアの一度開きかけた目は、また閉じてゆこうとしている。
ネスの相貌が絶望に彩られてゆくのをみて、リディアは目をそらした。
「もう、いいよ……」
諦めきったそのつぶやきに、ネスがくやしそうに項垂れる。
「…………ごめん」
「……いいの。あんまり痛くなくなったから、…………ありがとう」
リディアは、眠たげに目をしばたく。
目を開けているのが、だんだんつらくなる。
起きられなくなる前に、言わなくちゃならないことを言うために、リディアは動かしにくい口をがんばって動かす。
「…………ありが、とう。
もっと、はやく、あなたと会えてたら、よかった。
……レッドも、もっとはやく、あな、たとあえてたら……」
リディアの表情が、やさしくなる。
避けられぬ死を知り、色んなことを捨てた――解放された表情だった。
それはとてもかなしい顔で、ネスは胸を衝かれた。
「さいしょから、さんにん、あえたら……こんなふうにならなかったかもしれな、のに、
…………どうして、……こふ、…………こう、なっちゃったのかな」
ネスの相貌が絶望に彩られてゆくのをみて、リディアは目をそらした。
「もう、いいよ……」
諦めきったそのつぶやきに、ネスがくやしそうに項垂れる。
「…………ごめん」
「……いいの。あんまり痛くなくなったから、…………ありがとう」
リディアは、眠たげに目をしばたく。
目を開けているのが、だんだんつらくなる。
起きられなくなる前に、言わなくちゃならないことを言うために、リディアは動かしにくい口をがんばって動かす。
「…………ありが、とう。
もっと、はやく、あなたと会えてたら、よかった。
……レッドも、もっとはやく、あな、たとあえてたら……」
リディアの表情が、やさしくなる。
避けられぬ死を知り、色んなことを捨てた――解放された表情だった。
それはとてもかなしい顔で、ネスは胸を衝かれた。
「さいしょから、さんにん、あえたら……こんなふうにならなかったかもしれな、のに、
…………どうして、……こふ、…………こう、なっちゃったのかな」
「どうしてこうなっちゃったのかな?」
それは、この場に召喚された子供たちのほとんどが胸に抱かずにはいられないであろう想いであった。
ネスは唇をかみしめる。
それは、この場に召喚された子供たちのほとんどが胸に抱かずにはいられないであろう想いであった。
ネスは唇をかみしめる。
「……白い女の子……」
「え?」
「あたしの大事なひとのカタキ……。おねがい、やっつけて……」
「…………」
「え?」
「あたしの大事なひとのカタキ……。おねがい、やっつけて……」
「…………」
リディアの薄く開かれた目は、もう、現世を見ていなかった。
頬が笑顔のかたちに弛み、うすく涙が伝う。ネスの手に触れたそのしずくは、まだ温かった。
リディアは向こう岸の人に向けて、手を伸ばそうとする。
頬が笑顔のかたちに弛み、うすく涙が伝う。ネスの手に触れたそのしずくは、まだ温かった。
リディアは向こう岸の人に向けて、手を伸ばそうとする。
「……おかあさん……」
【E-3/城の外堀を臨む平地/1日目/真昼】
【ネス@MOTHER2】
[状態]:走り続けてやや疲労/PP消耗(大) 、顔に軽い火傷、ホームシックにかかりそう
[装備]:立て札(こ ろす)@一休さん、ウサギずきん@ゼルダの伝説 時のオカリナ
[道具]:ひろしの靴&靴下(各一足)@クレヨンしんちゃん、基本支給品
[服装]:普通の現代服
[思考]:…………。
第一行動方針:リディアの仇(白い女の子)を討つ?
第二行動方針:PPを回復する
第三行動方針:リルルを追う
第四行動方針:役立つものを探す
基本行動方針:ゲームに乗らない
[備考]:「ヒーリング」の威力が大幅に落とされているのを認識しました。
【ネス@MOTHER2】
[状態]:走り続けてやや疲労/PP消耗(大) 、顔に軽い火傷、ホームシックにかかりそう
[装備]:立て札(こ ろす)@一休さん、ウサギずきん@ゼルダの伝説 時のオカリナ
[道具]:ひろしの靴&靴下(各一足)@クレヨンしんちゃん、基本支給品
[服装]:普通の現代服
[思考]:…………。
第一行動方針:リディアの仇(白い女の子)を討つ?
第二行動方針:PPを回復する
第三行動方針:リルルを追う
第四行動方針:役立つものを探す
基本行動方針:ゲームに乗らない
[備考]:「ヒーリング」の威力が大幅に落とされているのを認識しました。
[備考]:リディアの側に、イエローの麦わら帽子が落ちています。
[備考]:US M1918 “BAR”@ブラックラグーン(残弾数0/20)がD-2の森の中に放置されています。リルルが力任せに地面に叩きつけたため、故障が生じている可能性もあります。
[備考]:US M1918 “BAR”@ブラックラグーン(残弾数0/20)がD-2の森の中に放置されています。リルルが力任せに地面に叩きつけたため、故障が生じている可能性もあります。
【リディア@FFⅣ 死亡】
≪117:ひとごろし(前編) | 時系列順に読む | 120:これが僕なりの戦い方――泉光子郎の場合≫ |
≪117:ひとごろし(前編) | 投下順に読む | 119:混沌の学び舎にて(1)≫ |
≪097:エスパー・フィーバー | イエローの登場SSを読む | 134:人はいつでも間違うもの 大切なのはそれからの(前編)≫ |
≪089:おにごっこ | リルルの登場SSを読む | |
ネスの登場SSを読む | ||
ククリの登場SSを読む | ||
≪095:一つの決心 | リディアの登場SSを読む | GAME OVER |