疑問の扉、開く鍵 ◆KGrqH6mOIw
「如何したんですか…………光子郎さん」
少女の質問に泉光子郎は微笑みと共に受け答えた。
「この工場……気になると思いませんか?」
「あ…………でも、君子危うきに近寄らずって……」
フェイト・T・ハラオウン、光子郎と共に行動する魔法少女。
「しかし、ここには何か鍵となるものが隠されているかもしれません。それに、虎穴にいらずんば虎子を得ず――とも」
未知の工場には危険が潜んでいるかもしれない。けれども、だからといってそれを避けるのであれば、何も始まらない。自分から動かなければいけない。光子郎は熱弁した。
「じゃあ…………私、光子郎さんに付いて行きます」
少女の質問に泉光子郎は微笑みと共に受け答えた。
「この工場……気になると思いませんか?」
「あ…………でも、君子危うきに近寄らずって……」
フェイト・T・ハラオウン、光子郎と共に行動する魔法少女。
「しかし、ここには何か鍵となるものが隠されているかもしれません。それに、虎穴にいらずんば虎子を得ず――とも」
未知の工場には危険が潜んでいるかもしれない。けれども、だからといってそれを避けるのであれば、何も始まらない。自分から動かなければいけない。光子郎は熱弁した。
「じゃあ…………私、光子郎さんに付いて行きます」
二人は工場の入り口へと向かった。『ファクトリアルタウン』と書かれた看板が、その入り口の上に掲げられていた。
どんな罠が仕掛けられているか分からない。二人は慎重に足を踏み入れる。ファーストセッション、何も起こらない。ただ、真っ暗だった工場内に灯が点った。
「人体を感知できるセンサー……の様なものがあるみたいですね」
支給された鉛筆と紙で、光子郎は工場の様子をメモしていった。いつもならば、パソコンを使うところだが、そのパソコンが無いため紙に書いている。
「…………何か分かりましたか?」
「いえ……まだ何も。しかし、根本的には前と変わってはいないのかもしれません」
そう言うと光子郎は不可思議な物体を製造する機械を指差した。
どんな罠が仕掛けられているか分からない。二人は慎重に足を踏み入れる。ファーストセッション、何も起こらない。ただ、真っ暗だった工場内に灯が点った。
「人体を感知できるセンサー……の様なものがあるみたいですね」
支給された鉛筆と紙で、光子郎は工場の様子をメモしていった。いつもならば、パソコンを使うところだが、そのパソコンが無いため紙に書いている。
「…………何か分かりましたか?」
「いえ……まだ何も。しかし、根本的には前と変わってはいないのかもしれません」
そう言うと光子郎は不可思議な物体を製造する機械を指差した。
「あれは…………何ですか?」
フェイトの問いに光子郎は黙って歩き始めた。それに呼応して、フェイトも光子郎の後を追う。光子郎の歩く早さは尋常ではなかった。普通の人間だがかなり早い。
「これです。さっき作っていた機械が分解されているのは分かりますね。つまり、この工場は何も作っていないんです。言うなれば、循環を確認する為だけの存在なんです」
難解な言葉にフェイトは少し困惑した。そんな様子を感じ取ったのか、光子郎は再び説明する。
フェイトの問いに光子郎は黙って歩き始めた。それに呼応して、フェイトも光子郎の後を追う。光子郎の歩く早さは尋常ではなかった。普通の人間だがかなり早い。
「これです。さっき作っていた機械が分解されているのは分かりますね。つまり、この工場は何も作っていないんです。言うなれば、循環を確認する為だけの存在なんです」
難解な言葉にフェイトは少し困惑した。そんな様子を感じ取ったのか、光子郎は再び説明する。
「この工場は僕が前にデジタルワールドという所を冒険したときにもあったものです。その時も同じように、こうやって作ったものを分解し、さらにその分解したものを再構築する……と、いうことを延々と続けていました。
しかし、この工場はそれで良かったんです。この工場の目的は、何かを生み出す為でも何かを壊す為でもないんです。この工場の存在意義は、創造と破壊を繰り返すことで循環するエネルギーが、正常かどうかを確認する為だけに存在しているんです」
「あ、その……そのエネルギーは何から作られているんですか?」
光子郎はフェイトの質問に、少しだけ考え込むような素振りを見せ、答えた。
「文字です。様々な言語を組み合わせて、それが大きな電池となって、この工場を動かしています。多分、それも変わってはいないと思います」
しかし、この工場はそれで良かったんです。この工場の目的は、何かを生み出す為でも何かを壊す為でもないんです。この工場の存在意義は、創造と破壊を繰り返すことで循環するエネルギーが、正常かどうかを確認する為だけに存在しているんです」
「あ、その……そのエネルギーは何から作られているんですか?」
光子郎はフェイトの質問に、少しだけ考え込むような素振りを見せ、答えた。
「文字です。様々な言語を組み合わせて、それが大きな電池となって、この工場を動かしています。多分、それも変わってはいないと思います」
二人は工場内の探索を再開した。大きな工場だが、光子郎は疲れる様子もなく、さくさくと進む。フェイトも同様に、光子郎の後ろを歩き続けている。
「ありました。あれが電池です」
電池とは思えないような、巨大な電池を光子郎が指差した。
「あれが…………電池、です…………か?」
あまりの大きさにフェイトは少し驚いたが、光子郎は電池に付いている大きな扉を開き、電池の内部に侵入した。
「やっぱり……本質的には変わっていませんね……」
様々な言葉が電池の内部には書かれていた。その情報を紙に全て書き写してゆく、その作業の途中にフェイトも入ってきて、興味本位に壁の文字を少し触った。
「あ、いけません!その文字を消してしまえば、この工場が機能しなくなってしまいます!」
光子郎の言葉は少し遅かった。フェイトの指先は文字に触れ、その触れた箇所の文字は消えていた。しかし、光子郎が危惧した工場の停止は起こらなかった。
「ありました。あれが電池です」
電池とは思えないような、巨大な電池を光子郎が指差した。
「あれが…………電池、です…………か?」
あまりの大きさにフェイトは少し驚いたが、光子郎は電池に付いている大きな扉を開き、電池の内部に侵入した。
「やっぱり……本質的には変わっていませんね……」
様々な言葉が電池の内部には書かれていた。その情報を紙に全て書き写してゆく、その作業の途中にフェイトも入ってきて、興味本位に壁の文字を少し触った。
「あ、いけません!その文字を消してしまえば、この工場が機能しなくなってしまいます!」
光子郎の言葉は少し遅かった。フェイトの指先は文字に触れ、その触れた箇所の文字は消えていた。しかし、光子郎が危惧した工場の停止は起こらなかった。
「…………動き、止まりませんね」
フェイトの呟きは光子郎の耳には届いていなかった。
(有り得ない……こんなこと……いや、有り得るならば僕の仮説が間違っていた……工場の存在意義は……それとも、予備の電源があるとでも……)
自分の思考の中に浸かっている光子郎には、どんな言葉も届かない。熱中しすぎて、自己の世界に浸かってしまう癖は治っていなかった。
「…………光子郎さん?」
(あの作業を続けているということは……他にも電源があるということなんでしょうか。それとも、この電池はただの飾りに……)
(とにかく、もう一度調べ直す必要があります。ファイル島の時は、あの工場がエネルギーを司っていました。それならば、この戦いでも……島を支えるエネルギーは、この工場を中心に……)
(もしかしたら、工場を破壊すれば……エネルギー供給は停止するかもしれません……その為にも、やはりもう一度……)
「光子郎さん!」
唐突に大声が光子郎を刺激する。発作のように身体が少し震え、驚いた様子を見せる光子郎にフェイトは安堵した。
「あの…………気が付いていなかったん……ですか?」
「すみません。よくあるんです……考え事をすると、他の事が疎かになってしまうんです」
「そうなんですか…………なら……良かった」
工場は不気味に動き続けていた。無意味にも見える工程を繰り返し、何かを確かめているように動き続けていた。
フェイトの呟きは光子郎の耳には届いていなかった。
(有り得ない……こんなこと……いや、有り得るならば僕の仮説が間違っていた……工場の存在意義は……それとも、予備の電源があるとでも……)
自分の思考の中に浸かっている光子郎には、どんな言葉も届かない。熱中しすぎて、自己の世界に浸かってしまう癖は治っていなかった。
「…………光子郎さん?」
(あの作業を続けているということは……他にも電源があるということなんでしょうか。それとも、この電池はただの飾りに……)
(とにかく、もう一度調べ直す必要があります。ファイル島の時は、あの工場がエネルギーを司っていました。それならば、この戦いでも……島を支えるエネルギーは、この工場を中心に……)
(もしかしたら、工場を破壊すれば……エネルギー供給は停止するかもしれません……その為にも、やはりもう一度……)
「光子郎さん!」
唐突に大声が光子郎を刺激する。発作のように身体が少し震え、驚いた様子を見せる光子郎にフェイトは安堵した。
「あの…………気が付いていなかったん……ですか?」
「すみません。よくあるんです……考え事をすると、他の事が疎かになってしまうんです」
「そうなんですか…………なら……良かった」
工場は不気味に動き続けていた。無意味にも見える工程を繰り返し、何かを確かめているように動き続けていた。
熱心に壁の文字を紙に写してゆく。タイプよりは格段に遅いが、鉛筆から火が出るように速い。
時折、鉛筆をくるくる廻したりもする。そういう時は、思案をしているとき。
そんな状態が長く続いた。何とも言えないが、和やかな雰囲気だった。
しかし、この穏やかだった状況は、次の瞬間一変した――!
時折、鉛筆をくるくる廻したりもする。そういう時は、思案をしているとき。
そんな状態が長く続いた。何とも言えないが、和やかな雰囲気だった。
しかし、この穏やかだった状況は、次の瞬間一変した――!
「ボキッ!」と、云う異様な音が響く。
光子郎はわなわなと肩を震せながら振り返り、フェイトに微かな涙目で訴えた。
「折れちゃった……」
光子郎の持つ鉛筆の芯が折れていた。フェイトは黙って、自分の鉛筆を差し出した。
すると光子郎は再びメモを取り始めた。折れた鉛筆をそのままにして。
光子郎のメモは、フェイトが見ても全然分からないものだった。
「光子郎…………さん?」
光子郎はわなわなと肩を震せながら振り返り、フェイトに微かな涙目で訴えた。
「折れちゃった……」
光子郎の持つ鉛筆の芯が折れていた。フェイトは黙って、自分の鉛筆を差し出した。
すると光子郎は再びメモを取り始めた。折れた鉛筆をそのままにして。
光子郎のメモは、フェイトが見ても全然分からないものだった。
「光子郎…………さん?」
思わずフェイトは息を呑んだ。顔を覗き込んだにも拘らず、全く意に介していない様子だった。
それどころか、フェイトの存在を忘れているかのような集中力。
一つのことに集中すると、それのみに邁進する。そして、その顔はとても輝いていた。
光子郎には、まだまだ分からないことがあった。その分からないことを分かるまで追求する。
その作業が、光子郎には楽しくてしょうがなかった。
「あの…………こういうの、好きなんですか?」
フェイトの質問に、光子郎は耳を傾けていた。軌道修正をきっちりと行っていた。
「ええ、でも……いつもはパソコンを使うんですが……」
それどころか、フェイトの存在を忘れているかのような集中力。
一つのことに集中すると、それのみに邁進する。そして、その顔はとても輝いていた。
光子郎には、まだまだ分からないことがあった。その分からないことを分かるまで追求する。
その作業が、光子郎には楽しくてしょうがなかった。
「あの…………こういうの、好きなんですか?」
フェイトの質問に、光子郎は耳を傾けていた。軌道修正をきっちりと行っていた。
「ええ、でも……いつもはパソコンを使うんですが……」
工場を探索している光子郎の顔は、とても輝いて充実していた。殺し合いをする島というにも拘らず、いつもと変わらないであろう笑みを浮かべていた。
(この人…………強い)
身体的な能力であれば、自分の方が強い。そう自負しているし自信もある。第一、光子郎は普通の人間だ。対して、フェイトは魔法少女。普通の人間ではない。
しかし、中身となると分からなかった。一本筋を通し、芯の強い人間に見えた。
一見、怜悧だが冷たい人間ではない。そして意思がとても強い。
(似ているかも…………でも……)
「フェイトさん、この工場。もう少し調べてみましょう。もしかしたら、この戦いについての鍵になるかもしれません。それに予備電源としての電池が、まだ他にもあるかもしれません。その他にも、この工場。この首輪を外す手掛かりがあるかもしれません」
そう言って光子郎は微笑んだ。フェイトの心に響くような微笑を。
フェイト不思議な気分になった。不思議な心境、光子郎を見る眼が、少し変わったような気がする。
(この人…………強い)
身体的な能力であれば、自分の方が強い。そう自負しているし自信もある。第一、光子郎は普通の人間だ。対して、フェイトは魔法少女。普通の人間ではない。
しかし、中身となると分からなかった。一本筋を通し、芯の強い人間に見えた。
一見、怜悧だが冷たい人間ではない。そして意思がとても強い。
(似ているかも…………でも……)
「フェイトさん、この工場。もう少し調べてみましょう。もしかしたら、この戦いについての鍵になるかもしれません。それに予備電源としての電池が、まだ他にもあるかもしれません。その他にも、この工場。この首輪を外す手掛かりがあるかもしれません」
そう言って光子郎は微笑んだ。フェイトの心に響くような微笑を。
フェイト不思議な気分になった。不思議な心境、光子郎を見る眼が、少し変わったような気がする。
工場の存在意義とは一体――
光子郎の考えは、フェイトの心境は――
二人の知恵は、鋼鉄の城を崩すことが出来るのであろうか――
光子郎の考えは、フェイトの心境は――
二人の知恵は、鋼鉄の城を崩すことが出来るのであろうか――
【A-3 工場(ファクトリアルタウン)内 1日目 昼】
【泉光子郎@デジモンアドベンチャー】
[状態]:健康
[装備]:風の剣@魔法陣グルグル
[道具]:支給品一式、ジャスタウェイ@銀魂
[思考・状況]
1:もしかすると、この工場が状況を劇的に変えるヒントなのかもしれません。
2:フェイトと同行。
3:この島の電源に、工場は関係しているのでしょうか……?
[状態]:健康
[装備]:風の剣@魔法陣グルグル
[道具]:支給品一式、ジャスタウェイ@銀魂
[思考・状況]
1:もしかすると、この工場が状況を劇的に変えるヒントなのかもしれません。
2:フェイトと同行。
3:この島の電源に、工場は関係しているのでしょうか……?
【フェイト・T・ハラウオン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康
[装備]:バトルピック@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式、マジックバタフライ@MOTHER2、さとうきびセイバー@ボボボーボ・ボーボボ
[思考・状況]
1:光子郎さん…………面白い人です。
2:光子郎と同行。
3:電池……。
[状態]:健康
[装備]:バトルピック@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式、マジックバタフライ@MOTHER2、さとうきびセイバー@ボボボーボ・ボーボボ
[思考・状況]
1:光子郎さん…………面白い人です。
2:光子郎と同行。
3:電池……。
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