※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

拭えぬ過去を振り返り(後編)  ◆v5ym.OwvgI




「北東市街レベッカ宮本宅」から「インデックス」

『もしもし、リルル?』
『もしもし。あなたがトリエラさん?』


北東市街の何処かにあるであろう、自分の家から発信され、「インデックス」に向けられた電話。
インデックス側と思われる方は、トマの仲間のトリエラだ。
名簿にインデックスが存在するが、電話に出てる人間がどちらも違う名前であることを考えると、
関係があるのかは謎である。


この通話で最初に得られた情報は、いきなりベッキーをどん底に落とすものだった。
トマの元の世界からの仲間であるククリが、金糸雀という人形に殺されたらしい。

トマの話によれば、グルグルというおかしな魔法を使う魔法使いで、
魔王を封じることができる、ジェダに対抗しうる存在のうちの一人だった。
そのククリが死んだ。
そしてそんなこと以上に、トマの親しい友人が死亡したことに、ベッキーは歯をかみしめる。

人形、という所に、ベッキーは翠星石のことを思い出す。
そしてその知り合いのヒナ……名簿を見る限り恐らく「雛苺」、
雛苺の持っていた真紅という人形の生首。
そして知り合いらしい蒼星石と金糸雀。

知り合いがいる、ということが必ずしもゲームに乗っていないという保証にはならない。
それはレックスと会ったことでよく理解した。
恐らくは、雛苺も真紅が死亡しているのを見て、レックス同様思ったのだろう。
「全員殺して、ジェダに仲間が全員生き返るようにお願いしよう」と。
そして、放送で「真紅」と「翠星石」が死んだことを知ったことで、金糸雀も思ってしまったのだろう。
悪魔に願いを叶えてもらおうと。

そして悪魔に願った狂者は人を殺し、
その狂者に殺された人の仲間は殺人者を憎み、また悪魔に願うものが増える。
その一旦を感じ取ったベッキーは、ぞっとする。

望む、というのは、現状の否定といっていい。
自分にとって現状が好ましくないから、変える。
それは、変わって欲しくない他の人間たちの世界を壊す行為だ。
手ばなしたものを再び手に入れたい。それが他の人間の世界を壊す行為だとしても。
それが悪為す意志という奴なのだ。

想像してしまう。
もしも……
もしも、一番最初の放送で「タバサ」の名が、
レックスがこの島にいる人間を全員殺しでても生かしたいと思っていた大切な妹の名がでていたのなら、
恐らくはレックスはゲームに乗ったままで、自分やアルルゥも、レックスに殺されていただろう。
そしてレミリアも、放送でフランドールの名が呼ばれていなければ、
最強の証明のために殺し合いに乗ったりせず、未だのらりくらりとした態度で一緒にいたかもしれない。





考えてしまう嫌な事実にのまれそうになる思考を抑える。
つらい記録であるが、いい収穫もあった。


まず、恐らくはトリエラとレミリアが北東市街にいるであろうということ。
「インデックス」は場所を示してくれないのでわからないが、
会話から考えて、同じ場所にいることは間違いない。

そして、レミリアが警察署を壊し、ヴィクトリアが交戦。
撃墜され、旅館にいたククリを含めた何人かと接触。それとも恐らく交戦。
撤退後、そのどさくさにククリが金糸雀に殺された。

トリエラがヴィクトリアを声でシャナと間違えた際の声からは、
シャナとトリエラが敵対関係にあるということがわかる。
トリエラがゲームに乗っていないことを考えると、シャナはおそらくゲームに乗っているということがうかがえる。

トリエラに関する話はトマからよく聞いていて、
銃の扱いに慣れているらしかったこと、ナイフの扱いが優れていたことを踏まえて、
ベッキーは彼女が元世界では傭兵のような立場にいたことを想像している。
そしてその想像があたっていて、トマを助けた……つまりゲームに乗っていないのならば、
彼女のこの島でのスタンスはおそらくゲームに乗った者の殺害。

それを踏まえてヴィクトリアの言っていた金糸雀の片腕がなんだか変、
トリエラが袖の部分のことを詳しく聞こうとしていたことを考えると、
トリエラが既に金糸雀と交戦済み、逃がしたが腕を破壊することができたと考えるのが妥当か。

ネギと小太郎が友好関係にあり、その仇打ちを小太郎が望んでいる。

恐らくはネギもレックスと同様に「仲間が生きて帰れること」を望み、殺し合いに乗った。
そしてトリエラと交戦。トリエラがネギを殺すことに成功した。
そして放送でネギが死んだことを知り、その仲間の小太郎は怒り、仲間を殺した奴を探した。

時間的に決着がついたころだろうか。最悪、既にトリエラは小太郎に殺されている可能性も考えねばなるまい。


次の履歴を聞くことにする。






「温泉」から「インデックス」

『もしもし、トリエラさん?』
『ククリ! 無事だったの!?』

トリエラと死亡したククリの会話だ。


レミリアに襲われた際、ククリは犬上という子に助けられたらしい。


犬上小太郎。
ネギの仇打ちをしようとしていることから、殺し合うこと自体はためらわないだろうと思っていたが、
ククリを助けたことから、どうやらゲームには乗っていないようだ。
できるなら、トリエラとも和解してほしいところだが……難しいだろう。

ククリがヴィクトリアのことを全く話していないのが気になった。
いや、まあレミリアに襲われたことを考えると、自己紹介をする余裕がなかったのだと推察できるが、
トマから聞いたククリの性格的に、気にかけないのも不思議に思った。

『うん……うん! わたしもトリエラさんが無事で、ほんとうにうれし――』

言葉で言い表せない、音がした。
それがなんの音なのか、ベッキーには分からなかったが、
先の情報と合わせてしまうと、おのずと想像できた。出来てしまった。

『ククリ! どうしたのククリ!?』
『――“ご褒美をちょうだい”』
「…………っ!!」

ククリが死んだ。
その瞬間を、聞いてしまった。


そして極めつけは何者か――恐らくは金糸雀によるご褒美の請求。
それを最後に、この履歴は終わった。

「……ちく、しょう」






「シェルター」から「温泉」

『――もしもし?』
『え……トリエラさんじゃ、ない? あなた誰ですか?』
『はい、ボクはイエローといいます。今、仲間を捜して電話をしていて』
『イエロー? イエローなの?』

シェルターの、恐らくはジュジュを寝かしてくれた人間であるイエローと、
これまたククリの会話から始まった。

途中でリルルという人間に変わったが、得られた情報はその場にいた人間に対する情報のみだった。
ククリ、リルル、そしてひまわりという赤ん坊が共に行動していて、
そしてイエローが金糸雀と知り合いであるということぐらいか。

イエローと金糸雀がどういう関係かは分からないが、
死んだジュジュの扱い方から、ゲームに乗ってる金糸雀と組むことは考えにくい。
金糸雀がゲームに乗っていない放送前に共に行動していたと考えるのが妥当だろう。

あとは金糸雀が空を飛ぶ剣を持っているということぐらいか。






「シェルター」から「病院」

『……もしもし?』
『あっ――やっと繋がった! もしもし? そちらは『病院』ですか?』

トマと青……野上葵の会話。

『えーと、そちらはどうお呼びすればいいですか?』
『ウチの名前は、のが……いや、えーと、『あお』……やのうて……その……』
『?? “青”さん、ですか?』
『あー、まあ、それでええわ』

野上葵の名乗りが悪いことから、「青」という偽名は、偽名ではなく、
名を聞かれて、けれど普通に名乗るのはまずいのではといった葛藤からきたものを
トマが勘違いしたのだと理解した。

それから野上葵が探している人間は「三宮紫穂」
『明石薫』がこのときは野上葵の近くにいたことを考えると、
野上葵の知り合いは明石薫と三宮紫穂の二人なのだろう。

そこからの情報は、トマから聞いたとおりの内容で、特に目新しいものはなかったが、
トマが聞き間違いをしているかもしれないと、
念のためにメモを取り出し、その内容を書きだす。
無論、首輪の「中の人」に見えないよう偽装されたのぞき穴は隠して。

『その必要はないわ。だってウチの力なら――』
『アカン、今手元に地図ないわ。ちょっと取ってくる』
『いや、僕がメモしておきますよ。後で“青”さんにも改めて教えてあげますから』
「ん?」

履歴を見る限り、放送の時間帯になったのだろうが、
電話口にはジェダの放送が全く聞こえてこない。

(いや、確かに放送の為のスピーカーも無しにどこからか聞こえてきたけどさ、
 普通に耳にはいるのとは違う……トマがはやてからきいた念話ってやつか?)

脱出の手がかりになるかもしれない。記憶にとどめておく。


『……もしもし? もしもし、“青”さん!? どうかしましたか!? もしもし!』
『――――嘘やっ!!』
「…………」

そこから先はめぼしい情報はなかったが、
それでも、ベッキーは最後まで聞いた。








「インデックス」から「城」

『……ふぁい、もひもひ。こひら、興津高校教員室ですぅ~』
『えっ?』

一瞬の間のあと、話は続く。

「私を、襲った人……。火をつけて、私を燃やして殺そうとした……」
「嘘!? トマ君が、そんな……っ」

このとき「インデックス」を持っていたのはククリだ。
そして、トマがこの時城にいた誰かを襲ったのだという。
だが、トマのことを信用しているベッキーは、それを鵜呑みにはしない。
この声の主の正体はだいたい見当が付く。


トマがこれまで会った人物は
アルルゥ、トリエラ、はやて、レックス、雛苺、アリサ、葵、そして自分である。

そのうちアルルゥ、レックス、雛苺は自身も会っている。声を間違えるなんてない。
トリエラと葵は通話記録ではあるが声は聞いているのでこれも除外。
はやてとアリサも、声がわからないからありえなくはないだろうが、
友好関係にあるので考えにくい。

となると、いつこの声の主はトマに会ったのかということになるが、
この中には今現在はトマの手元にある参號夷腕坊に乗っていた人間がはいっていない。
構造上、中で操作する人間がいなければ使えない参號夷腕坊であるし、
中に人間が入っていたのはおそらく間違いない。
トマ達が撃退した時には中に姿はなかったが、
ヘルメスドライブの類の道具を持っていたか、
野上葵のようにテレポート能力を持っているかして脱出したのだろう。
そして、トマたちを襲うのに失敗し、参號夷腕坊を残して逃走。

電話の相手がトマの知り合いだということを知り、復讐がてら相手を煽った。こんなところか。
それにしては演技がやや凝っていたような気もするが。
推測なだけに、他の可能性も考えるべきだが、まあいい。
重要なのはこの電話の主とトマが敵対関係にあるということなのだから。
周りにそのことをあまり広められていないことを祈ろう。






「シェルター」から「ファクトリアルタウン」

『もしもし?』
『もしもし、そこはファクトリアルタウンですか? 僕はトマといいます』

トマと「白」の会話だ。

『トマ……?』
『はい、トマといいます。ところであなたはどなたでしょう?』

それから少しの間があり、

『……“白”だよ。そう呼んで』
『“白”さん、ですか? はい、判りました』

(……ん?)
そこにかすかな違和感を、感じた。

名簿にない名前を名のること自体はそうおかしいことではない。
相手が信用できるか分からない以上、偽名を名乗ることは不思議じゃない。
トマは間違えた解釈をしたのか、「白」が「白レン」だと思っていたようだが。

だけど、この「白」の偽名は、なんというか、タイミングがずれているような感じがした。

『そう、それじゃこんなのはどうかな。
 このファクトリアルタウンに遺されていた、ある参加者による研究メモみたいだよ』
『誰かが残したメモ? どんな内容ですか?』
『大まかな所は『この島の何処か見つけられる場所に、島の動力炉が有るはずだ』という物でね……』


トマから聞いた以上に詳しい話を「白」は語る。
その内容は、このゲームを破壊するために確実に役立つものだ。
これも葵の時同様、メモをする。


『ううん、良いよ。それじゃここに連れて来られた人の中で、トマ君の知り合いは誰かな?
 もしかしたら何か力になれるかもしれない』

やがて「白」による動力炉の話は終わり、白のほうからそんな提案が出された。
それにも奇妙な違和感を覚える。

普通なら、まずは知りあいがいるかどうか聞くだろう。
それを「白」はトマの知り合いは誰だと、聞いた。
まるでトマに知り合いがいることが分かっているみたいに。

『僕の知り合いですか? 勇者さん――えっとニケさん、それからククリさんにジュジュさんです。容姿は……』
『ニケ君なら知ってるよ』

(……え?)

トマの発言を遮って、白が発言する。
まるでその返答が返ってくることを知っていたように。
そのこと自体はおかしいことではない。
相手はトマの知り合いである、ニケのことを知っていたのだから。
だが、ニケのことを知っていたのなら、別の疑問が浮かんでくる。

『じゃあ……そうだね。危険人物も含めて、トマ君がこの島で会った人達を順番に教えてもらおうかな。
 何時何処でどんな風に会ったのかも加えてくれると嬉しいな』
『はい!』

その「白」の言葉も、『危険人物』という部分を強調していっているように聞こえた。

『それでなんとか生き延びたんですけど、毒にやられて死にそうになって。そこを助けてくれたのがトリエラさんです』
『…………トリエラさん、だね』

その少しの間も気になった。
まるでトリエラに何か思うところがあるような、そんな感じがした。

『八神はやてさんと出会いました』
『はやてさんは凄く落ち込んでいて……でもしばらく話して悩みを明かしたりして、すぐに仲良くなれました。
 それで、一緒にがんばって前に進もうって』
『その後、レックスという少年に襲われて……はやてさんが居なければ殺されていたと思います。
 更に不気味なヒナっていう人形も襲ってきて、レックスには凄い魔法を撃たれて……本当に絶対絶命でした』
『でもはやてさんがレンという子から託さ……渡して貰った
 武装錬金という物を使って――ヘルメスドライブって言うそうです。
 それではやてさんと僕は、はやてさんの知り合いのアリサさんの所に転移したんです!
 あれは本当に凄いです。あんな危機から一気に仲間の居場所に行けるなんて』

その発言の間、「白」の言葉は相槌すらなくて

『少し前にそのヘルメスドライブっていう武装錬金がまた使えるようになったんです。
 だからはやてさんとアリサさんにはお友達に会いに行ってもらいました。
 高町なのはさんの所です』
『――――――っ』


……息の詰まる、音がした。


『勇者さんも仲間を集めて行動してるみたいですし、はやてさん達もそれと合流しているかもしれませんね。
 このシェルターに帰って来る頃には凄い反ジェダの集団が出来てますよ、きっと!
 そしてみんなでジェダを倒して、みんなで生きて帰るんです』
『……そうだね。それはきっと……素晴らしい未来だよ……』

それは、その言葉と反して、とてつもない絶望に触れた者の声だった。



「…………」

「白」とは何者だ。
ベッキーはこの記録を見て、まずそう思った。

動力炉のことを話したり、ゲームに乗っていないであろうニケの知り合いだということを考えると、
ゲームに乗っていない……そう判断できなくもない。

だけどそれにしては、不審な印象を感じすぎた。

何故、電話の相手がトマだと知ってから、偽名を使ったのだ?
何故、トマの知り合いのことを知っていたのに、知らないふりをしたのだ?
何故、トリエラの名を聞いて、間が空いた?
何故、八神はやての名を聞いてから、発言がしばらくなくなった?
何故、高町なのはの名を聞いて、衝撃を受けたような音を出した?
何故、トマのことは聞いて、自分のことは何一つ話さなかった?


その答えを、ベッキーはおぼろげながら、理解していた。
それはトマから話を聞いてからずっと気になっていたこととつながる。


はやてが殺されて、その時近くにいたはずのなのはとアリサはどうなった?


ヘルメスドライブが使用されたのは、トマ曰く17時頃とのこと。
放送まで残り一時間。
そしてその一時間の間にはやては殺された。
はやてが歩けないことを考えても、
友達であるアリサやなのはがこの一時間の間にはやてのそばを離れることは考えにくい。
つまり、はやてはアリサとなのはの目の前で誰かに殺されたことになる。


その時、アリサは、なのはは何を思った?


ベッキーは、この殺し合いの場で、いろいろな人間を知った。


大事な人が死んだことで、心が狂ってしまった人形を、
自身が生き残るために、順真な人間を利用する人間を、
たった一人の妹が死んだのに、素直になれない吸血鬼を。
純粋な故に、向けられた敵意に素直に応じてしまった獣人を、
大切な妹を守るために、殺し合いにのる決心をしてしまった勇者を。


レックスとアルルゥは信じられる。
彼らは共にレミリアに立ち向かった者同士だ。
トマ曰くアルルゥも最初は殺し合いに乗っていたらしいし、
レックスもレミリアと戦う少し前まで殺し合いに乗っていたし、襲われた。
だがレミリアに向けた、妹に、姉に向けた想いは、まぎれもない本物だ。

レックスに限って言うならば、「タバサ」が死んだら、また殺し合いに乗る可能性はあるかもしれない。
でもその可能性も限りなく低い。そうベッキーは信じられた。


トマも同様だ。
放送でたくさんの人間の死を知り、目の前の人間も助けられず泣いても、
悲しいことやつらいこと、罪を消せなくても、笑いたいといったトマも信じられる。
そのトマが元の世界で一緒に旅したニケとククリも同様だ。

だけどベッキーは、アリサやはやてという人間のことをトマ越しにしか知らない。
ジェダに死者の発表をされる前の、まだ誰も死なずに帰れるという可能性を
僅かにでも信じていた頃のアリサのことしか聞いていない。
そのアリサの知り合いのなのはのことは、さらに知らない。


トマがアリサの声を聞き間違えるなんてことはないだろう。
そして、アリサとはやての知り合いのなのはは、意志の強い人間であるらしい。
その意志が、レックスのように間違えた方向に向かってしまったとしたら?


―――「白」は高町なのはで、高町なのはははやての死に絶望し、悪魔の囁きに乗ってしまった。


……そう言う結論を、出してしまっていた。


電話の相手が「乗っていないときの知り合い」のトマだから偽名を使った。
ゲームに乗った者を殺そうとしているから、トリエラを気にかけた。
目の前で死なれてしまったから、はやての名に反応できなかった。
自分がこれからすることを、もしくはもうしてしまったことを知られたくなかったから、トマに話さなかった。


そう、説明がついてしまう。

「……だけど、仮にそうだったとしたら」

だがそうなると、動力炉のことを話した理由がなくなる。
ゲームに乗っていたのなら、そのような情報はむしろ流さない方がいい。
これぐらいの情報では、ゲームは覆せないと考えたのだろうか。

いや、この話を聞く感じでは、「白」はまだ悩んでいた。
それは悪魔になろうとしてる少女の、唯一の良心だったのかもしれない。

この電話をしている時のトマは、本当に希望に満ち溢れたことばかり言っていて、
自分には話した、ヘルメスドライブの元の持ち主のレンのことや、
雛苺がジュジュのことを知っていたというような、暗くなってしまう話をあえてせずに、
そうやって、悲しい憶測をしてしまう自分を偽っていたのだろう。
だから、「白」の変化に気付かない。

無論、これもすべて憶測のうちの一つだ。
実際にそうなのかは、直接会ってみなければ分からないだろう。

だが改めて、トマがこの会話を聞いた時に、どのように感じるか。
そう思うと、この履歴を消してしまいたい気分になる。

「次の履歴、聞くか……」





「「unknown」から「unknown」……?」

これまでと違い、出どころも届いた場所も解らない通信だ。

『―――、聞こえ――――――?』
(――!? なんだこれ!?)

電波、とは違う。
音は通信装置から出ていない。
履歴に残っているというのに、この音は、直接頭の中に響いてくる感じだ。
念波、とでも言うべきだろうか。
だがそれだとこの通信履歴に残る理由にはならないが。

『このメッセ―――うけとった人に――――』

『――――神殿の中に―――――の―――』

『天まで―――塔の――――上で――――――――』

『時渡りの―――――はざま――――――――』


そこで、正体不明のメッセージは終わった。
声の主の正体は分からない。
非常にとぎれとぎれであったし、聞きとりづらく、
特徴を割り出すことなんてできそうにない。

(これもジェダの差し金か?
 それにしちゃあ、かなり切羽詰まった上に、とぎれとぎれでわけわかんなかったけど……)

ジェダの罠でないとしたら、外部からの救援?
確かにここには時空管理局の魔法使いだとか、天空の勇者だとか、
ミグミグ族の末裔だとかがいるのだし、
ジェダの監視をすり抜けて救援の声が届くことはありえなくは、ない。

「神殿にジェダの手がかり、塔に何かがある……」

解った単語はそれぐらいか。
塔か神殿かはわからないが、C-3とE-8にそれらしいものがある。
そこに、何かあるのだろうか。

「E-8にあるのはジーニアスの世界の救いの塔……
 確か、ジーニアスの世界の象徴ともいえる塔で本当はものすごく高くて……高くて?」

天まで届くほど高い塔?
となると、E-8の塔、「救いの塔」の上で何かをすればいいのか?
それにジェダに対抗する手がかりが、神殿の中にあるっていうのか?

(おいおいおいおい! 
 時渡りってあれか? タイムスリップでもしろっていうのか?
 人が小さくなったりできるぐらいだし、それぐらいはできちまうのか?
 つーかRPGじゃねえんだからそんな都合よく神殿やダンジョンにアイテムがあってたまるか!
 いや、トマはそんな感じな世界からきたんだっけか?)

珍事に巻き込まれやすい日常生活を送っていたとはいえ、所詮現実世界側のベッキーには理解しがたい。
トマがシェルターに来たら、このメッセージについても聞かねば。



最後の履歴。
これも「unknown」から「unknown」にだ。

『く…………くっさ~~~~~
 勇者さん! 今猛烈に臭い台詞を吐きませんでしたか!? あれ、勇者さん? 勇者さ~~~ん!?』

こけた。
盛大にこけた。

てっきり次も重要な情報が得られるものだと思っていた。
しかも何の意味もない話で、ほとんど意味のない情報に思える。
勇者さん、とはレックスのことだろうか。トマの知り合いのニケのことだろうか。


ただ、先ほどの意味ありげなものと違い、はっきりとした声だった。
そして、履歴はこれを最後に終わっていた。

すなわち、これが一番最初にこの通信履歴にのった会話だということになる。
放送は昼前。ちょうど自分がジーニアスと湖底探索をしていたころだろうか。


(これも発信場所も受信場所もわかんねえ。
 外部からの通信って考えていいのか? 
 つーことは、このunknownが念波?を飛ばしたときには、
 この会場はそれほど念波?を防げていなかったってことか?)

外部からの通信。
最初がはっきり聞こえて、後の通信があまり聞きとれなかった。
通信の手段が違うという可能性もあるが、
もしかして、昼頃までは念波?への対策が十分にされていなかったのではないだろうか。
先の推測が正しければ、ジェダは割と行き当たりばったりな性格であるのだし、
後でそのことに気付いて、通信妨害を強化した可能性も考えられる。

となれば、この通信についてもジェダは気付いているはずだが、
わざわざこの通信を消さなかったのはこれだけでは脱出なんて到底できないと考えたからだろうか。
それとも、やはりこれはジェダの罠なのだろうか。

ただ、念波妨害装置とでも言うべきか。
それが会場、もしくはジェダの手元のどこかにある可能性が出てきた。
その装置を破壊した場合、この情報のように、外部からの通信ができるかもしれない。
そうなれば、SOS信号なりなんなりを発信すれば、
はやてが言ってたらしい時空管理局や、トマの世界の闇魔法結社なりが、
ここの存在を察知してくれるかもしれない。
憶測に憶測を重ねた小さな希望だが、考えておこう。

あるいは、このメッセージの主のように、
他の誰かがこの会場内に脱出の手がかりを残してくれている可能性も……



「ベッキーさん! ベッキーさ~~~~ん!!」

遠くでトマの声が自分を呼ぶ。
機械のうねる音が響く。
トマがシェルターについて、入口を閉じたようだ。

ここに来るのがどうも遅かった気がするが、自分が去った後もジュジュを探していたのだろう。
彼女のことも、きちんと教えてやらねばならない。


そして、ここで得たことも。
北東で激しい戦闘があったらしいことを、
そこで、トマの仲間が、既に一人死んでしまったことも、
「白」のことも……


鬱屈とした雰囲気になりそうだが、黙ったままというのも悪い。
ベッキーは機械室を後にし、シェルターの入口へと向かった。



【H-5/シェルター地下/2日目/深夜】

【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)、十分に血を吸って完全回復。
[服装]:普段通りの服と白衣姿(服は少し血などで汚れているが、白衣は新品)
[装備]:木刀@銀魂、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える) 、魔導ボード@魔法陣グルグル!
[道具]:支給品一式×2、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
     輸血用パック×20、クーラーボックス、保冷剤
[思考]:トマ、悪いな……
第一行動方針:通話記録をトマにも見せ、意見を求める。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)
第三行動方針:レミリアを止め、ジェダにぶつける。そのために首輪を外す方法などを模索する。
第四行動方針:もし三宮紫穂に会ったら、野上葵の死体を辱めたことを改めて謝る。
基本行動方針:主催者を打倒して元の世界に帰る。
参加時期:小学校事件が終わった後
[備考]:吸血鬼化したレベッカの特殊能力として、魔力の存在と飛行能力を確認しました。
   トマと時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。
   宇宙服を着れば日中の行動が可能になる可能性に思い至りました。まだ真偽の程は分かりません。
   シェルター内の通話記録により、この会場の全ての電話上の会話を聞きました。


【H-5/シェルター入口/2日目/深夜】

【トマ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、ずぶ濡れ
[装備]:麻酔銃(残弾6)@サモンナイト3、アズュール@灼眼のシャナ 
[道具]:基本支給品、ハズレセット(アビシオン人形、割り箸鉄砲、便座カバーなど)、
    参號夷腕坊@るろうに剣心(口のあたりが少し焼けている・修理済み)
    はやて特製チキンカレー入りタッパー、手術道具の一部(のこぎり・メス・のみ等)、野上葵の首輪
[思考]:ジュジュさん……
第一行動方針:ジュジュの死体の行方が気になる。シェルターの置手紙を書き直す。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)。
第三行動方針:他の参加者と情報と物の交換を進める。必要ならその場で道具の作成も行う。
第四行動方針:『首輪の解除』『島からの脱出』『能力制限の解除』を考える。そのための情報と物を集める。
第五行動方針:できればトリエラと再び会いたい。それまでは死ぬわけには行かない。
第六行動方針:できればレベッカ宮本が会った「明石薫」(実はベルカナの変身)について詳しく知りたい
基本行動方針:アリサとニケたちとの合流。及び、全員が脱出できる方法を探す。
[備考]:「工場」にいる自称“白”の正体は「白レン」だと誤解しています。
    レベッカ宮本と時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。




[備考]:シェルター内の通信装置には、これまでの会場内の通話記録が残っていました。
    6時間毎に更新され、それまでの通信記録が閲覧できます
    他に、出所不明の記録を確認しました。


≪248:ワルプルギスの夜/宴の支度 時系列順に読む 250:Kirsch Maiden
≪248:ワルプルギスの夜/宴の支度 投下順に読む 250:Kirsch Maiden
≪234:三尸の蟲は罪を見つめて
≪245:臨時放送、あるいはイレギュラー
トマの登場SSを読む 264:ギップリャアアアの謎
ベッキーの登場SSを読む




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー