『lakeside love story』

 

《5日目》

 

 

結構舞い上がるもんだな。
昨日やっとこさ眠りについたが……ハルヒとキスする夢を見て起きちまった。
合宿に来る以前の俺なら強がって【悪夢】だとか言ってたんだろうがな。
今は不思議と眠気も残らずスッキリとしている。
顔を洗い、時計に目をやる。
「6時半だと?」
思わず声に出た。
昨日布団に入ったのが大体12時ほどだ。
そこから5時間寝れずに今は6時半…1時間半しか寝てないわけだ。
今日家に戻ると爆睡だろうな。
「やれやれ。」
と俺は呟き、コーヒーを淹れて椅子に腰掛けた。

 

 

俺はまだ寝ているみんなを見てボーッとしていた。
30分ほど。
朝比奈さんが起きてきた。
「ふぁ……あ、キョンくん?おはようございます……。」
まだ完全に目が覚めてないのだろう、トロンとした目をしていた。
「おはようございます、よく寝てましたね。」
「あ……見てたの?恥ずかしいです……。ちょっとお顔洗ってきますね。」
「あ、飲み物はコーヒーで良いですか?」
「えっと……ココアお願いして良いですか?苦いのは苦手です…。」
俺は肯定の動作をして、キッチンに行き、ココアを淹れてテーブルに戻った。

 

 

朝比奈さんも戻って椅子についていた。
「あ、ありがとうございます。わたしの仕事なのに……。」
「いえいえ。たまには俺にやらせて下さい。」
俺も椅子に座り、コーヒーを口に含んだ。
苦い。
「あの……えっと……昨日はどうだったんですか?二人ともいつも通りの態度で戻って来ましたよね?」
やはり来たか。
絶対この質問は来ると思ってたさ。
答える前にさらに朝比奈さんがたたみかけてきた。
「まさか……ダメでしたんですか?キョンくん、昨日眠れなかったみたいだし……。」
俺は朝比奈さんに微笑みかけてこう伝えた。

 

 

「逆ですよ。ハルヒも俺の事を思ってくれていて、無事に成功しました。」
驚きと安堵の表情を浮かべた朝比奈さんにさらに続けた。
「ちなみに寝れなかったのは恥ずかしい話、興奮してたんですよ。嬉しくて。」
伝え終わると朝比奈さんはニッコリと笑い、
「それが普通だと思いますよっ!わたしも……そんな眠れなくなるような恋がしたいなぁ……。」
ちょっと、そのセリフはいかがわしい感じにも取られますよ。

 

 

「…ち、ち、違いますよぉっ!?わ、わ、わたしはキョンくん達みたいなっ……」
朝比奈さんの言葉を遮るように俺は「冗談ですよ」と笑いながら言った。
「……っ!?もうっ!キョンくんは意地悪ですっ!!」

 

 

意地悪で良いですよ、と言おうとした時、後ろから人の気配がした。
……ハルヒと古泉?
いつ起きたんだ?お前ら。
「おはよっ!朝からみくるちゃんと仲良いわねぇ、あたしの彼氏さん!」
「布団の中で二人の話を聞きながら涼宮さんから全部聞きましたよ。あなたも僕に負けず劣らずナルシストですねぇ。」

 

 

ちょっと待て。どこまで話したんだ?ハルヒは。
そして古泉、お前はナルシストだと自覚してるのか。
……と頭の中で文句を一通り考えた後、ハルヒに向かって言った。
「浮気じゃないぞ?俺はお前だけが好きだからな。」
ハルヒと、何故か朝比奈が顔を真っ赤にした。
「……っ!?ちょ、キョ…、ああもう!顔洗って来るわっ!」
古泉がニヤニヤしながら肩をすくめた。
「おやおや、そこまで燃え上がっていらっしゃいますか。」
「いつもこき使われるお返しにしちゃかわいいもんだろ?」
朝比奈さんも口を挟んで来た。

 

 

「ふわぁ、キョンくん……凄いキザになりましたねぇ……。」
俺は一人でスヤスヤと眠る長門に目をやり、肩をすくめ言った。
「やれやれ。四面楚歌だな。」

 

 

朝飯前、長門を起こせとハルヒの命令だ。
さて、困ったな。
あいつの噛み付きはなかなかにダメージを負うからな。
しかたない、いつも通り強行策でやるか。
近付いて行くと長門がいきなり目を見開いた。
「うおっ!?」
我ながらマヌケな声を出したね。
「………昨日、どうだった?」
お前も心配してくれてたのか。
畜生、涙が出そうになるぜ。

 

 

「ああ、大丈夫だ。俺はハルヒと付き合ってるよ。」
長門は少しハルヒの方を見た後、視線を戻した。
「………そう。よかった。……少しだけ、あなた達が羨ましい。」
「そうか。大丈夫だ、今にお前にもちゃんと『長門有希』って『人間』を見てくれる奴が現れるさ。」
俺は長門の気持ちを察して、先に言葉を伝えた。
「……ありがとう。」
長門は少しだけ、ほんの少し俺にだけわかるように微笑んで、起きていった。

 

 

 

最後の日ということもあって、食事はエラく豪勢だった。

 

 

 

余った食材全てを使ってのバーベキューだとよ。
ハルヒらしくて嬉しいが。
ちなみに迎えに来てくれた新川さん、一緒に帰る予定の森さんにも食事を振る舞った、というより無理矢理食べてもらった。
松茸のせいで食材が丸1日分ほど余ったからな。

 

 

そして片付けを終わらせた後、みんなでペンションに別れを告げ車に乗り込んだ。

 

 

ちなみに古泉との散歩は食事で消えたが文句はない。

 

 

さすがにみんな遊び疲れたのだろう。
俺と長門以外の全員が深い眠りについていた。
「長門、お前は眠くないのか?」
コクリと頷く、肯定の動作だ。
「わたしは既に必要なだけの睡眠は取った。……あなたは?」

 

 

苦笑いで俺は答えた。
「俺か?俺が寝ると寄り掛かってるこいつが起きちまうからな。」
「………そう。」
「長門、心配してくれてありがとな。俺はお前らと一緒にいれてほんとに……幸せだよ。」
「………いい。」
はは、相変わらずわかりにくい奴だ。
「ただ…………」
ただ?
「「クサい。」」
ってハルヒ!?
お前……起きてたのか?
「当たり前よっ!!まったく……有希、このバカのクサさに負けちゃダメよっ!」
「………わかった。」
お前らひでぇな……。
「あ、キョン!あさって……2人でどっかへ行くわよ!」

 

 

お前な……デートの誘いなら長門のいない所で頼むよ、はぁ。
「気にしないで、いい。」
普通は気にするもんだぞ。
「じゃあ決まりねっ!あさっての9時にいつもの喫茶店でっ!」
もう勝手にしてくれ……。

 

 

 

その後、1人1人家まで送ってもらい、最後に俺の家に着いた。
古泉は報告とやらの為に森さん、新川さんと【機関】に行くらしい。
「もう少し話をしたかったんですがね。散歩がなくて残念です。」

 

 

 

「まぁな。とりあえず頑張って報告してこい。2人もお疲れ様でした。」
俺は疲れていたから適当な返事ときちんとした挨拶をして、家に入った。

 

 

「あ!!キョンくんおかえり~!」
妹の声も久々だな。
とりあえず疲れたから寝せてくれ。
妹にそう言うと、膨れながらも部屋から出てくれた。
聞き分けの良い子に育ってくれて兄は本当に嬉しいぞ。

 

 

あさってはデートか……。
明日は昼まで寝て、貯金おろして……。
考えながら俺は深い眠りに落ちていった。

 

 

《5日目終了》

 

 

 

 

 

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最終更新:2020年07月26日 01:41