『lakeside love story』

《6日目》

~キョンの行動~

俺は帰ると死んだ様に眠り続け、起きたのは翌日の13時だった。
「ちょっと……寝過ぎたな。」
と呟き、俺は飯を食うために親の所へ向かう。
「あ、キョンくん!おはよ~!」
妹だ。
おい、妹よ。母さんはいるか?飯は?
「お母さんなら出かけたよ!ご飯ももう食べた!!」
ちょっと待て。
俺は夕食まで飯抜きか?
「お母さんがキョンくんが起きたらこれ渡せだってっ!これでご飯食べなさい、だってさっ!!」
さすが我が母。

俺は千円札を妹から受け取り、着替えることにした。

自転車で家を出て、まずは銀行に向かった。
理由は初デートなわけだし、全て俺が出すつもりでいたからだ。
おぉ、我ながら男らしいぜ。

銀行から多めに2万程引きだし、俺は銀行を後にした。
次は飯だ。
ここで考える。
「一人で飯食うのも味気ないな……。」
そう考えた瞬間、俺はとてつもなくハルヒに会いたくなった。
胸が高鳴る。ヤバい、マジで会いたい。

俺は携帯を取りだし、ハルヒの番号にかけようとする。
……やっぱりやめた。
またかけようとする………
という行動を5回程繰り返し、俺は古泉に電話した。
ピッ
「古泉か?俺だが……。」
「おやおや、これはどんな風の吹き回しでしょうか。何か大事な用件でも?」
「……まぁ気にするな。それより一人で飯食うのは味気ないからお前も来い。」
「……やれやれ、強引ですね。わかりましたよ、いつもの喫茶店でしょうか?」
「さすが、持つべきものは友達だな。飲み物くらいは奢るぜ。」

「15分くらいで着きますから、それでは。」
と言い、古泉は電話を切った。
ちょっとした相談に乗ってもらおう。


古泉は10分後には来ていた。
こんなんだからいつも俺が奢る羽目になるんだな。
「僕は極力約束は守るタイプなので。特に時間についてはね。」
とニヤけスマイル。
今日はこのニヤけに頼らなければならないんだな……。
「おや、悩みがありそうな顔ですね。まずは食事にしましょう、それから話を聞くとしますよ。」
………ほんっと頼りになるな。
「それより、こんな時間なのにお前も飯食ってなかったんだな?」

俺は食事を進めながら古泉に聞いた。
「多分あなたと同じでしょう、疲れていて起きたらこの時間だったんですよ。」
古泉の苦笑と返事。
こいつらしいぜ。

俺と古泉は一通り、食事を終わらせると、飲み物を頼んだ。
古泉が話を切り出してきた。
「それでは、本題に入りましょうか。何をそんなに悩んでいらっしゃるんですか?」
「……なんでもお見通しか、参ったな。実はな、ハルヒに会いたくてたまらないわけだ。」
「……………………。あなたは僕に惚気話でもするつもりで呼んだのですか?」

「違う。それでだ、ハルヒと飯を食うつもりで電話しようとしたんだが……指が拒否るんだよ。」
「………はぁ。あなたは本当に頭が弱いですね。」
「どういうことだ?」
「あなたは涼宮さんが明日を楽しみにしていることに気付いてますね?」
「……まぁ一応な。俺も楽しみだし。」
「……続けます。そこで、今日会うとすると、明日の喜びが半減しますね?」
「そうか?俺は毎日会った方が嬉しいんだが。」

「……あなたは恐ろしいまでに鈍感ですね。ただ、あなたは本能では理解していたんですよ。だから指が涼宮さんに電話することを拒否した。……ということにしておきましょう。」
なんだそれ。
古泉は肩をすくめて答えた。
「結局は予測の域を超えないということですよ。それが涼宮さんの力のせいかも知れませんしね。」
「そうか、まぁ助かったよ。お前と話してたらスッキリした。」
「僕は惚気話を聞かされただけでしたけどね。」
「ははは、そう言うなよ。最後の日に散歩出来なかった分さ。」

「そうしておきましょう。それでは僕は次の合宿の計画を【機関】と打ち合わせて来ますので、これで。」
と古泉は帰って行った。
次の合宿だと?……またハルヒに頼まれたのか。
しかもあいつ自分の分の金置いて行かなかったな……。

その後、俺は2人分の食事の代金を払い、帰宅した。
帰ると、ずっと妹とシャミセンの遊び相手になった。
夏休みだし、サービスしてやらないとな。

寝る直前にハルヒからメールがあった。
『9時半だかんねっ!遅刻したら死刑!!』だそうだ。
俺は楽しみに顔を緩ませながら、
『了解。お前も早く寝ろよ。』と返信した。
この日のやり取りはこれだけだったが、大丈夫だ。
明日は1日中一緒にいる予定だからな。



~ハルヒの行動~

あたしは昨日帰ると、すぐに寝た。
今日はいろいろと明日の準備をするために、朝から考えを巡らせた。
「な、何をしようかしら……。」
と、あたしは呟いた。
勢いに任せてキョンをデートに誘ったのはいいけど、何も考えてなかった。
どうしよう……。

気がつくともうお昼だ。
みくるちゃんなら相談に乗ってくれるかしら…
と思って電話をかける。
ピッ
「お、おはようございますぅっ!ど、ど、どうしたんですかっ!?………や、休みですよね?」
みくるちゃんらしいわね……

「あ~、みくるちゃん。もうお昼よ。もしかして……寝てたの?」
「………はい。で、でも5分前には起きてましたよ!?」
「そ、そう。……あの、ね、みくるちゃん。お昼ご飯でも食べに行かない?」
これなら自然に相談出来るわよね?
「え…?わ、わかりましたっ!な、長門さんも誘いますね?」
有希……にも相談するのもいいかも。
「うん、お願い。場所は……」
「あ、あのっ……わたし、街に行きたいお店があるんですよぉ…行きませんか?」
「うん、それでいいわよっ!じゃあ有希にも連絡して……1時間後に会いましょう!」

「は、はい!それじゃあ……後で、です。」
プツッ

よかった、自然だったわよね…。
それからあたしは着替えて、街に向かって歩きだした。

待ち合わせ場所には、もう二人がいた。
いつも思うんだけど、この二人があたしより後に来ることってないのよね、何故かしら……。
「ごっめーん!待たせちゃったわね!!」
「………いい。」
「だ、大丈夫ですよ?まだ10分前です。」
って、やっぱり変わらないわね、二人とも。
有希が私服でいるだけだわ。
あたし達3人は、デパートに向かった。

みくるちゃんのお茶の買い物に付き合って、有希に似合う服を二人で選んだりした後、昼ご飯にすることにした。

「わたし、ここに来てみたかったんですよ~。美味しいパスタがあるらしいですよ?」
「…………シーフードカレー。」
……さすがは有希ね。
「あたしはみくるちゃんとおんなじやつでいいわっ!」
「あ、じゃあそのパスタ2つと……シーフードカレーお願いします。」
「………待って。」
「ふぇ?」
「わたしも……パスタを。カレーと、パスタ。」
……そんなにお腹空いてるのかしら?
コクンと頷く。

この時の有希ってメチャクチャかわいいわねぇ…。
「それで……涼宮さんの相談って何ですかぁ?」
「……!?ゴホッ、ゴホッ!」
水を飲んでいたあたしはむせた。
「な、な、何も言ってないわよね?」
みくるちゃんはニッコリと笑って言った。
「わかりますよ!だって涼宮さん、いつもと違う感じだし……それに少しワクワクしてますよね?」
……図星だった。
「たぶん明日のキョンくんとのデートのことかなぁ……ですよね?」
この子はこういう事には鋭いわね。
あたしは隠すのをやめた。

「うん……。実は何をすればあの鈍いバカが喜ぶかわかんないの。だからみくるちゃんと有希に相談してみようかと………『お待たせしましたぁ!』」
タイミング悪いわよ、店員。
「と、とりあえず食べましょっ!それから話を聞かせてね!」

3人とも、あまりの美味しさに黙々と食べた。
「あ~、美味しかった!2人とも満足だった?」
「すごい美味しかったですよね……感動です!」
「…………割と。」
やっぱりいつも通りね、二人とも。

「…………わたしは、」
有希……?
「わたしは、あなたが何をしても、彼は喜ぶと思う。…………気持ちさえこもっていれば。」
有希が『気持ち』とか言っているのを初めて聞いたわね。
でも…正しいと思う。
「でもさ、有希。具体的にはどんなことすればいいと思う?参考までにさ!」
「それは……「はいっ!」
ど、どうしたの?みくるちゃん。
「わたしは《お弁当》がいいと思いますっ!」
「お弁当ねぇ……うん、いいわね。そうしましょう!気持ちを込めたお弁当を作ることにするわ!」


それからはそのデパートの食品売場で、有希と、いろいろな料理を知っているみくるちゃんにアドバイスを受けながら買い物をした。

帰り際、
「涼宮さんっ!わたし、明日は朝5時に起きますから、わからないことあったら聞いてくださいねっ!!」
「………応援している。」
と言ってくれた。
2人とも、ありがとう……。
夕方、あたしは帰りつくと食事をとり、お風呂に入って、明日の弁当作りの下準備を終わらせた。
今日だけでも3回みくるちゃんに電話したから明日はどうなるんだろ……心配だわ。

それから、キョンにメールを送った。

『9時半だかんねっ!遅刻したら死刑!!』
……キョンからの返信はすぐに来た。
『了解。お前も早く寝ろよ。』だって。
キョンらしい文体だった。
わたしは、また返事をしようと思ったけど、やめた。
明日の楽しみが減るから。

「明日は朝から大変だわ……。」と呟き、
キョンのことを考えながら、あたしは眠りについた。

《6日目終了》



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