長門「あなたの力を借りて、この事件に関する二人の記憶を抹消する」
キョン「そんなことが可能なのか?」
長門「難しいことではない」
キョン「すまん、頼むよ」

長門は2人の記憶を操作し、この事件に関する記憶だけを抹消した。さらにハルヒを
文芸部部室まで転送するという荒業まで見せてくれた。

キョン「お前、そんなこともできるのか?」
長門「あなたの力を借りれば簡単なこと」

古泉はほっといても大丈夫だろう。バイクは倉庫前に停めてあるし、気がついたら勝手に帰れよな。

長門と二人で外に出ると、いつのまにか夕暮れ時となっていた。

キョン(そんなに時間経ってたかな・・?)

なんとはなしにオレが歩き始めると、長門が後からついてくる。
歩きながら、彼女は真相を語り始めた。

長門「時空改変能力は、本来は世界に影響を及ぼすほどの力を持ってはいない」
キョン「どういうことだ?」
長門「時空改変能力とは、思春期の子供がごくまれに有する力。それも周囲の環境に対して、
  ほんのわずか影響を与えるだけ」
キョン「じゃあ、今日のオレが引き起こしたことはどうなってるんだ?」

今日の出来事がウソではない証拠に、長門の制服にはいまだ銃弾のあとが残っている。

キョン(ちゃんと再生しとくべきだな)

オレたちは波止場までくると、二人並んで腰を落ちつけた。

長門「あなたは特別にその力が強かった。といっても、他の能力者に比べたらの話。
  世界を改変するには至らない。統合情報思念体が特にあなたに興味を持ちはじめたのは
  3年ほど前のこと。あなたから小規模の情報爆発が頻繁に観測されたため」

キョン(オレが閉鎖空間を作りはじめたころだな)

長門「そして10ヶ月前、かつてない規模の情報爆発が観測された」
キョン「それがSOS団・・か」
長門「そう。あなたは大規模の閉鎖空間を生み出し、内部で世界の創造をはじめた。
  私は観測者としてその世界に入り、長門有希の名前と姿を借りてあなたのそばに
  いることとなった」
キョン(・・・)
長門「しかし本来時空改変能力のベクトルは現実の世界に向かうはずのもの。
  あなたは改変を閉鎖空間内部で行ったため、行き場を失ったエネルギーが
  空間内で凝縮され、爆発寸前の状態が続いた」

キョン「もし爆発を起こしていたらどうなってたんだ?」

長門「うまくいけば、現在の世界と新しい世界とが入れ替わっていたのかもしれない。
  しかし危険は大きかった。ヘタをすれば世界そのものが消滅していた」

キョン(・・・途方もない話だ)
長門「我々の予想に反し、あなたは自ら閉鎖空間を消滅させた。しかしいったん
  凝縮されたエネルギーはあなたの中に残り、いずれは外部へ向かう情報爆発として
  放出されるはずだった」

キョン「そのエネルギーが今日の事件を引き起こしちまった・・てことか。
  そのわりには規模が小さかったように思うんだが」

長門「閉鎖空間が消滅してからあなたの能力は急速に失われていた。それにともなって
  あなたの中にあるエネルギーも除々に失われていった。時空改変能力が使えるのは
  子供の間だけ。おそらく、あと少しで完全に能力が使えなくなる」

キョン「・・・お前はどうなるんだ、長門。オレの能力がなくなったら、もうそばには
   いられなくなるのか?」

長門「本来我々情報生命体は、現実の世界に実体を持つことができない。今は観測のため、
  特別に許可を受けてここにいる。実体を失えば、世界に干渉することは不可能・・」

キョン(・・・)

長門「・・・ひとつだけ、あなたの願い事をかなえたい」

キョン「長門・・・」
長門「あなたの体には、あとわずかだけエネルギーが残っている。それを使って、
  最後にひとつだけあなたの願い事をかなえたい」
キョン「しかし、それをかなえたらお前は・・・」

水面に映えた夕日はきれいだった。船が煙を上げて沖へと遠ざかっていく。

キョン(あとわずかで、長門がいなくなってしまうんだ・・・)

オレは今ほど時間が止まってほしいと思ったことはなかった。

「なんの話?私にも聞かせてほしいな」

不意に後ろから聞き覚えのある声がした。

キョン(・・まさか!)

「あら、デート中だったの?邪魔しちゃ悪かったかな」 

キョン(なんでここにこいつが・・!)

「でも私だっておしゃべりする権利はあるはずよね。だってキョン君は、
今や全世界の注目の的なんだもの。長門さんが独り占めするのはずるいんじゃない?」

キョン「なぜお前がここにいる・・・朝倉!!」


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最終更新:2007年01月14日 01:18