朝倉「キョン君、お久しぶり・・かな?」

キョン(うかつだった・・現実に長門がいるんだ。コイツが存在してたっておかしくはない)

朝倉「せっかく再会できたっていうのに、そんな怖い目で睨まないでほしいな。
  ・・・私ね、ずっとキョン君のこと見てたのよ」
キョン「・・・・・」
朝倉「私の役目はね、キョン君。時空改変能力者に積極的に関与して、
  できるだけ大きな情報爆発を起こさせることなの。中学のときから
  あなたのそばにいたのよ?」
キョン「・・・うそだろ?」
朝倉「もう忘れたの?ずっと同じクラスにいたのに。・・まあ忘れたくなるのも当然ね。
  あなたをバカにしていた女子グループの中心的存在・・って言ったらわかる?」
キョン「・・!」

名前など思い出したくもないが、たしかにそんなヤツがいたな。巧妙に種をまいて
クラスメイトをたきつけてオレをいじめさせていた女子が。目立たないように立ち回って
いたようだがバレバレだった。まさか朝倉が化けていたとは思わなかったよ。
オレの精神を不安定にさせて閉鎖空間を増大させようってハラだったんだろうが。

朝倉「でね、高校ではどうやって干渉しようか考えていたら、涼宮さんに
  フラれたあなたは自ら大規模な閉鎖空間を生み出してくれたじゃない?
  私にとっては好都合だったってわけ。それから私は閉鎖空間内部に入ったの。
  情報爆発を起こすための仕掛けをいろいろ考えていたんだけどね・・」

キョン「長門に邪魔されたってわけか」
朝倉「そ。あのときの閉鎖空間はいままで観測されたことがなかった大きさでね、
  世界中のTFEI端末が注目してたわ。潜入していた数も少なくないはずよ」
キョン「・・・」
朝倉「私たち情報生命体はね、こうやって現実で活動しようと思ったら
  人間の体を借りなければならないの。エネルギーもかなり消耗するわ。
  その点、閉鎖空間内部では制限がなくて自由に活動できたの」

キョン「閉鎖空間がなくなって残念だったな」

朝倉「まったくね。あなたが自分で閉鎖空間を消滅させたことを知って失望したわ」

キョン「そいつは悪いことをした。・・もう用はないんだろ?さっさと消えてくれ」

朝倉「そうはいかないの。あなた今日の昼過ぎから、現実世界で連続的に小規模な
  情報爆発を起こしてたでしょ?さっきの倉庫内が一番大きかったみたいだけど」

キョン「それがどうした?もう打ち止めだ」

朝倉「んーん、あなたの体にはまだエネルギーが残ってるでしょ?もう一回やってくれないかな?」

キョン「どういうつもりだ?」

朝倉「言ったでしょ?私は能力者に積極的に関与して情報爆発を起こさせるって」

そういいながら、朝倉はおもむろに大型ナイフを取り出す。

朝倉「どうせほっといても能力は消滅しちゃうんだし、最後のローソクの瞬きに
  かけてみたくなったの。私思うんだけど、あなたを追い詰めたら
  さっきみたいに大規模な爆発を起こしてくれるんじゃない?」

キョン(・・まずいな)

朝倉「できれば部分的でも世界を改変しちゃうくらいのお願いね♪」

そういうと朝倉は、思った以上のスピードでオレに切りかかってきた。朝倉のナイフが
オレの肩めがけて振り下ろされる。

キョン「・・くっ!」

オレは身をよじってかろうじてかわす。

キョン(・・だめだ。やはりさっきの力は使えない)
朝倉「殺しはしないから安心して。ちょっと痛いだけ」

たてつづけにナイフを横なぎに一閃させる。

キョン(まずい!)

朝倉「!」

朝倉のナイフは、いつのまにかオレの前に割り込んできた長門が素手で受け止めていた。

キョン「長門、離れろ!」

言いながらオレは朝倉のナイフを奪いにかかる。朝倉の手をつかみ、後ろにねじ上げようとした。

朝倉「女の子にひどいことするのね」
キョン(コイツ!・・なんて力を)

長門「やらせない」
キョン「だめだ長門!離れろ!・・お前も朝倉も今は生身なんだ」
長門「・・・」
キョン「今回のことはすべてオレに責任がある。傷つくのはもうオレ一人で十分だ」
キョン「ぐっ!!」

不意にみぞおちから鈍い痛みを感じた。

朝倉「やさしいのね。私のことまで気にしてくれるなんて。・・うん。
  どうやらあなたよりも、長門さんを痛めつけたほうが効果的みたいね」
キョン(!!)
朝倉「長門さんなら殺してもいいわよね」

言いつつ朝倉は、長門にナイフをむける。

キョン「・・やめろ!朝倉」

朝倉「思えばあなたにはさんざん邪魔されてきたのよね。とっても目障りだったわ。
  だから消えて。長門さん」

朝倉はそういうと、立て続けに長門に切りかかる。長門は間一髪、後方へ飛び下がって
朝倉の斬撃をかわした。

キョン(まずい!長門が不利だ!)

次々に襲い掛かる斬撃をかろうじてかわす長門。

長門「!」

無理な体勢がたたり、長門は足をもつれさせて後ろに倒れた。

朝倉「これでサヨナラね、長門さん」
キョン「やめろ!!朝倉っ!!!」
朝倉「死んで」
キョン「やめろーーーーッ!!!!」

長門の心臓にナイフが突き立てられようとしたそのとき、なにかが猛スピードで朝倉に突進してきた。
「うりゃあー!!」
何者かが朝倉に飛びかかった。蹴りを食らって派手に吹っ飛ぶ朝倉。

キョン「おい・・うそだろ・・・!!」

ハルヒ「こら!バカキョン!有希があぶないってときにボーっとしてんじゃないわよ!」
キョン「・・ハルヒ!!本当にお前なのか・・・」

朝倉「うっ・・涼宮ハルヒ!?どうやってここに!」

驚きながらも立ち上がり、ナイフをかまえ直す朝倉。
そのとき、朝倉の足元で赤い光弾がはじけた。

朝倉「くっ!!」
古泉「遅くなって申し訳ありません。・・朝倉さん、うちの団員にはもう指一本ふれさせませんよ」
キョン「古泉!!・・お前まで」

みくる「私もいますよ、キョン君」
キョン「・・朝比奈さんも・・・みんなどうして・・・」

長門「これがあなたの願い。あなたが実現させた」

キョン「長門・・みんな・・・」
キョン(ずっと会いたいと思ってたみんなが・・・夢にまで見たSOS団のみんなが・・・
   ううっ・・・)

ハルヒ「な、なにベソかいてんのよ・・私が団員のピンチを見過ごすはずがないでしょ!」
古泉「そういうことですよ」
みくる「わ、私も!キョン君や長門さんをいじめる人は許しませんっ!」

朝倉「驚いたわ・・!想像以上の情報爆発ね。一時的に閉鎖空間と現実が入れ替わるなんて・・・」
ハルヒ「もうアンタに勝ち目はないわ!あきらめて神妙にお縄を受けなさい!!」
朝倉「それはどうかな?」

その瞬間、景色が一転した。夕焼けに赤く染まっていたあたり一帯はみるみる灰色へと
色を変えていく。

朝倉「キョン君、望み通り情報爆発を起こしてくれてありがとね。おかげで私まで
  本来の力が使えるの。すごいわ・・・このままいけば世界全体が改変されるんじゃ
  ないかしら」
長門「彼はそんなことを望んではいない」
朝倉「どうかな?今あなたたちを殺せば、キョン君はもっと大きな爆発を起こすんじゃないかしら?」

長門「・・させない」
古泉「僕達がそう簡単にやられるなどと思わないでほしいですね」
ハルヒ「そうよ!今こそSOS団の力を結集させて、アンタをギッタンギッタンの
   グッチョングッチョンにしてやるわ!あとで戒名をつけたげるから安心しなさい!!」
みくる「TPDDの使用許可が下りてます。わ、わたしだって戦いますよっ!」

朝倉「・・ふふっ、やってみる?」

朝倉「今日はとってもいい日だわ。まさかあなたたちに再会できるなんて・・ね。
  あなたたちも、もっとよろこんでくれていいんじゃない?」
ハルヒ「おあいにく様。冗談にしても笑えないわね。アンタには二回も
有希とキョンがお世話になってんのよ!」
朝倉「あら、前はちっとも話してくれなかったあなたなのに。だいぶ性格が
明るくなったんじゃない?」
ハルヒ「・・フン」

古泉「申し訳ありませんが、あなたとお話している時間はないようです。そろそろ
  はじめさせてもらいますよ」

古泉はそう言うと、手のひらから赤い光弾を生み出した。

朝倉「今のわたしにあなたの力は通用しないわ」
古泉「どうでしょうか!」

古泉は光弾を軽く放り投げると、バレーのサーブの要領で朝倉に叩き込んだ。

朝倉「無駄なの!」

朝倉は腕を伸ばし、光弾を叩き落す。

みくる「・・!?みんな私にさわって!急いで下さい!!」

オレたちはいっせいに朝日奈さんの手をつかんだ。その瞬間、

ドーン!!!!

5人がいた場所に巨大な拳が振り下ろされた。

みくる「ひええ・・危なかったあ・・・」

オレたちは朝比奈さんの力で、少し離れた場所に姿を現した。

古泉「あれを!」
キョン「な・・!まさか!?」
ハルヒ「・・・!」
古泉「・・そうです。神人です」

朝倉「そっちの未来人さんは空間移動ができるのね。・・しかも事前に危険を
  察知できてたみたい。すごいわ。その能力もキョン君のおかげなの?」
朝倉「それに古泉君・・だっけ?あなたあの巨人退治が専門なんでしょ?
  私にも見せてほしいな」

古泉「長門さん、あれも朝倉涼子の能力ですか?」
長門「我々情報生命体は、通常あれだけの力をもたされていない。
  ・・おそらく彼女は、統合情報思念体の一部をのっとっていると思われる。
  巨人を生み出したのもその力」
古泉「なんとか対抗できないんですか?」
長門「この閉鎖空間が展開されたときに、統合情報思念体との接続が絶たれている。
  現在、私の能力も制限されている」
古泉「・・わかりました。僕はあの神人をなんとかしましょう。長門さんは
  朝比奈さん、涼宮さんと力を合わせて朝倉涼子を倒して下さい」
長門「そう」
古泉「それに、キョン君を頼みますよ。今の彼からはなんのエネルギーも感じない。
  おそらく我々を呼び戻したことで力を使い果たしてしまったようです。
  彼を守ってあげて下さい」
長門「・・もちろん」

神人がオレたちに気づき、再び拳を振り上げる。
古泉「頼みましたよ!」

古泉の体は赤い人型へと変化していき、やがて丸い光球に収縮していく

キョン「古泉!」

赤い光球は神人に向かって飛んでいき、頭の部分を貫通した。しかし神人にダメージは
ないようだ。光球は勢いを殺して、再び神人に突撃する。

朝倉「残りは私のお相手?どこまで頑張れるのかな?」
みくる「!!」

朝倉は両腕を伸ばしてオレたちを貫いたが、間一髪、再び朝比奈さんの空間移動で難を逃れた。

朝倉「逃げるばかりじゃ私に勝てないよ?」
長門「ЭΔσ$#бЮ・・朝倉涼子の情報連結を解除する」
朝倉「な!?あなた逃げたんじゃ・・・」
長門「空間移動したのは3人だけ」

長門はその場に伏せて朝倉の攻撃をかわし、その腕をつかんでいた。長門がつかんだ部分から
朝倉の腕が除々に分解されていく。

ハルヒ「やったわ!有希!!」

しかし、なぜか朝倉は顔に不敵な笑みを浮かべている。
キョン(一体何が・・・)

ハルヒ「有希!後ろ!」
長門「・・!」

なんと、朝倉から新しく伸びた腕が後ろから長門に襲いかかった。

長門「・・くっ」

直撃はまぬがれたが、腕の一部が肩をえぐったらしく、長門はかなりの血を流している。
腕は方向を変えて再び長門に襲いかかる。

みくる「長門さーん!」

すんでのところで朝比奈さんが横に現れ、長門とともに消えた。

朝倉「同じ方法は通じないの。長門さん、前にあなたにやられてから、体を構成する
  情報の一部分を切り離せるようにしたの。すごいでしょ?」
朝倉「でもなかなかいいチームワークじゃない。さすがはSOS団・・
  といったところかしらね」

みくる「長門さん・・い、痛くないですかぁ~ 今止血を・・」
長門「大丈夫。・・ありがとう」

ハルヒ「有希!みくるちゃん!・・アンタ、よくもやってくれたわね!」
朝倉「次は涼宮さんが戦うの?あなたにそんな能力あったのかなあ?」
ハルヒ「・・・・」

ドーン!!

そのとき、凄まじい音が響いてきた。神人が赤い光球をビルの壁に叩きつけたようだ。
音の方向を見ると・・古泉が今まさにとどめを刺されようとしていた。

キョン「ヤバい!アイツ元に戻ってる!朝比奈さん!!」
みくる「うん!」

朝比奈さんは神人がビルの壁にストレートを入れる寸前、古泉を救出した。


キョン「古泉!しっかりしろ!!」
古泉「なんとか意識は保っていますが・・・しかし、正直言って一人で神人を相手にするのは
かなりの重労働です。朝比奈さんの助けがなければ今の一撃で終わっていました。
助かりましたよ」

みくる「そ、そのことなんですがぁ・・短期間に空間移動を多用しすぎて、TPDDの
   エネルギーが尽きかけてます・・どうしよう・・・」
長門「朝倉涼子、予測以上の能力・・」

ビルをひとしきり破壊した神人がこちらにふりむき、ゆっくりと近づいてきた。

朝倉「次の相手は涼宮さん?それともまた長門さんかな?」
朝倉が笑顔で近づいてくる。

キョン(絶対絶命ってヤツか・・・)

しかし、なぜかこのとき不意に笑みがこぼれた。

キョン(そうだ。今は一人じゃない。長門や古泉や朝比奈さんが、そしてハルヒが
   そばにいるんだ)

状況に似つかわしくない感情ではあるが、オレはこのとき、SOS団のみんなと
一緒にいられることがむしょうにうれしかった。

朝倉「あれ?キョン君笑ってるの?恐怖で頭がおかしくなっちゃったの?」

キョン「おい古泉・・お前とのゲーム対決、何勝何敗だったっけ?」
古泉「覚えていませんね。僕が負け越していることはたしかでしょうが。
  ・・・また対決したいですね、あの部室で」
キョン「ああ」
古泉「しかし、その前に少々アルバイトが残っているようです。今回はなかなか骨の折れる
  仕事のようですが」
キョン「よかったらオレも紹介してくれないか?」
古泉「お断りします。最近は出動回数が大幅に減ってしまってね。
実入りが少ないんですよ」
キョン「それは残念だ」

オレは古泉に右手を差し出した。少し微笑んでオレの手を握る古泉。
二人が手を交わした瞬間、古泉の体が強く光った。

古泉「!?・・キョン君、この力は・・?」
キョン「ムナクソ悪い神人退治もこれで最後だろ。思いっきり暴れてこいよ」

古泉「・・わかりました。また後ほど」

古泉の体は、再び赤い光球に収縮していった。さきほどとは段違いの光を放っている。



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