涼宮ハルヒの遡及Ⅵ

 

 

「ちょっとキョン! 何がどうなったのよ!?」
「んなこと俺が知るか! と言うかこの状況を何とかしないと冷静に考えられるわけないだろ!」
 などと大声で叫び合う俺たちの周囲は、巨大なバッタの大群に囲まれてしまっていて逃げ道もねえ!
 しかし、こいつらの俺たちの見る目は食料としてではない。まあそれは当然だな。バッタは草食だ。肉には興味がないはずだ。
 もっとも、だからと言って俺たちのことを見逃してくれるような気は毛頭無さそうで、明らかにその複眼は敵意で満ちている。
「どうやって切り抜けるのよ……?」
「俺も教えてほしいくらいだ……」
 くそ……古泉たちはどこに行っちまいやがったんだ……?
 妙な緊張感が場を支配する。ただし、少しでも動きを見せようものなら、あっという間にその沈黙は破られ、これだけの巨体でしかもバッタの習性が失われていないとするならば、間違いなくその脚力の餌食になることだろう。この大きさが相手であれば人間の方が虫けらでしかない。
 もちろん、この数が相手じゃさっきの俺の妙な力は使えんぞ。どうすりゃいい?
 が、
「バーストクラッシュ!」
 んな!?
 いきなり、あたかも天から聞こえてきたかのような咆哮に俺たちを取り囲んでいたバッタたちが周辺ごとド派手に爆発して砕け散っていく! しかも一体一体なんかじゃない! まとめて吹き飛んだんだ!
 い、いったい何が……
「キョン見て!」
 驚嘆に叫ぶや否や、ハルヒが無理矢理俺を上に向かせる。
 そこには……って、え!?
 俺も驚愕に目を見張った。
 なぜなら俺たちの頭上に一人、人がいたからだ。
「まったく……今度はいきなり場面が転換したし……」
 むろん、それはこの場に登場してくれることに越したことがない人物。と言うか居てくれたことがありがたい。
 そしてハルヒも昼間とはやや恰好が違っていようと本来の彼女の姿を知っている。
「さくらさん!」
 ハルヒが歓喜の声を上げた。

 


 どうやらアクリルさんだけがハルヒの力の影響下からは外れているらしい。
 この辺りはこの人が異世界人で助かった。ハルヒの手の中にある世界とは別の世界から来ているだけあって例外なのだろう。
 なんせ『場面が変わった』って言ったからな。
 でなけりゃ今頃、俺たちはどうなってたか……考えるだけでも寒気が走っちまう。
 あー……てことは動いたのは俺たちじゃなくて長門、古泉、朝比奈さんの方か。
 てことは三人はあの場所ごと、別のところに飛ばされたってことだよな。
「で、原因は何なの? 解ったんでしょ?」
「え、ええ……まあ……」
 アクリルさんの問いに俺はなんとも困った表情で言い淀むしかなかった。
 もっとも、今回の相手がアクリルさんで良かったと思うのはこういうときなんだよ。
 ハルヒが目の前にいても堂々と話ができるというか……
 ――聞こえる? 今、念波で繋いだから。これならキョンくんも心で思うだけであたしと会話できるわよ――
 という訳だ。さすがは魔法使い。テレパシーもお手の物ってことだ。
 ――……手短に話してくんない? 思ったことはダダ漏れになってるから――
 は、はい! 実はですね、かくかくしかじかで……
 ――なるほどね。解ったわ。それじゃあとにかく他の三人と合流するのが先決ね――
 って、んなことできるんですか!?
 ――もちろん。あのナガトって子が言ってたでしょ。あたしからあの子の『存在形態パターンの残留痕跡を感じる』って。つまり、あの子の匂いをあたしが辿ればいいのよ。あと、あたしがこっちの世界に来れたのもこれが理由――
 と言うと?
 ――あたしは向こうの世界でキョンくんを一度おんぶしてる。その時にあなたから移った匂い=存在形態パターンの残留痕跡があたしに残っていた。その匂いを辿ってこっちの世界にテレポートしたってことよ。んで蒼葉が来なかった理由もこれ。蒼葉とキョンくんには一度も接触がなかったからあたしじゃないと来れなかったってことね――
 そ、そうですか……もうほんと何でもアリだな……
 ――くすっ、前も言ったけど『本当に』何でもアリって訳じゃないからね。あたしにだってできることとできないことがあるわよ。たとえば死んだ者を生き返らせることはできないし、生命体じゃないものの再構成はできない。あと、前みたいにあたしたちだけじゃキョンくんを元の世界に戻すことができない、とか。案外、できないことの方が多いかもね――
 あ……云われてみれば確かに……
「ちょっとキョン!」
 とと、なんだハルヒか。どうした? いきなり割ってきて。
「はぁ? 割ってきたって何よ? 別にあんたとさくらさん、話してなかったじゃない。あたしが声をかけたのはあんたがさくらさんの質問に答えずに黙り込んだからよ」
 あ――!
 確かにそうだ。俺はずっと考え込むように下を向いていたし、俺とアクリルさんは目を合わせてもいない。なのに『割ってきた』という表現は確かに間違いだ。
「えっと、だな……ハルヒ、それは何と言うか……」
 俺は答えに窮した。まさか素直に、
「今、あたしとキョンくんはテレパシーで会話してたから、って、だけ」
 と言う訳にもいかんし……って、さくらさん!?
「ん? 別にいいんじゃない? だってハルヒさんもあたしが魔法使うってこと知ってるんだし、伏せる意味なんてないじゃない」
 い、いやまあ……確かにそうなんですけど何と言うか……
「テレパシーですって!? さくらさん! それ、魔法を使えなくても、前に蒼葉さんから貰ったあの石が無くても交信可能なの!?」
 ほらやっぱりな。ハルヒが目を爛々と輝かせるのは目に見えていたさ。だから、それをハルヒが『常識』として認知するのがはっきり言って怖いんだが……
 って、おい! 俺は無視かよ!?
 などと心の中でツッコミを入れる俺の眼前では、ハルヒとアクリルさんが何やら俺には聞こえない会話を交わしている。
 ハルヒの奴、実にいい笑顔だな――
 って、何を感慨に浸っている俺!
「キョン! あんただけ何、こんな面白いことを独り占めしようとしてんのよ! こういうことはみんなで分かち合うもんよ!」
 あーハルヒの奴、本当に嬉しそうだな。光が弾けて大爆発してもまだ後から後から湧いてきそうなはちきれんばかりの笑顔だ。
「分かった分かった。じゃあ、さくらさんがお前にも言ったと思うが、これから長門、古泉、朝比奈さんと合流しようぜ」
「へ? どうやって?」
 言ってなかったんですか!? さくらさん!
「言ってないわよ。だって、さっきのテレパシーは『キョンくんとこうやって話してたの』くらいの説明しかしてないし。あっそうそう、もう一つ、『これも魔法使いかそういった能力者じゃないとできない』って付け加えておいたから」
「何よキョン。ひょっとしてまだあたしに隠していることがあるの?」
 いやぁ別に何も隠していませんよハルヒさん。ですから、そのにんまりした悪企み視線をぶつけないでください。
 結構、心臓に悪いんで。
 って!
「えっ!?」
 俺とハルヒが驚嘆の声を上げたのは当然だ。なんたって――
「説明の必要はないわよ。論より証拠。ハルヒさん、キョンくんの手をしっかり握って。あたしはあなたの手をしっかり握るから。絶対に離しちゃ駄目よ。離してしまうと今度は三人バラバラになる可能性があるんだから」
 そう、アクリルさんがにこやかに告げると同時に、彼女を中心に、いきなり光が俺たちの周りに駆け廻り、円を作ったんだ。
 しかも勢いを加速させながら回転し続けているし、その振動が地面を伝わって俺たちの全身を包み込んでいる。
 こ、この現象は……!?
「何? 何なの?」
 ハルヒが珍しく狼狽している。まあ仕方がない。いきなりこんな超常現象が起これば、たとえ、普段から望んでいたとしても、いざ、現実になれば誰だって驚くに決まっている。
「空間移動魔法よ。ナガトさんの匂いを辿って、そっちに行くから。さ、早くキョンくんの手を握って」
「は、はい!」
 言って、ハルヒは俺の手を強く握る。
「ほらキョン! あんたもしっかり握りなさい! 離すんじゃないわよ!」
「お、おう!」
 なんたってアクリルさんが結構物騒なことを言ったからな。もし、アクリルさんが、いや、アクリルさんだけじゃない、長門、古泉、朝比奈さんとだって逸れてしまうのは絶対にまずいだろう。なんせ俺が有している力は集団でかかってこられると何の役にも立たんからな。
 くそ、ハルヒは俺になんて中途半端な力を付けやがる。
「じゃあ行くわよ!」
 アクリルさんが吼えると同時に光度と円を駆けるスピードの勢いが増す!
 そしてその高度が光の柱となって俺たちの周りに立ち上ったんだ!
 そのまま左手人差し指を天に向け、
「テレポテーション!」
 アクリルさんが声を上げた刹那、俺はなんだか目の前が光に包まれ、体が光に溶け込むような錯覚を感じた。

 


 ……さて、俺たちは首尾よく長門、古泉、朝比奈さんと合流できたわけだが……
「キョ、キョンくぅん……!」
「なっ!?」
 いきなり、朝比奈さんが泣きながら抱きついてきたのである。
 あ、朝比奈さん……周りを見ましょうね周りを……
 などと苦笑を受けべて心の中で思ってみても、もちろんどうにもならないのである。どうにもならないのだが……
「ギンプロデクション!」
 俺たちの周囲を空間ごと震わす大爆撃音! もっともそれはアクリルさんが創り出した透明感あふれる淡い光のドーム型障壁によって俺たちにはまったく被害は及ばない!
 まあ、この爆撃のおかげでハルヒ火山の噴火からは免れたことだけは確かだな。
 ささ、今のうちですよ、朝比奈さん。名残惜しいのは俺も同じですが、離れましょう。
「そ、そうですね……」
 小声で呟き二人は離れる。
 そんな俺たちを見ることすら、ハルヒが忘れてしまうことが眼前で起こっているのである。
「何あれ?」
 多少のシリアス感はあるものの、どちらかと言えばあまり緊張感を感じられないアクリルさんが問いかけたのはハルヒに、だ。
 その視線は、長門がスターリングインフェルノを振るいながら、古泉が赤いエネルギー球をぶつけながら攻撃している、ティラノザウルスとプテラノドンを足して、凶悪にぬめり輝く牙を存分に見せつける体長10mほどの見るからに堅そうな漆黒の鱗に包まれた……そうだな、こう表現するしかないだろう。
 『空飛ぶ怪獣』を数匹捉えているのである。それも上空には大軍でいるように見えるのだが……
「あ、えと……あたしが今作ってるストーリーに出てくる敵キャラ……」
「ふうん。なるほど、センスは悪くないわね。確かに凶悪で強そうよ」
「そ、そうかな?」
 アクリルさんが笑顔で感想を述べられて、ハルヒがまんざらでもない表情を浮かべている。
 って、そんな場合か?
 などと心中でツッコミを入れる俺も実はあまり危機感を感じていない。
「で、あんなのがあとどれだけいるの?」
 アクリルさんが悠然と問いかける。
「ううん……一応、ミクル、イツキ、ユキに一人当たり十匹から二十匹は担当してもらってその上に君臨するボスキャラを三人で協力して倒してもらうつもりだから合わせて五十匹プラス一、ここに見えてる分と他には一匹ってところです」
「了解」
 頷いて、アクリルさんが戦場へと歩み出る。
 おや? この結界術が消えない?
「ねね、ひょっとしてさくらさんが戦うの?」
 まあそうだろうな。でなきゃ俺たちをここに残す訳がない。しかも俺たちはあの人の結界術に守られている。完全に観客に徹していられるぞ。
「うん! これはいいわね! ミクルが負傷して戦線離脱! ピンチに陥ったイツキとユキの援軍として異世界からキョンから事情を聴いた援軍が訪れる! もう急展開ってやつよ!」
「え? ということはあたし、危ないことしなくていいんですかぁ?」
 あのー朝比奈さん? あなたは主人公のはずなのですが? なのにその晴れやかな笑顔はどうかと。
 というか、何の伏線もなしにストーリーの中の『俺』が異世界人と知り合うのもなんだかなぁ。
「理由付なんて後から何とでもなるわよ! だいたい少年誌だと売れている漫画家になればなるほど、伏線を無視したり、無かったことにしたりして行き当たりばったりでストーリーを作っていることが多いんだから!」
 いや、それは多分に偏見が混ざっていると思うぞ。何よりお前が一番伏線無視して行き当たりばったりだろ。
 しかしまあ朝比奈さんが傷つく姿は見たくありませんからミクルの戦線離脱はある意味、理想の展開だろうか。
 もちろん、長門や古泉のことも心配だが、あの二人は勇猛果敢に立ち向かう役割の方が似合っている気がするのでこの際、頑張ってもらうでよしとしよう。
 すまん、長門、古泉。
 もっとも、それはアクリルさんがいるから思えることなんだ。
 なんて思ってる間に、アクリルさんが地を蹴って、宙を駆けるように舞う!
「スターダストエクスプロージョン!」
 と、同時にあの、銀河を駆ける数多の流星を彷彿とさせる広範囲粉砕魔法を発動させる!
 さすがに体長十メートルだけあって、全て吹っ飛ぶという訳にはいかんが、そうだな、十匹は吹っ飛んだ!
 で、いったん、着地して、古泉と長門の前に立つ。
「これはこれは」
「頼もしい助っ人」
 古泉は会心の笑顔で、長門はいつも通りの至極冷静な表情で呟いたのではなかろうか。後ろ姿だから確認はできんがそれくらいの確信を持てる声色だったしな。
「さぁて、一気に片付けるわよ!」
 再び、上空の怪獣を睨みつける古泉、長門、アクリルさん。
 おそらく三人には勝利を確信した笑顔が浮かんでいるはずである。

 


「セカンドレイド!」
 怪獣の口から撃ってくる妙に赤紫の炎を全身で纏った赤いエネルギー球をバリアにして宙を舞いながら流れるように接近しつつ、勢いに頭髪を風圧になびかせる古泉が懐に飛び込んで放ったエネルギー球が一匹の翼竜を粉砕すれば、
「……」
 三匹ほどの翼竜に、これまた宙に浮き、見事な誘導を仕掛ける避け方でわざと囲まれた長門がスターリングインフェルノを新体操選手のリボンよろしく、どこか見惚れてしまう手さばきで振りかざす。
 刹那、翼竜たちが漆黒の闇に喰われて消滅する。
 で、もう一人、
「アルゲイルフォルス!」
 アクリルさんが開放した、あたかもマグマのような業火の孔雀がまた一匹、翼竜を飲み込んでいるんだ。
 もちろん、翼竜たちが攻撃していない訳じゃない。
 しかし、この三人の動きに対応するにはその巨体が邪魔しているのだろうか、捉えることができないんだ。それにしても古泉と長門の攻撃力が上がっているような気がする。なんたってアクリルさんが戦線に加わるまでの攻撃では翼竜一匹すら三人がかりでかかって行かないと倒せなかったんだからな。それがいきなり一人一匹は確実に素早く一撃で倒せている。これもアクリルさんが何かしたのだろうか。三人の前では五十匹という数がそんなに多くないように見えなくもない。
 まあ、もっとも、
「ひぇぇぇぇぇぇぇ!」
「うぐ……」「ん……」
 朝比奈さんが頭を抱え込んでしゃがみ込み、俺は右手を、ハルヒは両手を目の前にかざしてしまうほどの対峙の余波が俺たちを襲ってくるんだがな。
 アクリルさんの結界術の中にいるから、ダメージはまったくないが、踏ん張らなきゃならんほどの多少、強めの風圧は来るし、地響きを引き起こすほどの振動もある。周囲がどうなってるかは瞳に飛び込んでくるわけだから言わずもがなってやつだ。
 ……こんな凄い状況下に、あいつらはいるのか……?
 戦慄を覚えずにはいられん。
「ねえキョン」
「何だ?」
「とんでもないわね、この臨場感」
「まあそうだな。なんたって夢でも幻でもない。今、現実に目の前で起こっているわけだからな。おっと心配するな。確かにお前がこの世界を創り出したが、今回は別の異世界を存亡の危機に立たせている訳じゃないらしい。さくらさんがそう言ってた」
 古泉からはこの世界は広がらないと聞いているし、表現はされてなかったが、俺はアクリルさんからそう聞かされていた。
 そんな俺の言葉に、どこか安心したのか、ハルヒが笑顔を浮かべて聞いてくる。
「この凄さをあたしに表現できると思う?」
 なんか場違いな会話だが、ま、それはそれだけ俺たちがあの三人を、いや、正確にはアクリルさんを信じてるってことだ。俺たちを守ってくれているのは勿論、古泉、長門を決して危ない目に合わせないってな。その確信を持つことができる表情をあの人はしていた。
「お前ならできるさ。いや、これ以上のとてつもないものを表現できると思うぜ」
「ふふっ、ありがとうキョン。そう言ってもらえると嬉しいわ。ますます創作意欲が湧いてくるってもんよ」
 それはいいが、頼むから今後は紙の上だけにしてくれよ。今度、俺たちが巻き込まれた時は助っ人がいるとは限らんからな。
 勝ち気いっぱいの笑顔を浮かべるハルヒに苦笑を浮かべる俺。
「どうやらボスのお出ましのようですよ」
 ん? 古泉がすぐそばに立ってやがる。よく見ればその反対側には長門も。もちろん結界の外ではあるんだがな。
 もちろん、アクリルさんは俺たちの正面だ。
 てことは、あの五十匹は片付いたってことか!? すげえ!
「さくらさんのおかげですよ。本当に助かりました。あれだけの数を一人で三分の二は倒してしまったのですからね」
 だろうな。あの人のとんでもない強さは俺も向こうの世界で目の当たりにした。
 なんせ攻撃属性の水中生物相手に水中で、それも百匹以上を一人で俺ともう一人を守りながら殲滅させてたし、怪獣付野盗の巣窟を秒殺した御方だ。
 しかも、お前の云う《神人》をたった一人で数えきれないほどの数を吹っ飛ばした蒼葉さんよりも戦闘力があるってことらしいからな。ひょっとしたら今回の翼竜数程度じゃ数の内に入っていないのかもしれん。
「……今の話は初めて聞きましたよ? あの《神人》を……たった一人で滅ぼせる方がおられたのですか……?」
 古泉が愕然たる表情を浮かべているが、
「すまん……だが、この話は勘弁してくれ……重い出来事を思い出してしまう……もっとも、それは背負っていかなきゃならんことなんだがな……」
「だよね……」
 俺とハルヒは沈痛の表情を浮かべて俯くしかできない。そんな俺たちの様子に、古泉はさらに何かを聞こうとしていたみたいだが、俺たちの心中を察してくれて、それ以上は聞いてこなかった。
 ちなみにハルヒはあの世界の青白い巨人のことを知っているので傍にいようが、古泉とこの話をしていようが問題にならん。名前については古泉が話したしな。
 代わりに視線を再び前方へと向ける。
 見れば、大地を揺るがせながら何か山みたいなものが地平線の彼方からのように近づいてきつつあったのである。

 

 

涼宮ハルヒの遡及Ⅶ


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