「では目を閉じて下さい」


 言われたとおり、朝比奈さんと手をつなぎ、目を閉じた。すると、逆立ちしたような、世界がひっくり返ったような変な感覚が襲う。うぐ、気持ち悪い……。
 

 気がつけば、俺達は暗い林の中に立っていた。一体ここはどこだろう?
 

「朝比奈さん、無事に着いたんですよね?」
 

「はい。少し不安だったんですが、この世界でも問題なく時間移動はできるみたいです」
 

「とりあえず、少し歩いてみましょう」
 

 俺達は、わけもわからず、木の間を縫って歩いている。すると、木が少なくなったかと思うと、ほとんど遊具のない公園に着いた。
 

「ここは……」
 

 この公園に見覚えがある。数年前に取り壊され、すでになくなっている公園だ。昔、ナツキとよく遊んでいたな。
 

「懐かしいな」
 

 今は夜のようで、辺りは真っ暗。人の気配はなかった。だが、静まり帰った公園に何か音が聞こえる。誰かが泣いている?
 

 音がする方に歩いていくと、かわいらしい小学生くらいの女の子が、屋根付きの木製ベンチに座って泣いていた。気になって近づいてみたところ……、驚いた。俺はこの子を知っている。この子は……ナツキだ!急いでUターンして、朝比奈さんを木の陰に連れていき


「朝比奈さん、ここで待っててください」
 

「え、ええっ!?待ってください、過去の世界で勝手な行動は……」
 

朝比奈さんが何か言っていたが、耳に届かなかった。

 

 ベンチに座っているナツキの目の高さに合わせ、なるべく優しい感じで
 

「どうしたの?」
 

声をかけたところ、ナツキは赤く腫らした目を俺に向けた。
 

「何でもない」
 

「何でもないことないだろ?泣いてるってことは、悲しいことがあったんじゃないかな?俺は、君のことが心配なんだ。」
 

「どうして?その顔……、本当に心配しているみたい……」
 

「みたい、じゃなくて心配してる。ナツキが泣くのは……、昔から苦手なんだ」
 

「お兄ちゃん、変。親戚のおじさんみたいな雰囲気。でも、周りにいる大人とは違う……」
 

「うーん、おじさんはひどいな。たしかに、おっさん臭いとはよく言われるけど……。それはともかく、話してくれないかな?きっと楽になるはずだよ」
 

 ナツキは、しばらく迷っていたが
 

「うん……」
 

やがてゆっくりと話を始めた。

 

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