押さえていた胸元に変な感触。なんだ、ポケットに何か入っている。胸ポケットから、それを取り出して見ると……、2つに折られたノートの切れ端だった。こんなもん入れた覚えはない。


「なんだこりゃ?」
 

 紙を開いてみると、俺の字で
 

  正しい世界を取り戻すため、過去に戻れ。
 

と書かれ、その下には2つの年月日、時間が書かれていた。

 

 これは……、過去に戻れって、どうやって?あっそうか、見た目は中学生なんだが、実は未来人でタイムスリップできる人が目の前にいた。その人は、麗しの女神、朝比奈さんだ。


「朝比奈さん、これを見て下さい」
 

「これは……、過去に戻れって書いてます」
 

「どうやら俺が書いたみたいなんですが、今の俺にはその記憶がありません。この紙に書かれている時間に行けってことじゃないでしょうか?」
 

「でも、過去に戻るには許可が必要です。ちょっと待って下さい」
 

 しばらく、朝比奈さんは目をつぶっていたが、やがて首を振り
 

「だめです、次元が違うせいか通信できません。あれ、そういえば……」
 

どうしたんだろう、急に朝比奈さんが難しい顔をした。
 

「最近おかしなメッセージが来ていたんです。緊急事態になった場合、あなたの指示に従うようにと。詳しいことは禁則事項なんですが……」
 

 未来人は、何か知っていてそんなメッセージを送ってきたのではないだろうか。ということは、こういう自体になるのも、わかっていた?朝比奈さんの後光と共に、わずかな希望が見えた気がした。
 

「さっき言ったとおり、俺にはこの紙に書かれているメッセージが、元の世界に戻るヒントとしか思えません。だから、どうしても試してみたいんです」
 

 朝比奈さんは少し考え、決心したように
 

「わかりました」
 

力強いまなざしを俺に向けた。
 

 こういう時の朝比奈さんは、見た目は中学生なのに、安心させてくれるお姉さん属性を持っているようだ。俺が今自分を保っていられるのは、朝比奈さんがいるおかげ。本当に感謝している。だから最悪、朝比奈さんだけでも元の世界に戻して見せる。俺に何ができるのかはわからないが……、やれるだけのことをやるさ。
 

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最終更新:2011年02月03日 07:42