「あっ……」

予報には無かったのにね……。

「確率論の天気予報なんて信じちゃいけないにょろ!」

確かに。

「……会いに来てくれたんですかね?」

古泉君、アウト!

「あ゛……」

「ロマンチックな事言っといてその結果かよ。恥ずかしいにょろね~、一樹君っ!」
「うわっ!!似てる!!」
「似てないにょろ~!キョン君も一樹君もひどいっさ!……って、ハルにゃん笑い過ぎ!」

仕方ないじゃない!去年のクリパだってその芸で私は爆笑をもぎ取られたのよ!鶴屋さんだって笑ってたじゃない!

「状況が違うっさ!もうっ、今からでもそのクレープ代徴収するよっ!」
「げっ!それだけはご勘弁を!!」

あんた必死ね。

「俺の財布はもう火の車を飛び越して既に大車輪なんだ!人生最後のお年玉が中華奢りで消えるって決まってんのにこれ以上被害が深刻化したら俺は遠洋漁船に乗ってマグロと戦わなきゃならんくなる!」

はぁ~ん、一攫千金?

「お前が毎回ファミレスでとんでもない量を食うからだ!ファミリーレストランってのはな、家族で食う分を絶対に食わなきゃならないレストランじゃないんだぞ!」

ちょ……!鶴屋さん笑い過ぎ!

「キョン君今のめちゃくちゃウマいっ!座布団一枚!」





こんなどうでもいいようなバカバカしい話が……時を繋いだ。





「行きたい所がある」


SOS団のみんなで、と会議終わりにそう言いだしたのはキョン。場所はとある公園だという。事情は聞かなかったが、会議で決まった事をするにはどうしても今日で、そしてその場所でなければならないと言いだしたのは数十分前の事だ。




「鶴屋さん、奢ってもらう立場でこんな事を言うのは大変心苦しいのですが……、クレープ……少し多めに買ってもらってもいいですか?」


クレープ屋でそう言いだしたのもキョン。何かを含んだ言い方だったので私は何も突っ込めず、副団長も首を傾げ、名誉顧問は即OKを出した。




そしてバカ話が始まる少し前、キョンはこんな事を言い出したのだった。


「今から行く公園は変わり者達のメッカだ。きっと今日その場所でその人は俺達の事を待ってくれてる。だから今日じゃないと駄目なんだ。俺達が今日そこへ行くのは……恐らく……」


規定事項だからな。と、キョン


「訳も分からず向こうの事情で散々振り回されたがな、『全てが終わった時、その公園に来てくれ』と言われたんだ。そして、それは今日……今からだ」


「みんな、覚悟しておいてくれ。雪さえ降れば……いや、きっと降るな。きっとこれで最後になる」

そう言った時、先程のバカ話のきっかけとなる雪が降って来たのだった。

 





ねえキョン?
「何だ?」
一応聞いておくわ。今日で何が最後になるの?






先程会議で決まった事をもう忘れてしまう程あたしは間抜けなわけではない。だが、その言葉をどうしてもキョンの口から聞きたかったのだ。キョンもそれを察したのか、顔も合わせずに言う。






「団活」






……正直、グッと来た。


きっとみんな同じ。みんな辛くて……寂しくて……でも、どうしようもない。なんとなく、本当になんとなくだが、あの時読書少女があたしに見せた表情が宙に浮かんだ気がした。



「何も言わずに居なくなった事、思いっきり責めていいぞ。本人がそう言ってたからな。だが……、その後は思いっきり笑わせてやろうぜ」



鶴屋さんと古泉があの時渡せなかったお土産のクレープを……今度こそ一緒に齧りながらな、と、キョン。



「去年はお前が無理矢理やらせたコスプレだったとはいえ、子供達に夢を与える役を完璧にこなしてくれたんだ。だから、今度はプレゼントを受け取る側に回ってもらうのさ」



キョンがそう言って目的の公園に入った時、あたしはすぐその存在を目にした。




……話そう。時間の限り。


……贈ろう。感謝の言葉とクレープを。


……笑おう。このユキと一緒に。


……楽しもう。このささやかなSOS団解散パーティーを。


全員が揃うのは今日が……きっと最後だから。

 





「なぁ……ハルヒ」



涙声のキョン。その顔は涙で滲んでいた。

 

 










「お前、サンタクロースをいつまで信じてた?」

 

 

 

 

 









Fin.













赤色エピローグ あとがき


|