機械知性体たちの即興曲 メニュー

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□第五日目/昼

ハルヒ       「…………」

谷口          「なんかものすげぇ機嫌悪そうだな、涼宮のやつ」
国木田      「キョンが休みだからじゃない? 珍しいよね」
谷口          「よくは知らないが、あいつの面倒見れるのは人数限られてるんだから、休まれると困るぜ」
国木田      「……比較的そういうのができそうな人がもうひとりいるけど、その人も休みだよね」
谷口          「隣の長門も休みだとかいってたな」
国木田      「インフルエンザでもはやってるのかな。聞いたことないけど」
谷口          「……キョンのやつがなぁ」

ハルヒ       (まさか、あのアホキョンまで休みとはね)
ハルヒ       (有希と朝倉が同じ日に休みになって……もう四日目か)
ハルヒ       (それでとうとうあいつまで?)
ハルヒ       (……変な感じがする……なんだろう、これ)

谷口          「……窓の外見てなに考えてんだろうな」
国木田      「そんなの、普段からあまりよくわからないじゃない」
谷口          「まぁ……そうなんだけどよ」

 

 

校舎裏

古泉          「(ピッ)……もしもし。森さんですか」
森              『古泉くん? 今の時間だと……学校の方はお昼休みね』
古泉          「ええ。なかなか考えがまとまらなくて。今日の部活動がなかなかスリリングな展開になるかと思うと、ちょっと」

森              『朝の報告はだいたい理解できたけど。現地に行くのはわたしで構わないのかしら』
古泉          「自分はこちらのフォローがあるため、動きが取りにくいのです。ご足労をおかけしますが、お願いします。
             森さんであれば、彼と長門有希とは面識もありますし、むしろその方がよいでしょう。
             かえって僕よりもいいかもしれません」
森              『そうだといいんだけど。それで、わたしが行くのは構わないとして。入れてくれるかしら、あのマンション。
               確認されているTFEI端末の本拠のひとつでしょう』
古泉          「こちらが入れてくれ、と頼んだわけではありません。あくまで要請は向こうから、です。
             受け入れてもらえなければ、こちらも支援のしようがない」
森              『そう。”彼”は、ね。だだ、TFEI端末たちの考えは違うかもしれない』

古泉          「どうでしょうね。ですが彼があそこでずっと……面倒をみている、という状況が確かにあるのです」
森              『彼に限らず、人間の支援を受け入れるつもりはあると?』
古泉          「彼だからこそ、なのかもしれませんが。しかし、その彼が我々に支援を要請しているのです。
             長門有希を始めとした端末たちからも合意が取れているとみていいのではないでしょうか」
森              『そうね。そうであれば問題はないでしょうけど……』
古泉          『なにか気になる動きが?』

森              『別のTFEI端末から接触の気配があると報告があった。昨日の夜遅くに。現在対応中よ』
古泉          「……それはまた珍しい。向こう側から、とは」
森              『今、中河くんが接触に向かっているわ。相当ビクビクしていたけど』
古泉          「この件に絡んでのことでしょうね。タイミング的に」

 

 

森              『それと、頼まれていたもうひとつの案件だけど』
古泉          「むしろ、そちらの方が重要だと彼からもいわれています。僕も同意見ですが。どうでした?」
森              『橘京子との接触は比較的容易に取れたけど、彼女の方でも例のイントルーダ(周防)の動きについては、把握できていないそうよ』
古泉          「向こうの結束は相変わらずですか。予想はできていましたが、しかし困ったものだ」
森              「こちらにしても、あなたのいうような「結束」をしているわけではないけどね」
古泉          「おや。そうですか? そんなことはないでしょう」
森              『あら。意外な返答』

古泉          「意外でしょうか。しかし実際に、彼を中心として、我々三つの勢力は、お互いをそれとなく助けるように動くことができる。今、まさにそうです」
森              『そうね。それとなく、だけど』
古泉          「できるかどうか。というよりは、そのつもりがあるかどうか、の方が重要でしょう。
             無論、その奥に潜ませているものがあったとしても」
森              『……あなた、また少し変わったのかしらね』
古泉          「もともと、人は変わりゆくものなのでしょう。むろん、彼女たちTFEI端末もそうでないとはいいきれない」
森              『それは、いいことなのかしら。我々にとって』
古泉          「いいことなのではありませんか? それに今、ここで彼女たちを助けるという事実。それが将来どのようなことにつながるのか。
             おそらくそんなに悪いことではないと思うのですよ。僕個人としての感想ではありますが」

 
七〇八号室

キョン        「ぐがー……ぐがー……」

にゃがと    「(じー)」
にゃがと    「……イビキがすごい」
にゃがと    「重低音」

あちゃくら  「にゃがとさーん」(トテトテ)
にゃがと    「(ふりふり)……しー」
あちゃくら  「あ、ごめんなさい……」
にゃがと    「かなり疲れているようす」
あちゃくら  「……昨日の夜、寝てないんですもんね」

にゃがと    「ちみどりえみりは?」
あちゃくら  「お昼の支度してますけど」
にゃがと    「くれぐれも事故は起こしてはならない。彼をこれ以上、疲弊させてはいけない」
あちゃくら  「……ですよねー」

あちゃくら  「……にゃがとさん?」
にゃがと    「なに」
あちゃくら  「……昨日の夜、キョンくんのこと、お父さんって呼んでたの覚えてます?」
にゃがと    「…………」
 

 

あちゃくら  「わたしも、そういうことを考えることがあったんですけど。
        たぶん、一度くらいはキョンくんをそう呼んだような気もします。
        ですけど、あんなふうに叫ぶほどは……」
にゃがと    「明確に記憶しているわけではない。しかしあの時。天蓋領域端末に体の自由を奪われ、
          得体の知れない「なにか」に自分が取り込まれようとした時……」
あちゃくら  「…………」
にゃがと    「頭に浮かんだのは、危機を脱するためのプロトコルでもなく、周囲に危険を知らせる警告のための言葉でもなく、

                    ただ、彼に助けてもらいたいと。そのことだけが頭の中にあった」

あちゃくら  「……にゃがとさん」
にゃがと    「奇妙なことだと思う。今、落ち着いたこの状態では、そんなことは考えもしない。
          しかし思ったのは、庇護してくれているこの人……この人なら守ってくれると」
あちゃくら  「人間の子供って、こんな気持ちでいるんでしょうかねー(キョンの額を撫でながら)」
にゃがと    「……?」

あちゃくら  「自分の遺伝情報素子をくれた人。つまりお父さんとか、お母さんとかのことですけど。
        自分と同じ情報を持つ人が、自分を生み出してくれた人が、守ってくれると。本能で知っていると思うんです」
にゃがと    「…………」
あちゃくら  「だから、そばにいると安心するんですね。今、それがとてもよくわかるんです」
にゃがと    「彼は、我々に構成情報を与えてくれたものではない」
あちゃくら  「理由はわかりませんけど、涼宮さんの力がそれを補完してくれている。それが今の状況なんじゃないですか?」
にゃがと    「……推測では」
あちゃくら  「いいですね。人間って。そして人間の親って。こんなにも安らいだ気持ちにしてくれるんですから」
にゃがと    「…………」

 

 

ちみどり    「……長門さん?」(ソロソロ)
にゃがと    「なにか?」
ちみどり    「お昼の支度、できましたけど……昨日のカップ麺ですが」
にゃがと    「了解した」

あちゃくら  「じゃあ、お父さん……じゃなかった。キョンくん起こさないと」
にゃがと    「……もう少し寝かせてあげたい」
ちみどり    「キョンくん、起きないんですか?」
にゃがと    「そうではない。疲れている。この数日、彼には大変な緊張を強いてしまっていた。なるべく休ませたい」
あちゃくら  「そうですねー……起きたらすぐに食べられるようにしてあげましょう」

キョン        「ぐがー……ぐがー……」


七〇八号室、居間

にゃがと    「(ずるずる)……で、なんとか、思念体側のほかの端末に連絡を取る方法を考えないといけない(ずるずる)」
あちゃくら  「(ずるずる)……とんこつ味噌味が良かったのにぃ……(ずるずる)」
ちみどり    「(ずるずる)……食べながら、お行儀が悪いですよ、ふたりとも……(ずるずる)」

にゃがと    「(ずるずる)……そういう、ちみどりえみりこそ(ずるずる)」
あちゃくら  「(ずるずる)あちっ。にゃがとさん、スープ飛ばさないでくださいよ!」
ちみどり    「(ずるずる)……まったく……(ずるずる)」

 

 

ぴんぽーん

にゃがと    「(ずる)……来客」
あちゃくら  「……キョンくんが寝る前にいってた、『機関』の人じゃないですか?」
ちみどり    「古泉一樹は学校のはずですから……誰か別の人ですね」

にゃがと    「まさか、生徒会長では?」
ちみどり    「ぎく」
あちゃくら  「えー。でもあの人、あくまで北高内の協力者であって構成員とは違うんじゃ……」
ちみどり    「そ、そうですよ。まさか……そんな」
にゃがと    「見られると不都合?」
ちみどり    「不都合というか……なんというか(オロオロ)」

あちゃくら  「……それはともかく。キョンくん、まだ寝てる……」
ちみどり    「起こしにいきます?」
にゃがと    「いや……寝ているのをわざわざ起こすのも。我々で対応する」
ちみどり    「見せるんですか。『機関』に。この姿を」
にゃがと    「『機関』に支援を依頼した時点で、情報は拡散している。今更隠してもどうにもならない」
ちみどり    「そうでしょうか……」

あちゃくら  「じゃ、わたしたちでお客さまを出迎えるということで。カサ持ってきますね!」(トテトテ)
ちみどり    「怖いものしらず……」
にゃがと    「このメンバーの中で、もっとも前向きな性格の傾向が強い。彼女は」
ちみどり    「いいんでしょうかね……」
にゃがと    「派閥の性格かもしれない。この差は」

 

 

がちゃ

あちゃくら  「いらっしゃいませー!」(大はしゃぎ)
にゃがと    「ようこそ」
ちみどり    「…………」

森              「…………」
森              (うわー……ほんとにちっさー……。しかも可愛すぎる……! 古泉くん、聞いてなかったわよ、こんなの!)
森              「(気をとりなおして、にっこり)……はい。失礼いたします。通りすがりの秘密結社のものです」(ぺこり)

にゃがと    「…………(メイド服)」
あちゃくら  「…………(メイドさんだー)」
ちみどり    「…………(わざわざメイド服? なんで?)」

森              「(くっ、外した……!?)……そんないたいけな瞳で、黙って見つめないでください。いろいろキツいです……」
三人          (じー)

森              「……これ。ご依頼のありました、衣服、および食料品、日常雑貨です。新川」(パチン)
新川          「失礼いたします。少々量がございますので、わたしが直接、こちらに運ばせていただきます」

にゃがと    「これはずいぶん」
あちゃくら  「ダンボール箱で、十個も?」
ちみどり    「……いったい、なにをこんなに」

森              「古泉から言われた量のおおよそ三割増しの物資です。あくまで念のため、ですが」
にゃがと    「なるほど。お気遣い、感謝する」
森              (これがあの長門有希……。や、やめて。そんな小さな手で、手を振るなんて……!)
にゃがと    「……?」

新川          「生鮮食品もありますので、重い箱もあります。わたしが運びいれますので、ご注意ください」
あちゃくら  「うわー。こんなにたくさんー」(ニコニコ)
新川          (……ほんとうに、人形がそのまま動いているようですな……)
ちみどり    「ほんとに助かります。わたしからも、お礼をいわせていただきます」(ぺこり)
新川          (……こんな小さな体で……苦労していたのだろうか……宇宙人とはいえ、不憫な)

森              「これでだいたい搬入は終わりかしら?」
新川          「はい。滞りなく」
森              「ごくろうさまでした。新川」
にゃがと    「……中に入って、お茶をといいたいところではあるが」
あちゃくら  「ごめんなさい。お父さん……じゃなかった。キョンくん、疲れきって寝ちゃってるんです……」
ちみどり    「ほんとうにごめんなさい。なんのおもてなしもできなくて」

三人          (ぺこり)
森&新川  (……うっ)

 

 

森              (……こんな小さな、人形みたいな子たちが……だめ。鼻血が出そう)
新川          (健気な……今時、人間の子供でもこのような礼儀正しい振る舞いはできないだろうに)

森              「……我々はただ、『機関』の意向にそって動いたまででして」
新川          「お気遣い痛み入ります。そのお言葉だけ、いただきます」

にゃがと    「(キリッ)……我々は、本来はこのような関係を構築できないかもしれない。そのような相関関係にある。
          それを押して、今回のこの支援をいただいたことには、感謝というヒトの言葉では言い表せないものを感じている」
森              「長門……さん」
にゃがと    「重ねていう。感謝する。今後も、良好な関係が保てればよいと、統合思念体側は考えていると受け取ってもらいたい」
森              「は、はい……」

森              (これは、欺瞞だ。この姿で、このようなことをいわれたら……誰でも警戒心を緩めてしまう)
森              (無論、これは事故による一時的なもの。そうなのだ)
森              (表面上の姿に惑わされてはならない。その内面は我々とまったく違うものであるのだから)
森              (わかってはいる……わかってはいるのだが……)

にゃがと    「……?」(首をかしげる)

森              (!……もう、ダメ……!)

にゃがと    「……!?」
あちゃくら  「ええっ!?」
ちみどり    「…………」
新川          「な……!」

 

 

森              (ぎゅうううっ)
にゃがと    「……? ……!?」(いきなり抱きしめられて混乱している)

あちゃくら  「あー……長門さん、いいなー」
ちみどり    「なんだかなぁ……もういろいろな意味で、どうでもいいですけど」(ため息)
新川          (見なかったことにするべきですな……)

森              (かわいい! 持ち帰りたい! ベッドでいっしょに寝てみたい!) 
にゃがと    「…………」(困惑中)

ちみどり    「あ、あのー……」
新川          「おほん」
森              「……はっ」(ガバッ)
あちゃくら  「いいなー」(指をくわえている)
ちみどり    (これも、いろいろ世界の変容が進んでいる証拠のひとつなのでしょうかねー……)
森              「……今、わたしはなにを……?」
ちみどり    「いえ……特に大したことは」

森さんの混乱が収まるまで約二分

森              「……失礼しました。その、いろいろとわたしも取り乱していたようで」 
にゃがと    「いい、気にしていない」
新川          (……なにも見ていない。なにも見ていない)

 

 

森              「(こほん)……では、わたしたちはこれで」
新川          「……失礼します」

ガチャン

にゃがと    「……人間の反応は、時おり、予測不能の場合がある」
あちゃくら  「顔まっかっかでしたねー……なにが恥ずかしかったんでしょうか」
ちみどり    「……普段クールな人なんでしょう。たぶん」
にゃがと    「それでも助かったことには違いない。少なくとも、物資の補給はこれで解決した」
あちゃくら  「キョンくんの手配のおかげですね! さすが我が家のお父さんです!」
ちみどり    「……あくまで、場つなぎのことですけどね……」
にゃがと    「そう。本題は別のところにある。それをこれから検討していかねば」


その頃。
機関御用達車内

森              「…………」
新川          「…………」
森              「…………」
新川          「…………」

新川          (……空気が……凍っている……!)

 

 

森              「……新川」
新川          「は」
森              「……なにか、いいたいことは」
新川          「特に、なにも」
森              「……そう」
新川          「…………」

ぴろりろ~ぴろりろ~

森              「古泉くんから……(ピッ)もしもし」
古泉          『どうも。これから部活に向かうところなんですが……いかがでしたか』
森              「物資の搬入はなんの問題もなく終わったわ……”なんの問題もなく”ね」
新川          「…………(ゴクリ)」
古泉          『……変なところを強調しているような気もしますが……そうですか。ならよかった』
森              「ええ。TFEI端末との接触も、すばらしく良好だったわ」
古泉          『それはなにより。状況が状況だけに、さすがにこちらに対して融和的に出てきたというところでしょうか?』
森              「融和……ええ、そうね。とてもフレンドリーな対応をしていただけたわ。はるかに、予想以上に」

古泉          「……? 森さん? なにか声の様子が……」
森              「(無視して)ところで古泉くん。今後、彼女たちに対して、支援は継続するのよね?」
古泉          「は……まぁ、今後の動向しだいでしょうが。彼がそれを望むのであれば、そのように提案はするつもりですが」
森              「……もう一度、行けるかしら。あのマンション」
古泉          「……え?」
森              「いいの。こっちのことだから。では、またあとで(ピッ)」

 

 

新川          「…………」
森              「……新川」
新川          「は」
森              「なにか、いいたいことが?」
新川          「いえ。特になにも」
森              「そう。ならいいんだけど」
新川          (痛い……視線が……背中に突き刺さる視線が痛い……!)

森              「……また会えるかしら。あの子たち……」


―第五日目/夕につづく―

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