機械知性体たちの即興曲 メニュー
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□第三日目/夕
キョン 「思ったより遅くなっちまったな……」
キョン 「ハルヒのやつも長門がいないもんで一日中不機嫌だったしな」
キョン 「……古泉のやつは古泉のやつで、なにか知ってるんだろうみたいなこと言ってくるし」
キョン 「あんまり隠しごとするのは好きじゃないんだが、仕方ない」
キョン 「とはいえ……朝比奈さんまで不安そうな目で見てくるとは……」
キョン 「……? ん?」
?? 「――――」
キョン 「……珍しいな。おまえか」
?? 「――なにか、変わったことが――?」
キョン 「別に、なんも変わったことなんかないぞ。急に出てきて、なにをいいたいんだ?」
周防 「――興味が――あるから」
マンション到着
キョン 「……しかし。変なやつだとは思ってたが、ああして急に不意打ちみたいにして出てくるのだけは勘弁してほしいぜ」
キョン 「……なにか、今回の件と関係あるのか。あいつ。あれ以上なにも言わないで消えちまったが……」
キョン 「考えてみれば、あいつも宇宙人関係者だからな……」
キョン 「ま、俺がどうこうできる相手じゃない。仮にあいつが関係してるとしても、あの三人だったらどうにでもできるだろうさ」
キョン 「……七〇八号室のインターホンと……」
キョン 「喜緑さん? 長門でもいいが。約束どおり来たぞ」
キョン 「……返事がないな……?」
七〇八 「…………」
キョン 「いるのか? 聞こえたらオートロックを開けてくれ」
七〇八 「ドタッ ガシャンッ」
キョン 「……なんの音だ、これ」
七〇八 「……ピッ」ガーッ
キョン 「お。開いた……」
ここで台本形式を変更し、唐突に俺の一人称視点に切り替わることをお詫びしたい。
というかこれよりほかに方法がないと考えるからだ。厳密にいうと俺が考えたわけではないのだが。
なにか不吉というにはあまりにもおぞましい気配が立ち込める七〇八号室のドアの前で、
なぜそのようなことを感じるのか、解説することも難しい、つまり、ある種の予感が背中を這いずりまわっていたとでもいうべきか。
なにを言っているのか俺にもよくわからないが、言葉にするとそうとしかいいようがない。
人間の言語表現を突き放す、つまりは例の宇宙人アンドロイドという正体不明、意味不明の連中の作り出す
なにかが確かにそこに存在していたのだ。
俺は生唾を飲み込み、しかし呼ばれた以上は行かねばならないという、奇妙な義務感にも似た衝動を抑えられず、
七〇八号室のドアノブに手をかけた。
ロックはすでに外されており、俺は見えない手に引き込まれるような薄気味悪い感触を感じながら、
部屋の中へと入っていった。いやそうすることしか出来ない、脅迫感すら感じていたのだ。
そして、俺がそこで見たものとは――!
にゃがと 「……ようこそ」
あちゃくら 「キ、キョンく~ん……」
ちみどり 「…………」
そこで俺が見たものとは、幼児体型に退行したのだと思われる、長門、朝倉、そして喜緑さんの三人の姿だった。
いずれも服はところどころ破れており、頭からよくわからない、おそらくは食品だったと思われる残滓をめいめいに被り、
まるで飢餓のために衰弱し、もう一歩たりとも歩けないかのような弱々しい声と、すがるような視線で俺を見上げていたのだ。
全員、仰向けに倒れたままで。
キョン 「……俺がどうしてここに呼ばれたのかを説明してくれ。
それと、この無残な状況を目撃した人間である俺は、生きて帰ることが許されるのか、それを教えてくれ」
にゃがと 「……み、みず……」
あちゃくら 「キョンく~ん……ごはん……」
ちみどり 「おなかが……もう、ダメ……」
キョン 「……あのな。いったい、なにがどうしたんだ、これは」
にゃがと 「せつめいは……あとで、いくらでも」
あちゃくら 「と、とにかく……なにか食べるものを」
ちみどり 「うえぇぇん、うぇぇえん」
キョン 「……わかった。今すぐコンビニに買いに行ってくるから、待ってろ」
―第三日目/夜につづく―
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