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これはこれは、珍しい所で珍しい人にあったものだ。
 
「涼宮さんもこの大学に入学していたのかい?」
「えぇ、久しぶりね」
 
高二の春、初めて会った時に見せた険しいものではなく、晴れやかな笑顔で答える涼宮さん。
橘さん曰わく、神様に選ばれた女の子。
いや、神様そのものだったかな?
 
「えっと、涼宮さん1人かな?」
「そうだけど、それがどうかした?」
「もしよかったら、私も一緒にお昼ご飯を食べてもいいかい?」
 
恥ずかしながら、人見知りするもので…
誰かを介入しないと1人になっちゃうんだ。
 
「勿論いいわよ!…でもほとんど席が埋まってるわね…」
 
気がつけば食堂は多くの学生で溢れていた。
ふむ、時間に余裕を持たないと駄目なようだね。
 
「冷静に分析してる場合じゃないでしょ。ほら、あんたちょっとそっちに詰めな
さい」
「あ、大丈夫だよ。席が空いてないなら中庭で食べるから」
「女の子が遠慮しちゃ駄目よ。さ、ここ座りなさい!」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
 
涼宮さんはいつも食堂で?
 
「そうよ。ここのカツ丼が美味しくて美味しくて。あ、一口いる?」
「いや、遠慮しておくよ」
「だから女の子が遠慮しちゃ駄目だって言ってるじゃない!ほら!」
 
仕方がないなぁ。
…ん。
 
「…美味しい」
「でしょ?やっぱりカツ丼のカツは卵とじよね!」
 
相変わらず涼宮さんは元気だなぁ。
 
「あれ?そういえば昼食は?食堂のご飯じゃないの?」
「あぁ、私はお弁当を作ってきたんだ。と言っても大したものじゃないけどね」
「そんなこと無いわよ!凄く美味しいじゃない!」
 
あの…何で涼宮さんが私のお弁当を食べてるんだい?
 
気がつけば、楽しそうにコロッケを口に運んでいる涼宮さん。
 
「あ゛!ゴメン!つい癖で少し摘んじゃった…」
「ま、カツ丼を少し食べさせてもらったしね。ところで、癖って?」
「ん?あぁ、高校生の時よくやってたのよ。キョンのお弁当からこっそり摘んだりして」
 
チクリ。
 
「そっか、キョンと同じクラスだったんだよね」
「キョンのお母さんの作る卵焼きがまた美味しいのよね!」
 
グサリ
 
なんだろう。
この自分に何かが突き刺さる感覚は。
 
「………」
「…佐々木さん?」
「あ、あぁ。少し考え事してたみたいだ。ゴメンよ」
「ほら、ちゃんと食べてしっかりしなさい」
「…だからそれは僕のお弁当だって」
 
…いや、気のせいだろう。
 
楽しそうな涼宮さんを見て、何となくため息をつく。
新しい生活に少し疲れているのかもしれないな。
 
「…ん、あれって」
 
おもむろに彼女が食堂の端に顔を向ける。
そこには、見慣れた男子学生がカツ丼の置かれたトレーを持って棒立ちしていた。
 
私と同じ様に場所に溢れたのだろうか。
 
周りの席は一向に空く気配がない。
 
「あー、困ってるみたいだし、呼んでもいいかしら?」
「あぁ、構わないよ」
 
僕としても久しぶりに彼と話をしてみたかったしね。
 
「じゃあ決まりね、おーい!」
 
涼宮さんが大きく手を振る。
澄んでいて、よく響く声。
 
食堂の端にいた彼にもその声はすぐ届いたのだろう。
こっちを見て、軽く苦笑いしていた。
 
「ほら国木田、ボケーっとしてないであんたもこっちに来なさい!」
 
中学時代の同級生、久しぶりに見た彼はあの時と変わっていなくて。
なんというか、相変わらず童顔だなぁ。
 
「えっと、ここに座って良いのかな?」
 
…声変わりはしたみたいだ。
だけどやっぱり幼さが残る。
 
「…で、さっきから佐々木さんは冷静に何を分析しているのかな?」
「いや、久しぶりだなと思ってさ」
「あれ?あんた達って顔見知りなの?」
「おや、言ってなかったかな?僕達は同じ中学校出身なんだよ」
 
初耳とでも言いたそうな目だね。
 
「ま、ね。あんまし国木田のこと知らないし」
「…一応三年間同じクラスだったんだけどね」
「ずっとキョンと谷口とつるんでたことくらいかしら、知ってるのは」
「谷口?」
「あぁ、高校からの友人さ。ちょっと変わってるけど良い奴だよ」
 
ほう、一度会ってみたいものだなその谷口くんとやらに。
 
「止めた方が良いわよー」
 
遠い目をして呟く涼宮さん。
気がつけば彼女は自分の分のカツ丼を食べ終えて、国木田くんのものまでつまみ始めていた。
 
「毎回思うんだけど、涼宮さんは谷口と何かあったのかい?」
「別にー。そういや、谷口もキョンと同じ大学だったっけ。国木田は一人なの?」
「知り合いがいるようならあんなところで棒立ちなんかしてないよ」
 
困った様に苦笑い。
まぁ、お互いまた仲良くしようじゃないか。
 
「うん、よろしくね」
「そういえば、今日はもうこれで帰宅できるけど、二人とも用事はあるのかしら?」
「僕は無いよ」
 
うん、私も暇だね。
 
「じゃ、決まりね!」
「…何がだい?」
「何って、遊ぶに決まってるじゃない!折角また会えたんだから、パーッと騒ぎましょ!」
 
◇◆◇◆◇
 
「で、三人そろって俺の家に乱入したというわけか」
「何よ!文句あるって言うの!?」
 
…ここがキョンの住んでるアパートかぁ。
 
「佐々木、恥ずかしいからあまり散策するな」
「へっ?あ、あぁ、すまない」
 
…そんなにじろじろ見てたつもりは無いんだがなぁ。
 
「あれ、谷口は一緒じゃないんだね?」
「あぁ、あいつならほら、高校の時みたくランク付けとかやってるぞ」
「相変わらず馬鹿なのね」
 
えーと、これがキョンが座っている座布団かな?
 
「…おーい」
「冗談だ。そろそろ止めにするよ」
「そういえば、キョンと佐々木さんって、会うのは一年ぶりかしら?」
「あぁ、最後にあったのは…あれだ、正月前後で…」
「確か、有希を保護してくれたのよね」
「…何があったんだい?」
 
そうか、国木田くんは分からないよな。
 
「ま、色々合ったんだよ」
 
三人でアハハ、と笑う。
こんな日常があの時は沢山あふれていて。
 
でも、今は楽しくないのかと言ったら、そういうわけでもなくて。
ただ、少し寂しいときがあるだけで。
 
何なんだろうか。
この気持ちは。
 
だけど、この瞬間はとても幸せで。
 
暫く正月の時の話をしていると、玄関のチャイムが鳴り響く。
 
「ん、誰か来たのか?」
「噂をすれば、来たみたいね!」
 
あ、長門さんに古泉くん。
 
「あれ?みくるちゃんは?」
「どうやら先約が入っていたようです」
「あ、谷口からメールだ…」
「あいつ、何だって?」
「えっと、『全敗だ。一緒に飲もうぜ』…だって。どうする?キョン」
「放置しとけ」
「りょーかい」
 
で、長門さんは何故さっきから私のことを見ているんだい?
 
「…貴方には一生の恩がある」
「あの時の有希は色々と危なかったからねぇ」
「…感謝してもし足りない。ありがとう」
「うん、どういたしまして」
「…それに比べて古泉ときたら」
「…そこで僕に話をふりますか…」
「ねぇ、さっきから本当に話が見えないんだけど…」
「ま、暇な時にでも教えてやるさ。なぁ、そろそろ飯にしないか?」
「…空腹」
「…貴女はいつも空腹じゃないですか?」
 
で、何を食べるのかな?
食べに行くのなら、僕はそんなに地理に詳しい方じゃないが。
 
「あぁ、近くに美味いカツ丼の店があるんだ。そこに行こうぜ」
「…僕と涼宮さん、お昼ご飯もカツ丼だったんだけど」
「ま、いいじゃない!で、どんな店なの?」
「垂れカツ丼の店なんだ。こっちの地方じゃ珍しいが…どうした?」
 
怪訝そうな顔でキョンが涼宮さんを見る。
…あからさまに不満そうな顔をしているなぁ。
 
「垂れカツですって!?信じられない!カツは卵で閉じてこそ至高だと言えるのに!」
 
似たような話を昼にも聞いたような気がするなぁ。
 
「国木田もそう思うわよね!?」
「え?あ、あぁ…そうかな」
「佐々木さんは!?」
「あー、僕はカツはカツでそのまま食べるのが好きだなぁ」
「もうっ!なってないわね!古泉くんは!?」
「味噌カツ派です」
「何故ニヤケる」
「いえ、癖みたいなものですよ」
「有希は…いや、聞かなくて良いわ」
「…カツカレー」
「ま、そこは予想通りだな」
 
はぁ、と涼宮さんがため息をつく。
 
「…何か前回見たような展開なんだが…」
「と、言うわけで、第二回SOS団トンカツ談義!まずはキョンの言う垂れカツから食べてやろうじゃない!」
「…垂れカツ…とても興味深い」
「僕、SOS団じゃないんだけど、行ってもいいのかな?」
「勿論よ!仮団員みたいなものなんだから。ほら、映画に出させてあげたりしたでしょ?」
 
何が起こるか分からないから、僕と涼宮さんはこんなに楽しい世界を、気付かずに選んだんだ。
だからきっと、この先何が起こっても。
 
「ほら、佐々木。ボーっとしてると置いて行くぞ?」
「ん、あぁ、すまないね」
「そうよ!折角キョンの奢りなんだから!」
「…誰が奢ると言ったんだ」
 
神様になれる資格を持っていたことなんて、惜しいだなんて思わないだろう。
 
この時は、そう思っていたんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ちぇ、国木田の奴、シカトしやがって…お、またまた可愛い子発見!」
「…む、何かいやーな視線がするのです…」
「───……?」
 
つづく

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