第6周期 ハッピーノイズ
 
 ……?
 いつの間にか、見渡す限りの草原の中にいた。
 久しぶりに青空を見た気がする。さっきまでの、ざらざらとして澱んだ空気とは違い、爽やかな風が吹いていてとても心地よい。空気がおいしいとはまさにこのことを言うのだというくらいのはっきりとした違いである。
 どうして俺はここにいるのだろうか。ここは天国か? 俺は死んだのか? たとえそうであってもいいように思えてしまう程に穏やかな世界であった。
 やや強い風が草原を揺らした。草同士のこすれる音がどこまでも響いて行った。
 その風にのって、一つの麦藁帽子が飛んできた。それはちょうど俺の足元にふわりと着地した。
「俺以外にも、誰かいるのか?」
 拾い上げると、内側に名前が書いてある。子供が書いたような少し歪んだその字を読み取った。
 
 涼宮─────
 
 
 文字を最後まで読ませてはくれなかった。
「くっ……」
 頬には砂の感触があった。結局あの穏やかな世界には長く居させてはくれないのな。なんとも薄情である。
 目を開けると全てが真っ白になっていた。ここが明るすぎるせいか、全く視力が無かった。眩しくて、俺が今どこにいてどういう状況に置かれているのかについて、頬にある砂の感触以外の情報は全くなかった。
 俺は完全に目覚めることが出来ず朦朧としている意識の中、引き戻された現実に待っているのはあの地獄の続きなのか、それともようやく元居た世界に戻ってくることが出来たのだろうかと考えていた。俺は起き上がる力はおろか、辺りをこの目で確認する気力さえ残っていなかった。
 その時、地震が起こった、
 いや違う、俺の身体が動かされている。
 
「キョン! 起きなさいよ! ねえ!」
 
 それまで無音だった空間にノーブレーキで突っ込んできたその声は、ここがさっきまでの地獄とは別世界であることを証明していた。やっと、元の世界に戻ってきたのだ。グラウンドに横たわっている体が、自分の意思に反して動いている。誰かに揺さぶられているのだ。
 
「聞こえてるんでしょ!? キョン! 返事くらいしたらどうなのよ!」
 
 俺を起こそうと必死に呼びかけているのはハルヒだ。大丈夫、しっかりと聞こえているからあまり激しく揺さぶらないでくれ、そう言いたかったが言葉を発することすら出来なかった。
 
「キョン君は……大丈夫なんですか……?」
 
 その背後で聞こえる心配そうな声が聞こえる。朝比奈さんだ。ここがいつのどこなのかはまだ分からないが、ハルヒと朝比奈さんがいるということは、
 
「意識はある。しかし激しい疲労で反応すら出来ていない」
 
 揺さぶっているハルヒとは対照的に俺にそっと触れながら分析じみた言葉を発している。長門だ、予想通り、ここにはSOS団の全員がそろっているのだろう。だとすれば古泉はどこにいるのか。その姿を探そうにも、いつまでたっても俺の目に映る世界はホワイトアウトしたままであり、画面右下出で動く「now loading...」の文字が消えそうにない。
 
「意識が回復した」
 長門がそう宣言したと同時に、ようやく眼が明順応を始め、ゆっくりと視界が回復していった。真っ白だった世界が染まっていく。段々とぼかし処理が消えてゆき、滲んだ色の中に人の姿を確認した。そして、俺の最も近くにあった姿に手を伸ばしてみた。
「……キョン!」
 それは俺が思っていた以上に近くにあり、柔らかいそれに触れた。
 視力が回復した真っ先に見えたのは、大写しになったハルヒの顔であった。俺はその頬に手を触れていたのだ。俺はそれに気づいても、そこから手を離そうとはしなかった。
 ハルヒも、俺の手を両手で握って離さないようにしていた。光り輝く滴がぽたぽたと俺の顔に落ちた。それは温かかった、しかしそれは今までの嘔吐感を伴うような生温かさとはまるで違っていた。
 視野を広げてみると、ハルヒの横に長門の姿もあった。どことなく、俺の状態を気遣うような、そんな視線を感じた。首をわずかに横に動かして周囲を見ると、携帯で誰かと連絡を取っている古泉と、その近くで地面に座り込んでいる朝比奈さんの姿が見えた。皆に迷惑をかけて申し訳ないが、今の俺には視線を投げかけることで精一杯であった。
 自分の姿はよく見えないのだが、元の世界に戻ってきても俺は血まみれになっているのだろうか。だから朝比奈さんは少し距離を置いて座り込んでいるのだろう。それを考えればハルヒはよくも血でベタベタな俺に今にも抱きつかん距離にいられるものだ。
「何をどうしたらこんな……になるのよ……!」
 なにか、一言でも掛けてやれないものか、それすらも叶いそうになかった。一旦目覚めたにもかかわらず、強烈な眠気に襲われていた。あの狂気の世界の中では、倒れてしまいそうなくらいに披露していたにもかかわらず全く眠気は無かったのだが、その恐怖からも解放された今になって、意識を保てないほどの睡魔に襲われていたのだ。目蓋が重い、もう開いていられそうにない。
 段々と重さを増す目蓋に耐えられなくなって閉じた瞬間、強い地震でもあったかのように激しく揺さぶられた。
「キョン……!? 目を開けなさいよ!」
 ハルヒは、俺が力尽きたと思ってしまったのかもしれない。勘違いさせて済まないとは思うものの、俺はもう目を開けることはできそうになかった。数年分の恐怖体験をして疲れきってるんだ、ちょっと休ませてくれ、心身ともに。
 
 俺はハルヒの叫び声を聞きながら、半ば気絶に近い眠りについた。
 
 
 
 それからどのくらいの時間が経過したのか、再び目を覚ました時には、あの時と同様に眩しい光が眼の中に差し込んできていた。
「ぅ……んん……」
 だが、前回とは打って変わって瞬く間に明順応し、すぐに自分がどこにいるかを把握することが出来た。清潔感が漂っている、どうやら病院の個室のベッドに寝ていたようだ。起き上がって、一呼吸ついてみる。アルコール消毒液だろうか、何か鼻につくにおいがする。
 真正面は壁である。横を向くと、俺をじっと見つめるハルヒ、長門、朝比奈さん、古泉……
 これだけ至近距離に4人もいて、なぜ気付かなかったのだろうか。あの狂気の世界から解放されたせいか、周囲の気配を読み取る力が一気に抜けてしまったようであった。
 これだけ警戒心がなくなってしまうのも、それはそれで日常でも困ってしまうかもしれないなどと考えていたその時、体が激しく揺れてた。
「キョン!」
 ハルヒが飛びついてきたのだった。あまりの勢いに、首が飛んでしまうかと思った。
「勝手にどっかに行ったかと思ったら……、散々心配かけて、タダで済むと思ってるの!?」
「ああ、本当にすまん」
 ハルヒは半泣きであった。そりゃそうだろうな、突然いなくなったかと思ったら、まるで死体のような状態で見つかったのだから。
「あの時は、本当に驚きました。僕も貴方が死んでしまったのかと思たくらいでしたから」
 古泉の話によると、俺は部室で寝ていた(ここまでは自分でも記憶している)のだが、突如として姿を消し、そのまま連絡も取れなくなっていたらしい。みんなで探したのだが結局見つからず、翌朝に早く学校に集合しようと登校してきたところ、グラウンドで血まみれになって倒れているのを発見したのだそうだ。今現在は俺が発見された翌日だという、つまり搬送先の病院で丸一日ぐっすりと眠っていたのだ。
 俺を発見した時には、血まみれの俺を見てハルヒと朝比奈さんはショックで卒倒寸前になり、長門も硬直していたそうだ。そして意識を取り戻した後は俺が見た通り。そして俺が眠ってしまった直後から古泉が呼んだ救急車が到着するまで、ハルヒは泣きながら俺を揺さぶり続けていたそうだ。ますます申し訳なく感じる。
 古泉の通報により俺は(機関の)病院に搬送され、一日ぐっすりと眠り続け、現在に至るという訳だ。
 
 古泉が、それを離し終えた時、ハルヒは立ち上がった。両手を腰に当て、こちらを見ている。その表情を見るに、どうやら俺は何らかの覚悟をしなければならないらしい。
「明日、アンタが体験した神隠しについてたっぷり話してもらうから準備してなさいよ!」
「断る」
 自分でも驚く程の即答であった。とたんにハルヒの表情が不満な色に染まっていく。
「どうしてよ、神隠しなんて滅多と遭遇できるものではないのよ、それを調べないでSOS団が成り立つとでm」
「見ただろ? 俺がどんな状態で見つかったか」
 別に意図的にそうしたわけではなかったが、ハルヒを遮った俺の声は細々としていた。それを聞いたハルヒは閉口してしまった。あの光景を思い出させるようで申し訳なかったのだが、自分もあの血みどろな世界のことは今は考えたくなかった。
「少なくとも、今は、勘弁してくれ」
 今は、というのを付加したのは、ハルヒがあんまり落ち込んでしまわないようにするためだ。あんまり下を向いてほしくなかった。
「……そう、じゃあ楽になった頃でもいいから教えなさいよ、分かったわね」
「ああ」
 ハルヒはくるっとまわって背を向けると、さっさと病室を出て行ってしまった。あいつも少なからずいつもと様子が違ったので若干心配ではあるが、
 
 その後、古泉と長門が俺の身に何が起こっていたのか説明を要求してきた。
「貴方が行方不明になるとほぼ同時に、詳細不明の閉鎖空間が観測されたのですが、貴方の身に一体何が起こっていたのですか?」
「あの空間は極めて特殊だった。我々も分析が出来ないうちに消滅してしまったので詳細が一切分かっていない」
「そうか、あれも閉鎖空間だったのか」
「あれ『も』とはどういうことでしょうか。何があったのか教えていただいてもよろしいでしょうか」
「なあ、若干トラウマな場面があるからあまり話したくないんだが……」
「貴方が説明できる範囲内で結構ですので。我々としては貴方の口からお聞きしたいのですが、よろしいですか?」
「……分かったよ」
 俺はその全て(アイツの世界の出来事も含めて)話した。古泉は勿論のこと、長門も驚愕の色を見せていた。
 
 
 とある世界の惨劇のこと。
 何が原因かは知らないがハルヒが暴走し、自分の意に反して皆を殺してしまったこと。
 自分の力を呪ったハルヒによって生み出されて能力を押し付けられた少女が、唯一生き残っていた「俺」にすべてを託したこと。
 「俺」は目的を達成することが出来ず、ハルヒに殺されてしまったこと。
 世界再建を果たすため、地獄の神を呼び出して俺を生贄にしようとしたこと。
 俺はハルヒ殺して、その世界を終わらせたこと。
 
 
 俺が話している間、二人は黙って聞いていた。絶句していただけかもしれないな、二人が予想していたよりも凄惨だっただろうから。
「そんなことが……」
 古泉はそれだけしか言うことが出来なかった。
「こちらの世界で起こり得る可能性も考慮に入れるべきだと思われる」
「おいおい、向こうのハルヒとこっちのハルヒは違うt」
「キョン君!」
 突然部屋に飛び込んで来たものだから俺は驚いて数センチ飛びあがってしまった。あんな経験をして精神が細くなっているのだから威力は通常の数十倍であったといっても過言ではない。
「朝倉……脅かすなよ」
「k……キョン君!」
 だからさっきから何だ、呼んでばかりじゃないか。
 朝倉は扉口に立ったまま、唇をぐっとかんでいる。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 いきなり登場したかと思うと、いきなり泣き出した。
 お前も生きてて良かったとか、酷い経験だったなとか、そういうことを言うことが出来ず、朝倉がボロボロに泣いていることに呆然とするしかなかった。
 
 朝倉は部室から俺が姿を消したと同時に発生した空間への侵入をして消息を絶った後、部室で倒れていたのを発見されたそうだ。俺と同様に血まみれで意識が朦朧とした状態だったらしい。
 どうやらあの少女によってこの世界に強制的に戻されたようである。しかしそれならそうと言ってくれればいいものを。もっと優しい方法はなかったのだろうか。お陰で朝倉はさっきからずっと泣きながら俺にしがみついているのである。
「なあ、いい加減離れてくれないか」
「だって一人で怖かったんだもん……。報告したのに統合思念体も半信半疑だし……、あの時は私だってhntnkwkttndkr~!」
 あんな思いをしてまで調査したのに信じてもらえなかったのか、そりゃ可哀想に。俺はしばらくの間、泣きじゃくる朝倉をあやすことになったのであった。
 
 部室で倒れていた朝倉を発見した時には本当に、殺されたんだと思っていたが、あいつはそのつもりはなかったのだ。
「じゃああの死体は何だったんだ」
「たぶん、キョン君に信じ込ませるためにつくった偽物だと思うんだけど」
 俺も朝倉と同じ考えもあったのだが、というかいい加減離れてくれないか。
「だが、あの子は創造の力はないと言っていたからな、矛盾が生じるぞ」
「その程度しかなく、それは世界再建に比べれば無いに等しいと言ったところでしょうか」
 古泉が言った言葉に妙に納得してしまった。滅んだ世界を取り戻すことに比べれば、一つの死体の偽物を作るくらいは遥かに容易いのかもしれない。
 
 
 
 
 俺と朝倉は、血まみれだったにも関わらず外傷はなく、その後の体調は良好であった(精神的ダメージはかなりのものだったが)。数日後には共に退院を果たした。
 ハルヒに要求されていた今回の神隠しについての説明は、まだ先にしてもらっている。もう少し記憶があいまいになった頃にしたいのである、今は思い出すだけで震えが止まらなくなりそうだ。
 
 
 とある午後、俺は一人であてもなく歩き回っていた。なんとなく、もとの世界が見たくなったのだ。
 子供のはしゃぐ声、車のエンジン音、日常の騒音がこれほど心地よいのも珍しいかもしれないな。
 
「!」
 耳鳴りがした。気のせいではない、間違いなくあの耳鳴りである。
 その瞬間、心臓が急速に鼓動の速さを上げた。
 全く痛みが無いし、あの時に比べたらかなり弱いものである。しかし、まだあいつがこの世界に干渉しているとしたら……。
「まさかな……」
 
 そのまさかだった。今回は振り返る必要もなく、目の前はいつの間にかあの少女とハルヒの姿があった。
 だが、俺が疑ったのが間違いだったようだ。思わず口元がゆるんでしまった。
「ったく、驚かせるなよ」
「この方が分かりやすいと思ったので」
 少女は血のような赤ではなく淡いピンクのワンピースを着て白い帽子を被っていたし、ハルヒはベージュのブレザーと緑のプリーツスカートという格好だった。
「似合ってるじゃないか」
 そう言うと、少女は微笑んだ。
「どうしてここにいるんだ?」
「お礼を言いに来たんです。本当にありがとうございます」
 少女は帽子を一旦脱いで深く礼をした。あの時とは違って長門のような冷静な口調ではなくなっていた。
「あの時は、ごめんなさい。分離した私には、闇の能力しか無かったんです。だから、貴方を手助けすることが出来なくて、それどころか……」
 帽子をかぶりなおしながら話していたものの、顔は段々と下を向いていき声も小さくなっていった。
 それに比べ、ハルヒは大人しい。こちらを見ないようにしているのか、うつ向いたままである。そのハルヒが、ようやく口を開いた。
「あたしも、あんなことをして、許されるものじゃないのは分かってるわ。でも、謝るべきだって思ったのよ」
 二人共うつ向いてしまい、なんとなく暗い雰囲気が漂う。
「あのなぁ、謝って済むものかどうかはこっちが決めることだぜ。念のために聞いておくが、ここに来たってことは世界は元に戻ったんだな」
「はい」
 少女がこちらを見上げた。可愛らしいこの少女が、あんな惨劇の最中にいたのだから驚きだ。
「そうか、そりゃあ良かった。だったらもういいじゃないか。終わり良ければ全て良しって事で片付けちまおうぜ」
「それで、いいんですか?」
「ああ、いつまでも悩んでも仕方ないだろ?」
「何で、何でそんな簡単に……? 少なくとも、あたしはアンタを」
 ハルヒが一歩前に出たが、俺はそれを制するようにして言った。
「確かに、俺はお前に散々ビビらされたが、恨んでいる訳じゃない。お前の世界が戻って良かったと思ってる、本当だぞ」
「……ありがと」
「ああそうだ」
 この付け足し宣言に何か覚悟をしているのか、ハルヒの表情が引き締まっていた。
「あの時のことについてお前に一つ言うとするならば、だな」
 この湿っぽい空気をどうしようか、そう考えて瞬間的に出た言葉が、
「服を着てほしかった」
 ……これだ。
 それを聞いた少女は下を向き、肩を揺すっていた。
「ばっ馬鹿言ってんじゃないわよ、あたしだって必死だったんだからね!」
 そして帽子を深く被っていつまでも笑いをこらえている少女を引っ張って歩いて行く。
 
 俺達は場を近くの公園に移し、ベンチに座って話した。ハルヒが真ん中に、俺と少女がそれを挟むようにして座った。
 俺は少女に訊いた。
「朝倉を強制送還したのは、お前なんだよな?」
「はい。あの世界に無関係の人がいると悪影響があると思ったので、強制的にあの世界から元の世界へ戻そうとしたんです。朝倉さんは勿論事情を知らないので大変怯えてしまって……、すみません」
 わざわざダミーの死体を作らなくても、と言おうとしたが止めておいた。
「分かった、後からあいつに伝えておくよ」
 朝倉はしばらくの間、長門の部屋で一緒に生活するそうだ。あんな凄惨な光景を見たら誰だって夜が怖くなるさ、俺も実際そうだからな。この歳で夜のトイレが怖いなんて情けない話ではあるが。
 
「ところで、あの後お前の世界はどうなったんだ?」
「残念ながら、『禁則事項』にした方が賢明みたいです。平行世界とはいえ、多くを語るのは危険ですから」
「そうか……まあ、仕方ないか」
「私自身の処遇についてはお話しします。彼女がこのままでも良いと言ったので、妹ということになりました」
「へぇ、そりゃあよかったじゃないか。じゃあハルヒ、お前は姉なのか。しっかり者の妹に負けんなよ」
 いきなり呼びかけられたからか、ハルヒは驚いていた。
「……うん」
 ハルヒはまだ暗い表情だ。どうしたものか。
 俺は右腕をまっすぐ伸ばし、現状打破を試みた。
 バシッ
「いっ……」
 デコピンを喰らわせてやった。
「懺悔タイムは終了だ。いつまでも落ち込むな。世界が戻ったことを喜べ、な」
 涙目になっているハルヒの肩を叩く。寄り添う少女も、ハルヒの手を握っていた。
「……そうね」
「やっぱりお前には、そっちの服が似合うよ、ハルヒもな」
「ありがとうございます。姉さん、そろそろ戻らないと、みんなが心配してますよ」
 二人は立ち上がった。そろそろお別れか。
「多分、もう会うことはないと思うから言っとくわね。世界を戻せたのは貴方のお陰よ、ありがとね」
「二人とも幸せにな。じゃあこっちも最後に一ついいか? お前の名前って何になったんだ?」
 少女は、太陽のような笑みで答えた。
 
「ハルナといいます」

 

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