※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



「…あんた何してんの?」
「見りゃわかるだろ?」

…ある晴れた日の昼下がり、駅前の喫茶店にてハルヒとばったり出くわした。

「ここのバイトしてるの?」
「あぁ」
「ふーん…」

…これだけじゃバイト始めた経緯が全くわからんな。
…とりあえず少しだけ時間を遡ってみようか。



















朝倉迷走事件から数ヶ月後、俺は絶望的なまでに金欠をこじらせていた。
勘の良い人ならピンときたであろうが、俺は毎週開催される不思議探索とやらの罰ゲームで激しく金を浪費しているのだ。

だったら罰ゲームなんざ受けないように早く集合場所に行けって?
そうしたいのは山々なんだが、ハルヒと2人っきりの探索以来どんなに早く行っても俺がビリになっちまうんだ。

『ふふっ、それも涼宮さんが望んだことかもしれませんよ?』

うるさいぞ古泉。
人の脳内にまで勝手にでてくるな。

まぁ生活に支障をもたらすほどかと言ったらそうでもない。

最近は罰ゲームの時も俺が結構カツカツなのを見越してあんまし高いものを頼まなくなってくれた(長門除く)
ハルヒなんか最悪パフェ等をおかわりすることもあったが…もう無くなったかな(長門はする)
本当にキツい時なんか言えば罰ゲームを免除してくれる時もあった(長門は喫茶店を離れようとしない)

そのこともあってか少しは自分のために使う分ができたわけで。

…やっと欲しかったものが買えるよ。

これが冬も終わりそうなころのお話。

「おいキョン、何一人でブツブツ言ってるんだ?」
「あぁ、過去を振り返ってた」
「…なんだこいつ」


冗談だ。
冷たい目で見るな。

「冷たいと言えばそろそろ暖かくなってきたなぁ」

本当だ。
あれだけ氷河期のように冷え切ってた俺の財布も少しずつ膨らんできた。

「………」
「…わかったよ。自分の世界には入らない」
「しっかりしろよなぁ。涼宮と絡んでるうちに思考が麻痺しちまったのか?」

…別にそういうわけじゃ。
ってか今気がついたんだが

「何で俺は谷口と一緒にいるんだ?」
「………」

…わかった。俺が悪かった。
その目は止めてくれ。

「ナンパだよ!ナ!ン!パ!今日は付き合ってくれるって言ったじゃねぇか!!」
「そんなこと言ったっけか?」

…すっかり覚えてないな…

「ほら!早速行こうぜ!とりあえず俺はあっちをあたるからキョンはそっちな。成果があったら連絡して合流だからな!」

そう言うと谷口は意気揚々とかけていった。

………。

…帰るか。

スマン谷口。
正直こんなくだらない事に時間と労力は費やしたく無いんだ。

『猫に餌やるの忘れてた』

というメールを谷口に送って俺は帰路に着くことにした。

とりあえずミュージックプレイヤーで音楽でも聴くか。
帰り道に聴く曲によって歩幅を変えるのが俺の密かな楽しみでもある。
…誰だ、寂しいとか言った奴。

さて、今日は何を聴こうかなっと…

「………」

………。

…電池が切れてら。

あれか、谷口の怨みか。
くそ、付き合ってやるべきだった。

まぁ金が無いのはいつものことというかなんというか。
特に痛手というわけでは無いんだが…

ふと、家のカレンダーに目をやる。

…間に合わんな。このままじゃ。
どう考えても小遣いだけじゃキツいものがある。

…金があるうちに買っておくべきだったか…

…そういうわけで、急遽資金が必要となった俺は、いつも不思議探索の罰ゲーム執行の場として使われている喫茶店でバイトすることになったのである。

















「…と、言うわけだ」
「…あんたさっきから何ブツブツ言ってんの?」
「気にするな。知らない人への親切だ」
「まぁいいわ。で、何?あんた金欠なの?」
「…財布落とした」
「馬鹿ねぇ」

呆れた顔でハルヒは言う。

「せっかく罰ゲームを緩くしてあげてるのに」
「…返す言葉もない」

とりあえず知り合いとはいえいちお客様なのでハルヒを空席へ案内する。

「メニュー決まったら言ってくれ」
「…あんたねぇ、店員側ならもっとまともな営業態度とりなさいよ」

…もっともだな。

「では、注文が決まりましたらお呼びください」
「………」
「お客様?どうなさいました?」
「…ぷっ…あははははは!!!」
「…ハルヒ?」
「駄目だ!おっかしい!あんたがそんなに真面目な態度とると面白くて…あははは!」
…俺、もう行っていいか?

「ゴメンゴメン…えっとねぇ…ホットコーヒーちょうだい」
「了解。少し待っててくれ」

そんなに真面目なのは似合わないのかね俺は。
そりゃあまぁ普段からグダーっとしているにはしているんだが。

「あ、キョンくん。今日はもうあがってもいいですよ」
「わかりました。これ届けたらそうさせてもらいます」

バイト先の先輩からもキョンくんと呼ばれるのもなんだかなぁ…というかあの先輩、どこかで見たことがあるような…

ところで、いつになったら俺が本名で呼ばれる日がくるんだろうね。

『禁則事項です☆』

…脳内とはいえそりゃ無いですよ朝比奈さん。

「…どうしたのキョン?苦虫を潰したような顔して」
「…考えごとしてた。ほら、ホットコーヒー。伝票ここに置いとくぞ」
「うん、ありがと。ねぇキョン」
「ん?どうした?」
「今日はバイトいつ終わるの?」

あぁ、もうあがっていいってさ。
「じゃあちょっと話し相手になってくれない?もう暇で暇で」
「別に構わんぞ。だが制服のままじゃ悪いから着替えてくる」

暇、ねぇ。
朝比奈さんの都合がなかなかつかなくて集まれる機会が少なくなったからなぁ。

高校三年生にもなると受験勉強が大変になるようで、春休みっから追加授業が沢山あるみたいだ。
…俺も受験について悩むべき年なんだよなぁ…

「普段の勉強をしっかりしてれば慌てる必要無いわよ」
「…ごもっともな意見で」

そう言って裏に回る。

「あそこの女の子、キョンくんの知り合いですか?」
「あぁ、同級生です」
「ふふっ…可愛いんですね」

…何で俺を見てニヤニヤしてるんですか。

「別に、微笑ましいなぁって」
「………」
「…ほら、早く行ってあげたらどうですか?女の子を待たせたらいけませんよ?」

…微笑ましい、か。


「喜緑さーん。このアイスティー運んでもらえる?」
「わかりました。じゃあキョンくん、また」
「あ、はい」

…喜緑さん?
どこかで聞いた気が…気のせいかな?

「あ、やっときた…また変な顔してる」
「…だから考えごとだって」

変な顔って…

「やっぱりキョンはグデーっとしてるのがしっくりくるわね」
「…そーかい」
「で、お金貯めて何か買うつもりなの?」
「あぁ、そうだが…」
「何買うの?」

…秘密だ。

「言いなさいよ」
「ヤダ。馬鹿にするから」
「言 い な さ い」

待て!耳引っ張るな!
「言ったら離してあげてもいいわよ?」
「無茶苦茶言うな!痛い痛い!」
「…しょうがないわね」

…腫れてないか?耳。

「あといくらくらい必要なの?」
「…っと…こんだけ」
「…多くない?」
「…かなぁ。だが自分の中で妥協したくないんだ」
「ふーん…」

…何考えてんだ?

「決めた!」
「…何をだ」
「あたしもここでバイトするわ!」

はぁ!?何でまた!?

「だってお金足りないんでしょ?少しぐらいなら貸してあげるわよ」

…耳は正常か?
…こいつは涼宮ハルヒか?

「…怒るわよ?」
「すまん。いやっ…てか借りるのはちょっと…」
「だってあんたバイトばっかりしてたら団活も勉強も疎かにするじゃない」

…いや、それはそうなんだが…今月分のバイト代で十分事足りるというか…

「だから団長のあたしが助けてあげるわ!」

…そもそも買いたいものが買いたいものなんでお前に助けてもらうと意味を成さないというか…

「すみませーん!ここってまだバイト募集してますか?…はい…はい、わかりました。明日から入っていいって!」

…履歴書も面接も何も無しかよ。

「ちなみに貸した分は100倍返しだから!!」

…もうなんでもいいや。

『これも涼宮さんが…』

古泉うるさい黙れ。


















で、次の日。

「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」

…元気いいなぁあいつ。

「元気なのはいいことっさ!」
「あ、鶴屋さんに朝比奈さん。いらっしゃいませ」
「こんにちはー。涼宮さんにバイトしてるって連絡がきて、だったらたまには外で勉強してみようって、鶴屋さんと」

そうだったんですか。

…それはいいとして…

「…店の外の二人はどうしたんですか?」
「ん?外の二人…え!?」


したり顔で手を振る古泉と
…ちょっと、泣かないでください朝比奈さん

「………」

窓にへばりついて中を凝視してる長門がいた。
あぁ、涎垂れてる垂れてる…掃除するの俺なんだぞ畜生。

「見てないで入ったらどうなんだ古泉。それと長門を止めてくれ」
「混んでいるのでどうしようかと思っていたところでした。ほら、長門さん、中に入りましょう」
「…お腹すいた」
「何か頼めばいいじゃないですか」

やれやれ、結局全員集合か。
お前らもハルヒから連絡受けたのか?

「えぇ、集合がかかったわけじゃないんですが…」
「あ、なんだ!みんな結局来ちゃったの?」
「お、ハルにゃん!バイトの制服にあうねぇ!」
「…これも涼宮さんが」
「もういい、その台詞は三回目だ」
「…はて、いつ言いましたっけ?」

…気にするな。

「混んでるからみんな相席でもいいかしら?」
「構わないっさ!」
「わたしもいいですよ、久しぶりにみんなとお話したいです」
「…問題ない」
「じゃああちらの席で、古泉も大丈夫だろ?」
「もちろんです」

というわけで4人を席に案内する。

「あたしあっちの注文受けてくるから」
「了解、メニューが決まったら呼んでくれ」

といってメニュー表を渡す。

「………」
「…何でしょうか長門さん」

古泉が表を受け取るや否や長門がいきなり手を挙げた。

「…メニューが決まったら呼んでと言ったのはあなた」

あぁ、そういうことか。

「…カレーライスを所望する」
「…すまん、カレーは扱ってないんだ」
「…何故?」

…何故って言われてもなぁ…

「キョンくん、私に任せてください」
「あ、じゃあ喜緑さんお願いします」

いつの間に来たのか、喜緑さんが真後ろに立っていた。
…足音しなかったぞおい。

とりあえず長門は喜緑さんに任せて他の仕事に回ろう。

そう思い歩き出した刹那。

ガッシャーン!!!!

ガラスか何かが派手に割られる音と。

「はわわわわわわ…」

と、可愛らしい朝比奈さんの悲鳴が聞こえてきた。

|