あ~忌々しい。
 おいっ、そこ。
 それはお前のじゃないだろとか言うなよ。
 こんな状況に置かれた俺の身になってもらいたい。
「キョンくん、あ~んするさ」
「ちょっ、流石に谷口達の手前じゃ恥ずかしいですよ」
 おおっ!? 俺たちがいなかったらやったてのか?
「なんだか、ほほえましいねあの二人」
 この男、聖人君子かっ?
「ほほえましいだと? おい国木田、熱でもあるんじゃねえの?」
 これはな、ほほえましいなんてもんじゃない。
 これはただの桃色空間だ!
 愛する彼の為に朝早く起きて弁当を作り、それを『あ~ん』で食べさせるという
バカップルの伝統技を桃色空間で披露しているにほかならんだろ?
 それにキョン!
 軽く鶴屋さんの腰に手をまわすな。
 今は昼だぞ。
 昼メガネの時間だぞ!
 分かってんのか?
「おやっ 谷口くんはキョンくんが羨ましいのかい?」
「ええ、そうですよ。悪いですか? 貴女のような美人な彼女に弁当を作ってもらって
挙句の果てには『あ~ん』ですよ? 羨ましくない筈がないでしょうに」
「そうかいそうかいっ谷口くんは御上手だねっ、じゃあそんな谷口くんに… あ~んするさ」
「ぬをっ、ここで乗ったら俺は負け犬だ負け犬だ負け犬だ… あ~ん」パクッ
「て、食べてるじゃねえか…」
「はは、これからは俺のことを負け犬と呼ぶがいい… あ、鶴屋さん唐揚げ美味しかったですよ。
ありがとうございます」
「いいよいいよっ、じゃあ次はキョンくんの番だよっ」
「やれやれ…」
「やれやれとか言いつつ彼も満更じゃなさそうですね?」
 全くだ… ってなんだこのニヤケ面!?
 こ、古泉か… 驚かせやがって何時の間にいやがったんだ?
「おや、どうしました谷口くん? そんな驚いた顔をして」
 テメーのせいだよ!
「そらいきなり顔の横にお前のニヤケ面があったら誰でもそんな顔するぞ… 
で、何の用だ?」
「いや~ 実はですね、バイト先の上司から映画のペアチケットを頂いたのですが、
いかんせん見に行く暇が無いもので… それにペアってこともありますし、
あなたと鶴屋さんに差し上げようと思ったのですよ」
「おお、そうだったのか… だったら何時も放課後部室に顔出しているんだからそこで渡せば良かったんじゃないか?」
「それが、今日はバイトが忙しそうなので部室に寄っていけそうも無かったものでして…」
「多丸さんも結構人使い荒いんだな…」
 誰だよ多丸さんって!?
 っか、俺らのこと忘れてねえか?
 さながら背景か? 俺たちは背景だってか??
 一応、今回は俺視点だってこと忘れるなよ!
「まあ雇って頂いている身としては贅沢言えないですけどね… それに」
「それになんだ?」
「いや、あなたと鶴屋さんのほほえましい様子は中々噂になっていまして、
それを拝見しに参ろうと思ったっていうのもあるんですよ」
 よしっ、古泉やっちまえ。
 その桃色空間を破壊してくれ
「なっ… 全くお前も暇人だな…」
「何をおっしゃいますか? さっきも言ったようにバイトで忙しいのですよ」
「はあ~、やれやれ…」
 しめしめ、これで奴らの桃色空間も消滅…
「じゃあキョンくん、古泉くんの為にも今まで以上にほほえましくいくよっ」
 って逆効果かいっ!
 というより『ほほえましくいく』ってなんだよ!?
「鶴屋さん… ほほえましくいくってなんですか…」
「んん~、よく分かんないからとりあえずこのままベタベタしてれば良いんじゃないかな? 
あたしはそれのがいいしねっ」
「ベタベタって… それなりに恥ずかしいんですけど…」
「いいのいいのっ!」
 駄目だ…
 桃色空間に当てられすぎた…
 もう俺のHPは尽きたぜ…
 
 
「全くキョンの奴…」
「またそれかい谷口? 昼休みからずっと愚痴ってるじゃないか」
「仕方が無いだろ、あんな桃色空間に昼の大事な時間あてられ続けていたんだぞ。
しかもここ最近はずっとだ… 俺はお前みたいに人間が出来ていないから愚痴りたくもなるさ… 
それになんでキョンばっか…」
「そんなこと言うなら谷口も頑張って彼女作ればいいじゃん?」
 このショタめ…
 それが出来たら苦労せんのだ!
「あ、佐々木さん。もういたんだね」
 佐々木?
 大魔神か? それともガンバのか? はたまたバサラか?
 ……うん、A+だな
 いやAAでもいいか?
「遅刻とは君らしくないじゃないか国木田、僕は五分前にはもうここに到着していたんだが? 
さてどうやって責任をとってもらおうかな?」
 僕… ええ~っと、女の子ですよね佐々木さんは?
 なのに僕??
 ……………………
 ああ何だ、ただの僕っ娘か。
 …………って、ただの僕っ娘ってなんだよ?
 てか、かわいいいなおいっ。
 この容姿で僕っ娘、只者じゃないな…
「ところで、そちらの方はいつも君が言ってる谷口君かい?」
「あ、紹介するよこちr「はいっ、いつも国木田の言っている谷口です。
国木田がいつもお世話になっています。あの、国木田とはどんな関係でいらっしゃるんですか?」
「くくくっ、なんだか面白い人だね。僕と国木田とは中学校時代からの付き合いなんだよ。
あ、それにお世話になっているのは寧ろ僕の方さ」
 な…、中学校からの付き合いだと!?
「…国木田、貴様こんなかわいい彼女を持っていながらのさっきの発言… 許すまじ!天誅じゃ!!」
 くらえ独り身の悲しみを乗せたこの拳!!
「ちょ、谷口なんか勘違いしてるって」
「俺はなにも勘違いしていない!」
「た、谷口、話せば分かる」
「問答無用」
 
 
「なんだ、中学校時代の同級生だったんですか、これは失礼失礼」
「……ほんとに失礼だよ…」
 いや~、すまんすまん。
 昼休みのこともあってか取り乱しちまったようだ
「佐々木さんも佐々木さんだよ、笑ってないでさっさと止めてくれれば良かったのに…」
「いや~、すまないな国木田。君と谷口君とのやり取りが中々おもしろかったもんでね、
ついつい見入ってしまったんだよ」
 おもしろいって…
 この娘ちょっとずれてるのか?
 僕っ娘だし。
「はあ~、まあいっか… て、もうこんな時間だ。早く行かないと遅刻しちゃうよ佐々木さん」
 ん? 行くって何処へだ?
「本当だね… だが国木田、今から急いだとしても到底授業開始の時間には間に合いそうもないな、
だからそんなに急ぐ必要はないんじゃないか?」
「そんなこと言ってちゃだめだよ。ほら早く行こうよ佐々木さん」
「お、おいっ国木田、行くって何処に行くんだよ?」
「ああ、ゴメンゴメン今から塾なんだ。だから、また明日ね」
「そういうことだ谷口君、またいつか会おう」
 タタタッ
ああ、今って一人ぼっちになったな…
 …………
 なんか目から汗が…
 しかし、いくら付き合ってないとはいえ国木田め…
 あんなかわいい女の子と仲良く塾とは…
 くそ~~~、なんで俺にはそういうのがないかなあ~?
 …………いや、待てよ。
 キョンに鶴屋さんという彼女が出来た。
 国木田にも佐々木さんという美人な人がいる。
 この流れ… 次は俺の番だな!
 ふふっ、天は俺を見放さなかったようだ…
 カムオン、可愛い子ちゃん!!
 
 
 
 
「で結局は見放されちゃったんだよね?」
「…………うるせえ~、俺が見放したんだよ…」
「強がってばかりじゃ駄目だよ谷口君、少しは素直にならないと出来るものも出来ないよ」
 素直にってねえ…
 それに結構長い付き合いになるんだから君付けで呼ばないでください… なんか寂しくなる。
「ねえねえ、お母さん」
 ああ、子供はいいよな無邪気でさ…
 俺にもこんな時代があったと思うと…
 ああ、また目から汗が…
「なんだい?」
「雪だよ雪」
 雪? おいおい国木田夫妻、子供の教育はしっかりしておけよ。
 九月に雪なんか降るわけないだろ…
「あ、ほんとだ…、雪だね」
「え、ほんとに?」
 え? マジで雪降ってんの??
 くあ~っ、ついに異常気象もここまできたか。
 本格的に地球もヤバイんじゃねえか?
 そろそろ火星への移住とか真剣に考えたほうが良さそうだな。
「キレイだね…」
「ホント…」
 ああ、いいよな夫婦ってのは…
 桃色空間とは違ってなんかこう、言葉では言い表せない幸せな感じがするんだよな。
 はあ~、何時になったら俺にもあんな空間ができるかね?
 クイッ クイッ
「ん?」
「おじちゃんもこっち来て雪見ようよ」
 にしても、遺伝子通りだよな。
 二人に似てかわいい娘になったもんだ。
 俺も結婚してこんな娘がほしいな。
「はいはい、今、行きますよっと」
 だけど、そう考えると俺のルックスの不足を補えるだけの美人と結婚しないと駄目か…
 …ますます元気なくなってきた…
 まあ今こうやって過ごすのも楽しいし、女みたいに結婚結婚って焦る必要はないか?
 …………多分。
「お父さん抱っこして~」
 おっと、いけねえいけねえ。
「こら、今は駄目だぞ」
「なんで?」
 あんな幸せそうな雰囲気のとこ邪魔しちゃ駄目だろ… 
なんて、こんな五つの娘に言っても分かんないか。
「ええ~っと、あれだ… そう、おじちゃんが抱っこしたいからだよ。ほら、おいでおいで」
「ええ~、おじちゃんじゃヤダ~」
 こんな子供にも拒否られる俺っていったいなんだろな…
 またまた目から汗が…

 


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