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(好感日記。Ⅰの続きです。)

 

好感日記。Ⅱ

 

その後ハルヒと別れた俺は、一人机に向かっていた。そう、例の交換日記を書くためである。
しかし俺はものの3分で恐ろしく大変なことをしていると気付かされた。まったく思い浮かばない。
そもそも日記なんて小学生のときに3日坊主で終ったような俺だ。それも読むのは自分だけでなくハルヒもである。しかも先ほど、『面白いことを書かなくては死刑宣告』を受けたばかりだ。とりあえずあーとかうーとか唸りながらペンを走らせた。

【あー・・・まぁ今日からお前と交換日記をするわけだが・・・。自分から提案しておいて悪いのだが俺ははっきいってこういうのは苦手だ。ゆえに、お前を心底楽しませることはできないかもしれないがまぁ、暇つぶし程度に読んでくれ。今日は古泉とポーカーをやったんだ。しかも金を賭けてな。まったく・・・誰かのせいで俺の財布は年中無休で悲鳴を上げてるからな。古泉は何を血迷ったかあっさり承諾しやがった。まぁ結果は言うまでもなく俺の圧勝だ。古泉には悪いが儲けさせてもらったぞ。ああ・・・こんなことを書いたらどうせまたお前に巻き上げられるな。まぁいい。そのために賭けをしたようなもんだ。たまには雑用の俺にもねぎらいのお言葉がほしいものさ。・・・なんてことは期待していないがまぁ言う気があれば言ってくれ。
明日で一週間も終わりだな。土日はどうせ探索で消えるんだろう?そして俺の財布から金も消えるんだろう?我ながら旨いことを言ったな。まぁ金は消えるがそれなりに俺も楽しい思いはしてるさ。苦労のほうが若干大きいがな。じゃ、次はお前の番だ。よろしく頼むぞ。】

俺は2,3度読み返して、まぁこんなもんだろうとペンを置いた。
気付けば時計の針は夜の12時だった。いかん、寝なくては。
俺は夢に落ちる間際こんなことを考えていた。『ハルヒはこれを読んでどんな反応をするんだろうな・・・。』


「キョンくーん、あーさだよっ!」
「ぐふっ・・・」
いつものように飛び掛る妹・・・。妹よ、もう少しお兄様をいたわりなさい。
「だって起きないキョン君が悪いんだよ?お母さんがご飯食べなさいって言ってるよー」
まぁそういわれてしまえばそこまでなんだがな・・・。

学校に着くと、いつものようにハルヒが座っていた。
「よう、ハルヒ。おはよう」
「おはよう。」
素っ気ないが数日前と比べればぜんぜんいいほうだろう。
「ほら、書いてきたぞ。今日はお前の番だ。」
そういってノートを差し出すとハルヒは何故かちょっと顔を赤くして受け取った。
「そう。もちろんあたしが楽しめる内容なんでしょうね?」
「さぁな。それを楽しいと感じるかどうかはお前次第さ。」
てっきりハルヒはすぐに読んで、『くだらない!やっぱ死刑よ!!』といわれるものだと思っていたが意外にもハルヒはそのノートを
大切そうにカバンにしまった。
「読まないのか?」
「家に帰ってよむわ。だって・・・楽しみは・・・最後に、とっておきたいじゃない・・・」
ハルヒの声は尻すぼみでなんと言っているかわからなかったがあえて聞かないことにしておいた。


~Haruhi side~
あ、キョンがきた。
昨日いきなり提案された交換日記案。正直かなり嬉しかった。
でもそんな交換日記ごときで騒ぐ姿を何故かキョンには見せたくなかった。何故なのかは知らないわ。こっちが知りたいくらいよ。
「よう、ハルヒ。おはよう」
「おはよう。」
あーー!もうなんであたしこんな素っ気ない返事しかできないのよ。まさに自己嫌悪だわ・・・。
「ほら、書いてきたぞ。今日はお前の番だ。」
ほ、本当に書いてきたんだ。ノートを受け取る手がなんだか震えてる気がするけどそんなのは気のせいということに決め込むわ。
「そう。もちろんあたしが楽しめる内容なんでしょうね?」
「さぁな。それを楽しいと感じるかどうかはお前次第さ。」
きょ、キョンが書いたことならなんでも楽しいにきまtt・・・って何考えてるのよあたし!
あたしはノートが折れたりしないように慎重にカバンに入れた。なんだかここでは読みたくなかった。
自分の部屋で読みたい・・・そんな気分だったのよ。
「読まないのか?」
「家に帰ってよむわ。だって・・・楽しみは・・・最後に、とっておきたいじゃない・・・」
あー恥ずかしい!なんでキョンごときにこんな恥ずかしい思いをしなきゃならないのよ。

なんだかキョンからもらったノートがあたしの活力剤のような感じがした。
昨日までいつも以上にくだらなくてうざったかった授業もあのノートのことを思うと楽な感じがしたし
部室で飲む、みくるちゃんのお茶も倍においしく感じた。
有希の本を閉じる音でみんな一斉に片付けを始める。あたしもPCの電源を切ってみんなと帰る用意をする。いつものようにみんなと他愛もない話をし、家に着く。あたしは「おかえり」という声にもロクに返事もせずに部屋に閉じこもった。
急いで、カバンからノートを取り出す。ノートを開く前に深呼吸をする。あー!!もう!なんでこんなにドキドキしてるのよ!
あたしは天下のSOS団団長様よ!?こんなノートごときに負けはしないわ!
意を決してノートを開く。ああ、キョンの字だ。
・・・やっぱりあいつはあいつね。一発目からこんなくだらないとは・・・これからが思いやられるわ。

【ちょっとあんた、一発目からこんなくだらないことを書くなんていい度胸ね。
あのね、お金がなくなるのはあんたのせいなのよ?!最後に来た人が奢るっていうのはもう理解してるでしょう!?ならもっとはやくくればいいのよ!まったくあんたは本当にバカキョンね。あたしだって暇じゃないんだから!仕方なくあんたのこの交換日記に付き合ってあげてるんだからね、光栄に思いなさい?
ま、あんたが明日からもっとまともなことを書いてくることを期待するわ。】

書き終わってからあたしは自分が本当に素直じゃないことがわかった。
・・・わかってる。あたしはたぶん・・・いや、キョンが好きなのよ。認めるのはとても歯がゆいけどね。
でも仕方ないのよ。最近わかった自分の気持ちが。だってキョンといるときが一番楽しいし、一番接してくれるやつだと思う。
でも・・・素直になれないのよね。なれるならもうとっくになってキョンに告白してるわよ。
で、でもこれがきっかけで・・・!・・・・ってなにあたし乙女妄想してるのかしら。もう自分で考えて自分で勝手に恥ずかしくなってるじゃないの。
もう、考えるのはやめやめ!!今日はもう寝ましょう・・・。明日は探索の日だしね。
あしたは夢に落ちる間際にこんなことを考えていた。「キョンは・・・あたしのことどう思ってるのかな・・・。」


~Kyon side~
本日は土曜日。世間一般の高校生なら一週間の疲れを癒すために昼までぐうたらと寝る・・・ということが多いのかもしれないがなにせ俺は高校生になってからそんなことができたためしがない。少なくともSOS団ができてからな。
ブゥゥン、ブゥウン、ブゥウン・・・
けったいなバイブ音で俺は目覚めを告げられた。相手は・・・ハルヒだ。
ってまだ6時じゃないか・・・。なんだってこんな時間に起きる必要があるんだ。
俺はブツクサを心の奥深くに閉じ込め、届いたメールを読む。
【あんたが遅刻しないように起してやったんだから2度寝すんじゃないわよ!それと・・・アレ渡すから、アレが入るようなカバンを持参しなさい!いい!?遅刻したら罰金だからね!!】
心の中でヘイヘイと相槌を打ちながら、横になる。いやなぁに、ちょっと横になるだけさ。
・・・気付けば時計は8時50分を指していた。ちなみに俺の意識ではまだ6時ちょっと過ぎのはずなのだが?えーと・・・?考えろ俺。昨日ハルヒは何時集合って言ってたっけ?-9時集合って言ってたな。
で、約束の時間まであと何分だ?-・・・10分だ。
俺はこれまたSOS団ができてから成し得た、『ロスタイムをせずに用意をする』をいう必殺技を発動させながら大急ぎで身なりを整え自転車に飛び乗った。
はぁ・・・ハルヒにまたどやされるのか・・・。わざわざ怒られに行くなんて。俺もある意味律儀な人間だ。
言うまでもなくハルヒの第一声は、『遅刻!罰金!!』であった。

その後いつも通り、俺の奢りの喫茶店でくじ引きを班分けを行い、それぞれ起こるわけもなさそうな探索に出かけた。
「交換日記を始めてから閉鎖空間が驚くべき速さで衰退していますよ。これも一重に貴方のおかげですね。」
「そーかい。そろそろ誰かから俺に賞賛のお言葉が届いてもおかしくないはずなんだがな」
「ふふふ・・・。僕が貴方の耳に囁いて差し上げましょうか?」
「ええい、やめろ。鳥肌が立って仕方がない。」
俺と古泉は2人の班になり、ベンチに座っている。
「しかし・・・困ったことはまだ続いているんです。」
「はぁー・・・聞きたくないが聞かなければならないんだろう?言え・・・。」
「ええ、実はですね。閉鎖空間は確かに減衰の傾向にあります。ですが同時にここで我々が初めて経験することも起きています。」
ほぉ、機関にも初めて経験なんてこともあるんだな。
「その経験とは、極々、極めて微小の閉鎖空間が発生したまま消えないのです。本当に小さすぎるので見つけることはできますが入ることはできません。
まぁそれ故か神人も活動はしていないようです。」
「それまた邪魔臭いものだな。入れないし消えないとは。」
「ええ。しかしこれと言ってなにか問題を起してるわけではないのですが。恐らく、涼宮さんは何か心の晴れないモヤモヤが心にある・・・といったところではないかと
踏んでいます。ええ、そうです。そのモヤモヤを解決できるのも貴方ですよ。」
はぁ・・・俺はそこいらのハリウッドスター並に忙しいんじゃないか?

そうこうしている間に集合時間となり、その日はそれで終了だった。
俺とハルヒは皆が解散するまで少々待ち、ノートを受け取っていた。
「あんた本当に文に力がないのね~もっとましなこと書きなさいよ!」
「へいへい、悪いね。だから書いたろ?こういうのは苦手だって。」
「理由にならないわよ!しっかりやんなさいよ、もう。次くだらないこと書いたら極刑だからね!」
「わかったよ・・・」
極刑か。死刑と極刑のレベルの差は知らないがどの道俺の体はやばそうだ。

それから毎日。休むことなく交換ノートは続けられた。
交換ノートを始めて数週間、俺とハルヒの間には暗黙のルールのようなものができていた。
それは『交換日記での内容は交換日記のみで話し、現実の世界では喋らない』ということだ。
何故かはわからないし、どちらが言い出したわけでもないが自然とそうなっていた。
主にハルヒの文は、その日のSOS団の活動状況や、朝比奈さんの新しいコスプレ衣装の企画、次のイベントについてとかそういう文面であった。俺はハルヒが提案してきた案をやんわりと否定する文を書いてみるが返ってくるノートには大抵「雑用が偉そうにすんじゃないの!」と書かれていた。やれやれ。
俺は月日を重ねるうちに、ハルヒを一つ知りまた一つ知り・・・と重ねていった。恐らくSOS団の活動だけではここまでなんというのだろう・・・親密に、なれなかっただろうと思う。
そして交換日記が始まってから1年たったある日。俺はある決意を胸に一人屋上に佇んでいた。

俺がここにいる理由は、昨日に遡る。
「もうあの日記を始めてからだいぶ経ちますね。はやいものです。閉鎖空間は滅多に発生しませんし・・・思っていたよりもあの交換日記は効果があったようですね
しかし例の極小閉鎖空間ですが・・・未だに消える気配はありません。貴方はそろそろ行動にでるべきかと。」
「行動?俺に何をしろと。」
「はぁ・・・やれやれ。貴方も困った方です。いいでしょう。今回は遠回りをせずすべて率直にいきましょうか。貴方はそれのほうが理解がはやい。」
「いつも遠まわしじゃなくしてくれていればありがたいんだがな。で、なんだ?」
「貴方は涼宮さんに告白をすべき・・・ということです。」
「またそれか。」
「恐らく僕の推測ではあの閉鎖空間は・・・貴方を想うがためのモヤモヤが具現化したものかと。」
「俺のせいなのか。告白をしてもし何も変わらなかったらどうするつもりだ」
「いいえ、変わりますよ。少なくとも貴方がたが・・・ね」
ふぅー・・・古泉がいつもの2割り増しくらのニヤケ顔で俺を見てくる。あーもうわかったよ。俺だって男だ。一生に一度くらい素直になってやろうじゃないか。

その日の日記は俺の番だった。
俺はハルヒの100万Wの笑顔や、古泉のムカツクニヤけ顔、帰り際に『頑張ってくださいね』と背中を押してくれた朝比奈さん、『貴方なら大丈夫』と
一言だけ残し去った長門を思いながら、ノートをめくった。

【明日の朝7時に学校の屋上に来て欲しい。大事な話がある。遅れたら・・・そうだな。罰金だ。・・・冗談だ。】

恐らく今まで一番短い日記だったであろう。【本当は大事な話がある】だけで切り上げる気だったのだが、それだけだと生真面目すぎて
俺には似合わない気がした。自分でも書いていて笑えねぇ・・・と思うジョークを最後にくっつけて俺はそれをカバンに入れて、表に出て自転車にまたがった。
本来ならば学校に行ってから渡すものだが、明日渡してちゃ7時に屋上で会える確率なんて皆無だ。俺は言い知れないモヤモヤを抱え、ハルヒの家へと向かった。

それから数十分後、俺はハルヒの家のインタ―ホンを鳴らしていた。ハルヒの家は2階の一室以外真っ暗だった。どうやら親は外出中なのだろうか。
「はい、どちら様でしょうか?」
「あー・・・俺だ。」
「キョン!?ちょ、ちょっとなんで突然くるのよ!!!ちょっと待ってなさい!」
ハルヒは恐らく部屋着と思われる服だった。しかしハルヒは何を着ても可愛らしいじゃないか・・・。
「あー突然すまんな。とりあえずこれ、受け取ってくれ。」
俺は交換日記のノートを差し出す。
「え?なんで今・・・?ま、まぁいいわ。あんたにもなんか事情があるんでしょ。もらっといてあげるわ。」
「ああ、よろしく頼んだ。」
しかしハルヒも成長したもんだ。以前なんか相手の事情なんて考慮したことはなかったからな。特に俺の事情はな。
「じゃ俺帰るな。」
「え・・・うんまぁ・・・そのちょっと、あがってかない?」
俺は一瞬、いや、三瞬くらいの時間をかけて遠慮しておくことにした。いつもならきっと上がっていただろうが、今回は少しここに来た訳が違う。
俺の目の前でアレを読まれたときには今まで感じたこともないほどの局面に立たされることになるだろう。
「ん、いや悪いな。家で母さんが飯待ってるから。今日は帰るよ。」
「そ、そう!じゃ早く帰ってあげなさい!また明日ね。」
「おう、じゃぁな。」
俺は少しだけ身と心が軽くなった気がした。あとは明日の朝だ。しかし困ったもんだ。俺は未だに生涯で愛の告白などしたことないぞ・・・。
古泉に知恵を借りるのも癪だし。何しろ今回は俺の問題だ。きっと心にある想いを告げればそれが告白といえるのだろう。さぁ解決した。はやく飯を食べて寝よう。


~Haruhi side~
な、なによあいつ。突然来たと思ったら、突然去っていったわね。しかも学校でノートを渡さないってなにがあったのかしら。
あたしはあいつの不可解な行動のせいでいつもよりドキドキが二割増しで誰が見てるわけでもないのにこっそりノートを見た。
『【明日の朝7時に学校の屋上に来て欲しい。大事な話がある。遅れたら・・・そうだな。罰金だ。・・・冗談だ。】』
はぁ・・・何よ。やっぱあいつはどこまでいってもあいつね。ドキドキ返しなさいよ。
何勝手に罰金制度使ってるのよ!あれはあたしの専売特許よ。誰がなんと言おうとね。
でも・・・きっとこの最後のくだらない冗談がなかったらきっとあたし今日は寝れなかったわね。あいつがこんな朝早くから呼び出しなんて何事かしら。
ま、まさか!!ついにキョンがあたしに・・・。なんてね・・・。あいつの鈍感具合は百も承知よ。あいつから告白だなんて・・・あるわけないじゃない。
だけどなんだっていちいちこれに書いてきたんでしょうね。やっぱバカキョンね。21世紀にはメールという便利なものがあるんだから。
あら・・・こんな時間。もう寝ましょう。


~Kyon side~
俺は明日の朝のことを考えると興奮してその興奮があらぬ方向に走らないように理性と欲情のバランスの均衡を保つため一人もがいていた。
結局寝れなかった。はぁ・・・まさかここまで俺のハートがチキンだったなんて。知らなかったぜ。
もう寝れないことはわかっていたので少しイメトレをすることにした。備えあれば憂い無しってな。
結局寝不足による冴えない頭とこれから数時間後にあの天下の団長様に俺が告白をするのだなど考えているとイメトレはまったく頭に入ってこなかった。
俺は昨日調子にのって『遅れたら罰金』と書いてしまったことを思い出し、まだ朝の6時だというのに家を出た。はぁー何俺はてんぱってるんだろうね。
学校には教頭がいるだけで、『部活で屋上を使うので前準備』とあらぬ嘘をつきまんまと屋上の鍵を手に入れた。SOS団が屋上で活動するのは映画撮影のときか、はたまたUFOの降臨を願うため奇怪な行動に出るときだけだろう。やはり早く来過ぎたようで、それからややしばらくまった。ハルヒは6時40分という予定時間20分前に姿を見せた。
「遅刻だな。」
「うるさいわね!女の子には朝のお手入れがあるのよ!!もう。ホラ!」
そういってハルヒは俺にあの日記を突きつけてきた。ん・・・?どうしろと言うのだ。
「いいから見なさいよ。」
俺は今日ハルヒが書くはずであったページを見た。【何よ。】それだけが書かれていた。
「ハル・・・」
といってハルヒを見るとハルヒは俺と目をそらしてペンを俺に突きつけていた。ほぉ・・・。こいつはルールと規制にうるさいやつだったな。
こいつが言いたいのは日記で話を振ってきたのだから、会話も日記でしろと。
【昨日書いたようにな、お前に話があるんだ】
【だから何よって言ってるでしょ。用がないなら行くわよ。】
【まぁ待て。】
と、まぁ傍から見ればUFOを呼ぶ奇怪な行動並みにおかしいことだろう。高校生の男女がわざわざ屋上で無口なままノートになにやら書いて
互いに突きつけあってるのだ。
【そろそろさ、俺は自分の気持ちに素直になろうかと思うんだ。】
【へぇ。珍しい。あんたから素直になるなんて言葉がきけるなんて。】
【これから先もうないかもな。だから真面目に聞いて欲しい。いや見て欲しいか・・・?】
【はやく要点を伝えなさいよ。】
【わかった。俺は遠まわしに伝えるのは苦手だからな。率直に書くぞ。】
【あんた何回じらすのよ!!さっさと言いなさい!!】
【へいへい。どうやらな・・・俺はーあー・・・お前が好きなようだ。】


その文を見せた瞬間ハルヒのペンは動かなくなっていた。いや、ペンどころかハルヒ自体が動かない。
おーいどうしたハルヒさん。フリーズでも発生したか?というかこの間がきつい・・・。生殺し状態だ。
それから何分経っただろう。ハルヒはノートを顔の位置まで持っていっているから表情も分からないし、相変わらず動かない。
『おい、ハルヒ・・・』と声をかけようとした瞬間、ハルヒは急に半回転し、地面にノートを置いてその上から覆いかぶさるように書き出した。
その動きがあまりにも突発すぎて俺は『ぅあぁ』と少々情けない声を出してしまった。
そしてそれからまた何分経過したことだろう。携帯の時計をちらりと見ると、もう7時40分をさしていた。うげ、こんなに時間がかかってたのか。
そして不意にハルヒが立ち上がった。そしてこちらを向くもの、断固として顔を見せる気はないのか首は真下へ90度だった。それよりもハルヒの答えが気になる!!俺ははやる気持ちを抑え、ハルヒの返答文を見た。
【もじ じ ゃわ かんない。ちゃん と こと ばでい って。】
俺はいろんなところに驚いた。まず、漢字が一文字もないところ。それにこいつからノートで会話するように振ってきたのに(元凶は俺だが。)言葉で言えという。しかし一番驚いたのは、その文が水分でふやけていることだった。
「ハ・・・ハルヒ・・・?泣いてるのか?」
ハルヒはまたフリーズモードに入ったようだ。下を向いてこちらを見ない。だけどハルヒの足元には点々と水のあとが残っていた。俺がこの後したことはきっとまさに勇者だったな。きっと地球がなくなる末裔のときまで語り告がれることだろう。

気付けば俺はハルヒの肩を掴んでいた。
「ハルヒ。頼むからこっちをむいてくれ。」
ハルヒは躊躇しながらもようやく少し顔を上げてくれた。
「どうやらまだお前の頭も寝ぼけてるようだな。俺のへたくそな日本語じゃお前に伝わらなかったらしい。だから俺はちゃんと行動でお前に意思を伝えようと
思う。だからそれで気持ちをわかってくれ。いいな?」
ハルヒは長門並みのミクロこっくりをした。俺はありったけの深呼吸をし、意を決めた。
「ハルヒ。俺はお前が好きだ。友達じゃなくて、SOS団の団長としてではなくて俺のそばにいて欲しい女としてだ。やっと俺は自分の気持ちがわかった。
だから・・・いつまでも俺のそばにいて欲しい。もう一度言う。ハルヒ、好きだ。」
俺はハルヒの肩を掴んだまま、唇と唇を合わせた。ハルヒの口元まで流れてくる。あぁ・・・しょっぱいな。キスってこんなしょっぱいもんなのか。
「あり・・がと。キョン・・・。」
いつものハルヒとは思えないほどのか細く、搾り出すような声を出したハルヒは、俺の胸でHR開始のチャイムが鳴るまで泣き続けていた。

 

 

告白が終った日の放課後、部室に2人で向かうと、長門・朝比奈さん・古泉は自分たちのことのように喜んでくれた。

 

あれから数週間。遠い昔にハルヒの奇抜ぶりが全校に知れ渡ったのと同じくらいのすさまじさで俺たちの関係は広まっていった。
谷口や国木田からは『やっぱりな。まぁ最初からわかりきったことだったぜ。』と非難がましい目で見られたりいろんなことがあった。

それからまもなく俺たちは進級し、また同じクラスになった。おまけに席も変わらずだ。
俺たちは普通のカップルがするようなことで楽しみ、時には喧嘩し、仲直りするたびに強く結ばれた。
普通をあれほど嫌ったハルヒが何故普通の付き合いに不平をたらさなかったかというと、
「キョンだからよ!」だそうだ。理由になってんだかなんだか知らないが嬉しいもんだ。

その後俺はどん底だった勉強を彼女兼専属家庭教師のハルヒの助けもあってかハルヒと同じ国公立大学へと進学できた。

 

大学へ進学後、すぐさま俺はハルヒと同棲した。同棲はどちらの両親も二つ返事で許してくれた。
もはや俺家と涼宮家は家族ぐるみの付き合いでもあったしな。

大学の課程を終えた俺たちは社会人へとなった。俺は高校教師へ、ハルヒは一流の週間雑誌会社へと就職した。
これまたすごいことなのだが、俺の最初の赴任校はなつかしの学舎、北高。そしてハルヒの会社は北高からそう遠くないこともあり俺たちは生まれ育った町へ帰ってきて、そこで挙式を挙げようということにしていた。結婚はもう・・・所謂、規定事項のようだったらしくどちらかが『結婚しようか?』とも言ってないがそれが必然のようなことになっていた。
男からプロポーズしなくてはならないのだろうが、『あたしたちはあたしたちよ!あたしはキョンといられれば結婚だろうがなんだろうがいいわ!』
と言って俺のプロポーズは未遂に終った。
高校時代にいろいろとお世話になった鶴屋さんが挙式について全面バックアップをしてくださるらしい。いやーなんともありがたい。

 

そしてある暑い夏の日。俺たちは永遠を誓った。永遠とはどこまでが永遠かは知らないが俺は死んでもあの世でハルヒとまた暮らそうなどと
結婚式が終った直後に思っていた。俺もなかなか先を見越した人生を送っているなと思い一人でニヤけてしまった。

「ハルヒ。」
「なーに。だ ん な さ ま?」
2人で顔を見合わせて笑う。そうさ、こんな時間が死ぬまで、いや死んでもずっと続けばいいなと思った。
「ずっと一緒にいような。」
「なにいってんのよ!あったりまえじゃない!とりあえず300歳くらいまで生きるわよ!!これだけ生きていればギネス記録は破られることはないわ!」
はぁーなにを言ってるんだか。出会ってから変わってないところだ。
「あぁ。そうだな。天下のSOS団の団長様とその団員1だ。できるに決まっている。」

俺はこの100万W、いや10000万Wの笑顔を・・・・絶対に忘れない。

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