友達以上。恋人未満の続きです

 

 キョンの告白を受けてから二か月。あたし達はあれ以来キスすら出来ないでいる。
 そう。恥ずかしいの。二人ともなにかと恥ずかしがって手を繋ぐくらいまでしか出来ないのよ。
「ハルヒ。明日の予定どうする?」
 あたし達が付き合いだしてからSOS団の活動は日曜になったから毎週土曜日がデート。
 とくに行きたい場所もないからほとんどがどっちかの家なんだけどね。
「次はあんたの家かしら。それともどっか出よっか?」
 それでもあたし達は仲良くやれている。ケンカもしないし、お互いを気遣ってるから。
 それでもあたしはちょっと物足りないのよね。たまにはキョンにグイグイ引っ張ってもらいたいわ。
 ほら。ちょっと強引にキスして欲しい……とかさ。
 でもそれはして欲しいけど実際されたら確実に殴るわね。だってあたしの方がキョンより上じゃないといやだもん。
 矛盾してるけどキョンはそれを受け入れてくれるはず。そういうとこも好きだし。
「じゃあ家にしとくか。今月はもう金が無いからな。すまん」
 いいのよ。謝らないでよ。あたしはあんたと居れればしあわせだもん。
 
「俺もハルヒと居れればしあわせだぞ。……おっと。そろそろ授業だな」
 休み時間のちょっとしたしあわせな時間が終わる。あたしは授業中もいろいろ遊べるからしあわせだけどね。
 ……でもやっぱり少し物足りないわ。もっとキョンに触れたい。近付きたい。優しくされたい。
 だってやっと恋人同士になれたんだもん。それくらい思って当然よ。好きだもん。
 キョンからしてくれないならあたしからしてもおかしくないかしら? でもそれじゃあたしが飢えてるみたいでイヤよね。
 やっぱりキョンがあたしに触れたがらないと。このままじゃ恋人同士なのに恋人未満で終わっちゃいそう。
 あたしとしてはキスが恋人以上か未満かの境目って感じかしら。
 ……決めたわ! 明日は最低でもキョンにキスさせる。これが目標よ!
 明日が楽しみね。ふふふ……。
 
 
「おう。来たか。とりあえず上がれ」
 ふん。今のうちにエラそうにしてなさい。しばらくしたらあんたはドキドキしながらあたしにキスするんだから。
 とか言いつつもあたしは少し緊張してる。何回も入ってるキョンの部屋なんだけど緊張しちゃうのよね。
 なんていうかこのキョンの匂いで満たされてる感じが緊張をさそうのよね。
「ウーロン茶でいいよな」
 うん。すぐ飲むからもう一杯ちょうだい。
「それくらいわかってるよ。何せお前の彼氏だからな」
 なによ。なんで自分の家だったらこんなに強気なのよ。このバカキョンは。
 確かにあたしは暴れ回るわけにはいかないけどさ。
 はぁ……。カップルって家で何をすればいいのかしら。キョンにキスをさせるって目的はあるけどいきなりだと不自然すぎるわよね。
 それまで少しいい感じの雰囲気にしなくちゃ。
「あー、ハルヒ」
 
 ……なによ。いきなり。あたしが今声かけようとしたのにさ。
「とりあえず……ヒマだしDVDでも見るか?」
 ふーん。キョンはキョンなりに何か考えてるのかしら? たまにはキョンに引っ張られるって展開になってきたかも。
 いいわ。今日はキョンに引っ張ってもらう日にしよっと。
「わかったわ。チョイスもあんたに任せるからね。あたしを満足させてみなさい」
「ほう。言ったな。俺は人を満足させるスペシャリストだぞ。受けてたとう」
 なによそれ。あんたほんとにバカよね。
「言ってろ。じゃあこれにするからな」
 
 
「こら。布団で涙を拭くな」
 ふ、不覚だわ。あたしとしたことがキョンの選んだ話で泣くなんて……。
「こっち向け。俺が拭いてやるから。やれやれ。まるでこどもだな」
 う、うるさい! だいたいこんな大きな体をしたこどもが何処にいるっていうのよ!
「俺の目の前にいるだろ。イタズラ好きの悪ガキが」
 あたしをガキ扱いなんて覚えてなさいよ……。でもほんと情けないわ。キョンに顔拭かれてるなんて。
 あたしの人生でワースト3に入るくらいの汚点ね。……今ここで目を瞑ればキスとかしてくるかしら?
 キョンにどれくらい空気を読む力があるか試すべきよね。
 あたしは目を瞑って顎を少し上げてみた。何も見えないからあとはキョン次第。
「ハルヒ?」
 返事はしないわよ。あー。あたし今キャラに似合わず乙女なことしてるわね。
 こんなの一生に何回かしかしないわよ。早くなんらかのアクションを起こしなさいよ。バカキョン!
 
 
「バカ」
「……すまん」
 ほんとあんたはバカね。少しくらい空気を読みなさいよ。
 
「悪かったって」
 信じられないわ。少し時間をとったあとにキョンの取った行動はほっぺにキスよ。
 ほんとあり得ないわ。……そりゃちょっとうれしかったけどさ。
「だってほら。改めてキスするのって恥ずかしくないか?」
 あんたは本当に天然記念物並のアホかしら? 改めてするからあたしはうれしいんじゃ……な……。
 あたしの視界にキョンが不意に飛び込んできた。っていうか近すぎ。唇が当たってるわよ?
「俺は改めてよりこうやっていきなりの方がしやすいしうれしいんだけどな」
「……あんたの都合に合わせないでよ。卑怯者」
 なんて強がってはみたけど心臓はキョンに聞こえそうなくらい鳴っている。
 びっくりした。こんなにびっくりしたのは久しぶりだわ。呼吸が荒くなってるのを悟られないようにしなくちゃ。ニヤけそうになるのも我慢しないきゃ。
 あたし今ほんとにうれしい……。
「おーい。ハルヒ。怒ったのか?」
 あたしがちょっとそっぽ向いて黙るだけで怒ったと思うのね。このバカキョンは。
 自分の彼女の気持ちくらいわかりなさいよ。
「……照れるなよ。ハルヒ。俺だって自分でやっててちょっとハズいんだ」
 あら。一応わかってはいるのね。あたしの気持ち。ただ自分でもハズいとか言ってるようじゃダメだわ。
 でもね……今日の所は合格点をあげる!
「お、おぉ?」
 キョンに抱き付いてキスをする。今までなんでこんな簡単なことを恥ずかしがって出来なかったんだろ。
 あたしもまだまだね。もちろんキョンも。
「どうした。いきなり抱き付いてキスなんてお前のキャラじゃ無いだろう?」
 いいのよ。あんたのキスがうれしかったから今日は特別サービスよ!
 
「そうか。じゃあもう少し俺がうれしくしてもらうぞ」
 調子に乗ったら大胆ね。キョンは。これくらいなら全然怒らないけどさ。
「おやすみ」
 それにしてもキョンって意外と甘えん坊なのね。膝枕ってあんた……。
 とにかくこれで一段階ステップアップね。次は……って考えてたら赤くなっちゃうからやめとこ。
 この先のステップはなるようになるでしょ。
 とりあえず今は膝の上のあたしの大好きな彼氏を満足させてあげようじゃない。ついでにあたしも寝顔を堪能しましょ。
 ふふふ。やっと恋人同士になってからのしあわせが込み上げてきたわ。
 このままずっとずっとしあわせでいたいもんだわ。いや、しあわせでいる。
 あたしは絶対にあんたを離さないからあんたもあたしを離さないでね。キョン!
 
 
おわり


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