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「やぁ、キョン。奇遇だね」
「あぁ、奇遇だな。そして、意外だな」
「僕がここに居ることがかい?」
「あぁ。佐々木には似合わない店だからな。お前にはもっと上品な店が似合う」
「そうかい?でも、僕はこういう店の方が好きだよ」
空気に漂うカレーの匂い。俺達が居るのは言わずと知れたCoCo壱番屋。
俺達はカウンター席で隣同士でカレーを頬張っていた。
ちなみに佐々木は見る限りではどうも200gのようだ。
その横で俺は400g。
「キョンはよく来るのかい?」
佐々木がそう聞いて頬張る。
「あぁ、結構来るな」
答えて頬張る。
「実に意外だね・・・」
「そうか?」
「君は、家でカップラーメン食べてそうだからね。豚骨しょうが味とか」
「そんなのあるのか?」
「さぁ?僕には知り及ぶところではないよ」
佐々木はそう言って実に愉快そうに笑った。
何が面白いのかは俺には知り及ぶところではないな。まったくな。
「ところでキョン。君は赤い糸というのを信じるかね?」
「はぁ?」
いきなり女の子らしい話題になって俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。
しかし、本人は至って真面目な顔をしている。
「どっちかね?」
再び尋ねてくる。
「そうだな・・・赤い糸はさておき、そういうものはあるかもしれないとは思ってる」
「ほう・・・ロマンチストだね・・・」
佐々木の目が興味津々と言わんばかりに細められる。
これ以上何か聞かれるのか?っつか、壱番屋でこんな会話してるってかなりおかしいだろ。
「そういう佐々木はどうなんだ?」
そこで仕返しだ。
「赤い糸についてかね?正体は精神病だと思っているよ。二人が居て初めて発症する、いわゆる愛と呼ばれるやつだね」
躊躇う事無く佐々木は言う。んー、恥ずかしいと思ってるのは俺だけか?
「微妙な答えだな・・・」
「そうかね?当事者らしく答えたつもりなんだがね・・・僕としては」
「当事者?」
俺が聞き返す。佐々木はほんのりと頬を赤くする。
何だ?この変な予感は。
「精神病の当事者さ・・・。君に対する、ね」
「ブフッ!?」
予感的中。
俺は口に含んだ水を盛大に噴出し掛けて、我慢し、思いっきり噎せた。
なんて言った。今、なんて言った。こいつ、俺に対して精神病と言ったな。
待てよ。待てよ。
「ど、どう言う意味ですか?」
何となく丁寧語で片言になる俺の言葉。
それに対して佐々木はらしくない恥ずかしそうな雰囲気で言った。
 
「つ、つまりだね・・・僕は・・・その・・・君の事がね・・・好き、なんだ」
 
ズガーン!!
雷が臍を外して股間に落っこちたような衝撃を受けた。・・・実際どんな衝撃かは知らんが。
言い換えるなら、例えば何でか知らないが今、俺の目の前には川が見える。
その川を俺は神に祈りを捧げて真っ二つに割った。すると、そこにラングリッサーを装備した佐々木が現れた。
・・・という感じの衝撃だ。
これ以外の例え方もあるがどうせどれもこれもカオス度合いが酷い例えばかりだ。
佐々木は恥ずかしさを堪えるように俯いていた。
「何時頃からか君を思ってばっかりでね。勉強もはかどらないんだ。夜だって、気付いたら君を思って自分を慰め―――」
「ワー!!ワー!!」
そんな見て解るぐらい恥ずかしいと言っている表情するならそんな事言うな。
あぁ、言わないでくれ。さっきから店員の目が少しだけ面白そうな見世物を見ているような目つきになっているんだ。
客も客だ。うわー。うわー!うわー!!
そこで状況をようやく察したのか。佐々木が完全に顔を真っ赤にさせた。
ふと、身を乗り出して俺の耳元に顔を近づけてきた。なるほど、周りに聞こえないようにし―――
「キョン・・・願いが叶うなら愛しい君の手でまだ異性に触らせた事ない僕の体を汚してくr―――」
「ウワー!ウワァッー!!」
周りに聞こえないような囁きでも恥ずかしい。っつか、よくもまぁそんな事を。
本当に精神病なのか、Loveって奴は。
「・・・駄目、かい?」
乗り出した身を席にきちんと戻して佐々木が尋ねてくる。
これは所謂告白だよな。そうだ。告白だ。
くそー。頭が真っ白だ。いや、こうやって何かを脳内でぶつくさ呟いているあたり真っ白ではないか。
だがほぼ真っ白だ。酵素の力で驚きの白さのTシャツもびっくりのほぼ真っ白だ。
「・・・・・」
佐々木はじっとこっちを見ている。・・・っつか、微妙に泣いてるじゃないか。
よく考えろ。
「・・・食べ終わるまでに返事が欲しい」
期限早っ!明日とかじゃないのかよ、普通は。
「・・・・・」
「・・・・・」
俺達はカレーを口に入れる作業を再開させる。
だが俺は美味しいカレーを堪能する余裕が無い。頭の中は一杯一杯だ。パソコンで言う残り要領1kb状態だ。
そして、そのまま食べ続け、残り最後の一口となって俺は覚悟を決めた。
「・・・佐々木」
「・・・・・うん」
「・・・こちらからも、なんだ・・・よろしく、頼む」
「い、良いのかい?」
「あぁ。お前となら長く安定していけそうだからな、死ぬまで」
「・・・キョン」
俺達はしばらく見詰め合った。何度も言うようだがここは壱番屋のカウンターテーブル。
その光景は外から丸見えで、多分異様な物だと思う。
何せ最後の一口が入ったスプーンを手に男女二人が見詰め合って固まってるんだから。
「・・・じつは、中三の頃から君を好きだったんだ」
「・・・俺も。本当の事言うと気になってた」
「なんだ、お互い様だったのか。意外だね」
「あぁ、そうだな」
「キョン・・・じゃなくて・・・えっ、と・・・キョン、くん」
佐々木が女言葉で喋りかけてくる。
「なんだ、佐々木」
「ありがとう・・・」
「どういたしまして」
「わ、私・・・えっと・・・」
「佐々木。恥ずかしいなら、いつも通りの言葉で良いんだぞ?」
「だ、だって男言葉だとあんまり可愛くないでしょ?」
「佐々木は佐々木だろ。俺は、どっちの佐々木でも大好きだ」
「・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
「あ、でもたまに女言葉も使って欲しいな」
「ぜ、善処する、ね」
俺はこうして佐々木と付き合い始めた。
 
その頃、ある場所にて。
 
「我等が佐々木さんが北高の男子生徒と付き合い始めたらしいぞ!」
「おのれ、我等『佐々木さんファンクラブ』に言葉も通さず連れ去るとは・・・俗物め!」
「立ち上がれ!佐々木さんは、一人の物ではなーい!!」
「「「「「おー!!」」」」
「「「「「そうだそうだー!!」」」」」
 
こうして、物凄く大変なことが起きるわけだ。
無関係な筈の奴を巻き添えに。
 
「WAWAWA忘れ物ー♪」
 
そいつはそんな事も知らずに買い忘れたしにがみのバラッドを買いにいっていた。

 

 

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