「ごめん、キョン・・・じゃなくてキョンくん。結構僕・・・じゃなくて私急いだんだけど・・・・・」
「良いさ。電車が遅延したのは仕方ない。あと、無理して女の子言葉にしなくても良いぞ」
「そうはいかないよ・・・じゃなくて、いかないもん。好きな人には可愛い姿を見せたいんだもん」
「そのままでも十分に可愛いよ、佐々木はね」
「そ、そうかい?ありがとう・・・・・・あ、ございます」
少しいたいけな佐々木を見ながら俺は微笑む。そんな休日の午後。
俺達はハルヒ達が来そうにない場所でデートを楽しむ事にした。
「昼ごはんはどうするんだい?」
すっかり男口調に戻った佐々木が尋ねてくる。
こういう場合は男が決めるべきなんだろうけど、一応意見を聞いておくか。
「どこが良い?」
「ん~・・・じゃあ、僕達がこうなる事になった場所に行こうか」
「CoCo壱番屋か。オッケー」
「決まりだね」
「あ、ちょっと待った」
そのままスタスタと歩き出そうとする佐々木を俺は止める。不思議そうに振り返る顔。
何も言わずにその横に立つ。そして、小さな手をそっと掴んだ。
「あ・・・」
声を上げて、その結ばれた手を見る。そして顔を上げて俺の表情を見る。
赤く恥ずかしそうに染まった顔はぎこちなく、だけど確かに幸せそうに微笑んでいた。
「・・・ずっと、こうしたいと願っていた・・・」
佐々木が呟く。視線を再び手に移して。
「佐々木が願うなら、いつでも何でもしてやるよ・・・出来る範囲内でなら」
「出来る範囲内か・・・。なら、これからもこうして居てくれるかい?永遠に傍に居てくれるかい?」
その上目遣いは反則だ、佐々木。
「・・・良いぜ。いつまでもどんなことがあっても傍に居てやる」
「約束だよ、キョン」
「もちろん。命がけで約束を守るさ」
俺達はお互いに恥ずかしくなってそこでちょっとだけ視線をずらした。
そして、すぐに視線を合わせる。
佐々木の顔は先程より更に赤い。俺も顔が熱い。
じっと見詰め合ったまま何もせず立っていたが、そのままでは埒が明かない。
「・・・行くか」
「あぁ・・・」
とりあえずCoCo壱番屋へ足を向けた。
・・・・・・・・。
入店し俺達はテーブル席に隣同士で座った。向かい合うのは何だか気恥ずかしかったからだ。
こういうのを初というのだろうか。今なら解る。確かに初々しいというのは赤面必死だ。
「佐々木は注文決まった?」
「あぁ」
「すいませーん!注文いいですかー」
そして、佐々木はオムエッグ200gの甘口を頼んだ。
俺はと言えばオムエッグ、チーズ、チキン煮込み400gの2辛だ。
注文してから十分も立たずに品物が出てくる。早いというのは素晴らしい。
ダイエーイの中の店なんかより随分とマシだと思うね。
「・・・・・」
ふと俺は何処からか殺気を感じた。何だろう、この殺気は。
辺りを見回す。そして、窓の外に並ぶ謎の男達を見た。
「・・・な、なんだ・・・?」
思わず口に出す。そして見ようによっては魑魅魍魎に見えなくは無い男達は叫んだ。
「佐々木さん共有だぁああああ!!」
「佐々木さんファンクラブ一同、行くぞぉぉおおお!!」
「「「「おぉおおおぉぉお!!」」」」
それを見て俺と佐々木は顔を見合わせる。
「・・・ヤバイかな」
「・・・だろうね・・・なんか、僕の知らないところでファンクラブできてたんだね・・・」
「逃げたほうが良いかな・・・鉈持ってるし・・・笑ってるし・・・同じ帰り道とかほざいてるし・・・」
「会計しようか・・・」
「そうだな。すいませーん!会計とこれお持ち帰り用容器に移してくださーい!!」
そして一連の作業が終わり、俺達はCoCo壱番屋を出た。途端に逃げ出す。
男達はそんな俺達、せいかくには多分俺を追い掛けてきた。
「キョンを殺せー!!」
「佐々木さんはみんなのアイドルー!!みんなのものだー!!」
これを世間一般じゃ思い込みとかストーカーとかキモいとか言うのだろう。
本当にワンダーキモーイだ。ええい、忌々しい。人が誰つ付き合おうが自由であろうが。
全く、美少女に対する群集心理とは恐ろしい。
「WAWAWA忘れ物ー♪断章のグリム買いWAWAWA忘れたー♪」
ふと前方に見たことがある人影が見えた。
「谷口ー!!」
「ん?なんだ、キョ・・・げっ。なんだ、その沢山の付属品達は」
「話は後だ!!なるべくあいつらを足止めしてくれー!!」
「うん、それ無理♪」
「谷口、WAWAWAのあとに続く言葉は?」
「忘れ物ー♪」
「OK、語尾に”♪”が付くのは朝倉と同類、即ちお前は朝倉と同じ戦闘能力だ。行け!」
俺は谷口の胸倉を掴んで後ろから追いかけてくる奴等に向かって投げ飛ばした。
「意味が解らねぇよ!!」
そう叫びながら飛んでいき、何だかんだで顔面から着地して構える谷口。
「ククッ・・・しかし、これだけの相手をするっていうのは久しぶりだな・・・」
ピンチのせいかすっかり雰囲気どころか口調まで変わってる。
「鉄棍があれば解体しているところだが無いものは仕方ない。それに殺す訳にはいくまい。手刀で、やるしかないな」
っつか、谷口か、あれは。何か全然違うんだが。
「悪いが眠ってもらおうか」
身軽な動きで谷口は後ろから追いかけてくる連中に手刀を入れて気絶させた。
一気に数十人を。
「しかし、下手だな・・・なまったようだ」
「谷口、お前・・・」
「話はあとだ。ただ言えるのは一応はお前も一族という事。助ける事が子孫繁栄に繋がるともね。そして俺の本当の名前は、七夜黄理」
「七夜黄理・・・?」
「戸籍上は死亡扱いだがね・・・苦労したよ、高校生ほどの姿になるのにどれだけの年月をかけたか・・・なぁ、息子よ」
なぁ、息子よ・・・か。ん~・・・横には佐々木だけしかいない。佐々木は女だよな。
周辺に男は・・・俺と谷口しかいない。
・・・って事は。
「む、息子!?俺が!?」
「お前の本当の名前はシキ。志し貴ぶと書いて志貴だ。お前の両親は我が一族の生き残りで義理、妹は我が娘にしてお前の妹よ」
「な、なんだってー!?」
「キョン、そんな凄い家庭だったんだね・・・」
佐々木が本当に驚いたように目を見開いて言ってきた。
俺はそれよりもアホの谷口の息子だった事にショックだ。あーショックだ。
「二人とも、さっさとここから逃げなくてはなるまい。早くせねば、アイツがやってくる」
アホの谷口こと七夜黄理が慌てたように俺達に言ってくる。
「アイツ?」
「良いから早くするのだ!!」
・・・その時、ブルッと寒気が走った。
何か強大で恐ろしい禍々しいものが近付く雰囲気がした。
その波動に押されるように、視界に一斉に罅が入った。
「なんだ・・・目が・・・眼がぁぁああああ!!」
俺は天空のように叫んでみた。
「大丈夫だ、キョン。いや・・・志貴。それこそ一族に代々伝わる魔眼よ。ようやく目覚めたのだな」
「だがな、谷口。こんな罅だらけでは少し頭が痛いぞ」
「罅だらけ・・・まさか・・・なんと、直死の魔眼とな!?」
「ごめん、聞かれても解らない」
何だか解らないけどこういうのって生死の境を彷徨って得れるものなんじゃないんだろうか。
なんか、漫画とかであるだろ、そういうの。あー、なんて楽な会得方法だろう。
ファンタジーの欠片もねぇや。
「・・・あの・・・二人とも、何か沢山来るよ・・・」
佐々木に言われて見てみると遠くから何やらものすごい大群が押し寄せてきた。
・・・佐々木って、そんなに人気だったのか。いや、可愛いけどさ。世界一ね。
「とりあえずCoCo壱番屋に避難だ」
俺達は引き返してCoCo壱番屋に再び飛び込んだ。
かくして、CoCo壱番屋での攻防戦が開始するのであった。
 
その頃。
「カレー作りで鍛えた腕前で、この店と客は死守してみせようぞ・・・」
厨房で、かつてラングリッサーとアルハザードを巡る戦いで闇の王子と言われた彼が参戦の準備をしていた。
 
第三話に続く。

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