「………」
「キョン君だいじょうぶ?さっきから全然ごはんたべてないよ?」
「………」
「キョン君?」
「…ん?……あ、あぁ大丈夫だ」
「ほんとにだいじょうぶなの?顔色がわるいよぉ?」
「………」
大丈夫?何が?
むしろ俺が問いたい。この村が大丈夫なのか?……と。

村ぐるみで関わっているかもしれない連続事件やハルヒの豹変。

もはや何を信じればいいのかさえわからない。
「キョン君やっぱり変だよ、休んだほうがいいよ?」
「………」
「そろそろハルにゃんたちも来てるよ?」
「ッ!?」
「?」
「やっぱり……俺、今日休むことにするよ…」
「わかった、お母さんに言っておくね?あ!あと学校行く途中でハルにゃんにも言っておくからね?」
「あぁ…頼む……」
「病院に行ったほうがいいよ?」
「…ん」
……昨日の晩
もしもハルヒが本当に来ていたなら……いや、確実にあいつは来た。そして、俺の部屋の前にいた。あいつは昨日の電話の内容を聞いている、事件のことを俺が聞いていたのを知っている。だから俺はあいつに会うのが…怖かった、、、


  ・
  ・
  ・
病気で学校を休むなんてこっちに来てから初めてだった(正確に言うと病気ではないが…)。一応病院に行こうと思った俺は親に病院までの道のりを聞きうちを出た。

 

「う~ん…風邪だね」
「そう、ですか…」
「薬を出しておくからちゃんと飲むんだよ?」

 

診察が終わったので俺はロビーのソファーに座っていた。
「ふぅ…」
クーラーの風邪が心地よかった。なんとなく全てを忘れることが出来るような時間だった。
しかし、そこに座っていた患者のじいさんばあさんが話していることを聞き我に返った。
「やっぱり鬼隠しでしょうかねぇ…森さんみたいな若い看護婦がいなくなってしまって
なんだか寂しいですねぇ」
!?…鬼隠し……
「いんや、あの若い男がいたろ?二人で駆け落ちしたに違いねぇな」
森さん?その人が鬼隠しで消えたとしたらあの綿流しの晩に会った女性は森さんというのか。

裕さんの話もしているということはやはりあの二人は本当に消えてしまったんだな……

  ・
  ・
  ・
あんな話は二度と聞きたくなかったがこの村にいる限りそんなことは許されないようだ。
病院を出たので家路を急いでいると突然後ろからクラクションが鳴った。別段道のど真ん中を歩いているわけでもないのに鳴らされたことに苛立ちを覚えた俺は運転手の顔を見てやろうと振り返った。
しかしそこにいたのは、、、
「どうもこんにちは」
紳士のような出で立ちの新川さんであった。
「今日は学校はお休みですかな?」
「その、、、ちょっと具合が悪かったので病院に行ってたんです」
「それはそれは…ところで昼食はもうお済みですか?」
「いや、これからうちで食べるつもりでしたから…」
「そうでしたか、ならばご一緒にいかがでしょうか?」
「え?」
「どうぞお乗りください、興宮の街のほうまで移動しますので」
「はぁ……?」
とりあえず車に乗りバタンと助手席のドアを閉めた。ゆっくりと車が動き出す。
なぜ興宮まで行かなければならないのだろうか。そのときはそう思った。しかし新川さんの車に乗っている間に気がついた、、、この村、つまり雛見沢では話せないことを俺に話すつもりだったからではないだろうか、と………


「「いらっしゃいませ!!」」
元気なあいさつで出迎えられたその場所はよくあるようなファミリーレストランだった。
昼を済ませた俺たちはどうでもいいような会話をしていた。10分も話しただろうか?

そのときだった。
「昨日は夜分遅くに申し訳ありませんでした」
「いえ、昨日は俺も新川さんと話がしたかったので…」
「ところで昨日の鬼隠しの件ですが、あれからこちらでいくつか調べてみました」
「何かわかったんですか?」
「……雛見沢が昔“鬼の住む里”と呼ばれていたことは覚えているでしょうか?」
「はい、昨日の電話で言ってましたよね?」
「大昔の話になるのですが、雛見沢は『鬼ヶ淵』という名前だったそうです。文書によると鬼ヶ淵にいる鬼たちの獲物はいつも一人でして、その一人は前もって決められているそうです。そして……村中の鬼たちが全員で獲物を捕まえにくるんだそうです」

村ぐるみで一人の獲物を…まるで今回の村ぐるみの事件を示しているかのようだな…

「また、村にもルールがあるようでして鬼の獲物を助けたりしてはいけないようです。鬼の邪魔をしなければ他の村人には危害を与えない、そういう決まりだとか」
「………」
実際にあるはずはないが、もしもこれと同じ事が起きていたとしたら…と、恐ろしいことを考えていると突然新川さんは話を切り出してきた。
「ここから話すことはとてもつまらない、退屈なものとなります」
「…え?」
「申し訳ないと思いながらも、去年の失踪者の朝倉さんが親しかったお友達を、つまりあなたの周りのご友人を少々調査させていただきました」
「!?」
「すこしでもつまらないとお思いになられましたら教えてください、すぐにお話は止めますので…」

…この話を聞いたとき俺はあいつらをどう感じるようになってしまうのだろうか。裕さんや森さんの話を聞いたときもそうだった。俺は後悔をしたのだ。おそらく今回もまた…
しかし、俺は真実が知りたい。だから、、、

「教えてください」
「…いいのですか?」
「はい……」
「それでは……」
ゴクッと唾を飲む音がいつもよりも増して聞こえる。
「1年目の事故の被害者はダム工事の監督でしたが、その監督と何人かが事件の数週間前に集団と取っ組み合いをしていたようでして…そして、その場所には朝比奈みくるさんが一緒にいたようです。彼女が取っ組み合いをしていたわけではありませんが」
「朝比奈さんが?」
あの人がそんな暴力の行き交う場所にいるとは…しかし、彼女もまた村の一員。村がダムになってしまうとなれば村人ならば誰だって、、、どんな場所にだって行くだろう。

だからこれは大して気に留める必要もないだろう。
「2年目の事件ではダム誘致派の夫婦が亡くなりました。その事故現場には夫婦の子供もいまして、その子供が、古泉一樹君です」
「は!?古泉って…あの古泉ですか!?」
「はい」
そんな、、、古泉の親が2年目の犠牲者!?あいつ…そんな素振りなんて一度も……
「3年目の被害者の神主夫婦がいましたよね?その夫婦の娘が…長門有希さんです」
「長門!?」
「そして4年目の被害者の主婦は古泉君の義理の叔母ということになります。ここまで被害者たちはみんなあなたのご友人方の関係者となります。そして4年目の失踪者朝倉涼子さんもまた彼らの関係者となります」
「そ、そんn……そんなのは、、、偶然だ!!!」
「お静かにしてください…ここが公の場だということをお忘れにならないように…」
「……すいません…だ、だけど!ハルヒの名前は出てこないじゃないですか!!!」
「たしかに涼宮さんは被害者たちと直接面識はございません。しかしながら、彼女には気になる過去がございまして…」
「なんだっていうんですか……」
「涼宮さんは雛見沢に来る前の学校で校舎のガラスを割って歩き謹慎処分を受けたことがあるのです」
ハルヒが…?ガラスを割って歩いた??いくらあいつでもそんなことをするわけが…
「そして、その後彼女は自律神経失調症と診断され投薬と医師のカウンセリングを受けるようになります。
そのときの医師と涼宮さんの会話記録にかなり出てくるんですよ…」
「何が…ですか…?」
「『オヤシロさま』という言葉が……出るんですよ」

まただ…オヤシロさまが、、、出てきた

「話ではオヤシロさまという幽霊のような存在が毎晩毎晩自宅に来ては、枕元に立ち……
見下ろすんだそうです」
「どういうことですか?」
「わかりません。ちなみに彼女はよそ者ではありません…調べてみたところ涼宮さんの一家は彼女が小学校にあがるまで雛身沢に住んでいました」
「そ…んな」
「被害者たちとは面識が無くとも祟りについては何か知っているのではないでしょうか…」

なんてこった…俺は全然あいつらの事なんかわかっていなかった…本当にあいつらは事件に関係あるのか?
そんなことって……

「…そろそろ出ましょう」
「………ちょっと待ってください」
「なんでしょう?」
「5年目は…裕さんは誰に関係があるって言うんですか?」
「わかりきったことをおっしゃいますね。綿流しの時だって一緒にいたではないですか。
あなた方全員に関係しているんですよ」

裕さんも俺たちに…いや、あいつらに関わったから…?

 

 

「ご自宅はこちらでよろしいんですよね?」
「………」
レストランを出た俺たちは再び新川さんの車に乗り雛見沢に戻ってきた。しかし最早俺には言葉を返す
気力すら無かった。どうしてこの人は俺にこんな話をするのだろうか…そんな疑問が浮かんだ。
ここまで聞いてしまったということもあり、ついでというような気持ちで聞いた。
「それでは失礼します」
「新川さん、あの……どうして…どうして俺に事件のことを色々話すんですか?俺に仲間の…スパイになれっていうんですか?」
「ふぅ…………」
重くため息をついた新川さんはやっと口を開いた。
「これは長年この道でやってきた勘というものですが…」
次の言葉を待っていた俺は衝撃的な言葉を聞いた。

「次に危ないのはあなたです」

……え?
「もしも、裕さんがよそ者という理由で殺されたならば…次の犠牲者もよそ者になるのでしょう」
「よそ…者」
今、この村の中にいるよそ者、それはうちだ。そしてあいつらの関係者、、、俺だ。
「今日の話はお忘れになっても構いません。何かあったときはいつでもご連絡ください…それでは失礼します」
そう言うと新川さんはもと来た道を引き返していった。家の前に俺は一人取り残された。


俺が殺される?どうして?なぜ?なんの理由があって?


こんなバカな話があるかよ…どうして俺なんだよ……そればかりが頭をよぎる。
俺が殺されたら、、、


昼にでたはずだったが、外はすでに日が傾きつつあった。

外はひぐらしの鳴く時間になろうとしている………

 

 

 

 

 

 

 

 



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