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【第一話-12/04】
 
 現在12/04午前0時、全身を覆うフードを着た1人の男が北高の屋上に
立っていた。男は天高く右腕を上げるとその手にもつ指輪を掲げた。
指輪は一瞬鋭い光を放ちそして沈黙した。その行為を行った後、男は指輪を
地面に置き去っていった。男は去り際に一言言った。
 
「一週間か・・・・・・」
 
・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・
 
 俺は今猛烈に急ぎながら北高前の心臓破り坂を走っている。いつも
だったら起こしに来る妹が今日は何故かお越しに来ず、その結果油断
して寝坊してしまったのだ。まあ、この調子で急げばギリギリ間に
合うか・・・などと思いつつ走っていた。北高の門に入る寸前、門の近くに
全身を覆うフードを着た男が一瞬見えたが・・・おっと、急がないと遅れて
しまう。
 俺は何とかHRに間に合うようにクラスに入って席に着いた。
席に着くなりハルヒから、
 
「今日はいやに遅かったじゃない」
「妹が起こしに来ないもんだから油断して寝過ごしてしまったんだ」
「あんた未だに妹ちゃんを目覚まし時計代わりにしてるの?」
「別に俺がそうしているわけじゃないんだがな」
「まったく、団員が遅刻魔だと団長として情け無いわ」
「へいへい」
 
 そんな話をしていると岡部が入ってきた。
 
「よーし。今日もハンドボール日和だな。さて、HRはじめるぞー」
 
 その日の午前中も特に日常と変わりなく、時折後ろからハルヒに
シャーペンで突付かれるといった事があるくらいだった。そうこうして
いるうちに午前中の授業も終わり昼休みになった。俺は谷口と国木田の
2人と弁当を食べていた。
 
「キョンは俺らなんかより奥さんと愛妻弁当食えよ」
「奥さんて誰だよ」
「谷口君は涼宮さんって言いたいみたいだよ」
「あのなあ、勝手にハルヒを奥さんにしないでくれ」
「既に『ハルヒ』と下の名前で呼び捨てにしてる時点で付き合ってる
ようなもんだぞ」
「だね。谷口君の言うとおりだと思うよ」
「まあ、お前は”この星と涼宮どちらをとる”と聞かれたら迷わず
涼宮って答えるんだろうな」
「おまえらはわからんかもしれんが、ハルヒは怪物だ。ハルヒと付き
合うとなると恐ろしい程のパワーがいるぞ。俺にはそんなパワーは
ない。あと、谷口チャック開いてるぞ」
 
 そう話していると谷口と国木田の視線が俺の後ろに固定されていた。
そして、
 
「誰が怪物ですって~」
「げっ、ハルヒいたのか」
「いたのかじゃないわよ。人がいないことをいいことに言いたい
 ことを言ってくれたじゃない」
「ま、まあこれは言葉のあやでだな・・・・・・」
「あんたは団長様を怒らせたいみたいね」
「いや、そんなことはないぞ。おっと用事があったんだ失礼する!」
「あ、待てキョン!」
 
 俺はハルヒから逃げるために一目散に屋上へと向かった。屋上には誰も
おらず閑散としていた。しばらくうろついていると、地面に指輪が落ちて
いるのに気がついた。
 
「誰かの忘れもんかな・・・・・・それにしても高価そうだが・・・・・・」
 
 その指輪はサファイアと思われる青い宝石が埋め込まれ、リングは
蛇が丸く一周して自分の尻尾を食べているデザインのものだった。俺は
落し物として後で届けようと思い、上着のポケットにその指輪を仕舞った。
と、同時に予鈴が鳴り、俺は急いで教室へと戻っていった。
 
 キョンがいた近くでは全身を覆うフードを着た男が隠れてキョンの
様子を見ていた。男はキョンが指輪を持っていくのを見届けると、満足げ
にその場から姿を消した・・・・・・
 
・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・
 
 午後の授業中はハルヒから精神攻撃とも言えるほどの小言が聞かされた。
まあ、最後には何とか機嫌を収めてくれたようでホッとしている。授業も
終わり放課後になり掃除当番だった俺は掃除を済ますと部活へと向かった。
既に俺を除く全員が揃っており、各自いつもの通りの行動をしていた。
俺が部室に入ると古泉は、
 
「どうです? 今日は何か新しいゲームでもしましょうか?」
「そうだな。それよりみんなに見てもらいたいものがあるんだ」
「なんでしょうか?」
 
 俺は昼休みに拾った指輪をみんなに見せた。
 
「わあ、綺麗ですね」
 
 朝比奈さんは目を輝かせながら純粋に指輪の綺麗さに感動している。
 
「なかなかユニーク」
 
 長門は・・・・・・まあ、いつも通りだな。
 
「ちょっとキョン、これどうしたのよ」
 
 ハルヒは”綺麗”とかそういうこともいうことなく出所だけが興味が
あるようだ。
 
「いや、昼休みに屋上で拾ったんだ」
 
 俺は本当のことを話した。ってかそれ以外無いしな。最後に古泉が、
 
「確かに美しい指輪ですね。ただ・・・・・・リングの外観はウロボロスの輪に
似てますね・・・・・・何かの儀式的な指輪でしょうか」
 
 と、意味深なことを言った。
 
「ウロボロスの輪?」
「ええ、古代ギリシャで生まれた「無限」「永遠」を意味する象徴の
ことです」
「そんな大層な意味があったのか・・・・・・」
「まあ、この手の指輪は結構あると思いますよ。ただ・・・・・・」
「ただ?」
 
 古泉は俺にしか聞こえないように小声で、
 
「この指輪には何となく力みたいなものが感じられます。ただ、
”空っぽの力”というべきでしょうか」
「”空っぽの力”?」
「ええ、魔力的に言えば精気を吸い取る・・・・・・そんな感じです」
「おいおい、物騒なこと言わないでくれよ」
「まあ、今のはたとえ話です。恐らく本当に精気を吸われるという
ことは無いでしょう」
 
 古泉との話中に今度は長門が小声で、
 
「この指輪は解析不能な物質で出来ている。私の知る限りではこの
次元に存在しない。宝石と思われるものも同じ」
「お前でもわからないほど不思議な物質なのか?」
「そう。それに古泉一樹が言うように何かしらの力を秘めていると
思われる」
「これはとんでもないものかもしれんな・・・・・・」
「力を吸い取るような感じがある以上、あなた以外がこれを持つのは
危険かもしれません」
「じゃあ、俺が預かっておいた方がいいな」
「それが最良かと」
 
 俺たちが小声で話し終えると、ハルヒが目を輝かせて、
 
「当然これは団長のあたしが持つべきよね」
「何言ってるんだ。これはよそ様のものだろ。明日にでも遺失物と
して職員室に届けるつもりだ」
「あんたじゃ無くしそうじゃない。それにこの綺麗さは団長の私に
ふさわしいわ」
 
 パクるき満々じゃねえか。
 
「あのなあ、レンタル品ってわけじゃないんだから、そう身につける
もんじゃないだろ。それに俺はちゃんと厳重に保管しておく」
 
 そこに古泉の助け舟を出してくれた。
 
「涼宮さん、彼の言う通りですよ。それに拾った人が保管して
おいた方が届け出る時の説明も明確に出来ます。ですから彼が
持っていたほうがいいでしょう」
「ま、そうね。これ高そうだから落した人も困ってそうだし。それに
しても何となく不思議な指輪ね・・・・・・」
 
 そういいながらハルヒは指輪を持ち、まじまじと見ている。よほど
気に入ったのか、よほど不思議な点があるのか・・・・・・俺には普通の、
ちょっと変わった指輪にしか見えないけどな。そう思いつつハルヒから
指輪を受け取り上着のポケットに再び仕舞った。
 
「それじゃ、今日はもう何もやることも無いし解散にしましょ」
 
 ハルヒの一言で今日は解散となった。下校途中の坂道を降りて
いると、前を歩いているハルヒがなぜか気になってしょうがなかった。
 
「おや、やっと自分の気持ちにお気づきですか?」
 
 古泉が俺の表情を見てニヤケ面で言う。
 
「気持ちってなんだよ」
「涼宮さんに対する気持ちですよ。ご自分でもお気づきだと
思いますが」
「あいにく、そんなことを考えてたんじゃねえよ」
「では何を?」
「いや・・・・・・なんというか不思議な感じがな・・・・・・」
「不思議な感じ・・・・・・ですか?」
「ああ・・・・・・ハルヒが指輪を見ていたときからな」
「なるほど・・・・・・やはり何かあるのかもしれませんね」
 
 そう話していると前の方からハルヒが、
 
「歩くのが遅いわよキョン!置いてっちゃうからね!」
「へいへい」
 
 そうこうして雑談などしながら歩き、各自家の方へとバラバラに
散っていった。ハルヒと分かれる際、俺はなぜか、
 
「ハルヒ、明日もまた会えるよな」
 
 と言っていた。
 
「当たり前じゃない。別に明日は休みってわけでも無いんだし」
「そうだよな。何言ってるんだろうな、俺」
「ちょっとしっかりしなさいよ。今日は朝から変よ」
「ま、そういう日もあるさ。じゃあなハルヒ、気をつけてな」
「あんたもね。じゃあね」
 
 そんな会話をしてハルヒと別れ家に向かった。
 
・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・
 
 家では普段と変わりなく夕食・風呂・シャミセンとのベット争いをし、
平凡に一日が過ぎようとしていた。
 
「さて、今日は寝るかな」
 
 俺はシャミセンを床に下ろし寝床に入った。寝ている間不思議な夢を
見た。ハルヒが徐々にこの星のなかに溶け込んで、最後には消えてしまう
というものだった。
 
「ハルヒ!」
 
 俺はその光景を見て飛び起きた。時計は午前0時少し過ぎた時間を
指していた。
 
「夢・・・・・・か」
 
落ち着くためしばらく起きていると、しばらくして携帯電話の着信音が
鳴った。発信者は古泉だった。
 
「もしもし、古泉か。今何時だと思って・・・・・・」
『申し訳ありません、緊急事態なもので』
「なにかあったのか?」
『大変なことになりました。涼宮さんが地上から消えました』
「なん・・・・・・だって!」
『こちらの方ではいま大混乱になっています。何か心当たりは
ありませんか?』
「いや、俺には特に心当たりはないが・・・・・・そうだ、閉鎖空間は
発生していないのか?」
『幸いなことに閉鎖空間は発生していません。逆にそのことが
混乱の原因となっています』
「そうか・・・・・・」
『とりあえず詳しい話は学校でしましょう。お休みのところ
失礼しました』
「ああ、わかった。学校で他のメンバーとも一緒に話そう」
 
 そういうと俺は電話を切った。ハルヒがこの地上から消えた? 
何かの間違いじゃないのか? 俺の下校時の不安が的中したって
いうのか? どうやらただ事で無いことが起きている事だけは
確実のようだ。
 
 ハルヒ、無事でいてくれ・・・・・・
 
 
───Missing Ring -失われる7日間- 第一話 終
 
 

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