ピンポーン。

時刻は午前11時。インターホンが鳴った。
誰が来たのかはわかっている。ハルヒ親子だ。

1階から家中に
「はぁ~~い!」
と言う妹の声が響く。下手したらお隣さんにまで聞こえちまうくらいに。続いて、
「あー!ハルにゃんだっ!」
わかってたくせにそんなに喜ぶのはなぜなんだ、演技なのか?だとしたらちょっと才能があるかもしれない。


すでに着替えていた俺も、下に降りた。
ハルヒは玄関で妹にしがみつかれていた。そんな妹にちょっと苦笑い気味な顔を向けている。
今日のハルヒは白のロングコートの下に薄いカーキ色のワンピース、茶色のブーツといった
いかにもTeen'sな格好である。はっきり言おう、とてもよく似合っていた。
そのまま笑顔でポーズを撮れば、雑誌にだって載れそうだなどと考えていると…。

なぜかまた、心の中が少しモヤモヤしたような、よくわからない気分になった。
なんなんだろうか。…まぁ階段でこんな事を考えていても仕方がない。

視線を親達に向けてみる。
2人で会釈を交わしあいながら、さぁ行きましょうかと行った雰囲気だ。

「キョン君、おはよう。今日はハルヒをよろしくね」
「あ…はい」

三者面談の時より2割増しくらいの笑顔でこちらに軽く会釈をしてきた。
しかしその、あなたのその表情とは対象的に、横の娘さんの顔がどんどん怒りの顔に変わっていってますよ。

「ちょっとママッ!言っておくけどキョンがどーーしてもって言うかr」
「はいはい、そういうことにしとくわよ」
「もー!!なんか勘違いしてない!?」
「してないわよ。それじゃ、頑張ってね」

さすがハルヒの親だな、不機嫌な時の娘との会話の捌き方が手馴れている。


「それじゃあ行ってくるから。どこか行くなら戸締りよろしくね」

俺の母親はそう言うと、颯爽と2人でどこかへ出かけて行ってしまった。


ハルヒママさん?実の娘をわざわざ不機嫌状態にしてウチに置いて行かなくても…。
あと、去り際に朝比奈さんよりうまいウインクを俺にして行ったのはなんででしょうね?

その不機嫌なままの顔を隠そうともせず

「キョン、あたし喉が渇いたわ、出かける前にお茶を出しなさい」

やれやれ、親がいなくなった途端、こうだ。
じゃあ俺の部屋で待ってろ。あんまり物をいじるなよ?

「わかってるわよ。ほら、さっさと行きなさいよ」

そう急かすと自分もさっさと俺の部屋に移動しようとする。
まぁ、妹と遊んでてやっててくれよな。


───台所でお茶を入れ、盆に乗せて自分の部屋へ持っていく。
中に入るとハルヒは、俺のクローゼットを勝手に開けて中を見ていやがった。
言っておくが、その中に幽霊なんていやしないぞ?

「あんたねぇ、もうちょっと良い格好しなさいよね」

いじるなと言ったのに勝手な事をしておいて、最初に言うことがそれかよ。
ちっ、ほっとけ、別にいいだろ。

「よくないわよ」

なんでだ…

ハルヒぱっと閃いた顔をして

「よし!決めたわ!!チョコレートパフェ食べたら、今日はあんたの服を見に行きましょう!!」

ここで俺が拒否したら、おそらくハルヒの頭の中でプロレスの試合のゴングが鳴ってしまうだろう。
いつもの事だが言い出したら聞かんからな。
まぁ、他に特に予定もない事だし。
それになにより、極上の笑みを浮かべているハルヒを見ていると、他のプランを提案する気にもならなかった。


そういうわけで、俺達3人の今日の予定が決定した。



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