朝起きると――ハルヒになっていた。
いやマジで。頬をつねってみたが悲しいことに夢じゃないらしい。
まず違和感を感じたのは髪の毛だ。
どうもムズムズすると思ったが何故か肩まで伸びている。
しかし寝ぼけたアタマでは「あれ?俺ってこんな髪長かったけ?」ぐらいにしか思えなかった。

次に違和感を感じたのは・・・下半身だ。
いつもなら爽やかな朝を告げるかのごとく、
雄々しく(誇張アリ)そびえたっているハズの『アレ』の感触がない。
この年にしてイ○ポかと一瞬絶望しかけたが、それ以前の問題だった。

「ついてない・・・!?」

ここまで認識して初めて俺は自分の身体の異常に気がついた。
そして極めつけは寝ていた部屋である。
散らかったいつもの俺の部屋とは違う、小奇麗に整理された部屋・・・。
そして所々に置いてあるぬいぐるみやら明るい色を基調としたカーテンや
ハンガーにかかってるメイド服やバニーガールの衣装(って、え?)が、
ここは紛れもない女の子の部屋だと教えてくれる。

そして俺の部屋にあるべくもない大きな姿見の前に立った瞬間、全てを悟ってしまった。
――そこには、常につけているカチューシャを外した乱れた寝癖頭で、
はだけたパジャマ(正直見えそうです・・・色々・・・)に身を包んだ、
それはそれは可愛らしい美少女――いや、涼宮ハルヒの姿があったたのだ。

さてさて、一体どうしたものだろう。
さっきから延々と頬をつねってみてはいるものの・・・一向に目が覚める気がしない。
おかげで俺(いやハルヒのか)の右頬は真っ赤っかだ。後でハルヒに怒られるかもしれない。
そんなことを思うくらい、何か現実を認識したら一気に冷静になってしまった。
俺もSOS団でのトンデモな日常に慣れて、感覚が麻痺してしまったのかな・・・。
いつのまにか部屋を隅々まで見回す余裕も生まれていた。

ほうほう・・・熊のぬいぐるみか・・・意外にファンシー趣味だな・・・。
本棚は・・・何かよくわからんSF小説やら『UMA発見!!』とかそんな本ばっかだな・・・。
と思ったら、隅っこの方に『いかにも』な感じの少女マンガもあったり・・・。
その隣のCDラックには主に洋楽中心に様々なCDが入ってる。
お、ENOZのアルバムなんかあるぞ・・・?彼女達が卒業記念に自主制作した5曲入りEPだな。
あ、ギターなんかも立て掛けてあったりするぞ。また文化祭でバンドやるつもりじゃないだろうな・・・。

と、そんなこんなで俺は女の子の部屋をじろじろ見回すという社会通念的には余りよろしくない、
しかし、男にとっては悲しい性ともいえるような行動を取っていた。

あー、流石にタンスの中身空けたりはシナイデスヨ?ホントデスッテ。
いやあ、ああ見えてハルヒは下着は結構かわいいのが好・・・ゲフンゲフン・・・。

そして、ふと今度は机の上に視線を走らせた時・・・俺はとあるものを見つけてしまった。

それは写真立ての中の1枚の写真――。

写っていたのはハルヒ――とハルヒに無理やりに腕を組まれ、苦笑いしている俺。
あれ?おかしいな・・・この写真どっかで見た気がする・・・。
そうだ・・・先月連休を利用してSOS団+鶴屋さん&ウチの妹、
といういつものメンバーでいった山合宿の時に皆で記念に撮った集合写真だ。
この写真は・・・俺も古泉(無論これを撮ったのは、宿泊先として古泉が見つけてきたペンションに当たり前のようにいた
新川さん&森さんコンビのどっちかだった)から受け取った。
でも、あくまでも全員写った写真だったはずだよな?

と、いうことはだ。
ハルヒは・・・全員集合の写真を切り取って俺とのツーショット写真を作ったってこと?
所謂アレだ。中学生とかがよくやる修学旅行のクラス集合写真を切り取って、
自分と好きな異性があたかもツーショットで写っているかのようにする・・・アレだ。

一気に顔が赤くなるのがわかる。
姿見を見てみると・・・むむっ!照れたハルヒは意外に可愛いな・・・じゃなくて、
つまりハルヒは・・・俺のこと・・・?
ヤバイ・・・これは見てはいけないものを見てしまった・・・。
何と言うか嬉しいやら恥ずかしいやら嬉しいやら恥ずかしいやら・・・ってオイその2つだけかよ!

と、混乱する俺を正気に引き戻したのは――
『ギイッ』
という部屋の扉が開けられる音だった。

入ってきたのは――、
「え、俺?」
見紛うことなき、正真正銘、俺だった。

「何やってんだ?ハルヒ?」
普通に声をかけてくる『俺』。
「い、いやぁ・・・何でも・・・」
狼狽する俺。普段の男口調にならなかったのは不幸中の幸いだった。
「っていうか・・・なぜここに・・・」
思わず聞いてしまった。

「何言ってんだよ、ハルヒ。昨日は俺が泊ったんだから、いて当然だろ?」
はぁ?
「俺もついさっき起きたんだけど・・・スヤスヤ寝てるお前を見たら起こすのが忍びなくてな。
ちとトイレに行ってたんだよ」
え・・・ということは一緒のベッドで・・・?
「昨日は随分激しかったからな~。疲れてたんだろう?」
ええええええええええええええええええええええ!!!!!!!
つまり俺とハルヒは『そーいう関係』ってワケですか?

「ん?顔が赤いぞ。どうしたんだ?」
そりゃあ赤いに決まっているだろう。そして顔をみるみる近づけてくる『俺』。
「もしかして・・・昨日の夜のこと思い出したか?」
思い出しとらんわ!!つーか知らん!!断固知らん!!

「照れてるハルヒって・・・結構可愛いな・・・」
ああ、やっぱりそう思う?俺もそう思ってたんだよね・・・ってちがーう!!
「何か・・・そんなお前見てたら・・・俺・・・」
ちょっとちょっと!!なぜ肩に手をかける!?
「ダメだ。我慢できね」
とうとうベッドに押し倒されてしまう俺。

ああ・・・せめて初めては女の子相手で・・・ってこの『俺』はそれを実現してるわけで、
      • ってそんな場合じゃない!
『男同士というのも結構いいものですよ』
五月蝿い、黙りやがれ脳内古泉。大体、今俺はハルヒだから男じゃない。

「それじゃあ、頂きます」
『俺』が俺の耳元で囁く。

「アッーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

断末魔の叫びが響き渡った・・・。


「はっ!!!!」
・・・気がつくと、そこはいつもの俺の部屋。
見慣れた家具に机、ベッド・・・・。

「夢かよ・・・」
今すぐにナイフを胸に突きつけたい気分だ。
フロイド先生も爆笑どころじゃない。こんなアホな夢、笑い死にしてしまうだろう・・・。

しかも・・・、
「・・・マジかよ」
俺の下半身の『アレ』は、これまでにも類を見ないほど元気にその存在を主張していた。
あんな夢で・・・マジで自己嫌悪に陥るぜ・・・。

結局その日は学校に行ってもハルヒの顔をマトモに見ることすら出来なかった。
まあ・・・夢のことを思い出してしまうってのもあるんだが・・・、
何よりも今日きっとハルヒはあのタンスの中のどの下着をつけているのかということを
否がおうにも想像してしまうのだから・・・。

うーん、俺としてはあのピンクのチェック入りのヤツなんて良かったんだが・・・。

ああ、ダメだ。俺は本格的に故障してしまったらしい・・・。

ちなみにそんな夢はその後は見ることはなかったとさ。

(おわり)



|