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朝起きると――キョンになっていた。
いやホントに。夢かと思ったけど、頬をつねっても一向に覚めないし。

最初に違和感を感じたのは髪の毛だったわ。あたしってこんなに短かったっけ?ってまず思った。
そして本格的にオカシイと感じたのは――下半身。

なんか・・・『あらぬモノ』が付いている気がするのよね・・・。
あたしは何気なくその違和感の元を手で触ってみた。
『ムニュ』
え?何よ、ムニュって、おかしいわね・・・。
思わず寝転がりながらパジャマの中を覗いてみる。
あれ?あたし、こんなヘンなパンツだったっけ?と寝ぼけアタマで考えつつ、その奥に目を凝らすと・・・

――しなびたキノコがあったとさ・・・。

「って・・・えええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
あたしは思わず叫んでしまった。ここでやっと気付いた。
髪が短い理由も、叫んだ声が随分と低かったのも、全部合点がいった。
急いでベッドから飛び降り、姿見の前に立つ。

「あたし・・・何でキョンになってるの?」

そこにいたのは我が神聖なるSOS団のヒラ団員にして雑用係、まさしくキョンその人だった。

落ち着いて部屋の中を見回すと・・・何のことはない正真正銘あたしの部屋だ。
「でもそれなら何であたしがキョンに?」
そんな疑問に駆られつつ、よーく辺りを見回すと、
さっきまで寝ていたはずのベッドがまだ異様に膨らんでいるのが目に留まった。
――あれ?誰か寝てるのかしら・・・?

恐る恐る布団を剥いでいくと・・・そこにいたのは――あたしだった。
しかも髪は寝癖でグチャグチャ、パジャマはなぜかはだけまくり。
ブラが殆ど見えてしまっている。
そして、改めて自分の(キョンの)身体を見てみると・・・なぜか上半身裸・・・。
服着てるとわかんないけどキョンって意外に逞しい・・・って違うわ!

よく考えると、この状況って・・・いわゆる・・・。
一気に顔が赤くなるのが自分でもよくわかる。
姿見に映るその顔は・・・ああ、照れてるキョンって意外にカワイイ♪って・・・違うわ!

「う・・・ウソーーーーーーーーー!!!!」

あたしは思わず部屋を飛び出し、トイレに駆け込んでしまった。

落ち着いて状況を整理するわ・・・。
ウンウン、SOS団団長たるもの常に冷静沈着が信条であることだし・・・。

なぜかあたしがキョンになっている。勿論原因不明。

そしてなぜかあたしの隣では『あたし』が寝ている。勿論こちらも原因不明。

状況的には、2人は×××な関係?

「どうしよ~・・・・」

思わず嘆くあたし。勿論キョンの声で。
こうして聴くとやっぱりキョンの声って渋くて素敵かも・・・って違うわ!
考えるのよ!涼宮ハルヒ!こうなった原因を、そして解決方法を!
「・・・ってわかるわけないじゃなーい!!!!!!」
トイレの個室にあたしの叫び声が響く。

「そう・・・これは夢よ」
そうでないと納得できない。寧ろ何で早くそれに気付かなかったのかしら?
頬をつねったから夢が覚めるなんて漫画の世界じゃあるまいし、こういう夢もあって不思議じゃないわ。

あたしはそう納得することにした。
そして、せっかく夢の中でキョンの身体になってしまって・・・しかも『あたし』まで
なぜかいるのだから、ちょっと『面白いコト』をしたくなってきてしまった。

具体的に言うと・・・あたしがキョンに『して欲しいこと』をやってしまおうということだ。
告白すると、あたしはキョンのことがその・・・好き、だし・・・、キョンにこんなコト言って欲しいな~、
とかして欲しいな~、とか色々あるのよ。ん?恋愛なんて精神病の一種なんじゃなかったのかって?
悪かったわね!どうせあたしは病気ですよ~だ!

そして、部屋の前まで戻ると・・・何やらガサガサと音がしている。
まさか・・・『あたし』が起きたのかしら・・・?
そう言えばあたしが『キョン』になっている夢を見ているってことは、
キョンは『あたし』になっている夢を見ていたりなんかしたりして・・・。
確証も何もないそんな考えがアタマに浮かんだ。
「でも、まあ夢の中だし・・・所詮お互い起きたら忘れてるわよね。
だったら・・・思いっきりイタズラしちゃおっと!」

あたしはそうひとりごちながら、部屋の扉を開けた。
そこには正真正銘『あたし』がいる。
やはり既に起きていたようで、部屋の中に立ちつくしていた。

あれ?『あたし』が手に持ってるのは・・・写真?
あの写真は確か・・・あーーーーーーーーーーーー!?

そう、それはこの前の合宿の時のみんなで撮った集合写真を切り抜いたもの。
なんでそんなことをしたかというと・・・キョンと・・・。
・・・って、見たわね?

しかもなぜか部屋のタンスが開けられた形跡がある。しかも下着が入っている段。
・・・見たわね?

『あたし』のその軽率な行動は、燃え上がるイタズラ心に更に油を注ぐことになった。

「えっ、俺?」
あたしの姿を見るや否や、そうこぼした『あたし』。
ってことはやっぱり・・・。まあ、いいわ。所詮、夢だし。

「何やってるんだ、ハルヒ?」
声をかけてみる。キョンの喋り方ってこんな感じだったわよね?
「い、いやぁ・・・何でも・・・」
誤魔化す『あたし』。無駄よ、ネタは上がってるんだから。
「っていうか・・・なぜここに・・・」
尋ねてくる『あたし』。そんなの、コッチが聞きたいわ。
さて、ちょっとカマかけてみようかしら?

「何言ってんだよ、ハルヒ。昨日は俺が泊ったんだから、いて当然だろ?」
ああ・・・もしこんなセリフをキョンに言われたら、あたし・・・って違うわ!
自分で自分のセリフに酔ってどうするのよ!?
『あたし』は、ポカーンと口を開いて呆然としている。我ながら何かマヌケね。

「俺もついさっき起きたんだけど・・・スヤスヤ寝てるお前を見たら起こすのが忍びなくてな。
ちとトイレに行ってたんだよ」
あたしは、更に追い討ちをかける。
「昨日は随分激しかったからな~。疲れてたんだろう?」
自分で言ってて恥ずかしいわ。でももしこんなことキョンに言われたら嬉し・・・って違うわ!
『あたし』は見るからに顔を赤らめ、狼狽している。
ふふ~ん?もう一押しね?

「ん?顔が赤いぞ。どうしたんだ?」
一歩一歩、『あたし』に歩み寄る。
「もしかして・・・昨日の夜のこと思い出したか?」
どうやらもう陥落寸前ね。
「照れてるハルヒって・・・結構可愛いな・・・」
ベッドへと向けて、『あたし』を追い込んでいく。
「何か・・・そんなお前見てたら・・・俺・・・」
うーん、我慢出来なくなった男ってこんな感じかしら・・・。
もしあたしがキョンにこういう風に迫られたら・・・もう即・・・って違うわ!
「ダメだ。我慢できね」
そう言って、あたしはロクに抵抗もしない『あたし』をベッドに押し倒した。
まあ、もし本当にキョンがこういう風に迫ってきたら・・・あたしもこうなっちゃうだろうけど・・・。
勿論、他の男だったら返り討ちにボコボコにしてやるけど・・・ってもう自分にツッコむのにも疲れたわ・・・。

うーん、でも女の子相手にこういうことって・・・どういう風にやればいいんだろう?
あたしは勿論、初めてはキョンと・・・キャッ♪・・・って(ry
まあ、正直夢の中とはいえ自分で自分を×××する羽目になるなんて・・・。
『アブノーマル・・・新たな属性の目覚めが期待される・・・』
五月蝿いわ、脳内有希!大体、今あたしはキョンだから女じゃないわ。

「それじゃあ、頂きます」
そう耳元で囁くと、『あたし』は、
「アッーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
と、断末魔の叫びを上げた。何よ、失礼ね。

「ほえっ!?」
・・・気がつくと、そこはいつものあたしの部屋。
見慣れた家具に机、ベッド・・・・。
壁に立て掛けられたギターに机の上の写真もいつも通りの位置・・・。
タンスも開けられた形跡は皆無・・・。

「やっぱり・・・夢だったんだ」
予想通りだけど、ちょっとガッカリしたわ。ホントにちょっとだけよ!?

そして、あたしは元の身体に戻っていた。
しかも・・・
「マジ・・・?」
あたしの身体はどうしようもないくらい火照っていた。ついでに汗びっしょり。夏でもないのに。
そりゃあ、あたしだって健全な若い女だから身体を持て余すことだってあるけど・・・。
いくらなんでもコレは・・・。

結局その日は、学校に行ってもキョンの顔をマトモに見ることが出来なかった。
あんな夢の後で恥ずかしかったのは勿論だけど・・・何よりもキョンを見ると、
あの『しなびたキノコ』をどうしても思い出してしまうから・・・。

「でも・・・もしキョンがあんなに強気だったら・・・あたしもこんなに苦労しないのになぁ」
授業中、まだ直視しても大丈夫なキョンの背中をまじまじと見つめながら、
あたしは聞こえるはずもない、そんな小さな独り言を呟いていた。

(おわり)


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