徒然メーター

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遡れば5年になる。
と、いってもニューワールドタイムでのことではない。第一世界時間でのことである。

「あの頃確かに見えていたのになー」

ボヤいているのは昨今法官衣に袖を通す是非をしきりと己に問うている後発型摂政、華一郎であった。

アイドレスは無名世界観のファンが集って国を成している。好きなものはなんですかと、聞かれるよりも前にビラを配り歩いて練り歩きそうな能天気気質であった彼にとり、今の状態はなかなかに苦しい。

考え事をしていると手遊びがしたくなる。にゃごろにゃごろと猫士の喉かお腹でもいじくり回したいところだが、あいにく全員忙しい定職持ちの身の上である。軍事編成ごとに拘束されるまで猫の手を遊ばせていた昔に比べ、効率的には良いありようなのだが、これもまた少々物足りない。

幽霊国民ってなんだろうと考えていたりもする。
幽霊になった国民だろうか。慰霊碑があるので、きちんと成仏していてほしいものだが、いっそ蛇神さまの僧侶として自分が供養してやるべきなのだろうか。関西弁のおっちゃんのノリにつられてつい根源力を10万も使ってしまい、レンジャーになれなくなった愚か野郎としては、これまた悩みどころである。宗教臭のしない国で、宗教を摂政があからさまに信仰してみせることほど政治的な懸念を引き起こすこともまた、多くはないだろう。

この男、そもそもがガンパレードマーチの芝村舞にしびれて第七世界の門戸を叩いた介入者であり、何より介入者たちの舞踏にしびれて儀式魔術に憧れた、かつては新参ものの介入者であった。今もまだ、新参ものの部類であろう。

20091028 現在、ターン15に突入しようとしているニューワールドの出向先は、件のガンパレード世界である。当然義体は動かない。大絢爛時代に鳴らした介入先である、ホープくんが、動かない。猫妖精も動かない。というかどんだけファンタジーな存在だ、猫妖精って。せめて第五世界なら猫神様だろうスピキオブータアノレテミス的に考えて。

えっちらおっちら設計した燕姫に乗って西国人で出るのも国庫的には優しいが現地的には猫の手よりも微妙で、どうよ、という具合である。航空偵察の利や、ないよりまし理論に基づいた出動も、考えられなくはないのだが、薄い。

そこを行くと、秘宝館時代の縁か、同じガンパレードつながりで知遇を得るようになった、今は玄霧藩国に身を置いている天狐の状況が、華一郎にとってはある点で羨ましくもあるのだった。

「あの頃確かに見えていたのになー」

ガンパレードで言うならば、これも国内の友人である双樹真と、舞談義でもして盛り上がりたいところだったのだが、なかなかに皆、忙しい。

この男、そもそもにしてからが、儀式魔術に参加出来なかったことを悔やみ、大絢爛においては実質的な参加なく、白いオーケストラで過ちを犯しており、続くターニ・キルドラゴンの旅路では痛恨を喫している。緑のオーケストラにおいても幻獣に吹き飛ばされ、青以降やアプローに至っては舞台の上にすらあがれていない。敗北続きの経歴が、自らの道のりであると公言してはばからないような、そんな人物だった。

アイドレスにおいては、縁あって現在は王の左右に同じく並ぶ摂政・ミサゴに導かれ、レンジャー連邦に来た折、これも意気込んで、レンジャー連邦を大国にしようと働いていたが、やはり実現出来ていない。足取りに空白も目立つ、そんな男である。

文族として一度は筆を置き、距離も置き、それでもなお、アイドレスからは結局離れられなかった、そういう男である。

無名世界観から、離れてはいないけれど、けれどのその先に、見出すべきはずのものを、もう大分長いこと見失っている、そんな人物だった。

ごろりと執務室の床に寝そべる。
奇異な行動を取ること。常識の埒外にはしたなく身を置くことが、華一郎の思考法であり、発想を広げるためにする習慣だったはずなのだが、これもまた、幾分久しぶりに見られる行動だ。

毛足の長い絨毯。頭が茹で上がった時には気分転換にと自分ではたいて掃除をするので、靴や髪肌衣服などから砂をまぎれさすことはない。寝心地もよい。

横を見れば等身大の机が幅を利かしていた。
雑務ばかりを好むうち、いつしか机上は手をつけた資料だらけになり、やがては国のまつりごとにまで関わるようになって、机のデカさもいつの間にかこの有様だ。

壁には西国人、昔ながらの油で火を採る照明がかけられている。金具の上に蝋燭が立てられ、それを格子状に囲ったタイプのものだ。

過日の広域電磁障害に関係なく、レンジャー連邦には、かつて核攻撃を受ける恐れありとされていた時期があって、では、倹約やセイフティも兼ねて、電灯以外の照明も使おうということで、使っているものだ。停電の折には大層役に立った。

華一郎は思うのだ。蝋燭の火のように俺の思考は揺らめいてもろい。現実という風が吹くだけで、おびやかされる。

猫士を始めとして、国民のすべてに、生きていてもらいたい、と、シーズン1の頃から思っていた。強く生きていてもらいたい、ではない。良く生きていてもらいたい、でもない。生きていてもらいたい、である。

この男、文族の常として、あるいはフィクションノートの常として、あるはずのないところにものを見て、ないはずのものを感じ、いないはずの事物に声を聞きて、ひとしきり満足したように頷く癖がある。

レンジャー連邦の惨劇という衝撃が、政府閣僚という身内だけではなく、足元の、いや、こう言っては不遜になる、頭上の身内を気づかせてくれたことも、一因であろう。

ガンパレード世界に強い国は他にいくらもある。出自や気性から言えば、大戦士たちが集う、帝国の某国など、気が向いて向いてしょうがない。

だが、この男、無名世界観的な意味での馬鹿ではなく、愚か者の意味にして馬鹿であった。事の始めから、つまづきを元に、アプローへと参画し損ねていたところを拾われた経緯と敬意もあって、とんと転藩について考えたことがなかったのだ。転藩を繰り返す旅人についても、変節もの、ぐらいの意味で、変わり者として見ていたところが、やはりあった。

今、旅人は帝国屈指の雄としてそびえている。彼の旅路に変節をした様子はない。むしろそれは俺の方だと華一郎は自覚する。

俺はレンジャー連邦を大国にしようという意思を、持ち続けているのだろうか?

昨晩熱にうなされ起きてからふと昔を思い出すまで忘れていた意思のことである。

持ち続けていたわけがない。と、いうか、ありていにいって、忘れていた。国政を営む際に足りない己の頭と奔放と無謀と不遜と鈍感を御しながらの日々の生活が苦しくて、という、ある意味リアルな理由でも、忘れていた。

確かに見えていたものが、今にない。

なかった。

だが、思い出した。

蝋燭の火のようなものなのであろうか。

風に吹かれて消えたと思っていても、芯を燃やすことなく休ませていただけで、今また明るく輝かせることの出来る類のものなのだろうか。

それは、希望だろうか。

どうも判然としない。現在グレードアップ中の義体のことではない。それも含めて、希望、であったなら、物語的にもすっきりするのだが、そうはいかなかった。

俺はアイドレスにどんな希望を見出しているのだろう。

華一郎は呟く。

あるのだろうか。希望は。

願望と言い換えてもいい。

未来と言い換えてもいい。

ああ、その意味ではホープとまさしく同じ課題を抱えている。

ニューワールドの民は戦うことに本当に飽いている。かつては10人に1人も生き延びられなかったという大戦士の集う国を気質的に愛する華一郎であってさえ、それは心底同意する意見であった。

未来が欲しくて戦うのに、未来を踏みにじり、奪い合って戦っている現実が、なんともやるせなく心を荒廃させていったのである。

戦うこと自体はいい。その中で死ぬことも構わないだろう。
ただしそれは自らが望んで赴く戦いの話であって、無辜の民が踏みにじられるのや、利用されるのや、負けないために心を殺して軍事研究を進め、思わぬ方向へと国を傾けさせたり、人でなくなるのを望んでいるわけではない。

例えば華一郎には個人的な夢がある。
政治的には、口にしたならはばかりが多すぎて、身内にもおいそれとは話さぬが、帝国の皇帝と、一騎打ちをして渡り合いたいという、願望がある。

遠い話だ。
猫の国の摂政で、パイロット国の中の国民で、摂政のほかには定職も持たずにふらふらしている男の語る夢である。もっとも、摂政が摂政以外のことに精を出すのも国民的には大いに心配事の種、足りうるので、それはそれで妥当な妥協だったかもしれないが。

それでも華一郎は、かの男と剣を交えてみたい、拳足や技法を交えて渡り合ってみたいのである。

殺めようという意図はない。地位を求めようという示唆もない。帝国の国体を揺らがせにしようという目論見もない。ただ、戦ってみたいのだ。

それは彼が彼である理由、今が今である理由、ここがここである理由と同じくらいに、明白で、偽れない感情なのだ。

ゲーム。

ゲームがしたいのだ。

渾身の、限りを尽くして、魂が灼熱するようなゲームを、したいのだ。

それがたまたま戦闘という手段であって、あるいは文族という生き様なのであって、根本のところは変わらない。

周りに誰がいようと。情勢がどんな方向へと傾こうと。

最大限、配慮はする。

するが、押し通る。

まかり通る。

そのような生き方、生き様こそが、本来の華一郎の望みであり、好きを好きと公言してはばからなかったかつての根本であった。

通すには、愛嬌がいる。
執念がいる。
好機を見逃さず天運とするだけの光がいる。

それが、ない。
あるいは、足りない。

ゆえの、苦しみであった。

「どうなのかなー」

男らしい戦いっぷりに定評のある、黒オーマたちに対しては、不思議と食指が動かない。プレイヤーの誰に対しても同じ気持ちは起こらない。

恋々とするでもなく、うらみつらみのあるでもなしに、ただ、気持ちが少し自由になった今、思うのだ。

あの男と戦いたい、と。

勝つことが目的ではない。では、負けることが目的かというとそれも違う。負け続けてもよい。挑み続けることがよい。勝ちたくはある。だがそれは一朝一夕にして成ってはならぬ。

ああ、まさに、俺は歯ごたえのある、魂の燃やし甲斐のあるゲームがしたいのだ。

谷口についても、だから不思議と理解は進むのだろう。

あれは、確かに似たような空気を感じる。

無限の挑戦を望み、己が双肩に無駄なまでの責任感を担い、鈍感ではないが、不器用を選んで生きる、あれは、そんな男だ。

だから石田についても任せてよいと、そう思えたのだ。

ああ、思えば可愛い女にはいい男がつく。

舞には青が、石田には谷口が、斎藤には英吏が、火焔にはプレイヤーが、ついている。

ガンパレードマーチと出会っては、一週間をぶっ続けに費やしてAランククリアし、続くSランクへめがけてすぐに次の五日間を費やしたガンパレードプレイヤーとしては、

白の章をAランクにまで突き詰めて、ある介入先では3000体もの幻獣を屠り、70回転にも及ぶ螺旋を回し続け、緑の章ではもっとも性分に合う殺し合いと友情と愛とドラマを丹念に愛撫し、青の章までには燃え尽きてしまっていたくらい、とんまなガンパレードプレイヤーとしては、

実はこっそりAの魔法陣で第五世界に介入を繰り返し続け、百翼長にまで成り上がったはいいものの、ゴルゴーンに吹き飛ばされ、それでも懲りることなく戦い続けているガンパレードプレイヤーとしては、

ガンパレード世界は、無名世界観における、魂の起源、ふるさとなのだ。

赴きたいと思う。

が、この身は第六世界の物理域に離れがたいほど馴染み過ぎている。義理も情もあって離れがたい。そもそもにしてからが、我が名は城よ、守りのための一なる華なる野郎に過ぎぬ。

今、別に女については未練は特にない。伴侶は1人で十分だ。興味はあるが、遊びとするには手がかかりすぎ、また、自分の中で筋を通せぬ。

だからそれはいい。愛の話題は、脇に置くのではなく、そばにおこう。

男の話が、したいのだ。

レンジャー連邦は女の国である。王にしてからが女性であり、人気も高く、摂政もまた女性で、主立って活躍し続けているのも、また然り。持久戦には女性が強い。ニューワールドの矢面に立ち裁定を続けているのも女性が大半だ。男はつくづく狩人だ。

皇帝の、話がわかる。
己がわがままを通してまかり通る、そのやり方にも、鷹揚があり、融通があり、寛大があり、譲れないための冷酷がある。だから信頼出来る。

猫の摂政がする繰言ではないなと思念する。

仮にも先方は陛下だ。

人間力という意味においては直に触れた猫が誇る大統領閣下も引けはとらない。人と接するにあたって、共和国に一あって二なき傑物であると信じている。

陛下と閣下の違いは……。

共和か、ヒロイック、か。

スタンドプレイが好物であり、他人に関心が薄く、自己の願望を満たすために他人の幸福を享受することに余念がない俺としては、やはり、後者の方が、向いているのか。

これも、悩みどころである。

あの頃確かに見えていた、答えのひとつが今はない。

共に和す。

誰と?

隣の君と。

それ以上の必要を感じない。

共和国プレイヤーであるために必要な条件とは、極論から言えば、好き嫌いを含めてすべての相手を隣に感じることではなかろうか。

俺には、ある。
例えば国民を第七世界人よりも上に置く癖が、ある。

国民をことさら持ち上げているわけではない。
第七世界人をことさら貶めるつもりもない。
ただ、信用していないだけなのだ。
大半のプレイヤーのことを、俺は信用していない。

俺にある区分は二つ。
能力が、あるか、ないか。
能力とは人柄も含む。
コミュニケーション能力のひとつに、人の良さ、愛嬌、そういった項目は確かにランクインしてくるのだ。
だから、職能だけが能力とは言わない。
その意味では、同国内の仲間たちについては信頼しているところも多い。

幽霊国民ってなんだっけ。
幽霊の国民。ニューワールドには、まあ、いそうだが、レンジャー連邦にはいないだろう。
生きていない国民のことか。
生きていないのに、そこにいる。そういう国民のことか。

挙動としては生きていないけど、死んでもいないはず。
だから、幽霊。

なるほど、幽霊国民。

難しいところだ。
別に即身仏を目指すゲームでもないので即座にボディに戻ればいいだけのような気もするが、デリケートな問題なので、鈍感な俺から一概に語れる話でもない。

ニューワールドに、今、幽霊国民はどれだけいるのだろう。
そのうち幽霊が本当に出現し始めないか、あるいはアンデッドが昔みたいにまた跳梁跋扈し始めないか、心配になる。

5年。
第一世界でも、一昔の半分だ。長いようで、短いようで、実に微妙な具合の流れっぷりだ。

ガンパレード時代のように魂を燃やしたい。
魂を、燃やしてぶつかるだけの相手が欲しい。
げに好敵手とは幸いなるかな。

思うのだ。
絢爛世界に100年の平和をプレイング上もたらしたことはある。
だが、俺の手は血まみれだ。
都市船の真横で恐怖におびえる市民をよそに爆雷を振りまき、何もかもを粉々にする、まさに海賊がごとき所業の果ての、100年の平和である。
そういう男が絢爛世界に縁の深い国で摂政位を頂いているというのも、また、難しい。

血の通わない殺しは虐殺になる。
俺のやっていたことは虐殺だ。
幻獣に対しても虐殺ではないのかと問われれば、あれは少なくとも闘争があった。集団対集団という構図ではあったが。何より死の恐怖が強かった。

義体には、恐怖がない。
それは、喜びがないのと同義ではなかろうか。
これもまた第七世界人の恐怖を振りまく傲慢なのだろう。

だが、そのことについて詫びるつもりも怯むつもりもない。
俺は第七世界人で、そのことは止められん。
俺は俺で、俺の思ったことをなかったことには出来ん。
その方が不義理で不都合だろう。

アイドレスにある介入限界、20日。
実際の生を思えば、あまりに須臾。
12分割すれば40時間か。
40時間で人は、眠りもすれば、食事も済ませる。プライベートの時間も欲しい。有効に使えるのは半分といったところだろう。
20時間。
短い、だろうか。長いだろうか。
短いような気もする。長いような気もする。
積み重ねることが出来るにしては、破格の長さか。
だとしたら、俺たちは本当にその長さを適切な生き方で生きてきているのだろうか?

たかが40時間だ、ぶっ続けで起き続けて会議をし続けることも戦争し続けることもたやすい。だがその40時間を繰り返すことは至難である。第七世界人は別に化け物でもなければ神でもない。単に生活周期がニューワールドの中と違うだけであって、なまこの歩みが遅いように、ウスバカゲロウの寿命が短いように、別の種族なだけであって、実はそんなに大した存在ではない。

介入能力にしたってそうだ。
未来が読めなければ意味がない。いたずらに被害を広げる最悪に過ぎない。それこそ風評通りの殺戮兵器扱いだろう。

殺すことの何が楽しいか。
楽しいのだ。
他人に自分の価値を認めさせ、手ごわい相手に魂を灼熱させることは、確かに楽しいのだ。
第七世界人の快楽に残虐がイコールで付きまとう風評は、こうした根拠がある。

アイドレスでそれをしても、むなしい。
大虐殺をするには敵と通じて呼び込み悪政を布いて死と絶望をばら撒けばいいだけの話だ。一筆で事足りる。もっともその前に誰かに取り押さえられるか、予防措置が取られて拘束されるか、だろうが。

アイドレスで、俺が望む戦いを繰り広げるのは、とても難しい。

戦いそのものが嫌われている。厭戦ムードである。
俺だってそうだ。戦争は嫌だ。
だが、決闘でさえも女性は嫌う。なかなか難しい。
結局、一見平和な番長バトルや、ゲームであるところのタケモンが人気になるわけである。

競うことは楽しい。
それは誰かを蹴落とすからではない。
それは自分を肯定する評価を獲得、出来るからでもない。
自分を肯定する評価を獲得しようと前向きな努力を明確に設定して実行しやすいから、好まれるのだ。

このあたり、スポーツの精神だろう。
血が絡むと、少々話が違ってくる。
死も念頭に含めた尋常の決闘では、何もかも違ってくる。
ただ殺せば勝ちならば、暗殺でもいいし、姦計でもいいのだ。
そういうのは、俺はつまらない。
ガンパレードなら殺戮の果てに殺戮なき勝利を得るのが美しき達成だった。
アイドレスもきっとそうだろう。
究極、戦争なんてものはそのためにある。
人との争いなんてものは、そのためにある。
物語的には。
現実は違う。
アイドレスも、違う。
だから、困る。

どうもいけない。うだうだ絨毯の上で寝そべり思索にふけっていると暖かくて眠くなる。

せめて腹ばいになろう。

ごろりとひっくり返る。
む、余計に眠くなった。どうしろと。

仕方がないので眠らないために考え続ける。
手段と目的が入れ替わっているという話もあるだろうがそれは違う。
究極的には悩み事を考えるのも睡魔に耐えて考え事をしつついつの間にか心地よいまどろみに絶妙なタイミングでバトンを渡そうとするのも、自分の快適さを得るためのことである。

どんだけ徒然だよ。

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命を、試す。
だから究極のゲーム。
お互いにとって。

華一郎にとり、戦闘とは、そういうコミュニケーション手段の一つとして認識されていた。

だから、裏をかき、欲にまみれ、利権を元にする、セプテントリオンの如き手法には、大層弱い。

慣れた今でも、弱い。

そもそもにしてからが、単騎大火力で勝利すること、それ以外での戦闘の勝利というものに、疎い。

つくづく兵隊だなあと思う。
軍事関係はドラケン氏とヤガミたちに任せてしまいたくなる。
編成は、単にバトルのゲームを工夫するのが好きなだけであって、別に華族の義務でもなんでもないから、軍事が好きなわけでもない。

そりゃー米が食えなきゃ戦えないし、油がないと機体が動かないから、兵站についてぐらいは考える。聨合の必要にも頭をめぐらす。

上野で食ったもんじゃ焼きはうまかった。お好み焼きの牛スジ肉もこってりといい具合に煮込まれていた。また食べに行こう。連邦内でも、食べにいこう。

さておき、どちらかというとそれらは確保するものであり、もっと言えば、もらうものである。国庫といえば形式上は政府のもので、閣僚が使える気もするが、私物でもなんでもない。これも、もらいものだ。

米も油ももらうものであって、まあ、油に関しては国内で採掘しているし、今の施設を作っため組とも知らない仲ではないので(この間顔を見に行ったら四代目に替わっていた。社長にしてからが、大旦那と言えば聞こえはいいが、一人七人の小人どころか指先一つで岩盤がダウンさの世界になってきていて結構恐ろしい。あれ絶対至近距離で爆砕の余波を食らってるから肉弾戦にも強いだろ)、自分で確保する、という意識も、なくはないが……。

「油だって、命だしなあ」

石油無機説有機説、どっちもあるが、無機だからと命を否定するのもどうだろうかと華一郎は思っている。だって義体に介入しているメンバーやサイボーグ、AIのような知類はどうなのよ。

命とは情報である。
情報とはその存在が世界にいた証とその足取りである。
だから石油が無機起源であろうが有機起源であろうが、もらいものには違いがない。

介入先のボディにしたところで作ってもらってるわけだからしてもらいものである。

もらいものだから粗末にしていいとかいう話ではなく、大体がなんでももらい物なので、軍事の、兵站とか、考えるには考えるが、深くは悩まないのだ。

実戦になるとさらに単純化される。
介入行動を束ねて目の前の機体か義体か状況に、たたっこむだけ。
作戦とかは開始される前から参謀部によって決められているので、考える必要がない。

うーん、ザ・兵隊。

航路を考え、敵の奇襲や魔手や魔術や手練手妻に備えて切り札を隠し、八方にらんで配置を組み替えあれやこれやと物流を切り盛りし……、と、いう、事務方作業が、実際の戦闘の大半である。

国内でやっていることと、あんまし変わりはない。
変わりはないようだが、大違いなのだ。
扱っている中身が違う。
戦場に適した兵器のチョイス。まあこれは出来るだろう。だってデータ表に宇宙だとか海中だとか遠距離戦だとか適性がついている。兵器の開発。これも出来る。すげーめんどくさかったが、燕姫だって開発はした。ヴァローナは挫折した。なんか名前だけ案を採用されたので恥ずかしいぐらいだ。物資の計算も、突き詰めれば国庫の切り盛りで、外交が混じってくるが、その調整の面倒くささと手際と人当たり手腕による団結力の維持とかの度合いを考えなければ、割と事務的だ。ルールとか大層めんどくさそうだが。

問題になるのは、扱っている魂の中身だ。

何がしたいのか。
その明確な意思を持てるものだけが、参謀のステージに立てる。

おいおい俺が軍事的に明確な意思を持ったらレンジャー連邦が火の海だよ。帝国と戦争なんて無理無理ないないありえない。ていうかそういうことがしたいんじゃない。それはそれで楽しそうだが、あくまでゲーム上でのやりとりがしたいんであって、国民を巻き込むんじゃ意味がない。やるならシミュレーター上でかなー。

戦うモチベーションは大事だ。
動機付けがうまくいかないと物語も成立しない。
ニューワールド以外の見渡す限りが戦場に見える俺の目には、明確な意思というものが宿せない。
誰と何のために戦うのよ。
世界が滅亡するだろうか。
するだろう。
オーマがあちこちにまだいるだろう。黄金戦争は終わってない。
口にしてはいけないあの人(パロディにしてごまかしておこう、そうでもしないと危なくてしょうがない!)の猛威も全世界に広がり続けている。あれの根を絶たなくっちゃあしょうがない。
セプテントリオン。お前不死身か。つぶしてもつぶしても復活しやがって。いや俺がつぶしてきたわけじゃないが、それにしたってあれはあれで邪だが、悪では必ずしも、ない。秩序を持とうという大きな意思の元に戦争という悪=計画的な混沌を振りまいてるしね。善と呼ぶのは大いに遠慮したいし、対立しているので悪の秘密組織と受け止めてはいるが、秩序自体は存在する。

そう、ルールだ。
オーマにも、セプテントリオンにも、ルールがある。
例のあれにもたぶん、ルールがあるんだろう。

ルールを重ね合わせて束ねればいいのか。
そうすりゃ戦争は終わるのか。
望む戦いに没頭出来るのか。
でもそれってゲーム終わってないか?
ゲームを終わらせるためにゲームをするのか。
うーん、まさにゲームクリアが目的か。
クリア目的の攻略はちょっと味気ない。
もちろん本道なんだけれども。
ましてみんなでクリアを目指している現状では、必要なんだけれども。

ゲーム、か。

ゲーム、か?

試しているのだろうか。
俺たちは、何を試しているのだろうか。

国民は生きている。
生き続ける。
生き続けられるか?
行き続けて欲しい。
だから、生き続けられるようにしよう。
そういう意思を、試されているのだろうか。
だとしたら、その答えはYESなのだが。

おなかがすいてきた。
おなかがすくと眠気がとれてくる。
同時に眠気が深まってもくる。
ちょっと油断するとすぐひっくり返る状態だ。
うつぶせになっていると空腹ばかりが物理的に強調されるのでまたあおむけに戻る。おなかがへっこむ。このところ自転車に乗りっぱなしなので、食事を取っていない状態であおむけになると、やせてぺっこんとへこんでしまう。ううん、これはいかん。へそを出している格好なのに、これはいかんな。健康じゃない。

ちょっと食べてきてから続きを考えよう。

3-82019002


パン・菓子を食った。
順番的には菓子>パンである。甘いものでカロリーだけ採ろうとして、物足りなかったからおかずパンを食べたという按配だ。しめて3にゃんにゃん。このようにして第一世界での生活風景を第七世界経由でニューワールドに反映するだけでもだいぶ違うのではなかろうかと思うのだが、思いつきについて、なかなか継続した試しがない。事実似たようなことを事業として取り扱う会社を設立しようと思って挫折した経緯があり、また別の企画でも着手しようと思って実現のためのステップが難しすぎ、頓挫した経緯があって、思いつき関連については慎重になっているのが華一郎の昨今だ。

席に着いて頬杖突きながら、さて、俺はどんなことを考えていたっけなどと困っている時点で何もしなければいいようなものなのだが、何もしないと何も変わらないので(何も起きないというわけでないあたりが生活の大変なところだ)、考える。

おお、俺はさっきまで、いかにもレンジャー連邦を出ていこうかどうしようか悩んでいるとも取れる思考をしていたな、と、思い出す。

皇帝に挑戦か。順当な手順を踏んでなら、それも可能だろう。外交的な立場があるため、余興として扱われ、あしらわれるだけだろうが、何も物騒な手段に訴えなくたって、腕比べだけなら、まあ、その、なんだ、立場の単純的な高低だけ考えても手間は大変かかるが不可能ではない、よな。

別にレンジャー連邦を出なくたって、着替えなおさなくったって、戦えるのだ。能力があるかどうかで戦いは決まらない。可能行為に白兵戦が入っていないからといって白兵戦行為を仕掛けることが出来ないとは限らない。意志で運命を切り開くのがアイドレスだ。第一レンジャー連邦自体に不満はない。良き王、良き同僚、良き翼、良き気風。強いて言うならもっと昔みたいに集まりたいところだが、そもそも昔と今って本当につながってるっけといわんばかりに時代が流れ状況が変化しきっているので困る。

とりあえずペンを取った。
いつの時代も文族の武器はペンだ。目に突っ込むとか関節に突っ込むとか動脈に突っ込むとか神経に突っ込むとか内臓に突っ込むとか筋肉に突っ込むとか(突っ込む以外に使えないのか)以外にも、ペンって奴は武器に適している。

ペンと、白い紙。
いや、究極的には文族には、それすらも必要ない。
俺に銀の舌をよこせ。歌ってやる。
俺に脳をよこせ。意志ってやる。
俺に時をよこせ。つなげてやる。
過去と今と未来とを。

あ、眠い。だめだ。
食べて暖かいところに落ち着いているとすぐまた眠くなる。
一人寂しく中庭で池を見ながらもしゃもしゃ食事したのを思い出す。
中庭は暖かくてよい。暖かいっつうより暑いんだが。
水気があるから涼しさもある。日陰もあるから涼しさがある。
両方あわさって、暑いっつうより熱い天候に、涼しい+涼しいで、ほどよく暑い感じになるのだが(それでも暑い)、体が慣れているのでうとうとしてくる。
チョコレート菓子はうまいよなあ。あれはいい。
昨今麻薬関係でなんだったか、菓子の名誉が貶められることがあったような記憶があるが、うまいものは正義である。近々レンジャー連邦でも税関施設を導入して、これまで以上に物流を細かく面倒見ていく予定なので、是非にも食の信頼には復活してほしいものだ。

デザートもんじゃも食べたいなあ。
食が細いので、おやつを食べた後にごはんを食べるということが出来なくて、どうにもなかなか太れない。
が、それもうまいものを食べれば別だろう。自炊だしなあ、基本。

ペンをくるくる回し回し考える。
甘いものについての物語。甘い物語と、甘いものについての物語は違う。
青い物語。青についての物語と、青い物語は違う。

青くて甘い物語にしようか。
別に文族として売れなくてもいいのでとにかく物語を書きたい。
なんとか、書きたい。
書けないので、書きたい。
書き散らすのではなく、書きまとめるのでもなく、書きたい。
わからんものだ。どの物語が受けるのか、わからん。
受ける物語が書きたいのではなく、書きたい。
書きたいものが書けたらいい。
だから書こうと思う。
のだが。

ちゅりちゅりペンを回す。あ、紙に穴開いた。

チョコレートの物語。
チョコレート・徒然。
べたべただな。
暑い国だととけそうだよ。

もうちょっと適当でもいいんじゃないかという気がする。
もっと適当に。
超適当に。
そう、なんかもう、よだれとか腕とか関節とかだらんだらん垂らしながら書くぐらいの勢いで。
生きると書くと難しそうな字面になる。
生という漢字自体は難しそうじゃないのになあ。
きるあたりだろうか。きるだからか。
生・killあたりに変換されちゃってるのか。なんか。
深いな業だな原罪だなそりゃ難しいわ。
ニューワールドに生きる、とか言い出すと、だからなんだか難しげな雰囲気が漂ってきてしまっていけない。書けない。
ニューワールドでダルダルする、とかどうよ。
ニューワールドでダルダルとけ出すチョコレートデイズ。
うは。どんな物語だよ。
グダグダでもいいな。
もっとひどい語感の言葉はないかな。
誰一人として難しく考えないような。
ニューワールドでぐぅすかする。
ニューワールドでぱやぱやする。
ニューワールドでぽかぽかする。
ニューワールドで、
あー、
…………、
ケチャケチャする。
ケチャ?
空間を指で叩いて青い波紋を走らせた。
ああ、バリ島の舞踏ね。わりと新しい。
踊るイメージで言葉をひねり出したからそんなもんが出てきたのか。
ぱっと見、意味はわからんが、なんだか迫力ある言葉だよな。
ニューワールドでケチャケチャする。

のどが痛い。
熱の影響がまだ体に残っている。
安静にしててもつまらんので机には着いているが、国政にまつわることでもしようかなあ。
研究でもいいなあ。
一応星見司だしなあ。
情報量の増大と方向性とを束ねる実験とか。
徒然メーターでなんか変化起きるかな。続けてたら。
どうだろう。
頬杖。
ペンは机の上でいつの間にかころころしてる。
義体の設計しようかなあ。
冴木さんがアイデア出してくれてるしなあ。
特化と古武術か。古武術。俺の領域だなあ。俺はやんないけど、俺の介入先が領域だなあ。
最強かー。
強さなー。
定義が違ってくるんだよなー。
介入先によってなー。
概念なんてそんなもんだよなー。
最終もそうだし空中もそうだな。
空中なんて俺すごい解釈出してたしな。何あの地に足着いてないからだ、みたいな生き様理論。まあ単独飛行とかされても困るので能力を縛ってみたのだけれども。(パイロット系歩兵の義体が空飛んでも意味なさすぎるよ)

最強は人の未来。
最終は人の願い。(戦場における、己の立ち位置についての)
空中は人の自覚。(戦士における、己の生き様についての)

強い、新しい。
終わる、空中。
はー…………。
舞踏子に比べてどんだけファジーだホープ。

仕様書を机上のファイル棚から引っ張り出して眺める。
開発はいつも思いつきだ。
テーマがあってひねり出すのはつまらない。
思い付きほどすばらしい。
大概のものは瞬発力ですべてが決まるといって過言じゃない。

新しくないなあ。
最終の概念も、空中の概念も、新しい角度ってわけじゃ、ないなあ。
当たり前か、新しい物語が裏づけにないんだから。
どこかの概念を借体化してるだけだもんな。
ホープならではの最終にして空中でないと。
喉いてえなあ。
何も介入先まで同じ感覚を出力せんでも、と、思ったが、痛みのない戦場は地獄そのものなのでやめる。
研究するかなあ。
研究してる間に気分転換でアイデア出ることもあるもんなあ。
ホープの。

なぜ筋力は筋力で感覚は感覚か特殊は特殊で可能行為は可能行為かとか、全部突き詰めれば認識の問題だとか、認識されるための衣装がアイドレスだとか、なんか、こう、そういう理屈をこねくり回して、おお、そうだ、内面ばっかりいつもの癖で詰めていたけれど、ホープの外部からの認識のされ方を忘れていたな。

最終型で空中型で強化新型で愛の民な認識のされ方ってなんだろう。

トリプルホープなんだよな。トリプルホープで愛。
愛と希望がひとつところに宿ればそれは、それは、それは……。
だめだ、暑くてどうもいい文言が浮かばない。
藩王はなんて言ってたっけ。困った時は碑文頼みだ。
あっ希望については何も言ってない。わーい希望について定義しちゃおうかな、しちゃうかな、どうしようかな。
別に俺に何の権限があるわけでもないが。
過去から未来の継承という意味ではこれまでの流れをおさらいするのも大事なんだが、それ、やったしなあ。まだ公表はしてないけど、航空史を作るために、やったしなあ。航空産業早く活性化させたいなあ。

力は希望かなー。
力は可能性という名の希望かもなー。
思いの強さかー。
意志=力という定義は普遍だもんなー。
ホープの段階では、まだ希望は芽だなー。
強化新型の時は俺も立ち会ったっけ。何やったっけ。
すぐ忘れるのが俺だよな。
自信=思いの強さの強化かなー。
己が譲れないもののために思いを強くし、か……。
最終と空中のコンセプトも、流れには外れてないんだな。
もっとキャッチーにならんかな。
キャッチコピーがないよな、キャッチコピーが。
こう、表ではいえないが、クエスカイゼスの時みたいな強烈な奴がほしいね。

ちょっと考えてくるかー。

30119002


ニューワールドに来ていた。
第一世界は寒いからという理由を、たまたま王城で休暇中だった猫士たちに告げたところ、夜は西国の方が寒いよと言われて、ああそうだった、連邦の夜は零下なんだと思い出す。無論、室内はしっかりと煉瓦で昼間のうちに蓄えた熱や、あるいは文明維持国らしく、エアーコンディショナーを利かせていれば、暖かい。

寒かった。
指が凍るかと思った。
お前は第一世界の北海島に行った時も秋口に油断をして大層同行者に叱責を受けていただろうと中の人は振り返る。
砂糖をしこたまぶちこんだコーヒーが飲みたい。大陸間横断レースの出場者ではないが、がりっがりに濃いエスプレッソがどろどろの砂状になるまで砂糖をぶちこむと、体を動かしきった後にはたまらなく活力が出る。渋谷の某所でしょっちゅう飲んでいる。スタンプが溜まってきてるんだよな、また一杯無料になる。

思えば。
思えば華一郎は甘いもの好きな男であった。
男にも関わらず、と、言うべきか、あるいは男だからこそと言うべきか、加減を知らない両極端な彼にとり、アイスをリッター単位で食べることも、また一ヶ月のおやつを某うまいナニガシ1本で過ごすことも、さして変わらぬのである。
子供の時分は太っていた。フェ猫と同じくらいか。成長期に骨格が出来て中肉ちょっとぽっちゃり程度になった。青年期であるところの今では、なんか微妙にやせている。
華一郎は甘いもの好きな男である。そして加減を知らない。
ゲームでたまたま稼いだお菓子をしこたま食い、ああ、明日に残しておこう、というか大半は明日のために使おうと思って、今日のうちにすべて平らげ、明日、つまみながらやる予定だったはずの作業も、ついでに終わらせてしまっている。
自転車でコンビニまで用を足しに行き、その帰りに、ニューワールドに赴きたくなったのだった。

寒かった。
手がかじかむ。ブレーキをかけると濡れた路面をタイヤが削り、なんだかじゃりじゃりいい音を立てていた。ありゃ、凍ってアイスバーンとまではいかずとも、みぞれ状にぐらいはなっていたんじゃなかろうか。
北海島では雪が降っているらしいと話に聞いた。
雪祭りを見たことを思い出す。
重装備で寒さに挑むのであればいい。
軽装でふらっと油断して不意打ちを喰らうのが一番危険だ。
ああ、油断した。毛細血管がどうにかなって、指先が痛い。
たっぷりの熱いコーヒーが飲みたい。
飲もう。
ただしブラックで、だ。
今日は糖分を採りすぎた。というより今日は糖分しか採っていない。
栄養バランス? 何それ、な、食生活であった。
ミサゴ嬢に話したら野菜を採れと叱られたので、明日はミートソースかカルボナーラでいこうと思う。牛乳は栄養があるし、たまねぎだって結構なものだろう。
薬缶を火にかける。狭い、一人暮らしの身である。身の回りをする人も、また、猫士もいない。
ニューワールドでは、目を向ければ、にゃあと猫士が鳴いている。
いいなあ、猫。
単に猫好きだからという理由だけで共和国を志した猫馬鹿の本領であった。
ちなみに昨晩は昨晩で夜分に甘いものを買出しに出かけ、その帰り道、喧嘩している猫を見かけて近接戦闘を仕掛けた経緯もある。夜に出歩くと、この男、ろくなことをしない。
昼の間に書き溜めた小説を見る。そうだ、続きを書いてやらねば。
思ったところで、外交上の書類が溜まっていた事に気がついて、ぎゃーとなる。
先方を待たせているのであわてて白い正装の摂政衣に着替えて出かける。やれやれ、ニューワールドでも外出か。第一世界では、せいぜいコーヒーをゆっくり楽しもう……。

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最終更新:2010年12月15日 22:34