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むかしむかし、まだひともねこもどうぶつもみんなひとしくひとりとかぞえられていたころのおはなしです

あるところにひとりのうつくしいおんなのこがいました

おんなのこはうたうのがだいすきでした

うみべのいわにすわり、おんなのこはまいばんうたをうたいます

―そらもうみもごしょうらんあれ

―かぜもだいちもごしょうらんあれ

―じゅうだいたとうとせんだいたとうとわがあいかげることはなし

おんなのこはまいばんうたをうたいます

うみへむかって

そらへむかって

―かげがおちやみにそまり

―よるがせかいをうめつくしても

―このむねにあるぬくもりだけはなにがあろうとけせやしない

―このおもいこそごーかけんらん

―あらゆるやみをはねのけるしじょうのたて

―あらゆるよるをつつみこむゆうきゅうのはごろも

たのしげに

いみなどわからないだろうに

そのこころだけはむねにやどして

―あいはここに

―このなかに

おんなのこはうたいます

たのしげに

たのしげに

―V島に関する伝承の一部


むかしむかし、まだひともねこもどうぶつもみんなひとしくひとりとかぞえられていたころのおはなしです

あるところにひとりのみにくいさかながいました

さかなはそらをみあげます
ながれるなみのせかいから

とどくことのないかぜのせかいにこがれるように

ゆらぐつきをみあげます

こころにあるのはたのしげなうたごえ

しろくてきれいなあなた

あなたがうたうそのうたが
わたしのこころをふるわせるのです

あなたにあいたい

あなたにあいたい

ながれるなみならじゆうじざいにきりさくひれも

なみのなかならかがやくうろこも

かぜのせかいにはとどかない

しろくてやさしくかがやくあなた

あなたはぼくがみえないでしょう

あなたはぼくをしらないでしょう

それでいい

それでいいのです

みにくいぼくをみることなどないほうが

きっとあなたはしあわせなのですから

―いさりかみの伝承の一部


むかしむかし、まだひともねこもどうぶつもみんなひとしくひとりとかぞえられていたころのおはなしです

おんなのこはまいばんうたをうたいます

りょうにでたちちがくらいよやみにまどわぬように

おんなのこはまいばんうたをうたいます

ちちがかえるばしょをわすれぬように

つきのきれいなよるでした
とてもきれいなよるでした

おんなのこのみみにかすかなこえがとどきました

ひどくたよりないちいさなこえ

―いつもいつもきいていました

―あなたのうたをきいていました

おんなのこはたずねます

―あなたはだあれ

―ぼくは…

―ぼくは…

―ぼくは…なみです

―よるにさざなみをうたうなみです

こえはこたえます

おんなのこはわらうといいました

―ありがとう

―いつもいっしょにうたってくれて

なみはそれにはこたえずにくるしそうにいいました

―あなたのなまえをおしえてください

―わたしはあす、ここをたつのです

―せめてこころにとめておきたいのです

このころなまえはちからをもっていました

なまえをおしえるということはあいてがみかたにもてきにもなることがてきるということだったのです

おんなのこはかんがえました

すごくすごくかんがえました

かんがえたすえにおしえることにしました

おんなのこにはなみがわるいものにはおもえなかったのです

―わたしはありあってゆーの

―ありあ

―ありあ

なみはつぶやきます

―ありがとうありあ

―わたしはこれでせんのやみすらこえられるでしょう

―ちかいます

―いつかあなたのちからになるということを

つぎのひ

おんなのこのちちはしにました

なみにさらわれてしんだのです

おんなのこはくるしみました

じぶんがうたをとめたから
なみになまえをおしえたから

おんなのこはくるしみました

そしてさいごのうたをうたうことにしたのです

―そらもうみもごしょうらんあれ

―かぜもだいちもごしょうらんあれ

―じゅうだいたとうとせんだいたとうとわがあいかげることはなし

おんなのこはうたいます

うみへむかって

そらへむかって

―かげがおちやみにそまり

―よるがせかいをうめつくしても

―このむねにあるぬくもりだけはなにがあろうとけせやしない

―このおもいこそごーかけんらん

―あらゆるやみをはねのけるしじょうのたて

―あらゆるよるをつつみこむゆうきゅうのはごろも

かなしげに

―あいはここに

―このなかに

くるしげに

おんなのこはうたいます

そして、うみにみをなげたのです

おんなのこのからだはみるみるつめたくなり

かたくなっていきます

ひとりのさかながたすけようとしましたがちいさなそのさかなにはなにもすることができません

―あぁかみよ

―うみにやどりしはとうのかみよ

―このわいしょうないのちではたりないかもしれないが

―みもいのちもささげます

―だからどうかこのこに

―なみをきりさくひれを

―なみにかがやくうろこをありあにおあたえください

さかながそうねがうとうみはいっしゅんあおくかがやきました

そしておんなのこは人魚になったのです

おんなのこはかなしみました

そのみをなげていのちをすくってくれたさかなをだいて

うそをみやぶったのです

おんなのこはまたうたうようになりました

なもしれぬしまのすなはまで

おんなのこはうたをうたいます

まいばんまいばんうたいます

たのしげに

かなしげに

―V島にまつわる人魚の伝承


むかしむかし、まだひともねこもどうぶつもみんなひとしくひとりとかぞえられていたころのおはなしです

あるところにひとりのみにくいさかながいました

かれはそらにうかぶしろいつきにこいをしていました
つきがうたううたにこいをしていました

それはきれいなよるでした

つきのきれいなよるでした

さかなはがまんができなくなってつきにこえをかけたのです

ひどくたよりないちいさなこえで

―いつもいつもきいていました

―あなたのうたをきいていました

つきは歌を止めるとたずねます

―あなたはだあれ

さかなはことばにつまりだした

―ぼくは…

さかなはなやみました

こんなぼくがあなたにこえをかけてもよかったのかと

―ぼくは…

なやんでなやんでなやんだすえに

―ぼくは…なみです

さかなはうそをつきました

―よるにさざなみをうたうなみです

えらにいたみがはしります

おんなのこはわらうといいました

―ありがとう

―いつもいっしょにうたってくれて

きっとこれはこころのいたみだとおもいました

―あなたのなまえをおしえてください

―わたしはあす、ここをたつのです

―せめてこころにとめておきたいのです

さかなはうそをかさねます

それからすこしちんもくがながれました

―わたしはありあってゆーの

さかなのこころにひかりがみちました

―ありあ

―ありあ

なんてきれいななまえ

―ありがとうありあ

―わたしはこれでせんのやみすらこえられるでしょう

―ちかいます

―いつかあなたのちからになるということを

これだけはこれこそはまごうことなきしんじつだとさかなはおもいました

それからすうじつおんなのこのうたがきえました

さかなはなやみました

じぶんがなまえなんかきいたから

じぶんがうそなんかついたから

なやんでなやんでなやんだそのとき

さかなのみみにうたごえがきこえます

ひどくかなしげなうたごえが

そしておんなのこがおちるのとどうじにうたはとぎれました

さかなはそらをみあげます
つきはうかんでいます

さかなはりかいしました

―あれはありあだ

さかなはありあをたすけようとしました

しかしそのちいさなからだでははるかにおおきなありあはうごきません

―なんてむりょく

―たすけるとちかったのに

―ちからになるとちかったのに

―あぁかみよ

―うみにやどりしはとうのかみよ

―このわいしょうないのちではたりないかもしれないが

―みもいのちもささげます

―だからどうかこのこに

―なみをきりさくひれを

―なみにかがやくうろこをありあにおあたえください

さかなはいのります

そのときうみがあおくかがやきました

さかなはじぶんがなにかにとけていくのをかんじました

―うそをついてごめんね

―たすけられなくてごめんね

そしてさかなはきえました

そのみをのこしてきえました

おんなのこは人魚になったのです

おんなのこはまたうたうようになりました

なもしれぬしまのすなはまで

おんなのこはうたをうたいます

まいばんまいばんうたいます

たのしげに

かなしげに

ひとりのさかなをおもいながら

―いさりかみの伝承の一部


(文責:双樹真)