★ あわや大惨事…小学校乱入男を狂わせた脱法ハーブの魔力 「msn.産経ニュース(2012.11.10)」より全文コピペ

 上半身裸の男が校門を乗り越え、逃げ惑う児童を追いかけ回す-。全国で相次ぐ脱法ハーブの吸引者による「暴走」事件が10月、東京都練馬区内の小学校でも起きた。警視庁に建造物侵入の現行犯で逮捕された住所不定、無職、大貫潤容疑者(37)は「眠れずに脱法ハーブを吸った」と供述した。女児1人がかすり傷を負っただけで済んだが、大惨事に発展する恐れもあった。一部始終を見届けた人たちの目に映ったのは、狂気としか言えない奇異な行動だった。(大島悠亮、中村翔樹)


■ 上半身裸で校門乗り越え…「覚えていない」

 のどかな住宅街にある練馬区内の区立小学校。10月22日午前10時20分ごろ、校門を乗り越えて乱入してきた大貫容疑者が、普段の授業風景を一変させた。校門近くの花壇では、4年生の児童約40人が理科の授業を受けていた。

 「危ない! 逃げろ」

 近くのスーパーから大貫容疑者の後ろを付けてきた同店副店長の鶴田光彦さん(20)らは思わず声を張り上げた。大貫容疑者は身長約180センチの大柄な体格。上半身は裸で、胸や背中などに入れ墨があり、見るからに目がうつろだった。

 大貫容疑者は千鳥足で周囲を徘徊(はいかい)していたが、学校に近付いた途端、機敏な動きで高さ約150センチの校門を飛び越えた。鶴田さんの叫び声に気付いた女性教員が校門の方を振り返ったときには、大貫容疑者が児童らに向かってきていた。

 女性教員と児童らはすぐに逃げ出したが、大貫容疑者はその集団を執拗(しつよう)に追いかけ、服や手を引っ張り、背中を押した。このうち女児1人が後から倒され、覆いかぶさられ、ひざをすりむくなどした。大貫容疑者はこの間、終始無言だった。

 女児が押さえ付けられたのを見て、鶴田さんも校内に飛び込んだ。とっさに大貫容疑者の肩をつかんで女児から引き離し、左肘を背中に回して押さえ込むと、「あー」「うー」とうめいた後におとなしくなった。駆けつけた警視庁光が丘署員に引き渡した。 

 捜査関係者によると、大貫容疑者は「明け方まで眠れなかった。眠るために脱法ハーブを吸った。(事件のことは)よく覚えていない」と供述。所持品の中から脱法ハーブとみられる植物片が見つかった。


■ 昨夏から何度も吸引…「過去にも意識失った」 

 鶴田さんが大貫容疑者の後ろを付けてきたのには理由があった。

 大貫容疑者は小学校に乱入する10分ほど前、鶴田さんが勤務するスーパーにも上半身裸で右肩に毛布をかけた状態で現れた。店内をうろつき、紙パックのオレンジジュース1リットルを飲み干し、アルバイトの女性店員の手を引っ張るなど傍若無人に振る舞っていた。

 しばらくして店内がざわつき始めると、大貫容疑者は入り口近くにあった焼き芋をつかみ取って逃走した。鶴田さんは110番通報するとともに、気付かれないように距離を取りながら尾行してきたのだ。

 鶴田さんは柔道初段で、中学生のときには地元の埼玉県の大会でベスト16に入った腕前。柔道で学んだ関節技を決め、大貫容疑者の動きを制した。「こんな形で柔道の経験が役に立つとは思わなかった。女児を助けることができてよかった」と胸をなで下ろした。

 一方、大貫容疑者は練馬区内の友人宅を転々とする生活を送っていた。昨年7月ごろから、近くのハーブ店で脱法ハーブを購入してたびたび吸引していたとみられ、「過去にも何度か意識を失ったことがある」とも供述している。

 大貫容疑者の所持品の中に刃物などの凶器はなかった。学校関係者は「たまたまこの程度の被害で済んだが、刃物を持って暴れ回っていてもおかしくない。そう考えただけでもゾッとする」と話した。


■ 幻覚症状も規制外…相次ぐ「暴走」事件

 脱法ハーブは乾燥ハーブなどに、麻薬に含まれる成分に似た化学物質などを加工して製造される。幻覚症状などを引き起こすにもかかわらず、法規制の対象外となっている。店頭では「お香」などとして販売されているケースが多い。

 今回のほかにも、脱法ハーブをめぐる事件、事故が全国で頻発している。大阪市福島区では今年5月、塗装工の男(22)=危険運転致傷罪で起訴=が乗用車を運転中に脱法ハーブを吸引。車の通行が禁止された商店街のアーケードを暴走し、女性に右足の骨を折る重傷を負わせるなどした。

 6月には大阪・ミナミの繁華街で工員の男(27)=同罪などで起訴=が脱法ハーブを吸って車を運転中、歩道を歩いていた女性2人をはねて軽傷を負わせる事故を起こした。男の弁護側は、公判で「脱法ハーブを吸っても正常な運転が困難になると思わなかった。事故直前は意識が飛んで責任能力がなかった」と主張しているという。

 都内でも脱法ハーブを吸って救急搬送されるケースが相次いでいる。今月1日には東京都渋谷区のホテルで、ロックバンドのボーカルの男性が脱法ハーブを吸い、ホテルのロビーに横たわり、足をばたつかせているところを119番通報され、病院に搬送された。

 薬物問題に詳しい国立精神・神経医療研究センター依存性薬物研究室の船田正彦室長は、脱法ハーブによるトラブルが後を絶たない理由を「規制されていないから安全だという誤った考えが広がっていることや、販売する店の増加が背景にある」と分析する。






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最終更新:2012年11月25日 16:18